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原発活用へ議論始まる 再稼働・運転延長・建設の3論点

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経済産業省は22日、有識者による審議会を開き、原子力発電所の活用を進めるための議論を始めた。脱炭素の目標達成には原発の利用が欠かせないが、東日本大震災以降の再稼働は遅れ、新増設や建て替えの議論は停滞している。再稼働と運転延長、安全性を高めた次世代型原発の建設がポイントで、国が責任を持って進める体制を早期に整える必要がある。

原発の活用は8月、首相官邸で開いたGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で岸田文雄首相が検討を指示した。これを受け総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の審議会が具体化に向けて議論する。年末までのとりまとめを目指す。

日本での原発活用には3つのステップがある。短期の課題は東日本大震災後に止まった原発の再稼働だ。中期の視点では、現在は40年とされている運転期間の延長がある。そして中長期の対策として、安全性の高い次世代型原発の開発・建設が位置づけられる。

1つ目のステップである再稼働の課題は、原発を安全に運営する体制整備にあることで関係者の見方は一致している。22日の審議会でも「国と事業者が安全マネジメント体制の更なる改革を進める」ことを掲げた。

国内にある33基の原発のうち原子力規制委員会の安全審査に合格したのは17基ある。地元同意が得られないことなどから止まったままの7基について、政府は2023年夏以降の再稼働を目指している。焦点となるのはテロ対策の不備が相次ぎ判明し事実上、運転が禁じられた東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の2基だ。新潟県の不信感を拭うためには、管理体制の早急な整備が求められる。

2つ目のポイントとなる運転期間の延長は、原発利用の現実解といえる。安全が確認できる原発を長く使うことは、投資を抑えながら脱炭素を進めることにつながるためだ。原子炉等規制法で定められた運転期間は原則40年間で、60年までの延長が認められている。

経産省は22日の審議会で「一つの目安であり、明確な科学的な根拠はない」との認識を示した。省内では安全審査で停止している時間を運転期間から除外するなどして実質的に延ばす案がある。

一方で老朽化した原発はトラブルのリスクが増す。このため具体的な延長期間について、経産省は規制委に働きかけて、利用と規制の立場からそれぞれ検討を進めていく考えを示した。

米国は規制当局の安全審査をクリアすれば40年から20年ずつ延長できる仕組みで、80年までの運転が認められた例もある。英国とフランスは運転期間に制限はなく、10年ごとに安全審査を受ける。各国は徹底した審査で安全を確認している。

脱炭素の大きなカギを握り、ハードルも高いのが3つ目のステップとなる次世代原発の開発・建設だ。多額の設備投資が必要になる上に、新しい場所に原発を建てる「新設」や既存の原発に新たな炉を設ける「増設」は住民の理解を得るのに時間がかかる。政府は東日本大震災後、原発の新増設や建て替えを「想定していない」としてきた。

企業は原発を運転する環境が整わない限り、投資に踏み切ることができない。原発の建設費用は少なくとも5000億円程度とされる。電力の自由化が進み、震災前より事業リスクは大きくなっている。

22日の審議会では、将来に向けた予見性の確保が課題にあがった。委員の一人は「どの企業が意欲を示すだろうか。国がやれと言うのであれば事業環境を整備するのが政策側の仕事だ」と指摘した。

経産省は運転開始に至るまでの間に政府や企業が何をすべきか詳細な行動計画をまとめ、企業が事業の見通しを得やすくする考えだ。「事業環境の整備」も掲げ、支援策を講じる可能性にも言及した。英国では原発の電気の販売価格をあらかじめ投資を回収できる水準に設定する計画を進めている。

原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定など、原発を利用した後の重要課題についても解決のめどは立っていない。放射性廃棄物の処分にも真摯に向き合いながら、原発の将来像を早急に明確にする必要がある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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