三菱UFJ頭取｢信頼の根幹揺るがす｣　 貸金庫窃盗で陳謝

三菱UFJ銀行は16日午後、元行員が貸金庫から顧客の現金などを窃盗していた問題で記者会見を開いた。半沢淳一頭取は会見の冒頭で「ご迷惑、ご心配をおかけしたことを心よりおわび申し上げる」と陳謝。「信頼・信用のうえに成り立つ銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであり、信頼の回復に全行をあげて取り組む」と述べた。

同行によると、元行員は40代女性。支店の貸金庫や予備鍵の管理責任を負う立場を利用し、2020年4月から約4年半にわたる在籍期間に東京都内の練馬支店と玉川支店で現金などの窃盗を繰り返していた。被害に遭った顧客は約60人で、被害額は時価で十数億円程度にのぼる。

練馬、玉川の両支店における貸金庫の利用者を対象に電話などで金庫内の内容物を確認するよう求めたところ、数十人から被害の可能性があると申し出があったことを明らかにした。現時点では両支店のほかに同様の被害を確認されていないという。

会見で経営責任を問われた半沢氏は「真因の分析や再発防止策の実行に取り組むことが最大の責任だ」とし、「自身を含めた役員の処分については責任を明確化するなかで検討したい」と答えた。

同行では貸金庫の予備鍵を半年に一度の頻度で、個数や保管の状況を同行の子会社が点検してきたという。カスタマーサービス推進部長の向井理人執行役員は「（チェックを）どう運用するかが不十分で、発見に至らなかった」と説明。「過去に同様の事案がなく、リスクの認識が十分でなかった」と振り返った。再発防止策として予備鍵を各拠点でなく、本部でまとめて管理する方法に改める。

今後の貸金庫ビジネスのあり方について半沢氏は「まずは不安を解消する取り組みを進めたい。その先については（利用者の）ニーズを踏まえ、どう変えるかについて具体的な検討を進めていきたい」と話した。

同行は16日の会見で、元行員は窃盗で得た資金を投資などに流用していたことも明らかにした。本人は複数の銀行口座を使っており、銀行側としても全容の解明に至っていないという。被害の補償は銀行側が進めており、「（本人に弁済額を）請求することも考えたい」（リテール・デジタル企画部長の山下邦裕執行役員）としている。

同行は、元行員が貸金庫にある資産を盗んでいたと11月22日に公表してから初めて記者会見を開いた。半沢氏はこの時期に会見を開いたことについて「被害に遭った顧客に対する補償のプロセスが始まり、貸金庫を今後も安心してご利用いただける対応策の実施にめどがたったためだ」という。

金融庁は16日付で同行に対し、報告徴求命令を出した。今回の事案が起きた原因や再発防止策を説明するよう求めている。