ひん‐けつ【貧血】
貧血 ( amemia )
貧血 (ひんけつ)
貧血
【概要】 一定量の血液あたりの赤血球数が異常に少ないこと。実際にはヘモグロビンという血色素の濃度が、血液1デシリットルあたり12グラム以下のものをいう。9グラムまでは軽度、6グラムまでは中等度、それ以下は高度と便宜的に分ける。
【原因】 原因は非常に多く、材料不足、製造工場(=骨髄)の造血能力低下、赤血球破壊の増加(=溶血など)、過剰な出血などが単独あるいは複合している。(1)造血幹細胞へのHIVの感染により、赤血球の元になる赤芽球の減少。(2)造血環境を作る間質細胞の異常。(3)薬物(AZT、ST合剤、抗癌剤など)による造血抑制。(4)自己抗体。(5)出血。
【対策】 ジワジワ進むので体が慣れ大半の貧血は放置する。(1)抗HIV薬がよくきくと改善する例がある。(2)高度の貧血には輸血を行う。(3)造血ホルモンであるエリスロポエチンは有効であるが、日本では血液透析・腹膜透析療法の腎不全しか保険適応がとれていない。
貧血
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/10 10:24 UTC 版)
貧血 | |
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発音 | ひんけつ |
概要 | |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | D50-D64 |
ICD-9-CM | 280-285 |
DiseasesDB | 663 |
MedlinePlus | 000560 |
eMedicine | med/132 emerg/808 emerg/734 |
MeSH | D000740 |
貧血(ひんけつ)とは血液が薄くなった状態である。医学的には、血液(末梢血)中のヘモグロビン(Hb)濃度、赤血球数、赤血球容積率(Ht)が減少し基準値未満になった状態として定義されるが[1]、一般にはヘモグロビン濃度が基準値を下回った場合に貧血とされる[2]。
医療業界では、アネミー、アネミ、アニーミア(Anemia)ということもある[3][4]。
概説
血液が薄くなり、赤血球の主要な構成物質であり酸素運搬を担うヘモグロビンが血液体積あたりで減少することで、血液の酸素運搬能力が低下し、多臓器・組織が低酸素状態になることで倦怠感や蒼白その他の諸症状が現れる[1][2]。
基準値は研究機関・検査施設によって若干異なるが、概ね男性でヘモグロビン濃度13.0 g/dl、女性で12.0(あるいは11.5)g/dl程度とされる[1][2]。なお、貧血はヘモグロビンあるいはヘマトクリットが減少した状態(症候、病態)を示す言葉であって、単に「貧血」という名前の病気があるのではなく、病名(疾患名、診断名)は原因に従って、鉄欠乏性貧血とか赤芽球癆などと言った病名になる[5][6]。また、世間では急に立ち上がったり、立ち続けることで血圧が低下しめまい・立ちくらみが起きる一過性の起立性低血圧(脳貧血)やそれに加え全身の倦怠感なども起きる慢性の低血圧症を「貧血」と呼ぶこともあるが、低血圧によるものは医学的には貧血とはまったく異なるものである。
病態
赤血球は血流に乗って全身を巡り、赤血球内部に充満しているヘモグロビンを使って酸素を全身に運ぶ働きをしており、赤血球数が減少したり赤血球が小さくなることでヘモグロビンが足りなくなると十分な酸素を運ぶには血流量自体を増やしたり、呼吸量を増やすことで代償しなくてはならない。すなわち、動悸・息切れがみられる。特に、代償の限界を超える運動時にこれらの症状が強くなる。また、代償が追いつかないと、体の各組織が低酸素状態になり、倦怠感などの諸症状が現れる。また、血色素であるヘモグロビンが減少するために体の各部が蒼白になる。しかし、貧血が徐々に進行した場合には、体が低酸素状態に慣らされるために、相当に強い貧血になるまで特に自覚症状が無いこともある。
分類
原因
貧血の原因は大別して赤血球産生の低下と、破壊・喪失の亢進がある(両方が同時に起きることもありえる)。
赤血球産生の低下は
- 無効造血 ..... 造血細胞は赤血球を作ろうと努力はするが何らかの原因でうまく行かず、正常な赤血球を十分に作れない。
- 造血細胞の減少 ..... 造血細胞の数が減少し赤血球産生能力が低下する。
- その他 ..... 造血因子(エリスロポエチンなど)の減少や低栄養で造血細胞の意欲が低下する。
赤血球の喪失には
などに大別される[7]。
赤血球産生の低下
(1) 無効造血
- ヘモグロビン合成障害
- DNA合成障害
- 骨髄異形成症候群(MDS)・・造血細胞自体の異常で正常な赤血球が作れなくなる
(2) 造血細胞の減少
- 再生不良性貧血
- 赤芽球癆
- 骨髄癆・・骨髄で異常細胞が増殖したり、骨髄が何かに置き換わってしまって造血細胞が骨髄から追い出されてしまう。白血病、肉芽腫性疾患、骨髄線維症、転移性腫瘍など。
- 薬剤、放射線、ウイルスなどが造血細胞を傷害する。
(3) その他
- 造血因子エリスロポエチンの減少 腎障害 - 腎性貧血。
- 低栄養。
赤血球の喪失
(1)出血
出血では血液成分の赤血球と血漿(水分)を同時に失うが、血漿(水分)量は短時間で回復するが赤血球の回復には時間がかかるので血液が薄くなる。出血が長期に渡ると鉄が欠乏し鉄欠乏性貧血と重なる。
(2)溶血性貧血
赤血球が壊される、あるいはもろく壊れてしまう。
- 赤血球膜異常 遺伝性球状赤血球症、肝疾患、尿毒症。
- 赤血球酵素異常 G6PD欠乏症、ピルビン酸キナーゼ欠乏症。
- 自己免疫性溶血性貧血 免疫系が自分の赤血球を攻撃してしまう。
- 物理的破壊 行軍ヘモグロビン尿症(スポーツ貧血)足を強く多く踏みつけることで、足裏の毛細血管内で大量に赤血球を押しつぶしてしまう。
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症
形態
形態による貧血の分類。 赤血球の減少は、赤血球のサイズ・ヘモグロビン濃度という観点から分類される。
- 赤血球のサイズ
- 大球性 - 赤血球が通常よりも大きい。赤血球の分化に異常があることを示唆する。
- 正球性 - 通常のサイズ。
- 小球性 - 通常よりも小さい。赤血球を作るための材料が不足していることを示唆する。
- ヘモグロビン濃度
- 正色素性 - 通常の濃度で含まれている。
- 低色素性 - ヘモグロビン量が少ない。ヘモグロビンの産生に障害のあることを示唆する。
これらを組み合わせて、例えば「小球性低色素性貧血」などと表現する。これは、状態を表現しただけのもので原因まで含めた診断名ではない。
- 小球性低色素性貧血
- 正球性正色素性貧血
- 大球性貧血(大球性正色素性貧血)
検査
- 赤血球数
- ヘモグロビン濃度
- 鉄濃度
- フェリチン濃度
- 小球性低色素性貧血で上昇していれば二次性貧血を疑い、低下していれば鉄欠乏性貧血を疑う。
- 網赤血球は若い赤血球であり、骨髄での造血機能が衰えると減少する。絶対値で計算するのが重要であり、およそ5-10万 /μlになるようなら正常であり、これ以下なら造血機能の障害を疑う。若い赤血球である網赤血球が多いにもかかわらず(つまり骨髄では赤血球を盛んに作っているにもかかわらず)貧血であるなら、出血や溶血を疑う。