
雪山登山に挑戦!これから気をつけるべき8つのリスクとは
一面の銀世界や美しい霧氷など、夏とは全く違う姿を見せる雪山は、その美しさの分だけ夏にはなかった様々なリスクもつきまといます。憧れの雪山に行く前に、この季節だからこそ起こりうる8つのリスクについて紹介します。
2022/06/11 更新
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目次
極寒の世界は装備や知識の不足が命につながることも
雪山というと、登山を始めたばかりの人にとっては遠い憧れのような存在ですよね。実際に行ってみると、静かで、夏の情景がイメージできないほどの銀世界はまさに全くの別世界。でもその分、天候や雪への知識がないと踏み入れることができない厳しい山でもあります。今回は夏にはない、雪山ならではのリスクをご紹介します。
冬山と雪山の違いは?
よく登山者の間で議論にもなる「雪山」と「冬山」ですが、言葉のとおり、雪が積もった山は「雪山」、冬季の山を「冬山」とし、特にこの記事では「厳冬期の雪山」について触れたいと思います。
雪山で起こる8つのリスク
雪山で起きうる8つのリスクをご紹介します。中には夏山と同じものもありますが、その発生原因や頻度は夏とは違ったものになっています。雪山ならではの注意点を抑えておきましょう。
①雪目
雪目とは、目が雪原で反射された紫外線を過剰に浴びることで目の角膜・結膜に発生する炎症のこと。正式には「雪眼炎」といい、目の日焼けとも言えます。
雪目になると、目がゴロゴロしたり、目が痛くて眩しい、涙が出る、といった症状が現れます。また、症状が現れるのは紫外線を浴びて6~10時間後と、時間差で現れるのも特徴です。
対策としては、サングラスやゴーグルをすることで、この紫外線の照り返しから目を守ること。紫外線の反射率は新雪で80%にもなり、雪山へ行くときは晴れていても曇っていても必ず対策をする必要があります。
■雪山用サングラス・ゴーグルの選び方
原因となる紫外線をしっかりカットできるものを選びましょう。紫外線カット率99%以上のものがベストです。
また、紫外線は雪面で反射するので、正面だけではなく全方位に気を付けなければなりません。特にサングラスの場合、レンズが湾曲し、顔に沿っているものが望ましいです。
また、テンプルが太く、レンズが大きいものもおすすめ。サングラスと顔の隙間から光が入りにくいものを選びましょう。
帽子やバラクラバとの併用もGOOD!他にも、紫外線を防げても、日光の強い反射は目の負担になることが考えられます。偏光レンズのものも検討しましょう。紫外線の反射からしっかりガードでき、天候が変化したりガスがかかっても対応可能なレンズの濃さが良いですよ。
②道迷い
夏山でも多い道迷いですが、冬山では夏とは違うルートが設定されていたり、明瞭な道そのものがない場合もあります。目的地に着けば問題ないと思うかもしれませんが、雪崩や雪庇の危険を避けるために冬用の迂回ルート等が設定されている場合もあります。
また、降り積もった雪によって先行者や自身の足跡は短時間で消えることもあります。そうしたことから、トレース(踏み跡)を当てにすることはできず、地形から現在地や進む道を自分で決める必要があり、しっかりとした読図・ルートファインディング力が求められます。
厳選 雪山登山ルート集
③ホワイトアウト
雪山において、雪原の雪や雲によって視界が白一色の一続きになり、方向感覚や上下感覚、距離感がなくなったり、地形の起伏の識別ができなくなることをいいます。
ホワイトアウトが起こる原因としては様々な理由があります。吹雪や地吹雪によって雪が舞い上がることで発生することもあれば、大量降雪や霧で視界が極度に悪くなることで起こることもあります。また、雪原の表面や雲による光の乱反射などによって視界が悪くなることで起こる場合も。一度ホワイトアウトに陥ると、行動が大変難しくなります。
④雪庇
雪庇とは、稜線や山頂などで風下側に張り出したようにできる雪の塊のことをいいます。雪庇となった雪の塊は、自重で崩落するまで大きく成長し続けます。
雪庇はとても脆く、実際の地形と雪庇部分の判別が難しいこともあって、尾根を歩く時に気付かずに間違って踏み抜いてしまうと谷底へ転落してしまいます。命取りとなるので、雪庇が作られやすい場所の情報や立木の位置などから安全なルートを割り出すルートファインディング能力が求められます。
⑤雪崩
雪崩とは、山の斜面に積もった雪が重力によってなだれ落ちる現象で、重みや圧力、気温の上昇などの外的要因によって降り積もった雪粒同士の結合が崩れ、積雪の状態が不安定になることで起きます。急な斜面や植生がまばらな斜面は雪崩の起きやすい地形です。
時期としては、気温が低い1月~2月の厳冬期に雪崩が起きやすく、既に大量の積雪がある中でさらに一度に大量の雪が降ったときは要注意!気温が上昇する春先で、寒暖差が激しい場合にも注意が必要です。
⑥低体温症
低体温症とは、体が生み出す熱と体外へ放出される熱のバランスが著しく崩れ、体の深部の温度が35度を下回って、正常な生体活動を維持することが難しくなった際に生じる様々な症状のことをいいます。
最初は体の震えや強い疲労を感じますが、進行すると意識が混濁し、立つこともままならなくなります。低体温症の主な要因は、低温環境・濡れ・風の3つ。そのため、条件が重なれば、夏山でも濡れた衣服の気化熱などで低体温症が起こりますが、低温環境である冬山ではさらに危険が高まります。
対策としては、汗による濡れを警戒し、速乾性のあるベースレイヤーなどを着て気化熱で体温を奪われないようにしましょう。休憩時にはアウターを着こんでエネルギー補給をしっかり取ります。疲労は低体温症を悪化させることになるので休息はしっかりと取りましょう。
⑦凍傷
低温環境下で体の血の巡りが悪くなり、細胞などの体の組織が凍結・破壊されるといった局所的な症状のことをいいます。
より症状が進行すると細胞が壊死し、その部分を切断しなければならなくなります。体の末端部分である手足の指先や耳、鼻、顔面などが凍傷になりやすく、重症化しないためには予防や早期の対処が欠かせません。手袋やバラクラバ、ネックゲーターなどを着用して肌が外気に触れたり濡れたりしないようにしましょう。手足や耳たぶが冷えてじんじんと痛みが出てくると注意が必要です。動かしたり擦ったりして、血行を促しましょう。
⑧滑落・転落
雪庇の踏み抜きによる転落以外にも、アイスバーンになった地面で躓いて滑落するという事故もおきています。アイゼンやピッケルの装備を準備し、滑落停止に関する訓練をするようにしておきましょう。
一人ではじめないで!講習会やツアーへの参加がオススメ
雪山のリスクを紹介しましたが、実際の登山では歩き方や装備の使い方など、さらに多くの技術が必要になってきます。そのため、初めて雪山に挑戦するなら、まずは講習会に参加してみたり、ツアーに参加して実地で体験することが雪山登山をより安全に楽しむ近道といえるでしょう。
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雪山のリスクをしっかり学んで安全に雪山を楽しもう!
雪山には生死に関わるリスクがあり、夏の登山に慣れていたとしても安易な気持ちで踏み込むことはできません。どのようなリスクが存在し、どう予防するのか、直面したときにどう対処するのか、といったことをしっかり考えて入念な準備が必要です。
その反面、夏とは違う雪山ならではの魅力があるのもまた事実。是非とも挑戦したいと考えている人は、ツアーや講習会などからその一歩を踏み出し、安全に雪山を楽しんでください。