ふとしたことから、池内紀先生の著作を調べて、あまりの多さに驚いた。特にこのところ、たてつづけに新書判を書いている。うーむ。
池内先生については、村上春樹をなんとなく褒めている文章にちょっとからんだことがあるくらいで、あと『ファウスト』の訳は読んだが、著書を読んだことはない。たださすがに、断片的に読んではいるだろう。
息子の池内惠が出てきた時、私は絶賛した。あの当時、イラク攻撃する米国へのヒステリックなまでの攻撃の中で、惠は堂々たる論陣を張っていた。その時、これは父親を反面教師にしたのかな、と思った。
紀先生といえば、とにかく「あたりさわりのない人」である。翻訳もじゃかじゃかやるし、温泉めぐりはするし、本は読むし、あ、早川良一郎の「けむりのゆくえ」なんかも編集しているし、嫌煙家ではなさそうだ。
それにしても、「生き方上手」とか「生きる知恵」とかいうタイトルを目にしてしまうと、ううむ池内先生、いいんですか、と思ってしまう。
定年前に東大を辞めたけれど、ちゃんと名誉教授にはなっている。きっと、大学というものが、あまり好きではないのだろう。それにしても、ゲーテもカフカもケストナーも、こうまで緊張感のない人生ではなかったのではないか、と思えてしまう。いや池内先生は池内先生なりの緊張があるのかもしれないが、なんか、ねえ。
実のところ、池内先生って、えらいんでしょうか、どうなんでしょうか。