ムーンライダーズの鈴木慶一が新バンド、Controversial Spark(コントロヴァーシャル・スパーク)を結成! 本日8月11日に、東京・夢の島公園で開催されているWORLD HAPPINESS 2013でのライヴと共に、3曲入りのアナログ 7インチE.P.『Controversial Spark』(500枚のLimited Edition)をリリースし、デビューを飾る。
OTOTOYでは中心人物である鈴木慶一、ヴォーカル&ギターのkonore、カーネーションの元ドラマーである矢部浩志の3人に、音楽評論家、岡村詩野が取材を敢行!! 音楽ファン必見のインタヴューをお楽しみください。
デビューE.P.が、8月28日(水)より配信開始!
2013年8月11日(日)に、WORLD HAPPINESS 2013のイベント会場にて先行発売されているデビューE.P.『Controversial Spark』が、8月28日(水)より配信開始!! 会場に行けず手に入れられなかった人も、ぜひ楽しみに待っていてほしい。
Controversial Spark / Controversial Spark
【Track List】
01. in May / 02. ハイ ハイ そこの 野に咲く花 / 03. 夢の晩餐
INTERVIEW : 鈴木慶一、矢部浩志、konore
既報の通り、ムーンライダーズの鈴木慶一が結成した新バンド「Controversial Spark(コントロヴァーシャル・スパーク)」がいよいよその活動をキックオフさせる。
メンバーは鈴木慶一以下、カーネーションの元ドラマーでムーンライダーズのサポートもつとめたことがある矢部浩志、鈴木慶一とは旧知の仲で、現在は栗コーダーカルテットや図書館などで活躍中のギタリスト近藤研二。幅広いミュージシャンのサポートもつとめ、現在The Uranusのメンバーとしても活動中のベースの岩崎なおみ、活動休止中のバンド、the roomsでヴォーカルとギターを担当していたkonoreという世代も環境も超えた5人。だが、そうしたそれぞれの経歴などはこの際ほとんど知らなくてもいい… というか、そうしたキャリアや共通点の上に成立するような音楽を目指していないのがこのControversial Sparkのおもしろいところだ。
実際に手元に届いた3曲入りデビューE.P.の作風を一言で説明するのは難しい。鈴木慶一作詞、近藤研二作曲の「ハイハイそこの野に咲く花」の“おかしな音楽 / 集めてみるとわかるよ"という歌詞の一節にあるように、とにかくさまざまな断面を持つハイブリッドな音楽ではある。ギター・ロックをひとつのキーワードにスタートしたとはいうものの、ロックの王道からはササッとハズしてみるような粋なフレーズや展開を盛り込み、でも、女性メンバー2人の歌をメインにした「夢の晩餐」(konore作詞、矢部浩志作曲)ではガール・ポップとしての人なつこさ、キャッチーさを前面に出すことに躊躇はない。果たしてこの真意は……? 聴けば聴くほど、ディグすればするほど迷宮に入りこんでしまうようなこのControversial Spark、論争の火の粉というような意味に相応しい、さまざまな解釈、憶測がリスナーの間でも飛び交うことで成長を遂げていくバンドなのかもしれない。
インタビュー&文 : 岡村詩野
なにか新しいことをやりたくなったときに、ふっと自分のやってきた過去を見た
――新バンド構想というのはいつごろ、どういうきっかけでスタートしたのですか?
鈴木慶一(Gt.)(以下、鈴木) : 去年1年を振り返ってみると、映画音楽やお芝居の音楽の制作が中心で、ハッと気づいたら時間が過ぎ去っていたんだ。で、そのとき、そろそろ自分回りでなにかしたいな、と思ったんだよね。で、試しにちょっと何曲か作ってみた、というわけ。漠然と考えたのは去年で、実際に曲を作りはじめたのは今年に入ってからだったかな。
――なぜ、映画やお芝居の音楽以外のメイン・ワークをソロ作品ではなく新たなバンドで、と思ったのでしょうか。
鈴木 : いま、ムーンライダーズは活動休止状態でしょ? で、定期的に活動していたころは、そことソロ活動というふたつの間を行ったり来たりというのがあった。でも、休止中は行ったり来たりがないんだよ。ソロをやるにしても戻ってこれる仲間とか起点がほしいわけで。となるとやっぱりバンドかな、と思ったのね。
――いまの慶一さんなら、新しいバンドを作らなくとも、ソロ作品をコンスタントに制作していくことができますよね。それでも、あえてエネルギーの必要な新バンド結成を求めた。
鈴木 : そう。ひとりだときっとどんどん内省的な作品を作っていってしまうと思うんだ。あと、私の体質として、やっぱりバンドが好きなんだよね。数人でモノを作っていって、そこに新たなアイデアが生まれてくるというのが望むかたちというか理想的な在り方だと思うんだ。でも、ムーンライダーズは休んでいるわけで、じゃあ、新しく作っちゃえ、みたいな感じだよ。でも、今度のバンドは、学生のころから一緒につるんでた仲間がいてそのまま… みたいな感じじゃないから、そりゃあ、エネルギーは必要だったよね。
――音楽性ありきだったのですか? それともメンバーを先に決めていったのですか?
鈴木 : 両方って感じかな。まず、音楽性を考えたときにギター・バンドをやりたかった。で、ギター・バンドってどういうものか? を考えたときに、ギターが数本入っているバンドというイメージだったんだけど、そんなことを頭で描いている途中で、矢部(浩志)くんがどうやらまたドラムを叩き出したらしい、という噂が耳に入ってきたりしたの(笑)。じゃあ、ドラムは矢部くんがいいな、他のメンバーはどうしようかな? って考えていくうちに近藤(研二)くんは、スタジオ録音では色々やってもらったことがあるけど、ちゃんと一緒にやったことがないからおもしろいよな… とかって自分のなかで決まっていったんだ。近藤くんのデビュー・ライヴは実は鈴木さえ子さんの日本青年館でのライヴで。ワイヤレス・ギター持ってステージから降りて駆け出していって、2階から飛び降りようとしたやんちゃなヤツだったんだ(笑)。あのときは必死でみんなで止めたね。本当に飛び降りてたら近藤くんはもうこの世にはいなかったかもしれない(笑)。でも、そんなやんちゃな男がトシをとってどんな演奏をするようになったのかにも興味があったんだよ。
――音楽性をフォーカスさせていくプロセスで、仲間も集まったいったということですね。
鈴木 : そう。で、私はよく動画サイトとかを見るんだけど、あるときたまたまkonoreさんの映像を見つけてね。彼女、若いけどギターもなかなか上手くておもしろいから一緒にやってみたいなと思って。岩崎(なおみ)さんは権藤(知彦)くんに紹介してもらう形で… ってすべてはそんな感じ。だから、konoreさんなんて、今日が…
konore : 会うの4回目ですね(笑)。
鈴木 : そう。顔を合わせること自体、この取材で4回目というね(笑)。でも、そのくらい自分でも意外な発見とか驚きに満ちたことがやりたかったんだ。
――でも、ギター・バンドというスタイルは明確に決めてらした。なぜギター・バンドをやりかたったのでしょう?
鈴木 : う~ん、なんでだろ… ただ、なにか新しいことをやりたくなったときに、ふっと自分のやってきた過去を見るんだよね。すると、本来はサイド・ギタリストだったんだ、ということに気づくわけ。最初はあがた森魚のバックでギターを弾いていたわけだからね。つまり、そういう2番手的な立ち位置が本来は好きだってことなんだ。ムーンライダーズではフロントにいるけど、本当はもうひとりヴォーカルがいて横に自分がいる、というスタイルが好きなんだよね。しかも、鍵盤じゃなくてギターでそれを成立させるようなことをやってみたかった。ザ・バーズとかモビー・グレイプとかバッファロー・スプリングフィールドとかね。ムーンライダーズにはキーボード(岡田徹)がいるから、普段はそういうことを考えてもみなかったし、ムーンライダーズはあれでちゃんと成立したバンドだからいいんだけど、ふっと過去を振り返ったときに、元々自分の指向はそういうものだったってことに気づいたんだ。
――しかも、Controversial Sparkには慶一さん自身を含めてギタリストが3名。まさにモビー・グレイプですね。
鈴木 : そうだね。3本のギター・アンサンブルが軸になった… それが自分にとっての理想的なギター・バンドってことなんだ。それと、北野武さんの映画音楽の仕事を多くやらせてもらっているけど、実は結構ギターをたくさん使っているの。単音とかもかなり入っている。そんな作り方をやっているうちに、バンドでも試してみたくなったっていうのもあるかな。やっぱりね、フロントマンで居続けることの重圧ってすごくあってね。もっと気楽にリード・ギタリストの横でカッティング・ギターを弾いていたいっていう単純な思いもあったりして。で、さらにもうひとりいたらもっと膨らむ… ってね。
――じゃあ、ムーンライダーズでは白井良明さんがソロを弾いたりリード・ヴォーカルをとったりしたら…。
鈴木 : そう! ああいうときが1番楽しい(笑)。アイツ、間奏までソロを弾かないときがあって、そこまでこっちは延々カッティングやったり… そういうのがいいんだよね。そのムーンライダーズもさ、00年代入ったあたりから他のメンバーにライヴとかで歌ってもらうことが増えたでしょ? それもそういう気持ちの表れだったんだよ。その思いが今回のバンドの音楽性… ギター・バンドをやりたいという気持ちにつながったんだな。だから3本のギターの役割は結構自分では最初から考えてた。ややこしいエフェクターを使う人がまずひとり…。
konore : いま、話を聞いて参考になりました。それ、私ですね(笑)。
鈴木 : (笑)。まあ、私もちょっとそういうギターは弾くけどね。で、近藤くんがしっかり弾く。リズムをキープして弾くと。例えばさ、フレーミング・リップスの新しいアルバムとかを聴くとよくわかるんだけど、ドラムとかってすごくちっちゃいじゃない? 入っていてもほとんど前に出ない。1つのバンドを30年くらいやっているからこそ出来る音楽なんだろうけど、ああいう“飛び具合"っていうか、おもしろさっていうのもやってみたかったんだよね。
彼女、“私がココにいる理由がわかりません"ってハッキリ言ったんだよ
――なるほど、で、そうした具体的なサウンド・ヴィジョンをメンバーが揃ったところで慶一さんから伝えていったわけですか?
konore(Vo.、Gt.) : いまはじめてそういう方向性だったのかと知りました(笑)。
鈴木 : 方向性とかって話してないからね。なんたって今日でまだ4回目だから(笑)。konoreさんは最初リハスタに来てもらって、私の曲と近藤くんの曲をちょっとセッションしてみようってことになった。でも、結局最初の30分くらいは曲をやってなかったかな。
矢部浩志(Dr.)(以下、矢部) : そうでしたね。インプロをやってました。
鈴木 : そうそう。インプロをやってみると、その人の音楽性とかタイミングとかそういうのが全部わかるんだよ。なんの予備知識もなく、「はじめまして。じゃあ、音を出してみましょう」ってそんな感じ。それが5月くらいのことだったかな。
――つい最近じゃないですか!
鈴木 : そのときが5人全員揃った最初だったね。それまでは私の頭のなかのシュミレーションだけで。でも、それも矢部くんのドラムはこんな感じ、近藤くんのギターはこんな感じ… って各々のスタイルはわかっていたけど、konoreさんと岩崎さんは正直わからない部分が多かった。でも、konoreさんは実はあるオーディションで私が審査員をやったときに出場していたことがあるんだよね?
konore : そうなんです。
鈴木 : 私は実は覚えてなくて、後から、あ、あのときの! って気づいたんだけど(笑)。でも、とにかくトリプル・ギターで、ドラム矢部くんで… みたいなことを考えて曲を作っていたから、あと細かいことはギタリストのスタイルに合わせてリフを作り直せばいいし… くらいのつもりでいたね。だから、スタジオではまず音を出して互いにどんなプレイなのかを確認する必要があった。だから最初はインプロをやったんだよ。
――ちなみにkonoreさんはムーンライダーズやカーネーションは聴いたことがあったのですか?
konore : ええ~と…。
鈴木 : その質問はしてないからな~(笑)。
konore : 聴いたことなかったです…。
鈴木・矢部 : (苦笑)。
――では、どういう音楽が好きでしたか? 最近のお気に入りなどはありますか?
konore : ここ最近は夏なのでプロディジーを聴いてます(笑)。
鈴木 : プロディジー!
――では、音楽を始めるきっかけになったアーティストなどは?
鈴木 : いいこと訊いてくれるね、代わりに。
konore : 1番最初にハマったのはスピッツとか矢井田瞳さんとか… 小学生のころでした。その後ミッシェル・ガン・エレファントが解散するタイミングだったんですけど、テレビの歌番組で見て、“なんだこの人達は! めちゃくちゃカッコいいじゃないか!"って。で、バンドやりたいなって思いましたね。親がブラック・ミュージックとか山下達郎さんとかが好きで… ムーンライダーズは名前は存じ上げてました(笑)。で、一緒にやることになってはじめてちゃんと聴かせてもらったんですけど、今度一緒にやろうとしているこのバンドの音の感じと全然違うなあ! って驚きましたね。カーネーションの音楽も後から聴かせてもらったんですけど、正直に言うと、こんなに世代が離れてて、聴いてきた音楽も違うのには不安もあったんです。最初会うときとか、顔面蒼白でしたね。ただ、なんとなくわかったのは… 全員に共通していることを研ぎすませていくのではなく、それぞれができることをちゃんとやるのが1番いいんだってことでした。
鈴木 : その通り。すごいね、わかってるね。だってさ、彼女、最初に会ったとき、“私がココにいる理由がわかりません"ってハッキリ言ったんだよ。それってさ、私はココにいます、存在理由はこれです、と宣言していることと同じでしょ? それってすごいことだよね。だからこっちも、“じゃあ、これ聴いといて"って参考になりそうなCDとかを彼女には聴かせなかった。そういうリファレンスに頼った音楽はやりたくなかったから。あくまで個人のプレイヤビリティと能力ありきでいきたかったんだよね。
――それは矢部さんや他のメンバーに対しても同じだったのですか?
鈴木 : まあ、矢部くんや近藤くんはつきあいも長いし、矢部くんは1番最初に声をかけていたからkonoreさんよりはいくらか理解し合える部分もあったと思うけど、それでも、最初からすべて話し合うということはしなかったね。
――矢部さんは昨年あたりから徐々にドラマーとしての活動を再開させていたわけですが、今後どういう活動をする予定でいたのですか?
矢部 : 去年の段階ではまだ本当になにも決めてなかったですね。だからなんとなくライヴとかやってみていたんですけど、どこからか話が漏れて慶一さんに伝わって…(笑)。で、本当に突然このバンドの話をもらって、前のめりになったって感じです。しかも、メンバーには女性を複数迎える予定だと聞いて… そのときにはまだkonoreさんも岩崎さんも決まってなかったんですけど、男女混合バンドって好きなので、ますますやりたくなりましたね。でも、音楽の方向性とか詳しいことはやっぱりなにも決まってなくて。とにかく、みんなで曲を書いて、ガッツリと正式メンバーとしてやっていきましょうという話くらいしかなかった。本当にそこから始まったんですよ。
鈴木 : だって、本当にやってみるまでわからないし、いまやり始めてみてもまだ僕らもわからないわけだからね。しかも、演奏だけじゃなくてミックス作業でどうなっていくかわからない部分がこのバンドにはある。作品がちゃんと完成してパッケージになるまでまだまだわからないところがあるんだよ。
これからどうなっていくか見当もつかないんだ。だからこそのこのバンド名なんだよ
――で、慶一さん自身は、このバンドのために曲作りの方法そのものも変えてみたりしたのでしょうか?
鈴木 : うん、それは新しいことにトライしたね。通常鍵盤で作るんだけど、ギターの音を打ち込んで作るから聴感上変わるよね? だからだいぶ違う。それと、ライダーズはヴァイオリンとかキーボードとか色んな楽器があるわけだけど、そういうのがこのバンドでは一切ない。あくまでギターの色んな音色やリフで組み立てていって、そこに私だけじゃないヴォーカルも入る… というのはやっぱり新たな曲作りの仕方をする必要がでてくるよね。しかも女性メンバーが… あ、そうそう、楽器演奏が出来てヴォーカル、コーラスがとれる、という女性メンバーが複数いる、というのもバンドのコンセプトとして考えていたことかな。
――ついでに、メンバーの世代が超越しているというのもコンセプトでは…。
鈴木 : それは全く考えてなかったけど、結果としてすべての世代がいるんだ。私が60代で矢部くんが50代、近藤くんが40代で岩崎さんが30代、で、konoreさんは、まあ、孫の世代じゃないけど…。
konore : 21歳です!
鈴木 : まあ、まかり間違えば、彼女くらいの孫がいる可能性もあるか(苦笑)。
――ただ、00年代以降くらいの慶一さんは若い世代との交流を1つのフックとしてきたところがありますよね? 同世代同士でつるみ過ぎないような柔軟性が音楽性にアイデアを与えてきました。
鈴木 : そうだね。それは確かにあるんだ。特に今回がそうなんだけど、同世代だとわかり合える分、どういう音が出てくるか想像できてしまうところがある。でも、世代がここまで離れているとまったくわからない。圧倒的に世代が離れていると非常にデンジャラスなんだ。でも、それだけにやりがいがあるし、意外なものが生まれてくる。そういうことを今回このバンドではやってみたかったというのもあるからね。だって、5世代というのもすごいけど、全員揃って2度目でもう本番のレコーディングだったんだから!
――え! ミーティングとかは?
konore : 1回もしてないですね(笑)。
鈴木 : 私のなかではある程度、いま話してきたようなイメージはあったわけだけど、細かいところはとりあえず後から決めようか、みたいな感じだった。スタジオの後にご飯食べたときとかも、“ねえ、どこ出身?"とかそんな話題(笑)。でも、あんまり詰めた音楽の話をしてしまうのももったいない。だから、今回のEPはたった3曲ながら、すごく現場は暗中模索だけど実験の場でもあった。でも、やってみると色々な発見があって… 岩崎さんとkonoreの声の相性も奇跡的に良かったりしてね。今後はわからないけど、3曲でEPを作り、WORLD HAPPINESS 2013に出る、というのが第1段階だったわけだから、そういう意味ではすごく刺激的な出発になったと思うよ。でも、これから先はどうなるか…。
――全貌がまだメンバーもわかっていない。
鈴木 : 全然わかっていない。なにしろ、全員が曲を書ける、ソングライターがたくさんいるバンドだからね。しかも、互いの曲に誰が歌詞を書いてもおかしくない。誰かがいい曲や歌詞を書いてきたら、「こっちも負けてられないぞ!」ってことになる。21歳のkonoreさんの歌詞に刺激を受けて、よおし! って気持ちになるわけだ。バンド内が全員ライバル。21歳のライバル(笑)。
konore : 恐縮です~…。
鈴木 : だから、最初に作った曲はホントに叩き台というか、そこからどんどん変わっていくことになったんだよね。大量な意見が出るからね。岩崎さんやkonoreさんからもコーラスのアイデアが出たりして…。
矢部 : 実際録音現場はすごく面白かったんですよ。岩崎さんはずっと真剣な顔で歌詞カードを見ながら、すごくいいアイデアを言ってくれるんです。曲をよくしよう、よくしよう、という気持ちが全員にあって… 対等なんですよね。
鈴木 : 発言に遠慮は要らないよ、ということは最初に伝えたんでね。このバンドが発表される前に、(高橋)幸宏も新しいアルバムを世代を超えたメンバーで作ったでしょ? しかも、あっちにはジェームス・イハという国境を越えたメンバーもいる。それもバンド編成でやってるよね。こっちの発表が遅れちゃったから悔しいんだけど(笑)、でも、考えていることとかは同じだなって思う。
――ただ、だからと言って、出来上がった作品は決して混沌とし過ぎない、難解な方にはいかない、スポンティニアスに作られているけれど、ある種のロックの王道を行ってる部分もあるように思えます。そのあたりのバランスをとるのも自然なことだったのですか?
鈴木 : そうだね。真ん中を行きつつ、曲自体を自由に解放させていきたい。そういう楽しみ方がこのバンドの曲にはあるよね。やっぱり、新しいことをつねにやってないといけないと思うんだ。新しいバンドをやっている以上、特にそう。ヘタするとギター・バンドって王道を行くスタイルなんで、ロック的など真ん中に行き過ぎる。でも、そこからいかに解放させていくのか。そのせめぎ合いみたいなものがこのバンドのカギにはなっているね。
――サウンド部分を解析すると、部分的にサイケデリックな感触もあります。
鈴木 : ああ、そうだね。サイケデリック・ロックはあるね。でも、それも最初に考えていたわけではないんだ。それを抽出しようとしたわけでもない。
――慶一さんくらいになると、蓄積がモノを言う反面、キャリアに従ったり、手慣れに流されていくこともたやすいと思うのですが、そこをつねに緊張感のある、フレッシュな状態にしておくためにはどういうものが必要だと考えますか?
鈴木 : やっぱりメンバーのアイデアと力量だよね。だからバンドはおもしろいんだ。もちろん、ある程度わかり合える部分もある。例えば矢部くんのドラムはとにかくフィルがカッコいい。そのカッコ良さを数年ぶりに体験できただけで嬉しいんだけど、そこからどう先に進めるのか、新しいものにしていくのか? ってことを考えるのがおもしろいんだ。実際、矢部くんのドラムと岩崎さんのベースだけを合わせて聴いてみると、意外な発見があるんだよね。
konore : EPに入っている「in May」という曲を最初に合わせたときに、ああこのバンドってこういうことなんだなっていうのが少しわかったんです。最終的にみんなの意見が入って出来あがった曲なんですけど、そういうやり方ができるバンドなんだってことを証明しているような気がして…。
鈴木 : いや、まさにその通りなんだよ。あの曲は私が作った曲ではあるんだけど、いままでやってきたものと全く違う曲にしたいという思い、でも王道でもありたいという思いがあって。そのなかから、まずギター・リフをひとつ考えて、konoreさんの弾くフレーズを考えて… って感じでひとつひとつ試していった曲。ちょっとアラビックなアレンジもあるし、ツェッペリン的16ビートが入るリフにしたい… とか。そういうのがすごく試験的に重ねていけて完成したんだ。でも、そういう断面はきっと言われないとわからないと思う。とにかく白紙状態から作ることを意識しているからね。それがなにより刺激的ということかな。
――音楽が完成されていくプロセスを自分たちでも楽しんでいきたい。
鈴木 : まさにそうだね。これから曲を増やしていって、ライヴをまたやって来年にはアルバムを出したいと思っているんだけど、なんたってkonoreさんとは今日でまだ4回目だったりするんで、これからどうなっていくか見当もつかないんだ。でもね、だからこそのこのバンド名なんだよ。Controversial Sparkって、論争のスパーク、火の粉、みたいな意味なんだけど、ぶつかりあって火の粉が飛ぶようなことが普通に行なわれるようなバンドでいたいね。
OTOTOYで配信中の各メンバーの作品をチェック!
Moonriders / moonriders LIVE at SHIBUYA KOKAIDO 1982.11.16 青空百景 for ototoy only(m4v ver.)
2011年にデビュー35周年を迎え、12月には無期限の活動休止期間に入った日本のキング・オブ・オルタナティブ・ロック・バンド、ムーンライダーズ。1975年の結成以降、常に時代を切り取り、新しいサウンドとテクノロジーを導入して先鋭的な作品を発表し続けてきた彼らが1982年11月16日に渋谷公会堂で行った『青空百景』のライヴ映像を、OTOTOYで独占配信。
>>特集ページはこちら
栗コーダーカルテットが2曲参加している、ローリングココナッツ主催のウクレレコンピレーション!!
2003年の『ウクレレ・ビートルズ』から2012年の『ウクレレ・キヨシロー』に至る、ウクレレ・カヴァー・シリーズの10周年記念としてリリースされたアルバム。ウクレレ専門フリー・マガジン『ローリングココナッツ』監修の下、ローリング・ストーンズの名曲を、実力派、個性派のアーティストたちがゆるく、やさしく、時に激しくウクレレでカヴァーした1枚です。
鈴木慶一とスペシャル対談を行ったアーティストの作品を紹介!!
清水靖晃+渋谷慶一郎 / FELT
2010年3月8日、東京芸術劇場中ホールで行なわれた2人のコンサートを収録した作品。清水靖晃、渋谷慶一郎それぞれの培ってきた音楽性をベースにしつつも、型にはまらない音の会話が花咲いていく。そんなコンサートの記憶がそのまま蘇る、会場の空気の震えを全て再現するようなライヴ・レコーディング音源。
>>特集ページはこちら>>新春ケイイチ対談2011! 鈴木慶一×渋谷慶一郎×蔡忠浩×永井聖一
豊田道倫、mmm、笹口騒音ハーモニカといったシンガー・ソングライターから、田我流やMOROHAといったヒップ・ホップの手法を持ったアーティストまで、ジャンルや世代にとらわれないアーティストをゲストに迎え、2011年1月から2012年12月まで毎月行われてきた、曽我部恵一主催によるイベント「下北沢コンサート」。その最終回となった2012年12月20日のライヴを録音し、10曲を激選、パッケージ化した作品。
>>特集ページはこちら>>新春ケイイチ鼎談 渋谷慶一郎×鈴木慶一×曽我部恵一
プロデュースはクラムボン自身。ゲストにはバービー・ボーイズのKONTAがソプラノ・サックスで参加。セルフ・カバー・アルバム『Re-clammbon 2』を経て生み出された強靭なクラムボン・サウンドに、フレッシュな1ページを書き加える名曲の誕生です。
PROFILE
Controversial Spark(コントロヴァーシャル・スパーク)
鈴木慶一(Gt.) / 近藤研二(Gt.) / 矢部浩志(Dr.) / 岩崎なおみ(Ba.) / konore(Vo、Gt.)
ムーンライダーズ活動休止後、鈴木慶一が結成した新バンド。メンバーは元カーネーションの矢部浩志、栗コーダーカルテット等で活躍中の近藤研二、幅広いミュージシャンのサポートもつとめ、現在The Uranusのメンバーとしても活動中のベースの岩崎なおみ、the roomsのkonore。WORLD HAPPINESS 2013で、ライヴ・デビュー。デビューe.p.も会場先行リリース。
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