
下北沢のライヴ・ハウス440にて、2年間毎月行われてきた曽我部恵一主催による「下北沢コンサート」。最終回となった2012年12月20日、この日曽我部恵一は、新旧34曲を三時間半にわたり丁寧に歌った。2012年の彼の弾き語りライヴの中でも白眉となった、この夜の録音から10曲を厳選、曽我部自身のシンプルであたたかいマスタリングにより、最高のライヴ盤が誕生しました。
曽我部恵一 / Night Concert
【販売価格】
mp3 単曲 150円 / アルバム 1,000円
wav 単曲 200円 / アルバム 1,500円
【TRACK LIST】
01. 枯れ葉 / 02. サマー・シンフォニー / 03. 朝日のあたる街 / 04. ギター / 05. our house / 06. 素敵じゃないか / 07. そして最後にはいつもの夜が来て / 08. 24時のブルース / 09. 東京 2006 冬 / 10. 東京
ライヴを追体験するためだけの録音物ではないライヴ・アルバム
豊田道倫、mmm、笹口騒音ハーモニカといったシンガー・ソングライターから、田我流やMOROHAといったヒップ・ホップの手法を持ったアーティストまで、ジャンルや世代にとらわれないアーティストをゲストに迎え、2011年1月から2012年12月まで毎月行われてきた、曽我部恵一主催によるイベント「下北沢コンサート」。その最終回となった2012年12月20日のライヴを録音し、10曲を激選、パッケージ化したのが、本作『Night Concert』である。

この日のライヴは3部構成にわけて行われた。曽我部恵一のソロ・ライヴ、曽我部恵一BAND、そして曽我部恵一のソロ・ライヴといった具合に。まさに曽我部づくしといった贅沢なライヴは3時間半に渡り、新旧含め34曲が演奏された。これだけの曲数を演奏し、なおかつ曽我部恵一BANDとしての出演もあるのであれば、もっと規模の大きなライヴ・ハウスで行ってもよかったに違いない。それでも、440という場所にこだわったのは、曽我部が「下北沢コンサート」をホームとして、2年間大切にしてきたことの証明でもある。そして、440という場所が彼にとって意味を持つ場所だということでもある。
440は、決して大きなハコではない。ライヴ・ハウスと言うよりも、むしろ、カフェにステージがついていると説明したほうがわかりやすいだろう。車道沿いの1階にあり、外からガラス越しに中をのぞくことだってできる。下北沢のライヴ・ハウスの中でも、かなりアットホームな場所である。ここで2年間毎月ライヴをやることで、曽我部は何を得たのだろうか。その答えは、いわずもがな『Night Concert』に収められている。
本作を聴いて感じることだろう。「これ、本当にライヴ盤?」と。そう思うくらい音が滑らかだ。決して、ライヴの雰囲気を“記録しました”といった趣きではない。誤解を恐れずに言えば、これはライヴ盤ではなく、曽我部恵一のオリジナル作品といっていい。決して、ライヴを追体験するためだけの録音物ではないのだ。それは、曽我部自身がマスタリングをしたということからもわかる。「440で、お客さんの前でライヴをする」。いまの曽我部恵一をリアルに浮かび上がらすために、440はもっとも適した場所だったに違いない。

本作には、1995年のサニーデイ・サービスのデビュー・アルバム『若者たち』から、曽我部恵一BANDの最新作『トーキョー・コーリング』まで、キャリアを幅広くカバーする選曲がなされている。また、本編の最後に収録されている「東京」には、盟友であるサニーデイ・サービスの田中貴がピアノで参加している。そういった意味でも、2012年あるいは2013年における曽我部恵一の総体が、ギュッと凝縮して収められている。以前、「自分にとって『いい歌』っていうのは、『自分に近しい歌』」とインタビューで語っていた曽我部。まさに本作は、それを環境から丸々体現した作品と言えるだろう。(text by 西澤裕郎)
曽我部恵一の他の作品もチェック
曽我部恵一 / PINK
制作には木暮晋也、グレートマエカワなど旧知のミュージシャンが参加、そしてマスタリングはNYの名匠Greg Calbiが担当し、これまでの音楽活動の中でも最も贅沢で芳醇な傑作となりました。この春、メロウでソウルフルな曽我部恵一の音楽に心を震わせて下さい。
曽我部恵一 / けいちゃん
「ここにはぼくの声とギター以外に何もありませんが、ぼくのすべてが詰まっていると感じています」という言葉通り、シンプルながら彼の魅力が存分に楽しめる、晩夏にぴったりの作品。
曽我部恵一 / Sings
ビートルズからマドンナ、果てはストゥージーズやオジーオズボーンまでもアコースティック且つメロウにカバーした珠玉の1枚です。曽我部が「自分の身の丈で歌ってみたかった」と語るように、とてもシンプルで素朴なサウンドで紡がれた今作。曽我部恵一というフィルターを通して滴る名作たちがその純度を増して、今、甦ります。
PROFILE
曽我部恵一
1971年8月26日生まれ。香川県出身。乙女座、AB型。1995年サニーデイ・サービスのボーカリスト / ギタリストとしてデビュー。2000年の解散までに残した7枚のアルバムは、1990年代の日本のロックを代表する作品として評価が高い。2001年よりソロとしての活動をスタート。ニューヨークの同時多発テロに影響を受けたデビュー曲「ギター」は、同年のクリスマス・シングルとして小西康陽主宰のインディー・レーベル「レディメイド・インターナショナルからリリースされた。2004年、メジャー・レコード会社から独立し、東京・下北沢に「ローズ・レコーズ」を設立。以後オリジナリティ溢れる自由なインディペンデント活動を展開する。活動の母体は2006年に結成された曽我部恵一BAND。このシンプルな4人組のロックンロール・バンドは小細工無しのストレートで熱いライヴを繰り返し、2008年にはアルバム『キラキラ!』を発表。広い層からの圧倒的支持を得る。アコースティック編成での曽我部恵一ランデヴーバンドや、様々なクリエーターとのコラボレーション、そして2008年に再結成を果たしたサニーデイ・サービスなど、創作活動はとどまることを知らない。全国各地からのオファーに応え日本中を飛び回り、そのライヴ本数は年間100を越える。小泉今日子、TOKIO、中村雅俊から豊田道倫まで様々なアーティストのプロデュース・ワークにも定評があり、なかでも鈴木慶一のソロ作『ヘイト船長とラヴ航海士』は、2008年度レコード大賞優秀アルバム賞を受賞した。執筆、CM・映画音楽制作、DJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢で生活する三児の父でもあり、カフェ兼レコード店CITY COUNTRY CITYのオーナーでもある。