【連載】Episode59 MAYU EMPiRE「幕張メッセは自分の中で特別な場所」
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WACKとavexの共同プロジェクト、EMPiRE。2021年1月4日には〈EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE〉を東京国際フォーラムホールAで開催、持ち曲全37曲に加え、新曲「ERROR」、始まりの曲「アカルイミライ」を2回、全39曲をノンストップで披露した。2021年4月からは全国7ヶ所12公演を回る全国ツアー〈EMPiRE ULTRA ViBES TOUR〉を開催。チケットは全公演完売。5月12日には初の両A面シングル『HON-NO / IZA!!』をリリースし、11月23日には幕張メッセイベントホールでのワンマン公演〈EMPiRE’S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW〉も決定したEMPiREに、2021年初の個別インタヴューを敢行。第6回は、MAYU EMPiREの声をお届けする。
INTERVIEW : MAYU EMPiRE
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グループ史上最大規模の幕張メッセイベントホールで初ワンマンライヴ〈EMPiRE’S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW〉を開催することを発表したEMPiRE。2017年のWACK合宿オーディションを経て、EMPiREのオーディションを受けて活動をはじめたMAYUは、当時観に行ったBiSHの幕張でのライヴを観て、いつか自分もこの舞台に立ちたいと思ったという。そんな彼女の夢が叶う1日が決まった今、どんなことを思うのか。2021年のEMPiREでの活動とともに、MAYUに話を訊いた。
取材&文 : 西澤裕郎
写真 : 外林健太
幕張メッセは自分の中で特別な場所
──幕張メッセイベントホールでの初ワンマン開催が発表されました。率直に、どんな心境ですか?
MAYU : 私がEMPiREに合格してレッスンが始まったばかりのとき、BiSHの幕張のライヴを観に行ったんです。まだ人前には出ていなかったけど、自分がEMPiREに入って最初に行ったライヴで。現実味を全然帯びていなかったんですけど、いつか私たちもこのステージに立てるのかなと、夢の世界のように思っていて。一昨年くらい、やっぱり幕張に立ちたいなと自分の中で思って本気で目指したいなと思ったんです。どの会場でライヴさせてもらうのもうれしいしワクワクするけど、幕張メッセは自分の中で特別な場所だから。やっとここまで来れたって気持ちと、ここを通過点にしてもっと上に行きたい気持ちで、すごく楽しみです。今開催している〈EMPiRE ULTRA ViBES TOUR〉もありがたいことに即完売だったので、来れなかった人にも見てもらえるチャンスだし、エージェント(※EMPiREファンの総称)と一緒に最高の時間を過ごしたいと思っています。
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──コロナ禍でライヴが充分にできない状況でも、EMPiREが着実にステップアップしてきたから立てるステージだと思います。とはいえ、お客さんをフルで会場に入れられなかったり、声を出せない状況の中で、ステップアップしている感覚は実感として掴めていますか?
MAYU : コロナ前はライヴが終わった後に特典会があったり、ライヴの声援で熱を感じられたけど、今は今でマスク越しでも目線とかで楽しんでくれているのが伝わってくるんです。声を出せない分、手を叩いてくれたり、振りを一緒に踊ってくれたりして、私たちと一緒に楽しもうとしてくれる。そうしたエージェントを見ると、それが答えでしかないなって。今できる状況の中で、みんなと一緒にライヴを作ってきている感覚はありますね。
──コロナ禍で、EMPiREがステップアップできた理由はどこにあると思いますか?
MAYU : 正解は分からないけど、ずっとエージェントのことを考えてやってきました。ライヴができないダメージって、すごく大きくて。表現をする場がないことで精神的に擦れていったり、つらい部分があったりしたんですけど、自分たちがどうこうっていうより、お客さんがライヴに来られない状況でどういう気持ちなのかな、どうしたらライヴをもっと楽しむことができるのかを考えながらやってきたから。そういうものの積み重ねなのかなって。それが伝わっていたらうれしいなと思っています。
──以前のMAYUさんは、他人の気持ちを考えすぎて疲れてしまうことが多かった気がします。最近は、抱えすぎずに付き合えるようになった?
MAYU : 良い意味で割り切れるようになったというか、人は人、自分は自分と考えられるようになりました。逆に、人のことを考えすぎると、なんで私はこんなにやっているのにって、被害者的思想になっちゃうんです。それを1回やめてみたら、いろいろな人への感謝に気づけて。その人たちに自分は何ができるかを、すごく考えられるようになったんです。
──MAYUさんは最もWACKを体現しているメンバーであると同時に、そこに取り憑かれていた部分もあったと思うんです。そこから解き放たれたというか開放されて、とてもいい表情やパフォーマンスができるようになった感じがします。
MAYU : 本当にその通りで。私自身、脳筋というか(笑)。分からなくなったらとりあえず走るとかしちゃいがちだった。そういう自分じゃないとダメみたいに思っていたときもあったんです。ライヴ前は、めっちゃ集中して全部を完璧にできると思えないとステージに上がっちゃダメだと思っていたけど、今の春ツアーは本当に楽しむ事以外何も考えてなくて(笑)。前日までの練習で確認をしっかりして、当日はただただライヴが楽しみなテンションでいる。何かを見せないといけないと気負いすぎず、私も心底楽しもうぐらいの気持ちでステージに上がれているのが体感としてよくて。ガチガチじゃなくていいんだって気づけた。いい感じに肩の力が抜けて、等身大の自分でステージに上がれるようになって、それがうまくできている裏付けになっているツアーだと思えています。
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──脳筋状態から解き放たれたきっかけは、なんだったんでしょうね。
MAYU : 生きていく上で、いつの間にか、がんじがらめになっている自分に気づいたときがあって。こうじゃなきゃいけない、こうしなきゃいけないとか自分に縛られているなと思ったんです。本当は嫌だなと思っていたとしても、自分の声を全力で潰していた。そんな自分に気づいて、自分は嫌だなと思っていることは別に悪いことじゃないんだなと思えるようになってきたんです。その辺りから、あまり無理しなくていいのかもと考えられるようになってきて。みんながのびのびできた方がEMPiREはいいなって。それは前から思っていたことなんですけど、真面目にやろうと考えこみすぎなくなったのかなと思います。
──グループとしてそう考えられるようになってきた要因として、ダンス・チューンが増えたことも影響があると思います?
MAYU : それもすごくあると思います。ダンス・ミュージックって、歌うのが難しいんですよ。感情を乗せて気持を伝える曲とはタイプが違うから、昔だったら実力がなくて歌えなかったと思うんです。通るべき道を通ってやってきた今だからこそ歌える。エモーショナルにやる曲って、見る方も受け止めてくれるからエモーショナルになるし、そういう曲も私は好きだし自分に合っていると思うけど、ダンス・ミュージックもEMPiREに合っているとすごく思う。見ている人も私たちも、どっちも楽しめてすごくいいなと思いますね。
デコボコな人たちが補い合ったりして思わぬ力が生まれるのがグループのよさ
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──3月19日には、東京・USEN STUDIO COASTでフリーイベント〈EMPiRE'S GREATEST PARTY〉(以下、〈EGP〉)を開催しました。クラブでパーティすることをコンセプトとした自主企画ですが、通常のワンマンとかWACKツアーのライヴとは違う感覚ですか。
MAYU : 違いますね。自分の人生において、パリピ、イエーイ! みたいな人種になれてこなかったけど、きっとこういう感じなんだろうなって気持ちが味わえるというか(笑)。ただただ楽しくて気持ちよくて。やりきったぞー! とかじゃないんですよね。楽しかったねー! みたいな(笑)。
──声色まで変わっちゃう(笑)。
MAYU : それくらいのテンションになるというか。〈EGP〉の後って、ただただ楽しかったねって感覚がすごく残るんです。
──「Buttocks beat! beat!」や「SO i YA」「EMPiRE is COMiNG」などを織り交ぜたメドレーや、ポーター・ロビンソン「Something Comforting」のダンスカバーがあったり、本当に自由な分、それを楽しめるというのは経験値や余裕がないとできないことだと思います。
MAYU : そうですよね。私のスタンスが変わったのか、「そのときの私、頑張れー!」ぐらいにしか思ってなくて(笑)。ミスっちゃダメだけど、ミスってもいいやぐらいの気持ちというか。ミスっても、そのときのバイヴスでカバーしようぜ! みたいな気持ちでやれるんです。
──普段の練習や経験があってこそ、自信が裏付けされて、できるんだと思います。3月21日からは1週間にわたりWACK合宿オーディションが開催されました。EMPiREからはYU-Kiさんが参加しましたが、どうご覧になられましたか。
MAYU : よくも悪くも、変わらないYU-Kiだなって(笑)。合宿で自分を覚醒させなきゃというより、そのままのYU-Kiのいいところを観てもらえれば好きになってくれる人が増えるだろうなと思っていたんです。たしかにポンコツだなと思うところもあったけど、やっぱり適材適所ってあるじゃないですか。もちろんオーディション合宿は変化を測られている場所だから、そういう目線で見られるのは仕方ないけど、歌もできて、ダンスもできて、人のことをまとめられる人格者だけが集まったグループがものすごくいいかって言われたら、別にそうじゃないなと思うし。グループのよさって、デコボコな人たちが補い合ったりして思わぬ力が生まれたり、お互いのいいところが出たりすることで。合宿を見てあらためて感じたから、YU-Kiの全部が愛おしいなと思いました(笑)。私は私のできることや長所を大事にして、できないところは他の人が補ってくれているんだと思えたし、みんなのこと大事にしようってすごく思いました。
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──MAYUさん自身、考え方が変わったのもあると思うんですけど、性格も変わったなって思うことはありますか?
MAYU : あります。頑張っていい子ちゃんをしていたのを辞めたみたいな。真面目だよねって言われていたけど、ちゃんとしなきゃなって気持ちもいい意味でなくなって。どんどん、取り繕っているものとか背負っているものを脱ぎ捨てて赤ちゃんみたいになっている。自分の価値観も広がったというか。なんでこの人こういうふうに思うんだろう……? と思っていたのも、まあそういう人もいるよなっていうふうに思えるようになりました。
──2017年のWACK合宿オーディションを受けに来たMAYUさんとは別人ですね(笑)。
MAYU : はははは! そうですね(笑)。
──あの頃は、考え込みすぎて切迫感に苛まれていたなと観ていて思いました。
MAYU : そうですね。でも、あのときの自分がいたからこその今だなって。
──若いのに成熟しすぎていたというか、考え込みすぎていましたもんね。
MAYU : そういう自分じゃなきゃ周りの人に相手にされないと思っていたんです。ちゃんとやらなきゃいけないし、どんどん先のことを考えなきゃと思っていた。今はそうじゃなくても、私は私のできることを背伸びしないで頑張れば誰か助けてくれるって人に委ねられるようになったんだと思います。
EMPiREは、みんなの力でできあがっているグループ
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──初の両A面シングル『HON-NO / IZA!!』がリリースされます。「HON-NO」は1年前くらいにレコーディングされていそうですが、このタイミングにリリースすることで曲に対する気持ちや想いに変化はありましたか。
MAYU : 『SUPER COOL EP』を録ったときに一緒に録っていたんですけど、いまのタイミングでリリースできてすごくよかったと思います。「HON-NO」って曲自体の攻撃力が高いので無敵感みたいなのが大事で。MVを観てもそうなんですけど、今の私たちが歌うことによって曲のよさがちゃんと伝えられるから、このタイミングでよかったなって思っています。
──最近のEMPiREは攻撃力の高い曲が増えてきましたよね。それとともに自分たちの気持ちも上がっていく感じはありますか。
MAYU : 特にシングルが攻撃力が高くてダイレクトに伝わる曲が多いと思っているんですけど、そういう曲を歌うと気分が上がるからすごく好きなんです。ライヴの中で、あんなにかっこつけられるのは私たちだけかなって思うから(笑)、自信を持ってやれるなって思います。
──WACK所属アーティストが出演する全国ツアー〈WACK TOUR2021 "TO BE CONTiNUED WACK TOUR"〉のツアーファイナルで大トリをEMPiREが務めました。MAYUさん的には大トリを務める自信も持てるようになってきたんじゃないですか?
MAYU : そうですね。大トリが来てもビビらなくなりました。え! 私たちトリなの!? やばくない? って感じではない。よっしゃ、やってやるか! 頑張ろう! って感じですね。そうならなきゃいけないなと思っているし、逆にそうじゃなかったときに期待されてないのかなと思っちゃうので。
──両A面の「IZA!!」は、初めての外部プロデューサーSeihoさんが務めた楽曲です。この曲はMAYUさんにとって、どんな楽曲ですか。
MAYU : 歩いているときに、すごく聴きたくなるんですよ。自然と体が動き出しちゃうみたいな。ダンス・ミュージックって聴き流しがちというか、音の気持ちよさを感じることが多いんですけど、歌詞を読んだら意外といいこと言っているなと感じてもらえると思うんです。松隈さんやSCRAMBLES以外の方に曲を書いてもらったのが初めてだったからドキドキしたけど、どっちのよさも感じられて、すごいいい両A面のシングルが出せたなって。どっちもEMPiREの強みを最新バージョンにしましたって感じで、それが両A面で出せたから嬉しいですね。
──レコーディングを一緒にしてみて、Seihoさんはどんな人でしたか?
MAYU : めちゃめちゃ深い話したわけじゃないんですけど、たぶん人よりも考えや経験が一周多く回っている感じがするというか。すごくおおらかな方でした。やさしいし、すごくおもしろい人で。最初に送られてきた音源を、久しぶりに振付師の先生に振り落とししてもらっていたんですけど、MV撮影前日にファイナルミックスが送られてきたら全然違うものになっていたんですよ(笑)。めっちゃおもしろい! と思いつつ、尺も変わっちゃっているから、振付も前日にスタジオに入って急遽変えたんです。
──ミックスのバランスとかだけじゃなくて、曲の長さまで変わっていたと(笑)。
MAYU : イントロの尺も、入っている音とかも全然違ったんですよ。最初のラフミックスはギターが鳴っていたのに、最終的にはほとんどなくなっていた(笑)。EMPiREにはどれがいいんだろうってすごく考えてくれてこうなったんだなと思ったら、すごくうれしくて。本当にたくさん引き出しがあって、すごいなって思いました。
──Seihoさんや映像監督の山田健人さんといった、トップクリエイターの方たちと作品を作っていくというのは、まさにEMPiREならではですよね。
MAYU : EMPiREで活動していてすごく思うんですけど、本当にみんなの力でできあがっているグループだなって。私たちがたまたま表に出ているだけで、みんなの才能が集まってEMPiREというグループを表現している。みんなに感謝という結論にいつも至ります。同時に、自分のできることを頑張ろうって強く思って。それぞれが最高のものを作っているから、今のEMPiREがまとまって表現できている。私たちは私たちのできることを全うして頑張りたいです。
「EMPiREはめっちゃかっこいいんだよ」って言えるようなグループでいたい
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──現在開催中の全国ツアー〈EMPiRE ULTRA ViBES TOUR〉の手応えはいかがですか?
MAYU : 自分の中でも、新しい感覚になるツアーになっています。今までのツアーと全然違う。今までは何がよくて悪かったって考えることがすごく多かったけど、正解は1つじゃないし、よさの種類がたくさんあると感じているんです。会場によって生まれる空気感やノリみたいなものが変わってきて。ここはノリがよくてよかったけど、ここは別の部分がすごくよかったみたいに、結果全部いいと思えるツアーになっていて。
──会場によっての雰囲気でライヴも変化していくわけですね。
MAYU : 〈ULTRA ViBES TOUR〉だから、その時々のバイヴスを大事にしていて。お客さんのバイヴスも上げていくし、自分たちのバイヴスも大事にしようって。決めごとをやるんじゃなくて、そのときの空気感で歌ってみたり踊ってみたりすることを自分の中で大事にしています。前は気持ちがぐわーってなっているときが調子いいと思っていたけど、どんな自分でもそのときでできるライヴを精一杯やれば、そのときのグルーヴが生まれるんだなと感じられて。そういう意味でも、いろいろ無理してやらなくなりました。
──Zepp Tokyoでのツアーファイナル、どんなライヴにしたいですか。
MAYU : このツアーで掴んだ、お客さんと私たちで生みだす、その日だけのグルーヴとかバイヴスを作れたらいいなと思っています。このライヴが正解だと思い込んでやるんじゃなくて、そのときに生まれた熱を大事にしたい。ライヴを本当に楽しんで、みんなそれぞれ生活に戻っていけるようなライヴにできたらと思っています。
──最後に、幕張メッセイベントホールでの初ワンマンライヴに向けてどんな活動をしていきたいですか?
MAYU : たくさんの人に知ってもらわないと幕張は埋まらないと思うんです。なので、もっと外に向けて発信できるグループになりたいと思っています。まだ知らない人たちの目に引っかかっても、恥ずかしくないようなグループで常にいたい。それとともに、今好きでいてくれる人にも胸を張って「EMPiREはめっちゃかっこいいんだよ」って言えるようなグループでいたい。常に全力で、でも縛られず楽しんで、いろいろなことに挑戦していきたいと思っています。
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LIVE INFORMATION
〈EMPiRE'S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW〉
2021年11月23日(火・祝)@幕張メッセイベントホール
時間 : OPEN 16:00 / START 17:00
PROFILE
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