GANG OF FOUR / CONTENT
2004年に再結成を果たした彼らが、1995年の『シュリンクラップト』以来15年ぶりとなる新作を完成させた。全く衰えを感じさせないアンディ・ギルの凶暴でソリッドなギターに加え、ドライブ感溢れるリズム・ワークが絡まり合い、全編に渡り骨太で緊張感に満ちたサウンドを展開している。
ファイル形式 : mp3 / wav
価格 / mp3 1500円 / wav 2000円
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あらゆる既成概念を否定し続ける
言うまでもないことだけれど、現在30歳以下の若い音楽リスナーはGANG OF FOURの音楽をリアル・タイムで経験していない。1977年に英国で結成されたのだから、当然といえば当然なのだけど、バンド名は意外と多くの人が知っているのではないだろうか。というのも、2000年代半ばにニュー・ウェイヴ・リバイバルが起こり、例えばブロック・パーティーやフランツ・フェルディナンドなどを語る際などに、かなりの確立で彼らの名前が取りただされた。また、2004年にはオリジナル・メンバーで再結成し、世界各地でライヴ・ツアーを行ったこともあって、音を聴いたことがなくとも名前くらいは目にしたことがあるだろう。
そんな彼らが15年振りのオリジナル・アルバム『CONTENT』を発表した。輸入盤は今年1月に発売されているので、すでに耳にしたリスナーは多いことと思う。アンディ・ギルのソリッドなギター・カッティングは健在で、新しく入れ替わったリズム隊の2人(トーマス・マックニース(b)、マーク・ヒーニー(ds))も堅実なプレイをしている。その鋭いギターの切れ味は、鋭い批評精神を表しているようでもある。これまで彼らは政治意識を持った歌詞を歌ってきており、それは形を変えて今作の根底にも引き継がれている。鋭いギターに対してリズムはわりとシンプルだけれど、どこか無機的なサウンドも彼ららしい。
もはや伝説として身を引いていてもおかしくないのに、再結成しただけにとどまらず、メンバーを変えてさえオリジナル・アルバムを発表したということからも、パンクが起こった時代を経験し、その精神を今も持っているバンドだということが伝わってくる。彼らの音楽はポスト・パンクという言葉で括られることが多い。今では音楽ジャンルの1つとして使われることが多いポスト・パンクだけれど、GANG OF FOURに関していえば、言葉どおりパンクの次にくる音楽としての形容が当てはまっている。根底にあるのは、あらゆる既成概念を否定するという姿勢だったり、新しい価値感を受け入れる柔軟性などであって、その姿勢は30年以上たった今でも変わらない。
今作を作るにあたって、彼らはPledgeMusicというウェブ・サイトを通して、ファンから制作資金を投資してもらっている。また、豪華付録つきのボックス・セットも発売された。なんと、そこにはメンバーの薄められた血液が少量入っていた。音楽を作って一方的に発信するだけでなく、リスナーとの両通行を通して自分たちの音楽をプロデュースしていく。その姿勢はベテランと思えないくらい頭が柔らかく、身軽である。そもそも『CONTENT』というタイトルからは、内容が大切だというような意味を想像させられるのに、パッケージや見せ方にもこだわるという、正反対とも言える行動にも相当力を入れており、自虐的なタイトルとも皮肉とも思えるように作られているのがおもしろい。しかし、それこそ、あらゆる既成概念に縛られないという彼らの変わらぬ姿勢なのである。
同時代の若いバンドにも決してひけを取らないサウンドと歌詞、そして全体を通して挑戦的で柔軟な姿勢は、やっぱり若手には真似できない貫禄と鋭さがあって、敬意を表するに値するバンドであることに違いはない。30年経っても尖ったバンドであることを、この作品は静かに力強く語っている。(text by 西澤裕郎)
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