INTERVIEW : きさ、あっこ(HAPPY BIRTHDAY)
人が成長していく姿を見ることは、とても楽しい。HAPPY BIRTHDAYの2人に出会って、その喜びを身をもって教わり続けている。会うたびに違う顔を見せてくれるかと思えば、思いがけないことをやってのけたりもする。その瞬間瞬間で学んだことを咀嚼して新しい道を作っていく姿は、とても頼もしい。だけど、その裏には多くの苦悩やつらい思いがあることも事実だ。それを乗り越え続けてきているのは、彼女たちが作った道を一緒に走ってくれるリスナーやファンの存在だ。
HAPPY BIRTHDAYのライヴにいくと、女の子の多さに驚かされる。そして、ライヴ中に涙を流している女の子たちの素直さにも胸をうたれる。HAPPY BIRTHDAYという存在は、多くの女の子たちにとって大きなものなのだろう。そうした支持の大本にあるのは、きさとあっこが、自分たちの想いや創作意欲にまっすぐに向かいあっている姿勢に違いない。このたび、その姿と成長を記録しておきたいと強く願い、2人への取材をお願いさせてもらった。いまからでも遅くない。一緒にその姿に目を向けてみてほしい。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
インディーズ時代の1stアルバムを配信中
HAPPY BIRTHDAY / デートにいけない日曜日
【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム 1,600円
【Track List】
01. 初恋 / 02. デリケイトゾーン / 03. 君は灰色あたしはオセロ
04. PMS / 05. 秘密のじかん / 06. ポーラはなにもわからない
07. K / 08. つまらない先輩は白いズボンを履いている
「伝えたい」ってことに気づいてからは本当に自信をもってやれています
――アルバム『今夜きみが怖い夢を見ませんように』のリリース、東京大阪でのワンマン・ライヴ、レギュラーUstream番組「秘密のじかん」など、HAPPY BIRTHDAYが活動する様子を見させていただいていて、2人がどんどん成長しているのが目に見えて伝わってきます。いまはアルバムを基軸にしてライヴなどの活動をしている時期ですが、アルバムに対する反響はどうですか。
きさ : もっと聴いてほしいです。もっともっと、広く伝わるべき作品だと思ってます。
――リリースから次の作品までの間って、作品を伝えていく重要な期間ですよね。情報量の多い世の中だから、自分たちから発信していかないと周りが気づいてもらえなかったり、広がっていかない部分ってある思うんですよ。どうしても、いいものを作っていれば、自然とリスナーが気づいてくれるだろうって考えちゃいがちなんですけど。
あっこ : そんなに甘くないですよね。いいものをやっている自信はあるんだけど、どうしたらそれを伝えられるんだろうってことを試行錯誤してきました。渋谷QUATTROでのワンマン、新宿シアターモリエールでのワンマンを経て、昨日(7月16日)の下北沢GARDENのライヴのDVDを観たらめっちゃよくて。毎回「あそこがだめだ!」っていう部分があるんですけど、昨日は「めっちゃいい!」って思えて。
――持ち時間が40分くらいだったけど、エネルギーが集約した爆発力のあるライヴでしたね。音楽を伝えていくにはどうすればいいのか? っていう試行錯誤から、いまの寸劇スタイルのライヴも生まれてきたんですか?
あっこ : そうですね。最初は「ミュージシャンなのにこんなことやってる」っていう葛藤もあったし、ストイックに音楽だけやってるミュージシャンに対しての後ろめたさもありました。でもお客さんに伝えたいっていうのが一番の気持ちだから、気にしなくていいやって思えるようになって。演出の部分もめっちゃ練習するし、すごく気合を入れてるんですよ。その分演奏に対してのプレッシャーも上がるし。だって、これで演奏がダメだったら、「なんだこのバンド」ってなっちゃうじゃないですか。「伝えたい」、それだけだってことに気づいてからは、本当に自信をもってやれていますね。
――逆にいうと、それまではあまり曲が伝わっている感触がなかった?
きさ : そうですね、私もMCが苦手だったから、ほとんどしゃべらなかったし、しゃべったとしても悲しいMCだったりして、お客さんが笑える場所が一か所もなかったんです。あっこが自分を発揮したことで、私も楽しくできるようになったし。
あっこ : そこできいちゃんの、メソメソな部分が生きるんですよ。こういう(私みたいな)賑やかしがあると。
――いまのスタイルになるまでは、あっこさんもいまのようなテンションの高いキャラクターではなかったんですか?
あっこ : 大人しい少女でした。「パワフルでかっこいい!」とかしか言われてなかった。あ、白目むいてるとは言われてたけど(笑)。
――あははは。前取材したときに、ステージを転がりまわってたって言っていましたよね。
きさ : それは結成前ですね。ライヴの本数が増えてきて、自分のテンションもわかるようになってきたんだろうけど、それまではライヴも本当に暗かったんです。
あっこ : 私の場合は、大人がいる環境で音楽をやることにすごく萎縮してたし、自分に自信がなかったんです。でもドラムをウワーっとやりたいっていうのがあって、いっぱいいっぱいで葛藤しながらライヴをしてました。
――2人だけでやってるときは好きにできると思うんですけど、事務所の方やレーベルの方とチームを組む以上は、そのチームでアイデアややり方を練って完成させるわけですからね。
きさ : 結成したばかりのときは、ステージから降りるのが普通だと思っていたし、床を転がってもいい、なにをやってもいいと思ってたんです。でも、注意をされたりして、「やっちゃいけないことが多すぎる」って自由にできなくなってしまって。こんなことやりたいんじゃない、もっとワーッとやりたいのに!! って思ってたんです。でも、それって「ダメって言われてるからそうしなきゃいけない」って人のせいにしてたんですよね。いま思うと、段階として必要だったと思えるけど。
ーー段階っていうのは?
きさ : ちゃんと音楽を伝えるために、ステージ上でちゃんと歌を歌うことは当たり前なのに、それすらもわかっていなかったんです。それで、大げさに受け取りすぎて、「ちゃんとやんなきゃ」ってなってしまって。その解放できていない感じがお客さんにも伝わってたんですよね。お客さんのことも考えていないし、自分たちもいっぱいいっぱいで。楽しくいろいろやれるようになってからは、前はダメだって言われてたことでも、スタッフの人が「いいじゃん」って言ってくれて。それは、私たちがお客さんに対して伝えようって気持ちを持てたからだと思うんですよね。
いまはポップスが作りたいなって思って考えてます
――そういう気持ちとか想いの段階を経てきたからこそ、いまがあるんですね。曲作りの部分でも変化はありますか?
きさ : そうですね。昔の作り方はひどかったと思います。
――どういうふうに違うんですか?
きさ : 昔はやさしくなかったですね、多分。
――誰に対して?
きさ : 聴く人。そういうのがいいっていう場合もあるとは思うんですけど、それが全部だったと思うんです。いまはあんまり、そういう曲の作りかたはやりたくないって思っていますね。
――具体的に、曲作りは昔とどう違うんですか?
きさ : 昔は曲に対して雑に扱ってたっていうか。いまは、曲に対しての愛情が全然違う。パッと浮かんだメロディにパッて歌詞つけてって感じだったんですけど、いまはポップスが作りたいなって思って考えてます。
――あっこさんは、曲づくりに関しても、もっと参加していこうと気持ちに変化はありますか。
あっこ : 前までは、音源をつくるのにあたっても、「曲の邪魔をしてはいけない」とか、「私は下手だから」と思って無難なことをやろうとしたり、一緒に曲を作ってる感じはまったくなくて。自信がなかったんですよね。自分は下手で最悪って思っていたんです。でも、バンドだからこその自由が私はすごい好きだし、それを次は出したいと思っていて、いま緊張してるところです。
――あっこさんも自信がなかったんですね。
あっこ : 自分が大っ嫌いで自信がないんです。嘘だと思うでしょ(笑)?
ーーいえいえ(笑)。
あっこ : 大人の世界に行ったら「みんなボーカルしか見ないし、ドラマーとしての個性なんて一ミリも求められてないし」って自分を縛り付けてたんですよ。一回下手って言われるとずっとそれについて考えちゃって、ライヴ前のリハの音出しでも、「こんな下手な私が叩きたくない~イヤだ~!」って思ってたんですよ。だからドラムも解放できてなくてつまんなかったんです。… そんな私も、弱い自分と戦って一生懸命生きております(笑)。
きさ : なに、そのまとめ(笑)!
あっこ : なんか、うまくなれば自信がつくとかっていうことでもないと思ったんです。でも、終わりがないっていうか、気持ち次第だなって。うまいから、売れるから自信がつくとかってことではなくて、ただ「イエイ!」だなっていうことが分かってきて。
――文字にすると伝わりづらい!! けどわかります(笑)!! それはライヴで曲がお客さんに伝わっている手ごたえがあったからなんですか。
あっこ : そうですね。
きさ : 「秘密のじかん」にしても、ライヴにしても、おもしろいことをやっているから、CDを買ったひとが「あれ? 普段はあんな感じだけどちょっと音源のイメージ違うな」ってならないようにしたいんです。音源を聴いたイメージと、Ustream、ライヴ、PV、アー写のイメージが全部ひとつに繋がるようになったらもっと伝わりやすくなるかなと思って。音源にも「イエイ」を入れていこうと。そっちのほうがわかりやすいしおもしろいし。
HAPPY BIRTHDAYは寸劇をやるバンドっていうわけではなく自由でいいと思う
――そこがHAPPY BIRTHDAYのいちばん核になってくる部分ですよね。曲に対して誠実だってところに、お客さんもついてきているんだと思いますよ。特に最近のライヴには、女の子のお客さんが多いじゃないですか。若い女の子のお客さんがたくさんいることはどういう気持ちですか。
きさ : すっごく嬉しいです。ライヴハウスに来たことのないような中学生の子とかも来てくれるので。それってすごいことだなと思って。
あっこ : 女の子2人でやってたら、おじさんとかがいっぱいファンについてもおかしくないと思うんですよ。「なんであんまりつかないの? 」って。アハハハ!
――そこ(笑)?
きさ : 本当に! おかしいレベルでいないですからね。
あっこ : HAPPY BIRTHDAYのファンでライヴハウスに行き慣れてない子たちってみんなすごくいい子なんです! ネクストステージの話なんですけど、お客さんを教育したいなってちょっと思う。私たちも解放できるようになってきてるから、「もっとみんなも解放していいんだよ」っていうのを教えたい。
きさ : そういう空気ができたらいいよね。
――お客さんが解放されるっていうのは、みんなで盛り上がるということ?
きさ : 自由にしていいよっていうか。
あっこ : 例えば、「イエイ!」って言ったら、「イエイ!」って返ってくるみたいな。この間EGO-WRAPPIN’の野音を観に行ったんですけど、「イエーイ!」って言ったら「オウイエーイ!!」って感じなんですよ。「あ、この感じいいな」と思って。
きさ : 教育するって言っても、みんなで盛り上がるノリを教えるとかって意味ではなくて、「自由に観ていいんだよ」って。初めてライヴに来て、すごく気を遣ってると思うんですよ。「たのしいけど、体を揺らしてもいいのかな?」って。まだ開けていないお客さんもいると思うから、「いいんだよ、出して!」っていう空気を作ってあげられたら、もっとたのしくお客さんが観られるようになるかな。もちろん、盛り上がっていても、動かない人がいてもいいと思うし。
――伝えるっていう意味だと、この夏はいくつかフェスへの出演も控えてますよね。そこで、より多くの人たちがHAPPY BIRTHDAYを知ることになるんじゃないかなって思います。
きさ : そうですね。JOIN ALIVE2013では、ギターに田渕ひさ子さんとベースに345さんがサポートで出演してくれるんですよ。1年半前に一緒にやってたことはあるんですけど、またできることになって。
あっこ : 超最高で、本当に最高なんですよ!! なんかもう、エネルギーがうごめいてる感じ。あの感覚はすっごい覚えてて、ほんとにビリビリくるんです。一緒に演奏できることもすっごい楽しみだし、小ネタも混ぜつつね。(※JOIN ALIVE2013は7月28日に開催終了)
――2人も小ネタをやるんですね(笑)。この夏は、ライヴとフェスを中心に駆け抜けていく感じになりそうですね。
きさ : そうですね。あとは曲をいっぱい作る夏にしたいですね。
――次のワンマンについての構想は出てきていますか?
きさ : 8月の下北沢CLUB QUEでのワンマンは、劇はほとんどなしでやろうと思ってるんですよ。演奏がメインで、いつもとはちょっと違うライヴになるようにしようって。そういうライヴは久しぶりなので、みんな来たほうがいいと思います!!
あっこ : あと「こっちのほうがおもしろいよね」みたいな感じで、どんどん壊していきたいですね。新キャラを登場させたい(笑)。で、12月のワンマンはもっと開放的な場にしたいです。グレーのTシャツが汗まみれになるような。
――いまのスタイルが完成形というわけではなく、そのときに一番いい方法や面白い方法を探して変えていくんですね。
あっこ : そうですね。HAPPY BIRTHDAYイコールライブで寸劇をやるバンドっていうわけではなくて、自由でいいと思うんですよ。曲を伝えるやりかたをいろいろやってみたいですね!!
LIVE INFORMATION
ムーンプリズムパワー☆メイクラブ~今夜きみの涙が汗でごまかせますように~
2013年8月26日(月)@下北沢Club Que
開場 / 開演 : 18:30 / 19:00
料金(税込) : 前売り¥3,500-タオル付(ドリンク代別途)
※今回はチケットにタオル付き。
※HAPPY BIRTHDAYのTシャツを着てきた人、みつあみをしてきてくれた方、受付であっこの好きなところを言った方には、可愛いもの"をプレゼント!
HAPPY BIRTHDAYからのプレゼント企画!
7月8月生まれの方を抽選で5名様を無料で招待します!
オフィシャルサイト特設サイトにて7月16日からご応募出来ます。
http://www.happybirthday1988.net/
※チケットを購入されている方は当日チケット代をキャッシュバック致します。
※締め切りは8月4日になります。
http://eplus.jp/hb-hp/
HAPPY BIRTHDAY 大感謝祭2013
2013年12月3日(火)@SHIBUYA O-EAST
2013年12月7日(土)@BIG CAT
※詳細は後日発表になります。
PROFILE
HAPPY BIRTHDAY
きさ(作詞 作曲 歌 ギター担当)
1988年6月22日生まれ 東京都出身
あっこ(ドラム担当)
1988年6月30日生まれ 東京都出身
2007年4月、美容専門学校の入学式で運命の出会い。9月、あっこ小説家になるために専門中退。2008年8月、きさ音楽と恋愛に狂い専門中退。2009年、お互いに別々にバンド活動をする。2010年2月、新宿の270円均一居酒屋にてHAPPY BIRTHDAY結成。4月、お互いのバンドが解散。6月、飴玉音楽室に改名。すぐにHAPPY BIRTHDAYに戻す。11月、インディーズより1st album『デートに行けない日曜日』をリリース。
>>HAPPY BIRTHDAY official website