【BELLRING少女ハート】芸術作品的3rdアルバムは如何にして産み出されたのか? 製作陣インタヴュー掲載

どこまで追いかけても聴き手の期待をするりとかわし、想像以上の作品を作り続けてきたBELLRING少女ハートが、またもや最高傑作を作り上げた。約1年ぶりとなる3rdアルバム『BEYOND』は、前作『UNDO THE UNION』の延長とも対極ともいえる誰も真似できない超大作である。アイドル? ジャンル? そんなこと言ってる場合じゃない。これは誰も真似できない超一級の芸術作品だ。OTOTOYでは本作をハイレゾで配信、ディレクターの田中紘治、エンジニアの慎秀範へのロング・インタヴューで作品の背景に迫った。こんな作品、人生で出会うことは何度もない!! 絶対に聴いて、読んでください!!
超待望の3rdアルバムを絶賛ハイレゾ配信中
BELLRING少女ハート / BEYOND(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 2,500円
【Track List】
1. ヴァント!
2. ホーネット'98
3. 憂鬱のグロリア
4. The Victim
5. Cold Flavor
6. Manic Panic
7. すなっちゃん・なっぽー
8. いんざれいん、いんざだあく
9. Cherry
10. BEYOND
11. Mr. メルシー
12. チャッピー
13. ROOM 24-7
14. 或いはドライブミュージック
15. asthma
16. ぼくらは生きてる
17. いんざれいん、いんざだあく(朝倉みずほ ver.)
18. いんざれいん、いんざだあく(宇佐美萌 ver.)
19. いんざれいん、いんざだあく(柳沢あやの ver.)
20. いんざれいん、いんざだあく(カイ ver.)
21. いんざれいん、いんざだあく(甘楽 ver.)
22. いんざれいん、いんざだあく(仮眠玲菜 ver.)
※まとめ購入のお客さまには「いんざれいん、いんざだあく」の各メンバー、ソロ・パート音源が特典としてつきます。
INTERVIEW : 田中紘治 × 慎秀範
BELLRING少女ハートの3rdアルバム『BEYOND』を聴いて、アイドルを追いかける気力が吹き飛ばされてしまった。アイドルというフォーマットを使い、どこまでも妥協なく突き詰めた結果広がっていたのは、アイドルという存在を通り越した未開の地だった。これは、音楽という言葉だけでは説明できない、まさに芸術作品。ともなれば、ディレクターの田中紘治は、もはや芸術家といえよう。そんな田中が描くベルハーという存在には、拭いさることのできない哀しみが通底している。人生において消えない痛みを背負いながら、無邪気なふりをして笑い続ける。メンバーは真摯に、全力で、刹那に、歌い、踊り続ける。その姿はどこまでも美しい。人生のなかで、ほんの一瞬だけでも心からの感動を覚えたなら幸せなんじゃないだろうか。そんな震えを感じさせるアルバムについて田中とエンジニアの慎秀範に話を訊いた。
取材 & 文 : 西澤裕郎

「the Edge of Goodbye」を塗り替えるような曲が必要な時期だった
ーー『BEYOND』を聴いて、アイドルへの興味がなくなってしまうくらい突き抜けた作品だと感じ圧倒されました。特に「asthma」は、信じられないくらいほどの多幸感に溢れたアンセム曲ですけれど、一体どうやって生まれたんですか?
田中紘治(以下、田中) : 最初は「ヘイ・ジュード」みたいな合唱のある曲を作ろうと思って、作曲のタニヤマ(ヒロアキ)さんと打ち合わせしたんです。「悪魔を憐れむ歌」みたいな土っぽいラテン・パーカッションとか、いろいろ詰め込んで持ち帰ってもらって、こういう曲が返ってきました。〈夏の魔物〉のヘッドライナーが決まっていたので、「the Edge of Goodbye」を塗り替えるような曲が必要な時期だったんです。ベルハーがこういう曲を出すと拒否反応を示すお客さんもいるかもしれないって話もあったんですけど、それをアリにしていこう、そのためには、ものすごい説得力がトラックに必要だってことになり、慎さんの紹介でドラムの三星(章紘)さんに来てもらうことになって。
慎秀範(以下、慎) : そもそも、スケジュールが本当にひどかったんですよ(笑)。公開レコーディングの2週間前に田中さんが鹿鳴館をおさえたんですけど、曲の形も何もなくて(笑)。そこからタニヤマさんが慌てて曲を書いていったんですけど、公開レコーディングの1週間くらい前に作家陣飲み会でその話をしたら、誰も何も知らなくて。慌てて田中さんに電話したらやっぱり「決まってない」っていうんで、今から手配しますっていって三星さんにお願いして(笑)。
ーー(笑)。
田中 : ドラムはブレずに一定のリズムと強さで叩き続けられて、無闇におかずを入れないのが条件だったんですけど、紹介していただいた三星さんは最高でした。マシンのように、でも力強く巧みに! みたいな。そんで鹿鳴館のステージで三星さんが卵型のシェイカーをひたすら振っているのを、みんなで黙って観ているっていう(笑)。録った音を鹿鳴館のサウンド・システムでプレイバックできたのは、すごい贅沢でしたね。
慎 : 最終的に、宇田(隆志)さんのピアノのイントロで聞き手を引き込むフレーズを出してくれて。ピアニストとして弾けない運指があったんですけど、それがいいってことで、最後に田中さんが一音だけ押しにいって(笑)。普通、楽器を弾く人だと、運指でいけない音は除外しちゃうんですけど、思い描いたものをなんとか形にしてしまうっていうのは、さすがに田中さんのことよくわかっているなって。
ーー合唱パートも公開レコーディングで、オタのみなさんと収録したんですよね。
田中 : オタクに箱代を払ってもらおうと思って有料の公開レコーディングでした。メンバーもいないのにたくさん来てくれてアホだなって。「asthma」に感動した人はこのオタクたちに感謝してもいい。最初はちゃんと合唱を録っていたんですけど、テンション上げるために途中で禁止していたおもしろいの(リフト、モッシュ、Mixなど)を全部OKにしたら、普通に合唱を録っているのにリフトとかになってて。
慎 : ステージ上にメンバーはいないんですけどね(笑)。

ーーあはははは。「asthma」は、「the Edge of Goodbye」や「rainy dance」のようなストレートなロック曲、そして「Revelry!!!」のような多幸感の先にある楽曲だと思うのですが、田中さんとしてもアンセムを作った手応えはあります?
田中 : 多分、3本の指に入るくらいの狙い通りにいった曲ですね。もしかしたら狙い以上だったかもしれない。こういう曲がほしいっていう気持ちは『BedHead』を作っている時期からあったんですよ。でも当時やっていたら失敗していた気がするな。魔物ヘッドライナーが決まって、絶対にここでいかないと!! というベストなタイミングだったし、タニヤマさん以外じゃ作れなかったと思います。
レーベル クリムゾン印刷 発売日 2013/06/24
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※ 曲番をクリックすると試聴できます。
最後にアルバム自体を壊して終わるみたいなチープなことをしてみたくて
ーーアルバム最終曲「ぼくらは生きてる」も公開レコーディングした楽曲ですよね。浦安にあるIce Cream Studioで、物を壊した音をレコーディングするイベントとして行いました。壊す音を録ることには、どんな狙いがあったんですか。
田中 : ガシャガシャやって、そのテンションでレコーディングしてみたらどんな感じになるかっていうのと、物が壊れる音を最後の曲に入れたかったから。この曲は、ビッグバンドでもあり、ディズニーっぽくもあり、ベルハーっぽくもあり、最後にアルバム自体を壊して終わるみたいなチープなことをしてみたくて。それ以外の意味はないですね。インダストリアルな曲を作るとか、そういうことではない。
慎 : 破壊音を使おうとすると、どうしてもインダストリアルな音になっちゃうからね。

田中 : 実際、オタちゃんがもってきたプレステとか別れた恋人からのプレゼントをリアルで壊したので、音としてすごくしょぼいんですよね。かといって、迫力のあるそれっぽい破壊音が録れちゃうと、市販の効果音集でも使ったようになっちゃうから。パリッ、カチャッ、クチャッみたいな感じの音は、すごくしょぼくて気に入ってますね。
ーー同日深夜に歌どりをした際、田中さんのディレクションを初めて見たんですけど、メンバーに求めるものがかなりはっきりしていましたよね。
田中 : あのときは、むしろディレクションをしないっていうか、いましがた与えられた歌詞カードを見ながら、たどたどしく歌っていましたよね。とはいえ、このアルバムのなかで、事前に歌詞が出来ていてスタジオ入りしている曲は1曲もないんですよ(笑)。僕が歌詞を書いているものに関しては。当日朝9時にスタジオに入って、歌詞ができるのは14時みたいな感じで。

慎 : メンバーは時間通りに来るんですけど、歌詞ができるのを待っている間に、どんどんメンバーが溜まっていくっていう(笑)。
田中 : もともと直前にならないと(歌詞が)降りてこないダメな人間なんですけど、ケアが必要なメンバーとのやり取りも重なるとなかなか進まないですよね。ただ、メンバーが落ち込んだり焦ったりしているのを見ていると、いろいろインプットされるというか。その目いいね~、虚無だね~、それでは聴いてください。「或いはドライブミュージック」みたいな。
ーー(笑)。僕がベルハーの音楽が好きな理由ははっきりしていて、根底に哀しみがあるところなんですよね。それって田中さんが背負っている哀しみだと思うんですよ。「ぼくらは生きてる」の〈通り過ぎた駅〉っていう歌詞を、これまでに別れてきた女たちのことだってメンバーに説明していたじゃないですか。
田中 : (笑)。基本的に歌詞に嘘は書いてないし、自分に実感のない言葉は使っていないです。例外として松隈さん(SCRAMBLES)に作っていただいた「UNDO」(『UNDO THE UNION』収録曲)は、みんなこういう歌詞好きでしょ? みたいに書き始めて、徐々に自分の言葉に寄せて仕上げましたけど。あ、これ言っておかないと怒られちゃうな。「ぼくらは生きてる」の〈♪ぼくらは生きてる~、毎日がしあわせ~〉という歌い出しは、あやのとカイが考えたのを採用しました。
田中さんのディレクションは一言でした。「可愛さ以外は求めない」と(笑)
ーー今回は、ミュージシャンの方もいろいろクレジットされていますよね。
田中 : NATURE DANGER GANGの福山タクさんが「Mr. メルシー」でサックスで入ってもらっていて、10テイクくらい録りました。もっとエロくとか、◯◯◯◯◯っぽくとか、もっと下品にって感じで(笑)。
ーーとにかく卑猥にすることだけを求めていた(笑)。
田中 : そう、ちょっと上品だね~、もっと下品にしてくれみたいな感じで。あと、「すなっちゃん・なっぽー」はアルバムが仕上がる数週間くらい前に録りました。
慎 : 作業も残すところ、あと1/3くらいですかねってなったときに、そういえばキース・ジャレットの「んーー」って言っているのがおもしろいよねって話になって。すごく流麗なピアノなのにノイズが入っているっていうのがおもしろいと。
田中 : 去年の夏くらいに、客の咳払いでキースが演奏で途中でやめて帰ったっていう久々の話題を聞いて、これはベルハーでやらなきゃ!! っていうのがずっとあったんですよ。それをレコーディングの途中で思い出して。制作中に今回のアルバムが真面目過ぎる気がしたので、ひどいことをしないとダメだと思って、キースをやろうと思ったんです。でもピアノは本格的じゃないとダメだと思っていて、佐山雅弘さんっていう、僕が1番好きなピアニストに頼みたかったんです。実は昔、小さいバーでのライヴを少しお手伝いしたり、客としても遊びにいったりしてて。そんな話をしていたら偶然、息子の佐山こうたさんと慎さんが知り合いで。YouTubeで曲を聞いたら、お父さんとはまた別の変態!だ! と思って(笑)、ぜひお願いしますということになり。ベースは中林薫平さん、ドラムは今泉総之輔さん、そのトリオでやっていただきました。「JAZZなめんじゃねえ」って雰囲気はまったくなく、今時のアイドルはすごいことするんですねー! って、むしろ乗り気でレコーディングしていただけて嬉しかったです。
ーーキャッチーなメロディ部分は完成していて、JAZZパートのブランクは残しておき、即興演奏してもらったわけですね。
田中 : メロは僕が書いて、タニヤマさんが基本のアレンジ。間奏に1分半くらいのフリー・ジャズ・パートを空白で空けていました。リリースが遅れて2月中旬予定になったので、「すみません、ちょっと「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を一節入れてみてください」とか(笑)。あと佐山さんが暴走ぎみで(笑)。レコーディングが一期一会な感じでおもしろかった。
慎 : そう。アルバムで使っているテイクは、失敗といっていいのかわからないんですけど、佐山さんがカウントを完全に忘れているんですよ(笑)。どこにいっているかわからなくなっている。
田中 : ちょっとモヤっとして走り出す感じがトランスしてて最高で。今日はこれ以上のテイクはないはずだって話して、潔く3テイクで終わったんですよね。
慎 : (笑)。
田中 : あとはライヴでしか披露しない別バージョンもあって。それは●●●が●●●の●●●で●●を●●●●っちゃう●●●●●(笑)。そろそろライヴでお披露目するかも。
慎 : ●●●●なんか●●うものなら、すぐ●っちゃう(笑)。
一同 : (笑)。
田中 : そこから●●を●●た●●●が●●しはじめる●●●●●っていうのもあるんですけどね(笑)。
ーー遊んでますね(笑)。ヴォーカルはどんな指示を出したんですか。
田中 : 最近「ポスト●●」みたいな歌い方のアイドルさんが多いから、それを真似している感じです。
慎 : 田中さんのディレクションは一言でした。「可愛さ以外は求めない」と(笑)。
ーーあははは。
田中 : アニメっぽいキャッチーな歌い方をベルハーでもしてみようと思って、ひたすらカワイくって言いました。なので、いつも通り歌おうとするとNGにして、不思議ちゃん設定とか語尾をクリンってしゃくってもらったりしていって。
慎 : みずほの「んーーー」の部分は、キースの映像をちょっとだけ見せて「さあ、やってみよう!!」って感じで録りました(笑)。
田中 : キースのニュアンスが伝わりづらければ、バカ殿の「あいーん」をやってもらって(笑)。あとは、佐山雅弘さんの演奏にも気持ちよさそうに声が「ふんふん」入っているんですよ。活字にしにくいんですけど、それを試しにやってもらったりして、最終的にあのテイクを選びました。
これだけバラバラだと音量の調整を放棄している部分もありますから(笑)
ーー前作『UNDO THE UNION』あたりから、ダンス・トラックというか、エレクトロっぽい音を導入した曲も増えましたよね。この理由はどういうところにあるんでしょう。
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田中 : 好きだからっていうのが1番なんですけど、やってみたら意外とベルハーから外れてないなと思って。あとは、ライヴのためっていうのが大きいですね。1回しっかりお客さんの体を揺らさせたあとに、ばーんと爆発するなり、ストンと落とす流れになっている。やっぱり体が揺れるっていうのは大事なんですよね。曲自体のインパクトだけでなく、反復性のあるリズムで体を揺らせるっていうことが。
ーー1曲目はジャーマン・テクノ「ヴァント!」で始まりますが、その直後の2曲目「ホーネット'98」はモノラル音質ですよね。
田中 : モノラルのほうが曲調にあっているんじゃないかって宇田さんから電話で相談があって、モノラル・バージョンとステレオ・バージョンを両方聞かせてもらったんですよ。ステレオだと音に広がりがあるんですけど、モノラルにしたら昔聞いた曲をリアルタイムに聞いている感じがしたので、決めました。
慎 : 今回はマスタリングが大変でしたね。これだけバラバラだと音量の調整を放棄している部分もありますから(笑)。おっきくなったり、ちっちゃくなったりしているけど、ある程度ストーリーになっていればそれでいいやって。
田中 : ヴォーカルのバランスもそうですよね。ヴォーカルをひっこめた曲のあとに、ヴォーカルが前に出ている曲があったり、ミックスさんの違いだったりする部分もあるんですけど、そこは流れに任せています。狙ったかのようにしているところもありますけど。あと、モノラルといえば「ROOM 24-7」は前半もモノラルです。最初はラジオのチューナーを合わせているような音がなっていて、途中でステレオになったら、曲の世界観が広がるかなと思って試してもらったりして。慎さんはいつも、ありえないタイミングの思いつきを、ありえないタイミングで作業してくれているんですよ。
慎 : 『13 WEEKS LATER EP』のとき、それが1番出ていて、「鉄の街」は大変でした(笑)。
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田中 : もともとタイトなリズム・トラックが入っているんですけど、実際にドラムを叩いている人がいる想定にしてみて。曲がダラっと終わるので、バンド自体もダラっと終わろうと。って言っても打ち込みなんですけど(笑)。最後のほう、散漫になってきて、適当にドラム叩く感じにしてくださいって言って、やる気ないってことはここでスネアがなくなるとか、そういうところまで関与してもらっているので、慎さんはアレンジにも参加してもらってますよね。
慎 : それこそ「或いはドライヴミュージック」は、マスタリングの日にもうひと奥行きがほしいなと思って、リズム・トラックをまるっと差し替えたんです。プチプチしたエレクトロニックのハットの音があって、これいいじゃんってなって。田中さんがとにかくハットを細かく切りたいということなのでプチプチした音にして。
田中 : 連続させるとチキチキチキチキって、パルスっぽいなと思ってたら〈送電線から飛び立つ鳥のように〉って歌詞を思い出して。チキチキっていうのが電線のショートみたいな音に聞こえるし、ついでにカラスがばたばた飛び立つ羽音を作ってくれって、マスタリングの日にお願いしたんですよ。
ーーえ、マスタリングの日に!?
慎 : (笑)。あの音は、ソフト・サンプラーを使って鳴らしているんですけど、それを連続してクリックして鳴らしていくっていう、すごくアナログな録り方をしているんです。
田中 : でもあれがあったから「或いはドライヴミュージック」に奥行きができたなって思いますね。
僕の思い通りに作り過ぎるとアルバムが失敗する
ーー「ROOM 24-7」は『13 WEEKS LATER EP』の流れを汲んだような楽曲ですね。
田中 : これは、久しぶりにタニヤマさんをノイローゼに追い込んだ曲で(笑)。僕のリクエストが一番綺麗に形になった曲かもしれない。インダストリアルな部分とか演出とか、思いつくのは簡単だけど仕上げる工程は困難だったと思いますが、DEMOの段階で完璧過ぎて感動しました。今年、これ以上の邦楽はないだろう、って。メロディは完全にお任せだったんですけど、タニヤマさんがメロディ・メイカーとしてもすごく優秀だってことがわかる曲です。
ーー前作も今作も、外部の方に楽曲を発注していますよね。それこそ、前作ではBiSやBiSHのサウンド・プロデューサー、松隈ケンタさんの楽曲もありますけど、それがわからないくらい馴染んでいるのがすごいなと思って。
田中 : 松隈さんのときはすごかったですよ。半分ギャグですけど、小節ごとに全部指示書を書いているんです。
慎 : なんとかごうちじゃないですか(笑)!?
田中 : (笑)。イントロが何小節で、BPMはいくつで、トラヴィスっぽいギターをイントロに入れて、Aメロは女子高生が好きな感じで… とか、くだらない指示まですごく細かく出したんですよ。それを見て渡辺(淳之介)さんが笑っていたんですけど、松隈さんがすごいのは、指示書の通りに作ってくれているんですよ。ここはケチャになるけど、アフリカンなパーカッションを入れてほしいとか。松隈さんもすごく真摯でおもしろい方で、じゃあやってみようってまず意図を汲んでくれるんですよね。指示書通り作ると、どうしてもこうなっちゃうよって変な仕上がりになるか、指示書通りは無理なのでこうしました、って言われるか、どっちかだと思ったんですけど、その通りに作りながら、ものすごい整合性とかっこよさで返ってきて、さすがだなと思いました。松隈さんは、依頼者の意図を捻じ曲げないのがプロや、っていう信念があるんですね。
ーー今作に収録されている「The Victim」と「チャッピー」は、どれくらいリクエストを投げたんでしょう。
田中 : 「The Victim」はふわっと、“アンダーワールドみたいな感じ”くらいの(笑)。でも基本的にはお任せしました。minus(-)の藤井(麻輝)さんの作るストイックなサウンドが大好きなので、いちファンとして楽しみにデモを待ちました。minus(-)さんとは2度のツーマン・ライヴがあったし、どんなふうにベルハーに切り込んでもらえるかな、と。そしたら、ぐっと抑制の効いた、溜めの中にアゲのある僕好みのダンス・ミュージックが届いて、めちゃくちゃ嬉しかったですね。お客さんにはステージそっちのけで踊ってよ、って思いますけどね。後藤まりこさんへは、キャッチーなんだけど切なさのあるリフと、間奏の凶悪なギターとか、そんなリクエストをしました。とは言っても後藤さんのセンスが好きだし、後藤さんのいまの気持ちで作ってほしいです、とは伝えてて。そしたら、ここは可愛くてちょっと毒がある感じですよね? って、一つ一つのニュアンスを電話やメールで大切に聞き返したり汲み取ったりしていただけて、感激しまして。
慎 : 破滅的ですごくいいギターですよね。
田中 : ギターは後藤さんです。後藤さんのデモの段階でほぼほぼ今の構成ができていて、A×S×Eさんにバトンタッチしてから、アレンジをグッと引き立たせるような魔法がかかっていった印象です。ベルハーとしては「夏のアッチェレランド」以来にできたアイドルらしいポップスですけど、むしろ真逆かもしれない。女の子の感性でソリッドなことをしていると思って。岡崎京子さんの描く暴力性を思い出すし。キュンとするのに、なんか痛みが残りますよね。

ーーあと、「Manic Panic」はベースがすごく強調された曲ですが、アルバム全体の構成はどういう流れで考えていたんでしょう。
田中 : 前半はノリやすくして高めて、中盤以降のヘンテコな展開に進む感じですかね。ノセちゃえばこっちのもんだっていうか。
ーー「Cherry」「BEYOND」は、60年代のイギリス色の強い楽曲ですが、やはりUKというのはベルハーに欠かせない要素なんでしょうか。
田中 : 半裸でビーチを歩いてヘーイってハイタッチするような陽気さじゃなくて、ロック・スターに憧れてるけど今日は曇り、明日は雨、政治は糞だ、みたいな。UKロックって、どこかしみったれていて、そういうものが残るようにしていますね。福井シンリさんとも、UKっぽさとはなんぞや? をすごく話したり。このドラム、このBメロはイギリスじゃないです、このリフは超イギリス! みたいな感じで(笑)。でもエラー感も大事だったりして。僕の思い通りに作り過ぎるとアルバムが失敗するし。
慎 : 極東の地で、そんなやりとりがされているとは(笑)。
本当に近いうちにベルハーが一歩進んだって感じてもらえると思う
ーーメンバーの歌についてはどう捉えているんでしょう。普通、これだけ場数を踏めば、普通の歌い方に矯正されていってもおかしくないんですけど、ベルハー節みたいなものが強固に存在していますよね。
田中 : ライヴでは指示を出ししますけど、レコーディングはとりあえず1回メンバーに歌ってもらって判断しています。その歌い方がなしだったら、リクエストして歌ってもらうって感じですね。タニヤマさんの曲は彼がディレクションしているので、うまくなるんですよね。でも、僕の曲と三富(栄治)さんの曲でまたダメになる(笑)。
慎 : ひとえに、タイム感もあると思うんですよね。スタジオに来て初めて歌う曲を聴きました、それじゃあ歌ってみようっていう感じなので。
田中 : タニヤマさんの作詞だと事前に練習して挑めるんですけど、僕はスタジオに着いてから歌詞が仕上がるので。「BEYOND」はスタジオに向かうタクシーで書き始めて2時間半とか(笑)。「asthma」もそうで、ここにきて書きました。「すなっちゃん・なっぽー」とかは、最初に歌詞の世界観ができていたんですけど、前日にタニヤマさんから送られてきたラフ・デモの2バージョン目にカナカナカナ… って、ひぐらしが入っていて。これ夏の終わりだったのか!? 俺冬で書いているけど!! ってなって、書き直しました(笑)。あと、不機嫌そうなメンバーの顔を見て書き換えることも多いです。
慎 : ぶっちゃけ、ライヴでめちゃめちゃ歌っているので、スタミナはすごくあるんですよ。例えて言えば、エンジンだけすごくデカくなっていて、ハンドルは木なんです。そういう木っぽいところを残してあげないといけないなって。
ーー事前に歌いこむより、直前に歌うくらいのほうが田中さんの求めているものが産まれるってことですか?
田中 : 結果論ちゃ結果論なんですけど、そうなんですよね。ライヴのセトリも、考えていても直前で変えちゃうんですよ。当日、メンバーの顔を見て、今日はどうしたら1番いいかなって、感覚で決めています。
慎 : 当日まで何をやるのかわからない。毎日がインプロみたいな感じですよね。
ーーそう。よくいえば、田中さんはすべてがインプロ的なんですよね。700人キャパのハコを押さえているのに、前日まで対バンが決まらなくて、急遽ワンマンになったり(笑)。
田中 : (笑)。さすがにZepp Tokyoを経たので、状況は変わってきているとは思うんですけど、去年は本当に対バンが決まらなかったですね。ベルハーさんはちょっと… っていう空気もひしひし感じて。

ーーあはははは。それにしても告知とかが直前なのに、よくオタのみなさんがあれだけ集まりますよね。
田中 : 僕はテレビ番組のディレクターをやっていたので、プロモーションの重要性はわかっていて。ただ、僕の能力とスタッフの人数だと運営仕事が止まってしまうので、映像制作は一旦忘れて今はユニットの条件反射を鍛えるときだと。媒体に見つかってもパッと喜んだあとに何事もなく落ちてしまわないように。過去にも大きなチャンスで、僕がメンバーを動かしきれず失敗しているので、いまでもめちゃくちゃ悔しいんですよ。見つかってからが長い勝負なのに、その前に最大の敗北がきてしまって。同じ機会があったとき、いまのメンバーならどう動けるかすごい考えてます。
慎 : だからこそ、この即興性は強いと思うんですよ。僕は、自分が関わった仕事のライヴは全部観にいっているんですけど、ベルハーは別格ですね。
田中 : テレビとか大きいメディアにのったときの爆発力はやっぱり違うので。でも本当に近いうちにベルハーが一歩進んだって感じてもらえると思う。進んだというか、踏み外してたルートに戻るというか。すぐ直近で。
ーーまるで、ベルハーは甲子園を目指す高校野球選手みたいですよね。厳しい練習、試合をして成長していくっていうか。
田中 : あ、でもね、そんな感じですよ。よく言うのが、野球の素振りの話なんですけど。ちゃんとストレートなのか、カーブなのか、外角低めなのか、高めなのかみたいなところまで、シュミレーションしているから素振りの意味が出るんだ。だから聞いてるふりやめろ、ライヴを想像しろって言ってるんだけど、野球の例えのせいで1ミリも伝わってない(笑)。
ーーあははは。2月1日には宇佐美萌の卒業もあり、いまは5人体制ですが、新メンバーも募集中ですよね。ベルハーの勢いは衰えないと考えてもよいですか?
田中 : もちろんメンバーが変われば、お客さんの思い入れも変わっちゃうから、そのときそのときでお客さんが減ったりすることもあると思うんですけど、変化があっても、ベルハーはベルハー。それはいまの(制作を含む)体制が裏付けていると思っていて。あとは出るとこに出れば、曲でもライヴでも楽しませることができると思っています。それを保つのが、いまの日課ですね。そう、日課って感じだな。
BELLRING少女ハートの過去作もハイレゾ配信中
BELLRING少女ハート、新境地を開く2ndアルバムをハイレゾ配信中
BELLRING少女ハート / UNDO THE UNION(24bit/48kHz)
【配信形態】FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz) 単曲 150円 / まとめ価格 1,800円
【Track List】
1. Starlight Sorrow / 2. プリティ・シャロウ / 3. クロノスの鎌 / 4. rainy dance / 5. Orange Slumbers / 6. kUMA GOQLI / 7. c.a.n.d.y. / 8. get rid of the Chopper / 9. 月の真下でオオカミさんに尋ねました。 / 10. ヒバリの空 / 11. プラスチック21g / 12. 男の子、女の子 / 13. Karma / 14. タンジェリン細胞 / 15. Crimson Horizon / 16. UNDO / 17. Revelry!!!
BELLRING少女ハート、衝撃の1stアルバムをハイレゾ配信中
BELLRING少女ハート / BedHead
【配信形態】FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz) 単曲 150円 / まとめ 2,000円
【Track List】
1. World World World / 2. the Edge of Goodbye / 3. D.S.P ~だいすぴッ~ / 4. ボクらのWednesday / 5. Shout!!! / 6. ライスとチューニング / 7. 夏のアッチェレランド / 8. Pleasure ~秘密の言葉~ / 9. サーカス&恋愛相談 / 10. yOUらり / 11. BedHead / 12. ダーリン / 13. アイスクリーム / 14. Teck Teck Walk / 15. WIDE MIND
>>田中紘治(BELLRING少女ハート ディレクター)へのインタビューはこちら
ベルハーによる架空のサントラ・ミニ・アルバムを絶賛ハイレゾ配信中
BELLRING少女ハート / 13 WEEKS LATER EP(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 200円 / まとめ価格 1,000円
【Track List】
1. タナトスとマスカレード
2. 無罪:Honeymoon
3. GIGABITE
4. 雛鳥エスカレーション
5. low tide
6. 鉄の街
ハイレゾについてはこちらから
リキッドルームでのワンマン・ライヴをOTOTOY独占ハイレゾ配信
BELLRING少女ハート / LIVE at 黒い羽集金ツアー・東京公演(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 2,000円
【Track List】
1. タンジェリン細胞 / 2. 夏のアッチェレランド / 3. World World World / 4. c.a.n.d.y. / 5. ヒバリの空 / 6. クロノスの鎌 / 7. yOUらり / 8. Crimson Horizon / 9. get rid of the Chopper / 10. プラスチック21g / 11. D.S.P. / 12. ボクらのWednesday / 13. 月の真下でオオカミさんに尋ねました。 / 14. REVERLY!!! / 15. Tech Tech Walk / 16. 男の子、女の子 / 17. ダーリン / 18. アイスクリーム / 19. サーカス&恋愛相談 / 20. the Edge of Goodbye / 21. プリティ・シャロウ / 22. Orange Slumbers / 23. rainy dance / 24. WIDE MIND / 25. UNDO / 26. kUMA GOQLI / 27. Karma / 28. Starlight Sorrow / 29. bedhead
※まとめ購入のお客さまには、「黒い羽集金ツアー」最終公演のオープニング映像が特典でつきます。
BELLRING少女ハートのライヴを知らないなんて人生の半分損してるぜ
BELLRING少女ハート / LIVE at お腹が痛い! vol.4
【配信形態】
DSD 5.6MHz+mp3 ver. まとめ購入のみ 1,200円
HQD(24bit/48kHz)ver. 単曲 150円 / まとめ 800円
【Track List】
1. yOUらり / 2. World World World / 3. アイスクリーム / 4. ライスとチューニング / 5. ボクらのWednesday / 6. the Edge of Goodbye
※ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)ototoy.jpまでお問い合わせください。
※DSD 5.6MHz+mp3 ver.には、楽曲のDSFファイルとDPPファイル、全曲のmp3トラックが同梱されております。
>>DSDの聞き方はこちら
※5.6MHz DSDの音源は、ご使用の再生環境によっては再生できない可能性もありますので、ご購入の前にご確認ください。
※DSD DISCでお聴きになる場合は、DSD(2.8MHz)にダウン・コンバートしてご使用ください。
ベルハー史上最大のキラーチューン、そして最大の問題曲をハイレゾ配信
BELLRING少女ハート / EPEP EP(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 500円
【Track List】
1. rainy dance
2. 男の子、女の子
3. rainy dance(instrumental)
4. 男の子、女の子(instrumental)
朝倉みずほ(BELLRING少女ハート)とちーぼう(ゆるめるモ!)からなる2人組ユニットのデビュー作をハイレゾ配信
Escalator or Elevator / Entrance EP(24bit/48kHz)
【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 500円
【Track List】
1. The People's Choice
2. 恋と車とデモクラシー
3. The People's Choice(Instrumental)
4. 恋と車とデモクラシー(Instrumental)
2014年初シングルをOTOTOYハイレゾ配信
BELLRING少女ハート / Killer Killer EP(24bit/48kHz)
【配信形態】 HQD(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 450円
【Track List】
1. Crimson Horizon
2. プラスチック21g
3. kUMA GOQLI
2013年末にリリースされたシングルをハイレゾで
BELLRING少女ハート / Untouchable EP
【配信形態】 HQD(24bit/48kHz)
【配信価格】 単曲 150円 / まとめ価格 500円
【収録曲】
1. 月の真下でオオカミさんに尋ねました。
2. c.a.n.d.y.
3. ライスとチューニング 懺悔MIX (TAICHI MASTER feat.HELクライム)
4. 月の真下でオオカミさんに尋ねました。(off vocal)
5. c.a.n.d.y.(off vocal)
『Untouchable EP』より「c.a.n.d.y.」のMV『Untouchable EP』より「c.a.n.d.y.」のMV
LIVE SCHEDULE
ワンマン・ライヴ〈BELLRING少女ハートZ〉
2016年2月27日(土)@Zepp Sapporo
時間 : 開場 16:00 / 開演 17:00
料金 : 前売 3,500円 / 当日 4,000円(1D別)
一般プレイガイド販売中
http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050001P002181089P0030001P0006
ワンマン・ライヴ〈Great Nap〉
2016年3月5日(土)@Speed King
時間 : 開場 16:00 / 開演 17:00
料金 : 前売 3,000円 / 当日 3,500円(1D別)
一般プレイガイド販売 2月6日10:00〜
三部作ワンマン・ライヴ・第二弾〈B〉
2016年4月30日(土)@TOKYO DOME CITY HALL
時間 : 開場 17:00 開演 18:00
PROFILE
BELLRING少女ハート
通称“ベルハー”。
サイケデリックからブチ上げロックまで! 変幻自在のアイドルユニット!! 2012年4月に活動開始。 2013年リリースの1stアルバム『BedHead』が数々の媒体で絶賛される。 ハイクオリティな楽曲と、ゆるくも激しいステージングで話題沸騰人気急上昇! 一度見たら二度見して、三回目には必ずハマる中毒性で斬り込み中!