illiomote──全てをハッピーに昇華する、コンセプチュアルな宅録ポップ
数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、 これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 読んで、聴いて、そして何か感じるものがあれば、できるならライヴを観にいってほしい。損はさせません。 そんな絶対の確信とともにお届けする、第11回。
第11回 : illiomote
2020年注目すべきユニットilliomote。 彼女らの魅力はインディ・ロックからエレクトロニック・ミュージック、ドリーム・ポップまで多彩なサウンドをラフに融合させていくそのスタイルだ。そのナチュラルにジャンルを横断する音楽性はLil Soft Tennisらと共通する次世代のアーティストの鍵であるとも言える。
ラフにジャンルを横断する音楽性と掲げられた「ハッピーポップ」とは裏腹に、環境問題や存在意義、イメージの押し付けなど、現代において無視できないようなシリアスな問題をテーマにするふたりが、それでも「ハッピーポップ」と名乗るのは何故なのだろうか。
音楽活動を始めた高校時代から遡り、今の音楽性やシリアスな態度が生まれるに至った経緯を辿るインタビューとなっている。
INTERVIEW : YOCO(Gt/Vo)、MAIYA(Gt/Sampl)
──おふたりの出会いから結成までの流れを教えてください
YOCO:物心ついた時には気づいたら一緒にいたって感じです。ふたりで音楽を始めたのは高校の軽音部で、4人でバンドを組んでいたんですけど他のふたりは進路でやめてしまって。そのあとはこのふたりでアコースティックで作る期間を経ていまの形に落ち着きました。
──高校ではどういう活動をしていましたか
MAIYA:最初はコピーをやっていたんですが、2年生の時からオリジナル・ソングを作ってコンテストに出始めました。そのときはあんまり意識してなかったんですけど、今考えるとWarpaintをめっちゃオールドにして、カントリー要素も入れたような感じのインディ・ロックをやっていたと思います。
──アコースティックで作っていた時はどういう音楽をやってたんですか
YOCO:かなりゆったりした、カントリー・ポップのアコースティック・ライヴみたいな形だったかなあ。
MAIYA:オリジナル曲もそのときは5曲くらいしか作ってなかったですね。
──そこから今のスタイルに移行したのはいつ頃?
MAIYA:去年くらいにパソコンを買って打ち込みを始めてからこのスタイルでやっています。自分の中にあったドラムとベースのイメージを再現するために始めた感じです。
──おふたりでの印象的な音楽体験はありますか?
YOCO:高校生の頃、作曲の仕方やアレンジのパターンを勉強するために、MAIYAちゃんのお父さんがいる群馬で合宿を行う事が結構あったんです。普段はメンバーの4人で行ってたんだけど、ふたりだけで行ったときがあって。そのときにみた地元のラッパーのフリースタイル・ラップに感動して、ふたりで泣きながら観たのが印象的に残ってるかな。私はそれが初めて言葉の力というものを感じた瞬間でした。ライヴで生の言葉の強さを目の前にして、私も生のライヴで熱気とか思いを肌で伝えられたらいいなと思いました。
MAIYA:あったね!私はその時ラップのリリックが刺さって泣いてました、言葉の力を感じたよね。 あとは積み重ねの部分が大きいと思います。私たちがいた軽音楽部はもともとなんの成績もないようなところだったけど、本気で取り組んでコンテストにも出てたし、それを後押ししてくれる先生もいて。その時の経験がなかったら音楽をやらずに普通に生きていたと思う。
──お父さんはなにをやられてる方だったんですか?
MAIYA:お父さんはもともとレゲエのギタリストでジャパニーズ・レゲエのPJバンドにいたり、アレンジでわりとメジャーなアーティストと一緒にやっていたりする人だったんです。高校の時は月一でお父さんのところで一緒に音楽やるみたいな感じでした。音楽に関してはお父さんが先生でしたね。何にしても、illiomoteは良い経験をしてきているし、周りに恵まれていて運がいいなと思います。
──共通して好きなアーティストはいますか?
MAIYA:アーティストというより、曲単体でおすすめしあってる感じですね。ジャンルはかなりバラバラ。
YOCO:あまり「ずっとこれが好き」って人はいないですね。ふたりで一緒にライヴ行くことはありますけど、メジャーどころだとMaroon5とかJohn Mayerとか、でも本当にいろいろです。
MAIYA:私は高校二年くらいの時に初めてThe 1975を聴いて衝撃を受けて、それは今でもずっと聴いています。曲にも影響が出てるんじゃないかな。
──YOCOさんの歌い方は何かしらのアーティストに影響を受けたものですか?
YOCO:ノラ・ジョーンズは好きで、影響受けているかもしれないです。あとはチェット・ベイカーのフェイクが好きで、甘いけどそれだけじゃない深みのあるボーカルがいいなと思います。
──最近自分の中で流行ってるアーティストとかシーンとかありますか?
MAIYA:私はA. G. Cookが主宰している〈PC Music〉のアーティストとか、その周辺にいる人たちが最近好きで聴いています。100 gecsにはめっちゃ来日してほしいなと思っています。あとここ1年くらいはClairoとかbeabadoobeeとかのインディポップも聴いていますね。
──国内だと?
YOCO:国内が全然わからないんですけど、どんぐりずはふたり共好きです。
MAIYA:最近お客さんに教えてもらって聴いたLil Soft Tennisくんには衝撃を受けました。バンドやってたっていうのもあって、うちらと合うんじゃないかなと思います。サウンドの持っていき方もちかいし、好きな音楽も似てるんじゃないかな。
──Lil Soft Tennisのインタビューで、Roy BlairやDominic Fikeのような、ラフさを損なわないままジャンルにこだわらない音楽をやりたいというようなことを話しているのを読んだのですが、illiomoteにもそこは通じる部分がありそうですね
MAIYA:それはめっちゃわかる、Dominic Fikeも大好きです。聴いている音楽が近いと思考回路も近い気がするし、会ってみたいな。
──今回リリースされた『SLEEP ASLEEP...。』はまさに一曲ごとにジャンルの違うサウンドが鳴らされてますよね
MAIYA:本当にジャンルは気にしてないので、だからかもしれないです。好きなジャンルは?とか訊かれたら分からないからとりあえずインディポップですかね、とはいうけど……この日に作りたいジャンルを作るみたいな感じ。
──アルバムの曲を作成している間に触れた、音楽以外でも印象的に残ってる作品ってありますか?
MAIYA:“What is??"を作っているときは自分の存在意義についてよく考えていた時期で、『ソフィーの世界」っていう哲学の話を読みました。あとは“Blue Die Young”は青い地球をイメージして作った曲なんですけど、最近改めて環境問題についてよく考えていて、それはグレタ・トゥーンべリからの影響だったと思う。YOCOにも「グレタ・トゥーンべリから影響受けたから、そういう歌詞書いてね」ってお願いしたし。
YOCO:そうだったね、そこに紐づけて地球の青さ豊かさと自分たちの青さ未熟さについての歌詞を書きました。“Blue Die Young”に関してはトラックがすごく好きで、もらったときはテンション上がりました。MAIYAちゃんにしか作れないトラックの雰囲気がよく出てる曲だと思います。
MAIYA:“summer night”はYOCOが仲良くしてた方が亡くなった時に書いた曲だよね。
YOCO:そう、でも意外と冷静に書いた歌詞ではあるかな。“TELEDISCO”は今までにないスピードと熱で作詞ができました、本当に十数秒とか。
──それはどういう思いで書き切れたんでしょう
YOCO:いつも曲のテーマはふたりで話し合うんですけど、“TELEDISCO”は「飾らない自分でいること、不当なことからは逃げてもいいんだ」というテーマに決まって、それが最近引っかかっていることでもあったのですごく響いてたんですよね。こうあるべきだ、って強要されることが多い世界にいると思うんです。「君こうしたほうがいいよ」とか「こっちのほうが可愛いのに」とか、そんな風に言われるのはおかしいなと感じます。
MAIYA:誰かに押し付けられるもんね、女の人だってだけで押し付けられることは多いと思う。
YOCO:多いよね、男の人にもあるとは思うんですけど、自分は押し付けられている感覚を強く感じていて。なんでこんな仕打ちを受けないといけないんだろう、これは逃げてもいいよね?という気持ちでワッと書きました。
MAIYA:そういう思いもあって、全く媚びてない作品だと思います。
──「ハッピーポップ」とはいってもそういう切実な面があることは“What is??”のMVを見て特に気づかされました
MAIYA:全曲でそう感じて欲しいなと思っています。一見ハッピーポップだけど、歌詞とかインタビューを踏まえて聴いた時にただのハッピーじゃないんだって気づいてもらえたら嬉しいです。
YOCO:妄想して、深読みしてほしいね。
──全部を踏まえた上でハッピーに消化したい?
YOCO:したいですね。内に秘めているネガティヴなエネルギーもポジティヴなエネルギーも人生を肉付けする要素なので、ハッピーは全部をひっくるめた自分のすべてだと思います。
MAIYA:ウチらも幸せになりたいし、世界もハッピーになってほしいっていう願いもあるかもしれない。悲しみありきでハッピーでありたいと今は思います、ハッピーなのやってらんなくない?って時も来るのかもしれないけど。
──近々の目標はありますか?
MAIYA:今はライヴができないから、曲をたくさん作りたいです。あと、前々から色んなアーティストの方たちとコラボしたいなと思っていたので、色々取り組んでいきたいですね。
YOCO:そう、曲はいっぱい作りたいですね。
──今後活動していくに当たってここだけは譲れないなというところはありますか?
YOCO:媚びたくない。
MAIYA:媚びたくないね本当に、ずっと好きにやってたい。illiomoteのラフさは好きにやれるところから出ていると思うので、ここは譲れないです。あと若い女の子ってだけでファッションでやってるとか、曲作ってないんじゃないかとかいう見方をされるのは避けたいですね。
YOCO:私は自分のパンク精神みたいなものは絶やさずに行こうと思います。平和ではありたいけど反発するときはしっかり反発したいし、これから先も自分の思いをぶつけていきたい。そうなると、いつかどこかの思想と戦わないといけない時が来るかもしれないですよね。そういうときのためにも尖った部分は削れないです。
MUSIC VIDEO
PROFILE
illiomote
幼馴染であったYOCO(Vo,Gt)とMAIYA(Gt,Sampl)のふたりによる池袋出身のハイパーパフォーマンスユニット、illiomote。
2019年3月に、突如としてyoutubeに投 稿された「In your 徒然」がロックからポップス、ルーツミュージックまで混ぜ合わせたNEOな楽曲センスとふたりのHAPPYなバイブスが投影されたビ デオで話題となり、楽曲発売前にも関わらず「POPEYE」や「BRUTUS」などの雑誌、FASHIONSNAP.COM、spincoasterなどのWEBメディアでピック アップされるなど、早耳リスナーの間で注目が集まっていた。その後2019年年末にリリースされた配信シングル「Sundayyyy/BLUE DIE YOUNG」 はspotifyにて数々の公式プレイリストに選出されるなど謎の多い彼女たちを更に話題とさせた。今作は話題の起源となった「In your 徒然」の初音源 化に加え、配信でも好評の「Sundayyyy」などを収録した全6曲のEPとなっている。2月には初の自主イベントの開催。
2020年は彼女達が台風の目となる!
HP : https://illiomote.amebaownd.com/pages/3573426/discography
Twitter : https://twitter.com/nekonootiri?s=20
Instagram : https://www.instagram.com/illiomote
Release Info
new EP
『SLEEP ASLEEP...。』
2020/4/8 リリース
1. What is??
2. In your徒然
3. TELEDISCO
4. Sundayyyy
5. BLUE DIE YOUNG
6. summer night