Sisters In The Velvet──揺らぎを鳴らすオルタナティヴの魂
数多いるアーティストのなかからOTOTOY編集部がグッときた、プッシュしたいアーティストを取り上げるこのコーナー。第16回はSisters In The Velvet。活動期間半年にして下北沢周辺のライヴハウスで名を馳せ、「出れんの!?スパソニ!?2020」の最終選考に選ばれるバンドは一体何者なのか? 初インタヴューでお送りします。
第16回 : Sisters In The Velvet
下北沢周辺のライヴハウスでSisters In The Velvetの名前をよく目にするようになったのは3月頃だっただろうか。きくと本格的に活動をはじめたのは昨年の12月からだというので、その歴の短さとバンドを目にする頻度の釣り合わなさに驚いてしまう。実質3月からほとんどのイベントが開催できていない状況にも関わらず、その名前の広がり方はとても早い。「出れんの!?スパソニ!?」の二次審査通過からも、着実に真っ当な評価を受けてはじめていることが伺えるだろう。
本連載でも以前紹介したThe CabinsやWaaterとも近しい範囲で活動するバンドは、時代をまたぐパンクやオルタナティヴ・ロック、アート・ロックの精神を一身に受け継ぎながら、固有の価値観を元に活動しているという点で前にあげたバンドと共通していると言えるだろう。彼らはこれまでの系譜を見失わずかつ“自分たちらしさ”を重きに置くことで、単なるかつてのムーブメントから派生したリヴァイヴァルでは終わらない、Sisters In The Velvetというバンドを形作っているようだ。バンドのブレインであるヴォーカルの青山に、成り立ちから自身が思う“パンク”について伺った。
7月19日にはMASS OF THE FERMENTING DREGS、tricotなどを海外に紹介してきたKOKOO RECORDSが主宰する海外に向けたライヴ配信〈EDOMAE Live Stream〉にThe Cabins、Ms. Machineとともに出演することも決まっている。(日本時間で13時30分から)活動開始から約半年にして国外での活動へと踏み出そうとするバンドをお見逃しなきよう! → https://youtu.be/BMPlCJKw0ws
MAIL INTERVIEW : 青山(Vo.)
Q. 自分たちの音楽を言葉にすると?
“衝動的で、未完成”。楽器の技術や音楽の知識はあまりないのですが、感覚的に自分たちの世界観を音楽という形で表現することで構造的な概念にとらわれずに僕たちらしさを出すことができていると思います。
Q. 一番最初の音楽に関する衝撃を受けた体験は?
小学生のとき、兄にレディ・ガガやケイティ・ペリーなどの海外のポップスを聴かせてもらって感動した記憶があります。それ以降頻繁に兄のi podに入ってる洋楽を聴きあさって、歌詞や意味はまったく理解しないまま歌ってました。高校生からバンドをやっていたんですが、そのきっかけはONE OK ROCKでした。中学生のときに彼らの曲やライヴを観て、はじめて洋楽を聞かせてもらったときのような感情を抱きましたね。
Q. バンド結成の経緯を教えてください
もともとは自分と大久保(Ba.)が高校のときにコピバンをやっていて、受験を経たあと地元の友達経由で小西(Gt.)と仲良くなり、スタジオに入ったのがきっかけです。そこでは1990年代のオルタナやブリット・ポップのカヴァーをしていました。しばらくして自分が作った曲をスタジオに持っていくとみんなが気に入ってくれたので、それ以降はオリジナルの曲をやるようになったという流れです。
Q. Sisters In The Velvetをはじめるにあたって影響を受けたアーティストを教えてください
根底に影響してるのはニルヴァーナだと思います。特に『Bleach』のアルバムは僕が聴き倒したアルバムのひとつです。音作りに関しては正直まだ試行錯誤の段階ですが、ニルヴァーナをはじめとした1990年代のオルタナの退廃とした空気感は、僕らがバンドをやる上で影響を受けているもののひとつです。
Q.マイ・ブラッディ・ヴァレンタインをはじめとするシューゲイザーやDIIV、Cloud Nothingsなど現行のインディUSからの影響を強く感じたのですがそれらはどうでしょうか
挙げていただいたバンド、ジャンルからの影響はもちろんあります。さらに視点を変えていうと、音楽の芸術性や文学性という部分でテレヴィジョンやヴェルヴェット・アンダーグラウンドにはかなり影響を受けました。彼らの曲ってトータルの良さだけじゃなくて、言葉では表しにくいエグみがあるんです。僕が好きな曲やバンドは、奥底にあるエグみというか、狂気みたいなものを共通して持っていると思います。個人的な意見ですけど、そういうものって音楽に限らずなににおいても魅力的ですよね。
Q.目指しているライヴ・パフォーマンスはありますか?
バンド、そしてライヴは文化であり、ムーヴメントであると強く考えています。1970年代のパンクや1980、1990年代のオルタナのシーンからもわかるように、政治的な背景や当時の人々の心情、環境が相互的に作用したときに本当に良い曲・ライヴが作り上げられると思います。僕らのライヴもただカッコいいだけじゃなくて、メッセージ性であったり主張を演奏を通して伝えられたら良いですね。
Q.そのメッセージ性や主張は何かのカウンターになるようなものですか?
僕はフラストレーションを常に感じているタイプで、その対象はメインストリームの音楽(ロックに限らず)、人間関係、SNSなど様々です。ただ僕らの音楽はそれらに対するカウンターと言えるかは微妙なところですね。カウンターってまさにロックの要素のひとつだと思うんですけど、逆説的なものとして捉えているので。僕らはただ僕らでありたいだけで、それをただ突き詰めたいんです。ロックあるいはパンクの本質は、反抗的とか暴力的とかそういう表面的なことじゃなくて、自分自身に忠実であることだと僕らは解釈します。
Q. 東京で活動されていますが、交流の深いバンドを教えてください、また認識しているシーンがあればそれについても教えてください
最近Phychoheadsというバンドと対バンして、仲良くなりました。対バンが決まる前にたまたまSoundCloudで曲を見つけたときは、衝撃を受けました。彼らは〈SPEED〉という界隈に属していて、1回中野であったイベントに客として行ったんですけど、良い意味で異様でしたね。そこにいる人のファッションも聞こえてくる音楽も、いろんなカルチャーが混ざり合って新しい文化が築かれていく瞬間のようなものを感じました。
Q. 東京周辺、もしくはシーン内で影響を受けたアーティストはいますか?
以前ここでも紹介されてた、The Cabinsは本当にすばらしいバンドだと思います。初めて聴いたときは感服してしまいました。メンバーそれぞれが様々な文化から影響を受けたものを音楽で表現しているのが伝わってきます。初の対バンも決まってるので、すごく楽しみです。
Q. この先どのような活動を行なっていきたいですか?短期的、長期的な目標を教えてください
ひとまず普段出てるライヴハウスを埋められるくらいの集客力をつけて、そこからまた少しずつ知名度を上げてっていうのを繰り返していきたいです。国内に限らず海外でもツアーができるくらいになったら最高ですね。
MUSIC VIDEO
PROFILE
Sisters In The Velvet
2019年12月から下北沢を中心に本格的な活動を開始。2020年4月にシングル曲を初リリース。
Twitter : https://twitter.com/BandSitv
Instagram : https://www.instagram.com/sitvband
Release Info
『Into It』
2020/4/29 発売
01. Into It