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ニュース / News

ニュースリリース

NIIが世界初の単独地球一周超高速100Gbps学術通信回線網を構築
~Society 5.0実現に向けSINET国内回線に続き米国・欧州・アジア直結の国際回線も増強~

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII(エヌアイアイ)、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、学術情報ネットワーク「SINETサイネット(*1)」の国際回線を増強し、日本-米国-欧州-日本をリング状に地球一周する100Gbpsの超高速通信ネットワークとして本日から運用開始しました。国の研究教育ネットワーク(NREN(*2))としては、単独機関が地球一周する国際回線を構築するのは世界初です。また同時に、日本-シンガポール間のSINETアジア回線も同じく100Gbpsに増強しました。これらの増強により、通信量増加で生じていた学術向け国際回線の逼迫(ひっぱく)の解消、米国・欧州へそれぞれ2方向から超高速接続しての安定性向上、相互接続している海外の研究ネットワークとの連携強化が実現します。

背景:先端的大型学術研究プロジェクト等の進展でSINET国際回線の通信量が増加

 SINETは日本全国の大学・研究機関等の学術情報基盤として利用されている通信ネットワークで、NIIが構築・運用しています。現在運用しているSINET5サイネット・ファイブは、2016年の運用開始時に全都道府県の SINET拠点間に100Gbpsという超高速回線を構築しました。日本全国の大学や研究機関が各地域のSINET拠点に接続しており、日本の学術研究を支える通信ネットワークとなっています。

 また、国際共同研究を支えるために、SINETでは日本と米国の間に100Gbps回線と10Gbps回線の計2本、日本と欧州の間に2本の10Gbps回線、日本とアジアの間に1本の10Gbps回線を提供してきましたが、国際共同研究の広がりや、先端的大型学術研究の進展により転送データ量が増加しています。さらに今後はSociety5.0などの新しい科学技術の発展により、世界中のセンサーなどから取得したデータを集約・利用することが想定されます。この結果、3年前に2本の10Gbps回線を新設した欧州直結回線は急激な通信量増加で回線が逼迫しており、国際共同研究への影響が懸念されていました。また、諸外国の研究ネットワークでは100Gbpsでの国際回線の整備が進んでおり、我が国の研究環境を世界と対等に維持するためには同等以上の速度のネットワーク整備が必要となっていました。また、国際回線の安定運用化にはバックアップ経路機能も必要となっていました。

SINET国際回線を超高速100Gbps化し地球一周リング化

 これらの状況に対応するため、NIIは日本(東京)-米国西海岸(ロサンゼルス)-米国東海岸(ニューヨーク)-欧州(アムステルダム)-日本(東京)の経路で地球一周するリング状の100Gbps回線を構築しました。また、同時に日本-アジア(シンガポール)回線も100Gbps化しました(図1・表)。地球一周するリング構成とすることで、SINET国際回線の通信の安定性を高めています。米国回線(日本と米国を結ぶ回線)におけるトラブル時は米国内で相互接続する研究ネットワークを欧州経由で、欧州回線(日本と欧州を結ぶ回線)におけるトラブル時は欧州内で相互接続する研究ネットワークを米国経由で、日本に接続し続けることができるようになりました。さらに、米国・欧州向けのネットワーク需要変動を負荷分散して吸収することが可能になります。

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〈図1〉SINET国際回線の構成(増強前後の比較)

表〉増強前後のSINET国際回線の構築状況(*3)と速度

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今後の展望:国際連携研究とSociety5.0への貢献 

 今回のSINET国際回線の増強は、米国Internet2、欧州GÉANT、オランダSURFnet、北欧諸国NORDUnetなどの海外の研究ネットワークとの連携・協力により研究教育情報の国際的な流通をさらに円滑化します(図2)。米国100Gbps回線によるBelleIIベル・ツー(*4)等の日米連携研究、欧州100Gbps回線によるLHC(*5)等の日欧連携研究、アジア100Gbps回線による日本アジア連携研究がより一層深められ、我が国の国際協調・国際競争力がさらに強化されると期待されます。また、国際回線間で連携した相互バックアップ体制の構築等も進んできており、今後、100Gbps回線の連携・協力は更に増えていくことがグローバルな学術コミュニティとして期待されています。国内回線と国際回線の両方が100Gbpsに超高速化されたことで、我が国が目指す未来社会の姿として提唱されているSociety5.0の実現に向け、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度融合の加速にも貢献すると期待されます。

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〈図2〉海外の研究ネットワークとの相互接続

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ニュースリリース(PDF版)

NIIが世界初の単独地球一周超高速100Gbps学術通信回線網を構築
~Society 5.0実現に向けSINET国内回線に続き米国・欧州・アジア直結の国際回線も増強~


(*1) SINET:Science Information NETwork。詳しくはhttps://www.sinet.ad.jp/を参照。
(*2) NREN:National Research and Education Networkの略。一般のインターネットとは別に、研究・教育機関を支援するために整備された各国のネットワーク。
(*3) 米国回線とアジア回線はKDDI株式会社により、欧州回線はエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社により構築・運用を支援。
(*4) Belle II:高エネルギー加速器研究機構にある素粒子反応の測定装置「Belle II測定器」を用いた国際共同実験。SuperKEKB加速器で加速した電子と陽電子を衝突させた際に発生する大量のデータを精度よく測定し、素粒子のふるまいを調べる。Belle II測定器の前身の「Belle測定器」によるBelle実験(小林・益川理論を証明し2008年ノーベル物理学賞)より、大量に発生する解析データの転送や、安全な通信環境づくりにSINETが利用されている。
(*5) LHC:Large Hadron Collider。欧州原子核研究機構(CERN)に建設された世界最大の陽子陽子衝突型加速器。ヒッグス粒子の発見等を目的としたATLAS実験(2013年ノーベル物理学賞)で、大量に発生する解析データの転送や、安全な通信環境づくりにSINETが利用されている。
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