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2018年10月12日金曜日

コーエンのクルーグマン・インタビュー(ポッドキャスト)

書き起こしもあって親切ね.

ポッドキャスト用のアプリには Google Podcasts がべんり.再生速度の調節が細かくできる.

2018年9月18日火曜日

メモ (Noah Smith vs. Paul Krugman)

クルーグマンがブログで経済学の現状について長文で述べている:

2018年4月26日木曜日

clip: クルーグマン「民主党は有権者の暮らし向きの問題に傾注すべきだ;そして現にそうしている!」

――という趣旨の連続ツイートをしている.次のツイートが起点だ:


2017年7月31日月曜日

2017年5月20日土曜日

「ピケティ以後」イベント(動画)

2017年5月11日にニューヨーク市立大学で新著『ピケティ以後』(After Piketty) にからめて催されたイベントの動画が上がっている:




ブラッド・デロングのコメント:




2017年3月19日日曜日

weblog: 「予算案の仮面をかぶった政治キャンペーン」

――と,トランプ政権から発表された予算案概要を Stan Collender という財政の専門家が評しているそうだ.紹介しているのは,例によってクルーグマンのコラム:
今週,トランプ政権は予算案概要を出した――もっと正確に言えば,「予算案」概要だ.本物の予算案なら,お金がどこから入ってきてどこに出て行くか詳しく述べるものだ.今回の発表で取り上げているのは,連邦政府の歳出の3分1ていどでしかないし,歳入や赤字の予測についてはなんにも言っていない.

財政の専門家 Stan Collender が言うように,「これは予算案ではない.トランプの政治キャンペーン広報資料が政府文書の仮面をかぶっているだけだ」

今回のコラムの要点は,タイトルのとおり:「保守派の幻想が現実と衝突する」――大きな政府には無駄だらけなんですけお! おれたちがやればもっともっと無駄をなくせるんですけおおおお! …やっぱりだめだったよ,みたいな.
  • 右派は「政府の支出なんてどうせ無駄だらけ,タフなリーダーならそんなものは根絶できる」という考えを広めてきた.
  • オバマケアを撤廃して「もっとはるかに金がかからずはるかにすぐれた」とトランプは約束したけれど,フタを開けてみれば,代替案では2500万人から医療保険をとりあげる結果になると予測されている.
  • もっと一般的に,連邦政府の支出全体を見れば,防衛費を除くと,大きな割合を占めているのは社会保障給付・メディケア・メディケイド,つまりは何千万人ものアメリカ人にとってきわめて重要な項目だ――皮肉にも,トランプ支持の中核層となってきた人たちも,そこに含まれる.
  • じゃあ,なんで多くの人が「大きな政府」に反対しているんだろう? 
  • まず,世間の人たちは政府支出について,実態から乖離した理解をしている.たとえば海外援助は実際には1パーセント程度のわずかな割合なのに,多くの人はずっと大きな割合だと思っている.社会保障給付やメディケアの受給者のなかには,じぶんがそうした給付を受けていると自覚していない人がたくさんいる.
  • (保守系メディアの力もあって)世間で政府支出の実態がゆがんで理解されていることで,それにつけいる余地が政治家にうまれる:大幅に無駄な支出を削減してみせると請け負って見せるのだ.一方,有権者はそうした削減がじぶんの生活にどう響いてくるのかよくわかっていなかったりする.
  • そう言っていた政治家たちが実際に政権を担当すると,先日のオバマケア代替案みたいな事態になる.

▼ 参照:










2017年3月14日火曜日

weblog: クルーグマン NYT コラム

健康保険制度ネタのコラムとは別に,通常営業の NYT コラムも掲載されている.タイトルは「事実は人民の敵なり」:
冒頭はこんな感じ:
2期目のオバマ政権下で,雇用は103万増えた.ひと月あたり21万4千件だ.これにより,失業率は5パーセントを下回った.いくつもの指標が,アメリカ経済が完全雇用にかなり近づいていることを示していた.ところが,トランプはこれを「インチキ」と呼んで,アメリカ人は本当は大量失業に苦しんでいるのだと主張していた.

さて,トランプ政権になって最初の雇用レポートが出た.今回の23万5千件の雇用増加という数字は,これまでの傾向の継続のように見える.そして,政権はこの手柄は自分たちのものだと主張した:トランプ政権の報道官はこう発言した――雇用の数字は「いままではインチキだったかもしれないが,いまは非常に現実だ」

居合わせた記者たちは笑った――そうしたことを,彼らは恥じるべきだ.これは冗談どころじゃない.いまやアメリカは,客観的事実があるということを根本から拒絶している党と大統領に統治されている.その一方で,じぶんたちが現実だというものを現実だとみんなが受け入れるのをのぞんでいる.

weblog: オバマケア0.5 続き

連邦議会予算事務局 (Congressional Budget Office; CBO) から,「オバマケア0.5」こと共和党による健康保険制度の新法案の及ぼす効果・影響の推定に関する報告書がでた:

サマリーに目をとおしてみると,「連邦予算への影響」では2017年から2016年の期間に3370億ドルの赤字が削減される一方で,「健康保険加入数への影響」では2018年に健康保険加入者が1400万人減し,さらに2018年から2026年の期間に健康保険未加入者は2100万人増えると予想されている.

米国時間で13日に出たこの報告書を受けて,すぐさま(例によって)クルーグマンが NYT コラム「トランプケア vs. オバマケア:予告済みの黙示録」で取り上げている:





2017年3月9日木曜日

weblog: オバマケア 0.5

アメリカ共和党が提案した医療保険制度(オバマケア)の代替案に対して,いくつかメディア・識者の分析がでている.

2016年9月16日金曜日

メモ:クルーグマン「オバマの『トリクル・アップ』経済」(2016年9月16日)

今日のクルーグマンのコラムは,国勢調査局からでたレポートの好調な内容を参照しつつ,オバマの政策を「トリクルアップ」として評価する一方で保守派の「富裕層減税」「トリクルダウン」はそろそろ終わりを迎えてしかるべきだと主張している.
コラムの要点は次のとおり:
  1. 新しく出た国勢調査局レポートは経済状況の大きな改善を示している.
  2. 保守派の予測に反してオバマの政策は奏功した.
  3. トリクルダウンではなくトリクルアップを.
以下,内容を見ていこう(翻訳ではないので注意).

2016年9月6日火曜日

メモ:クルーグマン「ゴア化されるクリントン報道」(2016年9月4日)

概要:2000年大統領選のとき,メディアはブッシュを正直者のように描き,政策のごまかしを伝えなかった;ゴアについては,政策をまともに評価せず,「自分がインターネットを発明したと吹聴している」といった虚偽のエピソードで悪印象をつくった.いまもそれと同じことを繰り返している.

トランプを正直者のように描くのはムリだが,それでも及第点には達しているかのような印象は避けがたい.プロンプトに映されるとおりに原稿を読んでいれば大統領候補らしく見える.スキャンダルは驚くほどわずかしか注目されていない.

一方,クリントンのやることは腐敗しているにちがいないとメディアでは決めつけられている.たとえば,巨大慈善団体のクリントン財団の金を流用したりやクリントンが公職の地位を寄付者優遇に使っているのではないかと疑いをかけられている.

ああいう巨大な組織をメディアが監視するのは当然のことだけど,同財団は独立の監視団体からアメリカ赤十字より高いA評価を受けている

では,公職の立場を利用して寄付者を優遇している可能性についてはどうか.AP通信は「大統領としての倫理が試される」などと書きながらも,寄付者にクリントンが会った例としてその記事にでてくるのは,たまたま友人でもあるムハマド・ユヌスとの会合くらいで,出せる例がそれくらいしかないなら他に既知の問題があるわけない.

むすび:「事実に集中してくれ.アメリカも世界も,ほのめかしの当てこすりに再びつまずかされるような余裕はありゃしないんだから.」

Twitter では,このコラムにリンクして本人がこうコメントしている:
「ジャーナリストに嫌われるだろうから今日のコラムを書くのは気が進まなかったけれど,道義的な義務のように感じた」んだそうだ.

(以上,Twitter でのツイートをまとめなおした)

2016年8月22日月曜日

抜粋メモ:クルーグマン「立ち往生してる経済」(2016年8月20日)




後半部分を少し抜き出しておこう:
it’s surely relevant that the two big advanced economies — the US and the eurozone — both have fiscal policy paralyzed by political gridlock, leaving the central banks as the only game in town.
(…)アメリカとユーロ圏では,政治的な立ち往生〔グリッドロック〕によって,財政政策が痲痺してしまい,動きがとれるのは中央銀行だけになってしまっている. 
In the U.S., it’s House Republicans who block spending on anything except weapons; they won’t even allocate funds for Zika! In Europe, nothing fiscal can happen without action by Germany, which is both self-satisfied with its situation and living in its own intellectual universe.
アメリカでは,武器以外にはどんな支出も許そうとしない議会の共和党がいる.連中ときたら,ジカ熱対策にお金を回すことすら拒んでいる.欧州では,ドイツが行動をとらないかぎり財政はうごきっこない.そのドイツは,自国の状況に自足していて,しかも,じぶんの知的宇宙にとじこもっている.
他方,日本はちょっと政治経済的な状況がちがうと考えているらしい:
Japan is, I think, an interesting case, because whatever else it may suffer from, it hasn’t faced US or EZ-type gridlock. It’s not as clean a case as I would like — Abe allowed himself to be talked by the Serious People into fiscal tightening early on, putting the whole burden on Kuroda. But if you look at the longer-term story since the 1990s, Japan actually has had a combination of deficit spending and relatively cautious monetary policy — more or less what Weldon thinks the political economy should be causing everywhere.
日本は,興味をひく事例だと思う.というのも,いま日本がなにに苦しめられているにせよ,アメリカ型やユーロ圏型の立ち往生にははまっていないからだ.ぼくがのぞむほどすっきりした状況にはない――安倍は「お真面目な連中」〔財政緊縮派〕に言い込められて序盤から財政緊縮を許し,重責はまるごと黒田にのしかかった.ただ,もっと長期的に1990年代以降の事情をみると,日本は実のところ赤字支出と相対的に慎重な金融政策の組み合わせをとってきた――いまあちこちで政治経済状況が引き起こしているウェルドンが考えているのとだいたい同じ組み合わせをとっていたわけだ.

The problem now is that while advocates of more fiscal push seem to be winning the intellectual battle, the institutional arrangements that produce macro gridlock are likely to persist. It would take a yuuuge Democratic wave to break the gridlock here, and I have no idea what will unlock Europe.
いまの問題はこういうことだ――知的には積極的な財政政策を支持する論が勝利を収めつつあるように思えるが,マクロの立ち往生をつくりだしている制度的な環境はまだまだ長く続きそうに思える.ここアメリカでの〔政治的〕行き詰まりを打ち破るには民主党のすんげえ大勝利が必要だろう.欧州ではどうすれば行き詰まりが打破されるのか,ぼくにはさっぱりわからない.

2016年8月18日木曜日

抜粋メモ:クルーグマン「アベノミクスと一本の矢」


アベノミクスに言及しているクルーグマンのブログ記事(8月15日)から,ニュースの *ない* 部分を抜粋してみよう:
Overall, fiscal policy in Japan has actually gotten tighter, not looser, since Abenomics began, mainly thanks to the consumption tax hike; other measures didn’t offset this much.
全体として,アベノミクス開始いらい,日本の財政政策はゆるめて拡大されるどころか逆に引き締められている.主に,消費増税のおかげだ.他の施策は,この影響をあまり相殺しなかった. 
So all the weight rested on unconventional monetary policy, which did succeed in depressing the yen and pushing up stocks, but hasn’t been enough to generate a convincing boom or rise in inflation.
すると,重責がすべて非伝統的な金融政策にのしかかった.たしかに金融政策は円を安くし株価を押し上げるのに成功した.でも,たしかな好景気やインフレ上昇を生み出すのには足りていない.
And that appears to not be enough, just as the ECB’s actions haven’t been enough without fiscal support. Never mind the third arrow: what we need is the second.
これは不十分にみえる.ちょうど,欧州中央銀行の対応が財政の支援なしで不十分になっているのと同じだ.三本目の矢〔構造改革〕なんて気にしないでいい:必要なのは二本目の矢〔財政政策〕だ.
("Abenomics and the Single Arrow," The Conscience of a Liberal, August 15, 2016)

2015年11月10日火曜日

動画:IMF「非伝統的金融政策の教訓と未来」セッション

とりいそぎメモっておく.今日の仕事が終わったら見れるかなぁ.見れた.
動画が表示されない場合は,ブラウザにブロックされてるかもしれない.

2015年11月9日月曜日

「アメリカ式絶望:国際比較で白人中年アメリカ人の死亡率が突出してる」(クルーグマン)

クルーグマンがブログコラムで立て続けに,下記の研究を紹介して議論を展開している:


ブログで引用しているグラフがわかりやすい:



中年(45~54才)のあらゆる死因を含む 100,000 あたりの死亡数の推移を示している.他のフランス・ドイツ・イギリス・カナダ・オーストラリ・スウェーデンが同じように低下傾向を続けているのに対して,アメリカの白人(ヒスパニックを除く)を示す赤線が上昇を続けている.また,これには労働参加率の低下など,社会的葛藤を示す傾向もともなっているんだそうだ.

これにいちばん近い事例は,共産主義崩壊後のロシアくらいだとコメントを加えつつ,コラムでは,(1) 保守層からのおきまりの批判(いちゃもん)を予想してこれを反駁し,(2) 他でもなくアメリカの主流である非ヒスパニック系白人にこうした傾向がでていることは,アメリカ社会が絶望にふかくとらわれているのではないか,と述べている.

1. 保守層から予想される批判・いちゃもんとその批判


保守派:「リベラルがわるい!」――リベラルどもが気前のいい社会保障なんぞをやるから依存心がのさばり絶望が蔓延する.それに,世俗的ヒューマニストどもが伝統的な価値を損なっている.

ツッコミ:でもこの傾向が現れてるのはアメリカの白人だけで,もっと気前のいい社会保障をやってるヨーロッパの福祉国家には見られない.それに,アメリカ国内でも白人の死亡率が低いのはいちばん社会保障が充実していて伝統的価値観が希薄なカリフォルニアみたいな地域だ.そうそう,いちばん白人の死亡率が高いのは,バイブルベルトだよ.

2. 絶望?

じゃあ,この傾向が,格差拡大や中間層の崩壊にともなう現象かというと,そこまで単純ではないとクルーグマンは言う.とくに目を見張るのは,白人よりもヒスパニック系の方がずっと貧しいのに,死亡率ではちがった傾向を見せている点だ.じゃあ,いまアメリカでなにが起きてるんだろう?

著者の一人であるディートンがインタビューで語った言葉をクルーグマンは引用している:アメリカの中年白人たちは「じぶんの人生の物語を喪失している」のではないか.アメリカンドリームを信じる階層に生まれ,もっとうまくやれるはずだと思っていたのに,その期待に届かないでいることでうちひしがれているのではないか.
In a recent interview Mr. Deaton suggested that middle-aged whites have “lost the narrative of their lives.” That is, their economic setbacks have hit hard because they expected better. Or to put it a bit differently, we’re looking at people who were raised to believe in the American Dream, and are coping badly with its failure to come true.
もっともらしい仮説だとじぶんも思うけれど,正直なところ,アメリカで絶望が広がっている理由はよくわからないとクルーグマンは言う.
苦境にあえぐアメリカ人にとって,国民皆健康保険・最低賃金引き上げ・教育補助などは大いに助けになるだろうけれど,それでこの病を癒すのにじゅうぶんかといえば心許ない

2015年9月23日水曜日

クルーグマン「1932年の金利引き上げ要求論」


  • Paul Krugman, "Rate Rage in 1932," The Conscience of a Liberal, September 22, 2015. 
大恐慌時代の金融政策の転換について,こんな文献を紹介されたとクルーグマンがブログに記している:

彼のコメント:
They look carefully at the archival evidence, and find that a key factor was the complaints of commercial banks that low interest rates on government securities were squeezing their profits. That is, the turn to tight money in the face of deflation and a collapsing real economy was driven by the same narrow banker interests I have suggested explain current demands for higher rates despite low inflation.
著者たちは文献資料を注意深く調べた上で,政府債券が低金利になってじぶんたちの利益が圧迫されることに対する民間銀行の不満が重要な要因だったのを見いだしている.つまり,デフレに直面しながら金融引き締めに転じて実体経済を崩壊させるよう促したのは,銀行業界のせまい利害関心だった.いま低インフレにも関わらず金利引き上げを要求する声があがってる理由の説明にぼくが提案したのと同じ要因が当時もあったわけだ.
Epstein & Ferguson (1984) のアブストラクト:
Early in 1932 the Federal Reserve System made a serious attempt to reverse the "Great Contraction" through expansionary open market operations, but abandoned it a few months later. In this paper we offer an interpretation of the episode that throws new light on the Fed's behavior during the Depression. Key are the attitude of private bankers, Britain's abandonment of the gold standard, and the brief open market campaign. To protect bank profits the Fed abandoned the progarm which set the stage for the complete financial collapse of the United States in early 1933. 

2015年9月22日火曜日

クルーグマン「下がり続けるNAIRU推定値」


Paul Krugman "The Receding NAIRU," The Conscience of a Liberal, September 18, 2015.


「これより下がったらインフレが加速していく失業率」ことインフレを加速しない失業率 (NAIRU) の推定値がずっと下がり続けているのをクルーグマンがブログで紹介している.チャートは,実際の失業率(青)と FOMC による NAIRU の推定値(赤)を示す.



失業率が NAIRU に近づくことは,「インフレがくるぞ,さあ金利を引き上げろ!」「金融政策を正常化しろ」という論拠になりうるかもしれないけれど,その推定値が下がり続けている.

今年の3月に紹介した教訓は,まだまだ有効なようだ.


こちらも参照: "The Fed Should Remember the 90s," The Conscience of a Liberal, September 4, 2015.

2015年3月8日日曜日

クルーグマン「NAIRU の制約とクロムウェルの規則」

Paul Krugman, "The NAIRU Straitjacket and Cromwell’s Rule," The Conscience of a Liberal, March 6, 2015.

要点だけを抜き出しておこう:
  • 新しい雇用レポートをみると,インフレ率を加速しない失業率 (NAIRU) の推定値近くにまで失業率が下がってきている.
  • だけど,この推定値をあまり真に受けすぎない方がいい――たとえば,1994年頃にも NAIRU 近くにまで失業率が下がったけれど,当時の連銀議長グリーンスパンたちはしばらく様子をみて,実際にインフレ率が上がっているという証拠がでるのを待った.結果は,失業率が4パーセントを下回るところまで行ったけれど,そのときインフレが急進するようなことはなかった.もしもあのときグリーンスパンたちが NAIRU の推定をもとに引き締めに回っていたら,この好ましい状況はフイにされていたことだろう.
  • また,かりに NAIRU が本当に 5.4 パーセントで,金融政策の引き締めが遅れたとしても,そのコストは巨大にはならない.他方で,時期尚早な引き締めをやってしまったら,流動性の罠にはまって苦しんでいる日本や欧州中央銀行やスウェーデンの轍を踏むことになる.
  • 連銀の政策担当者におかれましては,ぜひ,賢明な判断をお願いします.

NAIRU の推定値を過信しないようにと述べた箇所をいちおう訳しておく:
《Fed には,ぜひとも1990年代のことを思い出してほしいと思う.1994年頃,いっけん頑健そうな研究に基づいて NAIRU は 6パーセントくらいだと広く信じられていた.だが,グリーンスパンら一同は,実際にインフレ率が上がってくる証拠を待つことに決めた.その結果どうなったかっていうと,雇用は長らく伸び続けて,インフレが急進することもなく失業率は 4パーセントを下回るところまでいった.もしもグリーンスパンたちが NAIRU の推定値を目標にしていたらどうなっただろう.それまでの何兆という産出をフイにするばかりか,さらに,〔高まった需要に対して供給の〕きびしい労働市場から得られるありとあらゆるいいこともフイにしていたことだろう.》
タイトルにある「クロムウェルの規則」(Cromwell's rule) は,はじめて知った.
I beseech you, in the bowels of Christ, think it possible that you may be mistaken.(キリストのなさけ[はらわた]において懇願する,キミが間違っているかもしれないと考えてくれたまえ)

追記:さらに次のエントリでも NAIRU を取り上げている:
追記2: 『ニューヨーク・タイムズ』コラムでも取り上げて「利上げには早い」と論じている: