第二の輪:財政出動からの続きです
日本経済の再生に向けた第三は、税です。日本で働く人々の給与が上がらない中、事実上の税である保険料負担ばかりが増加して国民の生活を圧迫する等々、税制次第で人々の暮らし向きは変わります。そして日本経済が上向かない理由には消費の低迷が挙げられており、そのことは政府も認めているにもかかわらず、何故か消費への課税を強めることで国民の消費に制約をかける政策を続けているのが日本という国です。消費を抑制したいのでなければ、そこへの課税は強めるのではなく緩めるべきと言えますが……
参考:消費税についてのまとめ
上記はちょうど10年前、野田内閣時代に消費税増税への動きが本格化した際に書いたもので、その当時から消費税が抱える問題については何一つ変わらず、何一つとして解消されていません。消費税増税によるダメージはひたすらに国内の消費者や一部事業者へ転嫁されたままです。詳細は上記リンク先のまとめをお読みいただければと思いますが、負担は偏在し国内消費は低迷、増税の口実であった社会保障は全く充実に向かわずと言った有様です。
この消費税については、完全なる撤廃が最良の解決法です。消費税を撤廃することで税がシンプルなものとなり事務処理コストを低減させることができますし、逆進性の強い税を廃止することは格差の是正にも繋がる、そして消費への課税をなくすことで国内消費の促進効果が期待できます。消費税の撤廃こそが、簡単でありながら最も効果的な経済対策であり、合理化であることに議論の余地はないでしょう。
一方で消費税増税は民主党が強く主張し自民党との合意を取り付けたものであり、その後の自民党安倍内閣は民主党政権時代を「悪夢」などと呼んでおきながらも消費税増税については民主党との約束を遵守するなど、与野党双方が悪い方向で意見を一致させているものでもあります。何をやるべきかは明白でありつつも、単に政権交代では解決しない、与党だけではなく野党側の政治家にも考えを改めてもらう必要があるという点ではハードルが高いのかも知れません。
消費税増税以外の面でも、やれることはあります。例えば現状では給与所得にこそ緩やかな累進課税が存在するものの、資産からの所得は別枠で税率が低く抑えられており、中途半端な高給取りよりも資産から所得を得る大富豪の方がトータルで適用される税率が低くなる逆転現象が発生しています。これは給与からの所得に対する課税と資産からの所得に対する課税が徹底して分離されていることによるものですが、もし国家の財政を気にするのであれば、ここにメスを入れるのも良いでしょう。分離課税を撤廃することは社会的な公平性にも繋がります。
そしてもう一つ、人件費にも設備投資にも取引先への支払いにも回されない眠ったお金へも、課税は強化して良いでしょう。これは財政上の問題と言うよりも、景気刺激策という面で有意義です。つまりは人件費や設備投資、取引先への支払いの増加が節税に繋がる仕組みを作る、そうすることで資金の循環を促していくわけです。消費に課税して消費を押さえ込むのではなく、経済成長に貢献しない眠ったお金の方をターゲットにする、そうした転換が望まれます。
第四の輪:国際関係へ続く
なお、先日安倍晋三元首相が「日銀は政府の子会社」と発言したことを新聞の社説や投書で批判していますが、明らかに的外れの内容でしょう。彼を批判するのなら、日銀による異次元金融緩和を続けたことよりも、2度にわたる消費税増税を行ったこと、社会保障費の削減など庶民に対して緊縮政策を続けたこと、外国人技能実習制度による奴隷労働問題を放置したまま「特定技能」による外国人労働者の受け入れ拡大を行ったことなどで批判する必要がありましょう。それに、国(政府)の財政破綻のリスクを憂慮するくらいなら、国民の財政破綻のリスクを憂慮した方が遙かに現実的だと思いますが。