「追い出し部屋」はもう古い! リストラの最新手法(PRESIDENT Online)
一方、ここ数年で明らかになったのが、業績不振の電機大手が社内に設けた「追い出し部屋」の存在だ。指名を受けた人が「事業・人材強化センター」や「キャリアデザイン室」といった部署に集められる。そこで担う業務はさまざまだ。
たとえばTOEIC800点超の40代管理職が、書類をPDFに変換する単純作業を続けた例がある。当初の人事評価ではB2(中の上)だった本人が、それに見合う仕事を与えてほしいと訴えると「CIC(キャリアインキュベーションセンター)」という部署(これが「追い出し部屋」)に配転となり、求められたのは「新たな仕事を会社の内外に探すこと」だった。
1年が経過すると「成果が出ていない」(再就職先が見つからない)として評価はDランクまで落ち、賃金が年間60万円ほど下がった。
実態は退職強要だが、建て前上はそうなっていない。「人事権や配転命令権に基づいて異動させ、『仕事を探す』という業務命令をし、その達成度合いで評価して社内規程や就業規則に基づき賃金ダウンを決めるという、一見合法的な手法をとるからです」(鈴木氏)。
どんな人が、追い出し部屋へ追いやられたか。「まずは45~55歳の中高年。声高に主張する人よりもおとなしいタイプを選び、当人の能力や実績からも、人事部が間違って選んだとしか思えないケースもある」。
指名された中には、社内外で表彰を受けて社屋に金色プレートで名前を飾られたエース級の人もいた。この人たちは子会社の物流倉庫に出向し、20~30kgはあるモニターの箱詰めや製品の仕分けなどを命じられた。「それでも目標は配転前と同じ『市場・顧客の動向・ニーズの把握、革新的な企画立案』(苦笑)。倉庫内作業では実現できないことばかり」(鈴木氏)。
最近は企業自前の追い出し部屋に変わって、退職強要を請け負う人材会社が介在することも増えてきたとのことで「~もう古い」みたいな見出しになったようです。ただまぁ、まぁ実際にやられることに大きな差はなさそうですね。会社の根幹に関わるような業務ですら外注や非正規任せが当たり前、人に払うコストの最小化を追求する日本的経営においては、功績ある従業員の追い出しもまた外部の人材会社に委託されてしまうものなのでしょう。
さて昔から企業の標的にされるのは引用元でも伝えられているように専ら中高年、東洋経済などに代表される歴史修正主義的な自称経済誌に言わせれば逃げ切った云々みたいな印象操作をされることも多い世代ですけれど、その実は狙い撃ちにされてきた世代でもあります。こういう露骨な年齢による差別は、アメリカであれば訴訟に発展して当然のように企業側が負けて高額な賠償請求に至ることが多いだけに企業側も厭うものと聞きますが、差別的な理由による解雇に制限のない日本ではなかなか歯止めがかかりません。
追い出し部屋に送られた人の中には「社内外で表彰を受けて社屋に金色プレートで名前を飾られたエース級の人も」とのこと、まぁ過去の功績など省みず次々と新しい人に入れ替えていくことに美学を持っている経営者は多いものと思われます。既存の人材をいかに活かすかを考える頭のない、隣の芝が青く見えているだけの人間も多いのでしょう。スポーツ界でも自前の逸材を放出してはヨソからの選手獲得にばかり力を入れ、その割りに順位の低迷しているチームも多いですが、世界経済の成長から取り残される日本の企業とは、そういうものなのだと言うほかありません。
あるいは「たとえばTOEIC800点超の40代管理職が、書類をPDFに変換する単純作業を続けた例がある」だそうです。昨今は従業員に高度な英語力を求める企業も増加の一途にあるわけですが、しかるに元から社内にいる「英語力の高い人」を最大限に活用しているかと言えば、むしろ社員の能力を腐らせているばかりの会社も多いのではないでしょうか。英語に強い人を英語力の求められる部門に――そういう人事は、行われないことがわかります。いつでも誰でもどこへでも異動させられるように、社員には全員に英語力を求めるけれど、その英語力を活かせるポジションは多くない、英語力があるからと言って適切なポジションを宛がわれるとは限らない、そんな日本的人事の特性を如実に表わしている一例ですね。