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『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想202  ハーバードでいちばん人気の国・日本

2016-08-27 18:38:22 | 時事・歴史書

ハーバードでいちばん人気の国・日本 (PHP新書)

ハーバードでいちばん人気の国・日本 (PHP新書)

著者      佐藤智恵

出身地     兵庫県

生年      1970年

出版年月日   2016年1月29日

出版社     (株)PHP研究所 

        PHP新書

感想☆☆☆

 題名に惹かれて読んでみた。

ここでハーバードというのはハーバード大学経営大学院のこと。このハーバードでは2学年で1800人の学生が学んでいる。著者はどんな授業が人気を集め、日本から何を学ぼうとしているのかを知りたかったのだという。

 ハーバードの1年生は毎年春に研修旅行へ行く。研修旅行の行く先は約10か国。その中で日本は一番人気だという。「ジャパントレック」と呼ばれる日本研修旅行では、日本人留学生がほぼ全員参加し幹事団として70人程度の学生のニーズにきめ細やかに応えている。主に「日本体験」に重きがおかれ、必ず広島の平和公園を行程に組みこんでいる。広島は参加者に強烈な印象を残すという。

そしてハーバードの授業でも日本の事例は学生からの評価が高いのだという。授業は議論形式(ケースメソッド)で進められ、ケースと呼ばれる教材をもとに、学生はケースの主人公になったつもりで「自分ならどうするか」と考えて、発言しなければならない。学生は年間250本、卒業までの2年間で500本の事例を学ぶ。

必修科目の中に日本の事例は6本、うちトヨタ自動車と本田技研工業は何十年も教えられている定番のケースになっている。トヨタ自動車のケースでは「自動化」や「ジャスト・イン・タイム」といったトヨタ流の生産方式を支える「マインド」の重要性に瞠目している。従業員が問題解決に参加していく「カイゼン」が報酬では生み出すことのできない従業員の「やる気」を作り出し、トヨタの強さになっていると指摘する。さらに「カイゼン」の精神のもと、「成功より失敗を先に報告する」という企業文化「プロブレス・ファースト」が、アメリカ人には衝撃を与えたという。

選択科目にある「新幹線お掃除劇場」の例も、東京駅で乗降中のわずか7分で掃除をするテッセイの事例が取り上げられている。清掃員が仕方なく仕事をするという意識から誇りをもって清掃業務を果たすようになったという点ではトヨタの事例と共通する。

必修科目のホンダの事例は、1959年にアメリカに初めてホンダがオートバイで進出した時のことだ。クルマ社会のアメリカではオートバイ市場は成長しておらず、需要は日本市場の10分の1ぐらい。それもあって主力製品だった350ccと125ccのオートバイは売れず、アメリカのハイウェーを長時間走行することを前提としていなかったために、エンジンが過熱して焼きつくというトラブルまで発生した。残っていたのは50ccのスーパーカブ。日本人社員がスーパーカブに乗ってツーリングをしているときに、よく「どこで売っているのか」と尋ねられた。当時アメリカには50ccの小型のオートバイがなかった。そこで今までオートバイに乗ったことのない大学生や女性を新たな顧客として開拓し、空前のヒットを記録した。ここでは「創発的戦略」、つまり現場からボトムアップで生まれてくる戦略の成功例として語られている。「創発的戦略」に対して「意図的戦略」という机上で考える戦略があり、欧米の大企業ではこれをトップダウンで現場に浸透させるのが、一般的だそうだ。

つまり日本的な現場主義、人を大切にする企業文化などがハーバードで人気を得ている理由だそうだ。

さらに、「不測の事態におけるリーダーシップの事例」として、福島第二原子力発電所(第二原発)の例が挙げられている。東日本大震災でメルトダウン(炉心溶融)を起こしたのは福島第一原子力発電所(第一原発)。しかし第二原発も危機的状況にあり、メルトダウンを回避したのは、現場の増田所長と作業員の不眠不休の力だという。原子炉を冷却するための電源を喪失した状態で、2日間かけて200人の作業員によって9キロのケーブルを敷設することに成功し、メルトダウンを防いだのだ。9キロのケーブルを敷設するというのは通常では1か月かかる作業だという。危機的な状況のなかで増田所長は情報の共有「センスメーキング」をし続けた。そして周りの人々に状況を理解する手助け「センスギビング」をした。さらに所長に対する信頼感が作業員に対して説得力を持った。

第二原発のことはあまり知られていないような気がする。教訓にすべきことは第一原発の惨事と並んで、惨事を回避した力ももっと日本人が知るべきだ。トヨタの「カイゼン」のことも案がない人は居たたまれないだろうと思ったりしていたが、会社に役に立っているという意識がそんなに大きいことなのかと再認識した。第二原発の社会のために、人々のためにという「無私の精神」はどこから生まれるのかわからないが、それが日本の安全と美しさの原動力になっているのだと、ここでも再認識した。外国人の目をとおして日本を見直す契機になる著書だ。

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四季折々731  富士五湖めぐり3

2016-08-12 19:29:39 | まち歩き

花の都公園にはさまざまな花畑が広がっている。

向日葵の向こうに百日草。

色とりどりの百日草。

 

サンパチェンス。

黄花コスモス。

葡萄酒用の葡萄。実はなかった。

「一ふさの葡萄手握り冷たさに今朝の心の救はれてある」(佐々木治綱1909年~1959年)にほんブログ村 写真ブログ 東京風景写真へ
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