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LGBTとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > ビジネス > 新語時事用語辞典 > LGBTの意味・解説 

LGBT

読み方:エルジービーティー
別名:Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender

旧来の典型的な男と女」の枠組み当てはまらない性同一性ジェンダーアイデンティティ)を有する人々総称。LGBTの「L」はLesbian女性同性愛者)、「G」はGay男性同性愛者)、「B」は Bisexual両性愛者)、「T」は Transgenderトランスジェンダー)の頭文字である。

LGBTは当事者たちが使用し始めた語であり、多種多様な性(ジェンダー)の在り方対す積極的・肯定的な思想根底に持つ語であるといえるいわゆる性的マイノリティの意味合いでLGBTの語が扱われることもあるが、LGBTの語そのもの少数派多数派かという観点含まれない

LGBTの前3者(LGB)は性愛性的指向着眼した区分であり、Tは心身性自認齟齬着眼した区分である。そのため文脈によってはTを含めずLGB」というで語を用い場合もある。

また、LGBTのいずれにも該当しないジェンダーアイデンティティ含めてLGBTQ」あるいは「LGBTQA」のような語に拡張され場合もある。「Q」はQueerクィア)またはQuestioningクエスチョニング)の頭文字であり、「A」はAsexual無性愛)の頭文字である。

LGBTという語は2006年カナダ採択発表された「モントリオール宣言」(The Declaration of Montreal)に端を発するとされる以降国連なども「LGBT」の語を公的に用いるようになっている2010年代には一般社会中でもLGBTを肯定的に受け入れようとする空気醸成されつつあり、欧米では同性婚法的に認めた国や州も増えている。ウェブ上の大手SNSアカウント登録時の性別に「男性」「女性」だけでなく「その他」の項目を設けた例もある。

米国調査会社ギャラップGallup)の調査によると、全アメリカ成人におけるLGBTの割合2017年調査時点4.5%だった。なお2012年調査では3.5%、2013年3.6%、2014年に3.7%、2015年に3.9%、2016年には4.1%だった。

関連サイト
In U.S., Estimate of LGBT Population Rises to 4.5% ― Gallup MAY 22, 2018PDF
https://news.gallup.com/poll/234863/estimate-lgbt-population-rises.aspx

LGBT

読み方:エルジービーティー

LGBTの意味・定義

LGBTとは、一般的には性的少数者セクシュアルマイノリティ)」の意味使われる表現。「性的少数者セクシュアルマイノリティ)」は、性のあり方セクシュアリティ)が「いわゆる多数派」の人々とは異な部分のある人のことである。

「性のあり方セクシュアリティ)」は、「身体的性別」「性自認性同一性)」「性的指向」などを包括した概念である。これらの要素中にいわゆる多数派」とは異な部分があれば少数派マイノリティ)と位置づけられる。

そして、「いわゆる多数派」とは、いうなれば自分身体的性を違和感なく受け入れており」かつ「異性性的な魅力感じる」人である。例えば、「男に生まれた者は男として生き男らしく振る舞い女に恋するものだ」というような、伝統的に「普通」と位置づけられてきた価値観である。英語では一般的に straightストレート)と呼ばれる

LGBTという言葉の意味・成り立ち

「LGBT」という言葉そのものは、レズビアンLesbian)、ゲイGay)、バイセクシュアルBisexual)、および、トランスジェンダーTransgender)という4つ言葉頭文字構成された「頭字語」である。つまり、性的少数者セクシュアルマイノリティ)の代表的な区分を、単に列挙した語である。


レズビアンとは、心身ともに女性であり、性的指向女性向けられている人のことである。ゲイとは、心身ともに男性であり、性的指向男性向けられている人のことである。バイセクシュアルとは、男性女性どちらも性的指向対象になる人である。トランスジェンダーとは、心身性同一性一致しない人、つまり、身体的な性と精神的な性自認との間に食い違い生じている人のことである。

L・G・B3区分は《性的指向に関する区分であり、「T」は《性自認》に着目した区分である。

「LGBT」の表記に関する補足

「LGBT」という言葉構成には、特別な必然性があるわけではない。つまり、「LGBT」の4文字が「LGBT」という順序並んでなくてはならない理由は特にない。

実際、「GLBT」と表記される例もあれば、「LGB」あるいは「LGB&T」のような表記用いられる場合もある。とはいえこうした表記揺れ比べれば「LGBT」の表記圧倒的に多く用いられている。

「LGBT」に含まれるマイノリティ区分の捉え方

いわゆる性的少数者セクシュアルマイノリティ)」の中には、 L・G・B・T のどれにも合致しない傾向を持つ人も少なからずいる。その意味では「LGBT=性的少数者」という捉え方完璧ではない。少なくとも、この「L・G・B・T」の4区分を「セクシュアルマイノリティ全部」として扱うわけにはいかない

しかしながら、LGBTは「セクシュアルマイノリティの《代表的な区分》」ではある。いわば、LGBTという主要な4区分は、「セクシュアルマイノリティ全体代表する代名詞的な位置づけ」であり、便宜的な呼称である。この観点において「LGBTとは性的少数者セクシュアルマイノリティの意味である」という定義が破綻なく成立する

LGBTの捉え方を変えることで登場する派生的な表現

L・G・B・Tの4区分を「セクシュアルマイノリティの《代表的な区分》」として扱う考え方は、最も一般的標準的である、と言える。しかし、それが絶対的決定的な考え方であるというわけでもない。より適切な表記模索する試みもある。「LGB」や「LGB&T」などの表記も、その試み一環である。

より多くセクシュアルマイノリティ区分(を示す字)を盛り込んで表記する試みは、よく行われており、数多く種類がある。例えば、「LGBTQA」「LGBTQIA」「LGBTQ2」などの例が挙げられる。この「Q」や「I」何を指しているのかは、後述する。

いずれにしても、「セクシュアルマイノリティ全体」を指すための便宜的な呼称として捉える限りにおいては「LGBT」も他の呼称同義である。

セクシュアルマイノリティにおけるLGBT以外の区分と、その種類

セクシュアルマイノリティ具体的な区分種類)を理解するには、まず「性のあり方セクシュアリティに関する理解が必要である。

セクシュアリティsexuality)は、「身体的性別」や「性自認性同一性)」「性的指向」などの要素含んだ包括的な概念である。英語から借用してきた語彙である。


ちなみに性自認性同一性)」は英語ではジェンダーアイデンティティgender identity)という。身体的な性別sex)よりも社会的文化的な役割としての性別gender)が念頭に置かれていることに留意する必要がある

性のあり方における「いわゆる多数派」は、「身体的性別」と「性自認」が一致しており、かつ、性的指向が「異性愛」の人である。具体的にいえば、「男に生まれ、男として生き女に惹かれる」人。または、「女に生まれ、女として生き、男に惹かれる」人である。

そして、これと一部分でも異な要素がある場合セクシュアルマイノリティ性的少数派)」に該当することになる。



性自認性的指向は、必ずしも「男女どちらか二者択一」とは限らず、「どちらもあり」あるいは「どちらでもない」という場合がある。例えば、「性的指向」が「どちらもあり」なら「バイセクシュアルBisexual)」に該当する。「どちらでもない」場合は「アセクシュアルAsexual)」に該当する



性的指向対象となる性を男女限定前提)せず、例えトランスジェンダーアセクシャル含めてあらゆるセクシュアリティの人が性愛対象となる人を指すという意味で「オムニセクシュアル(omnisexual)」あるいは「パンセクシュアルpansexual)」という区分呼称用いられることもある。


ちなみに、「トランスジェンダー」は、身体上の性別自己の性自認一致しない人のことで、この「性自認不一致」も男女どちらか2択前提になっているわけではなく、「自分男女どちらでもあるよう思える」という中間的な自己認識や、「男女どちらの場合もある」という流動的な自己認識、「男女どちらでもない」という超越的な自己認識も、トランスジェンダー該当する

クイア(Queer)とクエスチョニング(Questioning)

セクシュアルマイノリティ区分においては「LGBT」に続いて「Q」の字が続き、「LGBTQ」のように表記される場合多々ある。この「Q」は「クイアQueer)」もしくはクエスチョニングQuestioning)」の頭文字である。

クイアQueer)は、特定の性自認性的指向を指すものではなく、「いわゆる普通の異性愛」とは異なる性のあり方をすべて包含する概念である。「セクシュアルマイノリティ(の総称)」とも捉えられるが、それ以上に、もともとは第三者侮蔑込めて使っていた蔑称であり、これを当事者肯定的なニュアンス込めて自称用い始め言葉使われ方変容した、という変遷経緯こそが重視される言葉である。

クエスチョニングQuestioning)は、自己の性自認ジェンダーアイデンティティ)が確立されておらず、今後どのような区分落ち着くことになるのか自分でも分からない、あるいは、特にジェンダーアイデンティティ確立固定したいとは思わない、という立場の人を指す。

LGBTQ」の「Q」は、多く場合クイアクエスチョニング両方兼ねた字と解釈される。あるいは「LGBTQQ」と併記する形が取られることもある。

LGBTQの関連サイト

インターセクシュアル(Intersexual)

身体的性別において男女両方特徴持ち合わせている人を、インターセクシュアル(Intersexual)という。発現仕方はさまざまだが、例え生殖腺精巣または卵巣)と外性器雌雄食い違っていたり、両方生殖腺有していたりする場合がある。

インターセクシュアルセクシュアルマイノリティ区分として「LGBTI」「LGBTIQ」「LGBTQI」のように頭文字取られることがある

LGBTの派生・発展系といえる表記の主な例

「LGBT」「LGB」「LGBTI」「LGBTQのような表記区分列挙)例は、ウェブ上を見渡すだけでも優に10種類超えるパターンが見つかる。

  • LGBT
  • GLBT
  • LGB
  • LGB&T
  • LGBTQ
  • LGBTQQ
  • LGBTI
  • LGBTIQ
  • LGBTQI
  • LGBTQQI
  • LGBTQA
  • LGBTQIA
  • LGBTQS
  • LGBTQ2
  • LGBTQ2S
  • LGBTTQQIAAP
  • LGBTTIQQ2SA
  • LGBTQQIP2SAA

「LGBTQQI」や「LGBTQIA」まではおおむねLesbianGayBisexualTransgenderQueer / QuestioningIntersex」が並べられた語である。

LGBTQSの「S」とは

LGBTQSは、米国団体「LGBTQS Parent Alliance」などに使用例見られる表記である。

団体末尾の「S」を「Straight」の頭文字として用いている。すなわち「いわゆるノンケ多数派」も含めたさまざまな性のあり方」を包含する意味が込められているわけである。

LGBTQ2の「2」とは

北米カナダでは「LGBTQ2」という表記用いられることもままある。この「2」は、2-spirit(two-spirited)を意味する

2-spirited とは、北米大陸先住民中に根付いてきた、一人の身が男女両方の性(ジェンダー)を宿すという考え方に基づく概念であり用語である。西欧的な、男女どちらかという二元論的把握では捉えきれない概念として提唱されている。

LGBTIQA+の「+」とは

「LGBTIQA+」の「+」は「その他もろもろ(and many others)」の意味付与されている記号である。

「LGBTIQA」までを代表的区分として列挙しているが、セクシュアルマイノリティはこれに限られるわけではなく、より多く多種多様な区分がある・含まれうる、という意図汲み取れ表記である。

LGBTTQQIAAP とは

LGBTTQQIAAP には「Transsexual性転換者)」や「Allyアライ)」が含まれる

Transsexual性転換者)」は性転換行った人、「Allyアライ)」はいわゆる普通・多数派異性愛者Straight)であり、かつ、セクシュアルマイノリティ人々対す理解支援の気持ち持っている人のことを指す。


LGBTTIQQ2SA と LGBTQQIP2SAA

「LGBTTIQQ2SA」ならびに「LGBTQQIP2SAA」は、それなりに多く言及例がウェブ上で見つかる範囲では最長に近い部類といえる

末尾付近の「2SA」の部分の「S」は、「2S=2-Spirit」とも、「SAStraight Ally」のとも、どちらの意味とも捉えられる。もはや、どちらか一方正解他方が不正解ということではない。

「LGBTQQIP2SAA」の主な解釈


LGBTを公表している主な芸能人・有名人

ゲイ

バイセクシャル
トランスジェンダー
パンセクシャル

LGBTを扱った代表的な映画


エル‐ジー‐ビー‐ティー【LGBT】

読み方:えるじーびーてぃー

lesbian, gay, bisexual, transgender性的マイノリティーのうち、レスビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの総称


LGBT

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/27 01:39 UTC 版)

LGBTのシンボルとなっているレインボーフラッグ
インターセックスを包括したプログレス・プライドフラッグ

LGBT(エルジービーティー)は、レズビアン (Lesbian)、ゲイ (Gay)、バイセクシュアル (Bisexual) の3つの性的指向と、トランスジェンダー (Transgender)のジェンダー・アイデンティティ(性自認・性同一性)、各単語の頭文字を組み合わせた頭字語であり、性的指向性同一性ジェンダー表現性的特徴における特定の性的少数者包括的に指すアンブレラ・タームである[1]。ただの頭字語ではなく、政治的連帯を示している[2]

後述の通り、その他にも多くの派生形が存在し、その中でもLGBTQと呼ばれることも多い。

概要

主な用語

LGBTは以下の4つの用語の頭文字から作られた言葉(頭字語)である[3]

レズビアン (Lesbian)
レズビアン (L) は、女性に対して性的指向(または恋愛的指向)を持つ女性のこと[4][5]
ゲイ (Gay)
ゲイ (G) は、男性に対して性的指向(または恋愛的指向)を持つ男性のこと[4][5]
バイセクシュアル(Bisexual)
バイセクシュアル (B) は、日本語では両性愛者とも呼び、複数の性別に対する性的指向(または恋愛的指向)を表すために使用される包括的な用語[4][5]パンセクシュアルクィア、およびその他の非モノセクシュアルおよび非モノロマンティックのアイデンティティを含むことがある[4]
トランスジェンダー (Transgender)
トランスジェンダー (T) は、トランスとも略され、ジェンダー・アイデンティティ(性同一性もしくは性自認)が出生時に割り当てられた性別と一致しない人のこと[4][5][6]トランスセクシュアルノンバイナリージェンダークィアジェンダー・フルイドジェンダーレスなども含めることがある[4][7]。日本ではノンバイナリーに類似した用語としてXジェンダーがある[8]

バリエーション

LGBTは頭字語であり、いくつもの派生の用語がある。また、性的少数者を包摂する用語は、その用語を用いる側の政治的・学術的・文化的立ち位置により多岐にわたっており、LGBTの4つに準ずるものにとどまらない[1]。基本的に性的指向性同一性ジェンダー表現(性表現)・性的特徴における特定の性的少数者を包括する[1]

LGB
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルのイニシャル語で、3つの性的指向集団。
LGBTQ
LGBTにQが加わったもので、Q はクィア (Queer) を意味している場合と、クエスチョニング (Questioning) を意味している場合がある。
LGBTI
LGBTにIが加わる。これはインターセックス (Intersex) の頭文字である[9]。この概念は2010年8月ジョグジャカルタ原則の解説と同原則を踏まえた世界の人権団体の活動について書かれた文書「Activist's Guide」において一貫して用いられている。インターセックスを包括したプログレス・プライドフラッグも考案されている[10]
LGBTA
LGBTにAが加わる。これはアセクシュアル(Asexua)のイニシャルである。アセクシュアル(無性愛)とは、他者に性的に惹かれない性的指向のこと[11]。別のイニシャルの場合もある。
LGBTIQ
LGBTにインターセックス、クィアを組み合わせた呼称[12]
LGBTQIA
LGBTQにインターセックス、アセクシュアルを組み合わせた呼称[13]
QUILTBAG
上述のLGBTQIAにUを加え並べ替えたもので、これはクィアとクエスチョニング両方の意味を持つ。また、Tにはトゥー・スピリット 、Aにはストレート・アライ, Gにはジェンダークィア (genderqueer) の意味も含む。

これらの用語の後ろに「+」をつけて、頭文字を記述しきれない、さらにより多くのセクシュアル・マイノリティを包括させる場合もある(例えば「LGBT+」「LGBTQ+」「LGBTQIA+」など)[14][15]。「+」の追記によって、文字や言葉ではまだ完全に説明できないすべての性同一性と性的指向を表すことができ[15]、既存のカテゴリに自分自身を識別したくない人も含めることもできる[14]

LGBT(もしくはいずれの派生語)には性的指向・性同一性・ジェンダー表現・性的特徴以外のものは含まれない[16]

類似の用語

クィア

同性愛者に対する侮蔑語(差別用語)から転用・再領有英語版した語。1990年代以降はLGBTコミュニティの間で包括的に性的少数者の人々を指す用語としても使われている[17]。一部の人々、特にコミュニティの年配のメンバーの間には「クィア」という言葉をヘイトスピーチに起源を持つ蔑称であると考え、これを受けいれていない[18]

ゲイ

この場合の「gay」は男性の同性愛者という意味ではなく、1990年代まではセクシュアル・マイノリティ全体を指す総称としてよく使われていた[19]

GSM

性的少数者を示す代替フレーズ。「(G)ender/(S)exual (M)inority」の頭字語で、通常は研究で使用される[20][21]

SGL

同性愛コミュニティを意味する。アメリカの社会において、アフリカ系アメリカ人のあいだで、LGBTを白人優位コミュニティの言葉として捉えて使用される。Same gender loving のイニシャル。

なお、「SOGI」「SOGIE」「SOGIESC」は性的指向、性同一性、ジェンダー表現、性的特徴の頭文字をとった用語であるが、ヘテロセクシュアル(異性愛者)やシスジェンダーといったマジョリティを含むすべての人々を指す[5]。そのためマイノリティのみを指すLGBTの代替用語とはならない。

用語としての歴史

最初に広く使われた用語であるホモセクシャル: homosexual、同性愛)は、現在では科学的な文脈で使われることの多い言葉だが、アメリカ合衆国においてはネガティブな意味合いを持つことが多かった[22]。ゲイ(: gay、ここでは単に同性愛者のこと)が一般的な言葉となったのは、1970年代のことである[23]

レズビアン(: lesbian)の人々がより公のアイデンティティを確立させていくにつれ、「ゲイとレズビアン」(: gay and lesbian)という表現が一般的になっていった[24]。レズビアン活動家たちのあいだで生じた、フェミニズムと同性愛の権利のうち、どちらを彼女たちの政治的目標の主眼に置くべきかという論争は、デル・マーティンとフィリス・ライアン英語版らが設立した「ビリティスの娘たち英語版[25](同種の論争により1970年に解散)をはじめとした、いくつかのレズビアン団体を解散させることとなった[26]レズビアン・フェミニスト英語版にとっては男女同権こそ最優先事項であり、男性と女性、またはブッチとフェムの間にある性役割(ジェンダー・ロール)の相違は彼女たちにとって家父長制的なものであった。レズビアン・フェミニストたちはまた、当時のゲイバーで普及していた性役割や、ゲイ男性にみられた男性優位論(男性ショーヴィニズム)を忌避した。ために、多くのレズビアン・フェミニストはゲイ男性との連帯を拒み、彼らの主張を受けいれなかった[27]

「レズビアン」という言葉を性的魅力を定義するために使い、「同性愛者は生来の同性愛者」という本質主義的な考えを奉じていたレズビアン――エッセンシャリスト(: essentialist)――たちは、しばしばレズビアン・フェミニストの分離主義的英語版な意見を同性愛者の権利にとって有害であると考えていた[28]。また、バイセクシャル: bisexual、両性愛者)やトランスジェンダー: transgender)の人々も、より大きな性的マイノリティ・コミュニティ内で、自分たちが正当な存在として認められることを望んでいた[24]

ニューヨークで起きたストーンウォールの反乱(1969年)での人々の行動をきっかけとした変革の興奮が過ぎ去ったあとの1970年代後半から1980年代前半にかけ、ゲイやレズビアンの一部は、バイセクシャルやトランスジェンダーに対し、より排他的な姿勢を取るようになった[29][30]。バイセクシャルやトランスジェンダーに批判的な人々は[誰?]、トランスジェンダーはステレオタイプな振る舞いをしており、また、バイセクシャルは単にカミングアウトを恐れ、自身のアイデンティティに正直になることを恐れるゲイ男性ないしレズビアン女性に過ぎない、と主張していた[29]。LGBTそれぞれのコミュニティは、他のジェンダー性的指向に基づくコミュニティと協調すべきかどうか、協調するにせよ、その繋がり方をどうするべきかを含め、独自のアイデンティティを確立するため格闘しつづけ、時にはサブグループ(社会階級人種宗教など)を排除した。この対立は、現在においても続いている[30]。LGBTQ活動家やアーティストたちは、運動の開始以来、この問題についての意識を高めるためのポスターを作成してきた[31]

1988年頃から、アメリカ国内の活動家たちは頭字語の「LGBT」を使いはじめた[32]。1990年代に至るまで、運動内でゲイとレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーは同程度の尊重を得ていなかった[30]。「LGBT」の語の普及により、GLBT歴史博物館英語版(1999年に改称[注記 1])をはじめ、一部の組織は新しい名前を採用するようになった[33]。用語としての「LGBT」は、包摂の象徴としてポジティブな意味合いを持ち続けた[34][30]。そのため、ただの頭字語ではなく、政治的連帯を示している[2]

LGBTの用語は、この表現に包含される誰もから受容されているわけではない[35]。新しいジェンダーやセクシュアリティが認知されるたびに頭文字が追加され、どんどん長くなる傾向にあり、それを過剰だと非難する人も一部では存在する[36]。差別的な動機からLGBTの特定のイニシャルを取り除こうとする者もいる(#Drop the Tを参照)。

一方で、そのラベルは連帯のために必要であり、誰もが自分自身のジェンダーやセクシュアリティに名前をつけて表現してもいいとの声もある[36]。完璧な用語や完全に包括的な用語など存在しない[37]。LGBT史を専門とするジェフリー・J・イオヴァンノンはLGBTのイニシャリズムは、アイデンティティを表す文字をランダムに集めたものではなく、歴史を体現したものであると述べている[19]。LGBTと関連してインターセクショナリティの重要性も指摘されている[38][39]

世界におけるLGBTの人権

同性愛、またはそれに関する表現や結社の自由に対する法的状況を色分けした世界地図
同性愛を合法とする国
  
結婚1
  
結婚は認められているが法的適用は無し1
  
シビル・ユニオン
  
事実婚
  
同性結婚は認められていない
  
表現や団体の自由を法的に制限
同性愛を違法とする国
  
強制的罰則はない2
  
拘禁
  
終身刑
  
死刑
輪で示した地域は通常ケースバイケースの適用がされている法律や地域ではない場合に地元の裁判所が結婚を容認したり認めなかったり死刑判決を下した場合がある地域。
1このカテゴリに入っている一部の地域では現在他の種類のパートナーシップも存在するとされている。
2過去3年間、もしくはモラトリアム英語版により法的な逮捕はない。
沿革

1990年代初頭以来、国際連合組織下の、国際連合人権高等弁務官事務所(以下OHCHR)をはじめとした人権機構においては、LGBTの人々に対するさまざまな形の人権侵害についての報告が行われてきた。

2006年7月29日、カナダモントリオールで開催されたワールドアウトゲームズ(第1回)では裁判官ルイーズ・アルブールが中心的役割を果たし、百カ国以上から約2000人の代表者が集まり、「レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人権についてのモントリオール宣言」(略称: モントリオール宣言)を議決した。同年は次いで、国際法律家委員会や元国際連合人権委員会構成員が、ジョグジャカルタ原則(性的指向と性同一性に関わる国際人権法の適用に関する原則)も採択した[40]

2011年には国際連合人権理事会で「人権と性的指向・性自認」という決議が採択もされた[41]。以降、国連が中心となって「United Nations Free & Equal英語版」という啓発キャンペーンが行われるようになり、合わせて「Born Free and Equal」という冊子がOHCHRから刊行された。

現在

現在、LGBTの権利は国際人権として位置づけられている。国際連合の認識では、国連に加盟する各国が負う、LGBTの人々を暴力や差別から守るための義務は、世界人権宣言1948年批准)、ならびに同宣言の後に成った国際人権条約に基づく国際人権法を根拠とする。各国の法的義務には、以下のものが含まれる[42]

20世紀半ばの雪崩れ的な独立後、旧植民地の支配者たちは欧米ソドミー法などの規範を逆に利用して、自国内の反体制勢力や性的少数者を弾圧して、投獄・処刑する根拠ともしている。

ヨーロッパ

1981年に欧州人権裁判所ソドミー法ヨーロッパ人権条約8条に違反するとの判決を下した[43]

アメリカ大陸

15世紀以降、南北アメリカ大陸およびカリブ海地域のほぼすべての地域に定住したイギリス人、フランス人、スペイン人、ポルトガル人入植者は、ヨーロッパからキリスト教をもたらした。カトリックメインライン・プロテスタント福音主義東方正教をはじめ、キリスト教は宗派を問わず同性愛の法的承認に対し抑圧的ないし否定的な態度を取っていた。しかし、20世紀以降は、米国聖公会のようにLGBTコミュニティや同性結婚を受け入れる宗派も見られるようになった[44]。また、ユダヤ教の諸宗派はLGBTに対し肯定的な姿勢でのぞんでいる。

欧米においては違法化されてきた歴史が長いが、1961年、アメリカ・ユニテリアン協会AUA)と米国ユニヴァーサリズム協会(UCA)が統合されユニテリアン・ユニヴァーサリズム(UU)を基礎とするユニテリアン・ユニヴァーサリスト協会(UUA)が創設され、UU教徒には奴隷制度廃止運動フェミニズムなど社会制度改革をしてきた思想家が多かったこともあり、1960年代にはUUAとカナダ・ユニテリアン評議会(CUC)が共同でLGBTQ問題に関する支援を始めた[要出典]

中南米においては、2018年1月、米州人権裁判所英語版: Inter-American Court of Human Rights)は、米州人権条約が同性婚を人権として認めているとの判決を下した[45]。これにより、同条約の加盟国はシビルユニオンの法制化への義務が課せられた。一方で、同地域においては、ジャマイカドミニカバルバドス等9ヶ国においてソドミーに対する処罰が刑法において定められている。これらの国はすべて英領西インド諸島のかつての領土である[46]

アメリカ合衆国

結婚に臨むデル・マーティンとフィリス・ライアン 2008年

1924年、シカゴに「ソサエティー・フォー・ヒューマン・ライツ英語版」という、最古のゲイ権利団体が誕生した(政治的圧力を背景に一年後に解散)[47]。第二次世界大戦直後のアメリカでは、マッカーシズムを背景とした反共主義政策の影響により、LGBTQ当事者は連邦捜査局(FBI)の監視下に置かれただけでなく、就業の機会が奪われたり、解雇された[48]。1950年には初の全米ゲイ権利団体となる「マタシン協会英語版」がハリー・ヘイ英語版によって[49]、1955年にはレズビアン権利団体の「ビリティスの娘たち英語版」がデル・マーティンとフィリス・ライアン英語版らによって、サンフランシスコで設立された[注記 2][47]。1962年、イリノイ州が他州に10年ほど先駆け、全米で初めて、合意の同性の成人同士の私的な性行為を非犯罪化した[47][50]。1966年8月には、コンプトンズ・カフェテリアの反乱をうけ、米国初のトランスジェンダー支援団体「全国トランスセクシュアル・カウンセリング・ユニット」(: the National Transsexual Counseling Unit)が設立された[51]。翌1967年、ロサンゼルスで、警察による嫌がらせと暴力を契機とした平和的な抗議活動のなかで、集まった支援者らは「自己防衛と教育における個人の権利[注記 3]」(PRIDE)と称した。この事件は、「プライド」という言葉が初めてLGBTの権利と関連して使われたできごととなった[51]

ベトナム戦争に対する反戦運動に参加する、ノースウェスタン大学のゲイ解放運動グループ 1970年代初頭、ワシントンD.C.

1969年6月29日、ニューヨークのゲイバー[注記 4]ストーンウォール・インでの暴動、ストーンウォールの反乱をきっかけに、LGBTQ権利擁護運動のなかに「ゲイ解放戦線英語版」(GLF)や「ゲイ活動家同盟英語版」をはじめとした、より急進的・積極行動主義的な組織が生まれた[53]。一方、(相対的に穏健路線であった)マタシン協会は、遡ること1965年でホワイトハウス周辺でピケを張るなどの行動を起こしていたが、ストーンウォールの反乱の発生をうけて、この抗議活動を記念する全国的な同時多発デモを毎年おこなうこと、ならびに6月の最終日を「クリストファー・ストリート解放の日英語版」と定めることを提案した。ストーンウォールの反乱一周年を記念して1970年6月28日に行われたこのデモは、史上初のゲイ・プライド・パレードとなった[54]。パレードは、翌1971年にはアメリカ国内外に波及し、アメリカ国内ではボストンダラスミルウォーキー、国外ではパリ西ベルリンストックホルムロンドンでも行われた[55]。性的少数者の権利擁護の運動は拡大をつづけたが、1973年前後にはLGBTQコミュニティ内でも異なる社会経験グループ、すなわちトランスジェンダー等ジェンダー・ノンコンフォーミング、有色人種、(白人中心の)中流階級のあいだで早くも緊張があらわれつつあった[56]

1973年のクリストファー・ストリート解放の日で演説するジーン・オレアリー。
[シルヴィア・リベラ英語版ドラァグクイーンのちにトランスジェンダーを自認]「STARハウスにいる人たちに会いに来てください……必要なのは、白人中流階級の白人専用クラブにいる人たちのためじゃなくて、あたしたちみんなのためになにかをしようとしている人たち。それこそあなたたちよ。さあ、革命を起こそう!」
次にステージにあがったのはレズビアンのフェミニスト、ジーン・オレアリー英語版で、ドラァグ・クイーンは「女性を利己的に利用」していると批判するスピーチを行った。次にステージに上ったドラァグ・クイーンのリー・ブリュースター英語版は叫んだ。「……今日みなさんが祝っているのは、ドラァグ・クイーンがストーンウォールでやったことの結果よ」。
『LGBT運動の歴史』第6章クリストファー・ストリート解放の日、[57]

2015年6月26日の米連邦最高裁の判決により同性婚は全ての州で合法となった[47]

アフリカ大陸

アフリカにおけるLGBTの権利は、性の多様性の周縁化や隠蔽が現在も進行しており、国際アムネスティなどは迫害弾圧の実態の把握に努めている[58]

ロシア

ロシアのLGBTの人々は重大な差別に直面している。2023年、ロシアの最高裁判所はLGBTの権利運動を「過激」とみなし、違法とする宣言をしている[59]

アジア

日本

フランクリン&マーシャル大学英語版の「Global Barometers Report」によれば、2020年における日本のLGBT権利のスコアは「F」と算定されている[60]。日本では同性愛を法的に取り締まったり、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教などのように「逸脱した行為」等の宗教的異端としてないが[61][62][63]、国単位では同性婚およびシビル・ユニオンは法的に認められていない。また、LGBT当事者を中心とした性的少数者の権利を擁護・主張し、法整備を含む要求・活動をおこなう団体が複数存在する。

同性愛に関連したものであれば、日本では2015年に初めて、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行するために、東京都渋谷区渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例が区議会本会議で可決・成立し、同年4月1日より施行された[64]。同年11月には、東京都世田谷区で「世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」が制定された[65]。パートナーシップ制度は、11月5日に渋谷区と世田谷区で同時に導入された[66]。2020年9月30日時点で世田谷は128組、渋谷区は50組が利用している[67]。その後も、北海道札幌市[68][69]など各地で同様の取り組みが行われ、2019年7月1日、茨城県で、都道府県初となるパートナーシップ制度が導入され[70][71]、大阪府などが続いている[72]


性表現に関わるものだと、学校の制服の選択制が取り上げられる[73][74][75]。取り組みは各地の学校で起きている[76][77][78][79]

政治においては、2017年7月6日、東京都豊島区議石川大我世田谷区議の上川あや、中野区議石坂わたる文京区議前田邦博埼玉県入間市議の細田智也ら5人の地方議員が「LGBT自治体議員連盟」を設立した。性的少数者の人権を擁護する条例や施策を、地方議会を通じて全国の自治体に拡大していくことを目指す。同連盟には趣旨に賛同する全国62自治体の議員78人(元職も含む)も参加した[80][81]。その後、同年10月9日に開かれたLGBT関連の撮影会で北海道滝川市議がカミングアウト[82]。同年12月に京都府長岡京市議が市議会本会議でカミングアウトを行った[83]

政治内での差別にも注目が集まることもある。2022年6月13日、安倍晋三元首相が会長を務め、自民党の国会議員が多数参加している神道政治連盟国会議員懇談会の研修会でA5版90ページに及ぶ冊子が配布され、研修会で大学教授らが選択的夫婦別姓同性婚について講演した内容などがまとめられている。そこには「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害」「世界には同性愛や性同一性障害から脱した多くの元LGBTの人たちがいる」などの内容が書かれていた[84][85]

2023年6月16日に参議院本会議でLGBT理解増進法が成立した[86]

反LGBT

LGBTの人々は世界中で差別や暴力を受けている[39][87][88]国際連合は「LGBTの人々は世界中いたるところで差別に直面している[89]」「甚大な人権侵害が起きている[88]」と指摘している。

セクシュアル・マイノリティに対して抱く恐怖・憎悪・不快感・不信感を、同性愛の場合は「ホモフォビア」、バイセクシュアルの場合は「バイフォビア」、トランスジェンダーの場合は「トランスフォビア」と呼ぶ[90]。アセクシュアルの場合は「エースフォビア(acephobia)」[91]もしくは「aphobia」[92]と呼ばれる。LGBT全体を対象とする場合は「LGBTフォビア」と呼ばれる[93]

LGBTの人々の権利と平等に反対する活動は昔から現在に至るまで広くみられる。

セクシュアル・マイノリティの権利を擁護していたドイツ系ユダヤ人の性科学者マグヌス・ヒルシュフェルトが1919年に設立した性科学研究所は、当時の同性愛者やトランスジェンダーの人々に支援を提供していたが、1933年にナチスによって「公序良俗に反する」という理由で焼き払われ閉鎖された[94][95]。ナチスはセクシュアル・マイノリティを迫害する法律を利用して、とくに男性同性愛者を大勢拘束し、強制収容所へと送った(ナチス・ドイツとホロコーストによる同性愛者迫害[96][97]

セクシュアル・マイノリティを社会の敵とみなす動きはこの後も世界各地で続いた。第二次世界大戦後、1950年代のアメリカは、赤狩りの流れで政府職からセクシュアル・マイノリティを調査・尋問・排除する政策をとり、これは「ラベンダーの恐怖英語版」と呼ばれた[98][99]。1970年代にはキリスト教右派がLGBTに激しく反発するようになり、「セクシュアル・マイノリティは子どもに有害であり、子どもを守らなければいけない」として「Save Our Children」というキャンペーンを展開し、アニタ・ブライアントなどの著名人が先頭に立った[100]。この反LGBT運動の結果、マイアミ・デイド郡におけるセクシュアル・マイノリティへの差別を禁止する条例は一時的に廃止された[101]。1980年代のHIV/AIDSのパンデミックも同性愛者への差別に拍車をかけた[102]。キリスト教テレビ伝道師であるパット・ロバートソンが設立した「American Center for Law & Justice」は同性結婚を「社会の根幹である伝統的家族を直接攻撃するもの」として非難した[102]。反LGBTの主張の中では「LGBTは思想にすぎない」として「LGBTイデオロギー」という言葉が使われることもあり[103]、ポーランドの調査報道ウェブサイト「OKO.press英語版」は「LGBTイデオロギーという言葉は伝統的な家族・宗教・社会秩序を保持して右翼への政治的支持を構築するのに役立つ右翼プロパガンダの用語である」と文化的マルクス主義と関連させて説明している[104]

2020年代からは、クー・クラックス・クランなどの白人至上主義団体[105]ネオナチなどの極右[106][107]などが反LGBT運動に続々と参加している。「Alliance Defending Freedom[108]や「Moms for Liberty[109]などの比較的新しく結成されたばかりの反LGBT団体も登場している。

日本では、LGBTに反発する勢力として神道政治連盟や旧統一教会などの宗教右派、そしてその宗教右派と繋がりの深い保守派政治家の存在が指摘されている[110][111][112][113]

世界中には依然としてLGBTの人々の平等な権利を認めず、法的に迫害する国や州がいくつもある[114][115]。こうしたLGBTを迫害する法律は、医療におけるLGBT差別を悪化させ、生命に関わる健康格差の拡大を招いている[116]。LGBTの人々はヘイトクライムの攻撃に遭いやすく、LGBTの人々が受ける暴力被害の約10件に1件がヘイトクライムという調査もある[117]ILGAの報告によれば、反LGBTのヘイトスピーチは増加傾向にある[118]。LGBT活動家が活動中に暴力を受ける事例もみられ[119]プライド・パレードが犯罪予告で妨害されることもある[120]

これらの反LGBT運動にて取り上げられるトピックには、同性同士の結婚への反対、ジェンダー・トランジションの規制、ジェンダー・アイデンティティに基づく公衆トイレの利用制限英語版LGBTに関する本の禁書[121]、LGBTを学校で教えることの禁止[122]LGBTグルーミング陰謀論ドラァグ・パニック[123]転向療法[124]LGBTに親和的な企業や作品へのボイコット[125]などが挙げられる。

「LGBT(もしくはLGBTQ)」にはペドフィリア(小児性愛)が含まれるかのような中傷目的の虚偽情報がインターネット上で出回ることがあるが、LGBTコミュニティがペドフィリアをサポートしている事実はない[126][127]

「LGBT」といった用語もしくはその運動や文化を、企業や団体が安易に流用し、自身の差別的な構造を改善しようとしてもいない場合、それはピンクウォッシング(レインボーウォッシング)として非難されることがある[128][129]

Drop the T

「LGBT」という言葉もしくは運動自体からトランスジェンダーを排除することを主張する人たちが一部には存在する(反ジェンダー運動)。こうしたLGBT組織にトランスジェンダーの人々のサポートを停止するよう促すために作られたスローガンとして「Drop the T」というものがある[130]。これを訴える者たちは、表向きは「LGB(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル)は性的指向に関するもので、T(トランスジェンダー)は性同一性に関するものである」と説明しているものの、その背景としてトランス排他的ラディカル・フェミニスト(TERF)がしばしば主張する反トランスジェンダーの差別や偏見の再利用があると指摘されている[130][131]

対して、「LGBT」という言葉(もしくはその派生語)を支持する擁護者は、LGBT運動の原点となったストーンウォールの反乱を主導したのはトランスジェンダーやジェンダー・ノンコンフォーミング有色人種であったという広く認められている歴史を根底に「LGBT」の重要性を語っている[130]。「Transgender Equity Consulting」のセシリア・ジェンティーリはLGBTコミュニティはトランスジェンダーへの支援に向き合うべきであると述べている[132]

それでもLGBT運動からトランスジェンダーを排除することを主張する団体は一部に存在しており、例えば「LGB Alliance[133]や「Gays Against Groomers[134]などがある。これらの団体が極右と関わっていることがたびたび批判されている[135]。こうした反トランスジェンダー活動家や団体は「トランスジェンダリズム」という言葉を好んで用いる傾向がある[136][137]

LGBTの人物

LGBTの関連団体

LGBTを題材とした作品

関連項目

脚注

注釈
  1. ^ 同博物館は1985年にthe San Francisco Bay Area Gay and Lesbian Historical Societyとして設立され、1990年にthe Gay and Lesbian Historical Society of Northern Californiaに改称したが、1999年、バイセクシャルとトランスジェンダーの包摂のため現在の名称に変更された。
  2. ^ 同団体はゲイとバイセクシャルの女性の支援を目的としていた。また、マーティンとフィリスは、2008年、カルフォルニア州最初の法的な同性カップルとして入籍した。
  3. ^ : Personal Rights In Defense and Education
  4. ^ ストーンウォール・イン・は、中流階級のゲイ男性のみならず、有色人種やジェンダー・ノンコンフォーミング(既存の性的規範に従わない人の総称)、ブッチレズビアン、ストリートチルドレンが利用していた[52]
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参考文献

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  • 遠藤まめた 著『先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら』 合同出版、2016年、223頁。ISBN 978-4772612715
  • 大阪弁護士会人権擁護委員会性的指向と性自認に関するプロジェクトチーム 著『LGBTsの法律問題Q&A』 LABO、2016年、152頁。ISBN 978-4904497289
  • LGBT法連合会 編『日本と世界のLGBTの現状と課題』 かもがわ出版、2019年、160頁。ISBN 978-4780310160
  • エリス・ヤング 著、上田勢子 訳『ノンバイナリーがわかる本 ――heでもsheでもない、theyたちのこと』 明石書店、2022年、352頁。ISBN 978-4750353272
  • Label X 編『Xジェンダーって何?―日本における多様な性のあり方』 緑風出版、2016年、255頁。ISBN 978-4846116156
  • ショーン・フェイ 著、高井ゆと里 訳『トランスジェンダー問題——議論は正義のために』 明石書店、2022年、516頁。ISBN 978-4750354637
  • ジュリー・ソンドラ・デッカー 著、上田勢子 訳『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて――誰にも性的魅力を感じない私たちについて』 明石書店、2019年、320頁。ISBN 978-4750348148
  • 社会応援ネットワーク、高比良美穂、若染雄太、里井普美『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(初)太田出版、2021年9月17日。ISBN 9784778317737 
  • 渡辺桃子 (2004). “トランスジェンダーとは--その歴史,その可能性”. アメリカ研究 = The American review (アメリカ学会) 36: 75-89. ISSN 03872815. 
  • Todd, Mathew(英語)『Pride: The story of LGBTQ equality movement』Welbeck英語版、2021年5月13日。ISBN 978-1787396869 

外部リンク


LGBT

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/07 14:37 UTC 版)

マイケル・ベネット (コロラド州の政治家)」の記事における「LGBT」の解説

ベネット同性結婚賛同している。2015年連邦最高裁オーバーグフェル対ホッジス裁判において同性結婚認め方針示した際には、結婚同性カップルにとっても基本的な権利であり、異性間夫婦と同じ待遇受けられるうになることを歓迎する旨の意見発表したまた、彼はこれまで福祉政策恩恵を受けることの少なかったLGBTQ+の高齢者健康増進目的とした法案にも関わった。

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