前回で1998年版の<高校生にすすめる本360冊>は終えましたが、予告通り補遺及び1999~現在までの推薦書リスト(予定では全50冊)を今後3回に分けてアップします。
今回は、文学・ノンフィクション・教養書関係(つまりはエンタメ系以外)の文庫及び新書17冊です。
これまでは、品切れ・絶版等の状況は1998年当時のものをそのまま載せましたが、今回以降は現時点での状況です。
《高校生にすすめる本360冊・追加》 1998年の時点ですでに高校生諸君どころか30代くらいの人たちともかなりの<世代の壁>ができていることに気づいていました。それで、1960年代に高校時代を送った世代のひとつの歴史資料のような意味くらいはあるだろうと思いつつこのブログ記事としてアップしたわけです。 そして今回の増補版。もうほとんど高校生向けというより、単に自分が読んでおもしろかったものを並べただけじゃないか、と言われるかも。それに対しては、・・・うーむ、反論のしようがないゾ・・・ ☆印はとくに推奨。×印は品切れまたは絶版中の本(多すぎる!) △は絶版・品切れでも単行本なら出ている本。 |
[文庫・新書] | ||||
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1 | カズオ・イシグロ | わたしを離さないで | 早川文庫 | 1=この設定は何だ!? 予備知識なく読み始めたら何ページ目で気がつくだろうか? 何と哀しく、深い小説であることか。 2=ただ職務に忠実だった彼女。その職務がユダヤ人収容所の看守。「あなたならどうしましたか?」。ラスト近くの<衝撃>の意味は深い。 3=ダイナミックに変貌する現実を活写したこんなにオモシロイ純文学(?)が中国にある! 女子トイレののぞきがばれてとっちめられた少年はその後・・・。 4=韓国の大ベストセラー。世界各国でも好評。田舎から出てきた老母がソウルの地下鉄で行方不明に。初めて気づく母の存在の大きさ。 5=漱石最後の、というか未完のままで終わった作品。やっぱり漱石は大人の文学だ。私も40歳前に読んでたら投げ出したかも・・・・ 6=大正時代に、こんな翔んでる女性がいたとは! そして、彼女を描いた翔んでる作家有島は、その後自殺(心中)してしまった・・・・。 7=ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん。この虚無的な暗さは中也自身のものであると同時に、昭和前期の時代の暗さをも象徴している。 8=死刑について語っている部分をぜひ読んで下さい。死刑賛成という人、いろんなことに想像力をめぐらせてほしい。 9=すごい読書家にして文芸批評家の、痛快な文章論。「趣味は読書。」(ちくま)中の上記の「朗読者」についての評は笑ってしまう。 10=同時通訳に関わるユーモアとウィットにあふれる話の数々。外国人に理解不可能なジョークは「とにかく笑ってください」と頼むとか。 11=暗い時代の新興俳句の担い手たち。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」(渡辺白泉.1939)という俳句を初めて見た時にはただ驚愕。 12=副題は「戦火を見つめた俳人たち」。一少女として戦争を体験した著者が、俳人たちが戦争といかに向き合ったかをつぶさに検証する。 13=漫画が好きだった明るい青年竹内浩三はフィリピンで戦死し、遺骨も還らず。彼が書き遺した「骨のうたふ」という詩をぜひ読んで! 14=本居春庭は29歳の時眼病を発症。父の宣長の尽力にもかかわらず結局3年後に失明。しかしその後も国語学の研究を続け、とくに「詞のやちまた」は今も高校で学ぶ用言の活用表の原点ともいうべきもの。そんな彼の伝記を作者自身の青春時代を重ね合せて描く。 15=専門の分子生物学関係の内容も興味深いが、文章の巧みさに魅かれる。理系ということと、文才の有無は関係ナシという好例。 16=「標準語」は自然にできたものではなく、近代国家の成立・成長の過程で作られたもの。そこにはさまざまなせめぎ合いがあった・・・。 17=昔の人が漢文を読む時用いた「角筆」という方法がある。(各自調べて。) そんな細部から漢字圏の広がりと歴史を巨視的に見通す。 18=1998年29歳の若さでネフローゼのため夭折した棋士(将棋のプロ)村山聖(さとし)。森信雄六段との師弟愛にはただ涙・・・。 19=料理家辰巳芳子さんのお母さん。四季折々の食材や料理法等々について随筆風に書いた和風家庭料理の本。「昭和」の香りが漂う。 |
2 | シュリンク | 朗読者 | 新潮文庫 | |
3 | 余華 | 兄弟 | 文春文庫 | |
4 | 申京淑 | 母をお願い | 集英社文庫 | |
5 | 夏目漱石 | 明暗 | 新潮文庫 | |
6 | 有島武郎 | 或る女 | 新潮文庫 | |
7 | 中原中也 | 中原中也詩集 | 新潮文庫 | |
8 | 辺見庸 | 眼の探索 | 角川文庫 | |
9 | 斎藤美奈子 | 文章読本さん江 | ちくま文庫 | |
10 | 米原万里 | 不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か | 新潮文庫 | |
× 11 | 富沢赤黄男 高屋窓秋 渡辺白泉集 | 朝日文庫 | ||
12 | 宇多喜代子 | ひとたばの手紙から | 角川文庫 | |
13 | 稲泉連 | ぼくもいくさに征くのだけれど | 中公文庫 | |
14 | 足立巻一 | やちまた | 朝日文庫 | |
15 | 福岡伸一 | 生物と無生物のあいだ | 講談社現代新書 | |
16 | イ・ヨンスク | 「国語」という思想 | 岩波現代文庫 | |
17 | 金文京 | 漢文と東アジア | 岩波新書 | |
18 | 大崎善生 | 聖の青春 | 講談社文庫 | |
19 | 辰巳浜子 | 料理歳時記 | 中公文庫 |
日本の純文学作品が全然入っていません。
このところ韓国語の本を読むことが多くなってくるにつれ日本の本の読書量が減ってきたということもありますが、どうも90年代以降は小説に描かれる世界が狭くなり、また作家の想像力も広がりが感じられなくなってきてるようです。阿部和重の「シンセミア」等は考えないでもなかったんですけどね。
あ、中上健次は入れるべきだったか。私ヌルボが常としている風呂場読書、「鳳仙花」(新潮文庫)のせいで何日も長湯が続いたしなー。
あっ、それから気になっていた辻原登「韃靼の馬」も未読のまま。早く文庫にならないかな。・・・って、辻原登の本、全然読んでないぞ・・・。
「中原中也詩集」がなぜ先の「360冊」のリストに入れなかったのかは自分でもわかりません。1970年前後だったか、TBSラジオの夜の番組で大橋巨泉が中也の詩をいくつも音読して紹介していたのを覚えています。
10~12は戦時下の詩歌関係。いずれこれらについても別枠で詳述していきたいと思ってはいるのですが、いつになることか・・・。
おもしろい将棋本はいろいろありますが、ルールからしてご存知ない方には全然チンプンカンプンなので「聖の青春」にしました。
<高校生にすすめる本360冊(1998年版&増補)[3]>で大内延介「決断するとき」を紹介しましたが、そこで彼(大内)が将棋の魅力にめざめたという(有名な)詰将棋の図を載せるのを忘れていたので、遅ればせながら入れておきます。
※すぐわからない方。ヒントは( 3 )手詰です。←範囲指定すると現れます。
※それでもわからないという方。第2ヒントは(初手は5二馬)です。