ユアソン印の最高グルーヴ拡張中! ──JxJxに新作『Extended』インタヴュー!
ついにユアソンの新作が出る! 前作『OUT』から約3年半ぶりとなる新作フル・アルバム『Extended』を配信中! この快作を聴かないという選択肢はない! オトトイではリリースを記念して、サイトウ “JxJx” ジュンへのインタヴューを掲載。この『Extended』をつくりあげる苦悩や、今作に対する思いを語ってくれた。
前作『OUT』ではいままでのYOUR SONG IS GOODのイメージを刷新させることに成功した彼らだが、ダンスミュージックへの傾倒はまだまだ止まらない。今回リリースされる『Extended』では、さらに洗練された音楽を鳴らし、聴けば聴くほど気持ちいい! そんなアルバムになっている。結成20周年を目前に控えるユアソンの進化は止まらない!
約3年半ぶりとなるフル・アルバム
YOUR SONG IS GOOD / Extended
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 1,697円(税込)
【収録曲】
1. Cruise
2. New Dub
3. Mood Mood
4. Double Sider
5. Palm Tree
6. On
7. Waves
INTERVIEW : サイトウ “JxJx” ジュン(YOUR SONG IS GOOD)
僕たちのユアソンが帰ってきた! 『Extended』は、前作の『OUT』から約3年半ぶりのリリースとなる待望のフル・アルバムにして、全曲インストにこだわった究極の1枚。「ちょっと、待たせ過ぎですよ!」と思いつつ、音源を聴いてみたらやっぱり良い。どうして、リリースにそこまでの時間が空いてしまったのか事情を聞くと、そこにはサイトウ “JxJx” ジュンの苦悩と挫折があった。
なぜYOUR SONG IS GOODはダンスミュージックにこだわるのか? 『Extended』を聴く前に、このインタビューを読んでもらえれば作品の旨味をもっと感じてもらえるハズだ。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 作永裕範
「自分なりに気持ちよさを追求してみよう」って
──前作の『OUT』をリリースして、どのような手応えを感じました?
サイトウ “JxJx” ジュン(以下、JxJx) : 当時、バンドを結成して15年以上が経っていたんですけど「このバンドでも、まだ新しいことをやれそうだな」と思えたのが大きな手応えですかね。実際に『OUT』は、僕がダンスミュージックの面白さにどんどんハマっていくきっかけとなったアルバムなんですよ。
──周りからの反響はどうでしたか?
JxJx : 友達とか、レーベルメイトのみんなが「YOUR SONG IS GOODが新しいフェーズへ入った」みたいにおもしろがってくれて、嬉しかったですね。
──『OUT』の後、『Extended』をリリースするまでに約3年半の期間が空いたのはどうして?
JxJx : 手応えの話がありましたけど、『OUT』を作ったことで何か掴めたなと思ったんですが……実は全然掴めてなかったんですよね(笑)。
──どういうことですか?
JxJx : 個人的に『OUT』ってアルバム自体はとても気に入ってるし、ダンスミュージックに傾倒していく中で、あの作品はバンド的な面白さが物凄く入っているんですけど、ダンスミュージックのフォーマットに置き換えたら凄く情報量が多いなと思ったんです。それを踏まえて、次のアルバムは「もう少しシンプルにできないかな」と考えました。で、情報量が多い中で、「どの部分を残すべきなのか俺は……」みたいな悩みが目の前に生まれてしまいまして。結構、ここ3年半の間は新曲を作っては引っ込めてを繰り返して、ずっと悩んでましたね。
──「情報量が多い」という課題をどう解決したのでしょう?
JxJx : 『OUT』はアンサンブルとしての展開が多かったので、もうちょっと無くそうとか、各楽器の手数をもっと減らしてみようとか…… そういったところですかね。でも、そういうガチャガチャした部分にバンドの面白みがあることを知ってるから、意外と削るのって勇気がいるんですよ。「本当にこの音を減らして良いものか」、「ライブをやっておもしろいのかな」って疑問に思いまして。それで試してみては「なんか違うな」って、ずっとその繰り返し。
──制作意欲はあったけど、どうやって形にすれば良いかを見つけるのに時間が掛かったわけですね。
JxJx : そうです。「コレだ!」っていう、とっかかりとなるような曲を作るまでに、だいぶ試行錯誤しましたね。
──とっかかりとなった曲はなんですか?
JxJx : アルバムの最後に入っている「Waves」です。元々、僕らはパンク・ハードコアに物凄く影響を受けたところから始まっているので、はじめからテンションの打点が高かったんです。『OUT』でだいぶ下げたつもりだったんですけど、まだまだ下げられる余地があるなと。それで、最初のとっかかりとして「Waves」をつくっていったんですけど、ちょうど良いテンションまで下げるという作業にかなり時間が掛かりました。
──なぜ、時間がかかったのでしょうか?
JxJx : ロックやポップスに限らず、ダンスミュージックも毎年いろんなスタイルの音楽が生まれている訳じゃないですか。で、そんな中でも「ずっと聴ける音楽はあるよな」って気付いたんです。それは何かなと考えた時、古びない要素として“気持ちよさ”という部分は大きいんじゃないかなと思いました。それで、「自分なりに気持ちよさを追求してみよう」と。で、そこまでの課題は頭で考えられたんですけど、結局“気持ちよさ”の答えは感覚でしかないんですよね。「ああ、この感じ良いなあ」と思えたり、「俺はこの雰囲気が好きなのか」って感じる音の原因を探したりするのが大変で、そこに時間がかかりました。
──なるほど。
JxJx : デモを作って繰り返し聴いていったんですけど、「俺は本当にこれを気持ち良いと思えるのか」っていう自問自答が生まれてしまったりして、最終的には自分と向き合う作業になりました。気持ちよさを求めるているのに、答えが見つからず苦しい…… みたいな凄くヤバイ感じになっちゃって。
小学生ぐらいから何も変わってないって気付いたんです
──それはバンドマンとして20年以上のキャリアを積んだからこそ、生まれた葛藤だったのでしょうか?
JxJx : そうですね。速くて燃える音楽が好きな自分も、もちろんいるわけですよ。それと同時に、ゆっくりした音楽が好きな自分もいるんじゃないかなって思ったりして。そっちは、これまで生きてきてあんまり探ってこなかったんですよね。今作はそういう意味で、初めて自分と対峙する新しい冒険みたいな感じでした。
それでわかったのは、音楽をつくる中で色々と取捨選択があるなってことで。こっちの道へ行くのか、あっちの道へ行くのかみたいな分岐点に立ったとき、自分の気持ち良いと思う経験値に沿って進んで行こうと思ったんです。そこで僕の感覚って、小学生ぐらいから何も変わってないって気付いたんですよ。44歳になるまで色々と経験して、自分は進化しているつもりだったのに…… アレ? って。「全然成長してないな」って思い知らされて、凄い落ち込みましたね(笑)。
──音楽を通して、自分の人生を見つめ直したんですね。
JxJx : はい(笑)。これまで、何をやってたのかな俺…… みたいな感じですね。「そもそも、音楽を作るのはこんなやり方だっけ」みたいになって。もう、笑いましたね。
──経験を積んで、表現する音楽の選択肢が増えたからこそ、生まれた苦悩ですか?
JxJx : それもあると思います。結局、音楽は何でも好きだったりはするので。気持ちよさをテーマに絞りこもうと思ったとき、これまでは自分自身とちゃんと向き合ってなかったんでしょうね。なんか、今回は向き合っちゃった(笑)。
──向き合っちゃったって(笑)。
JxJx : これぐらいのテンションで、そこまでヘヴィーな話ではないことにしておきます(笑)。
──JxJxさんが自分自身と向き合った末に見つけた、YOUR SONG IS GOODが提唱するダンスミュージックって何なのでしょうか?
JxJx : その質問は……、ムズイっすね(笑)。やっぱり、各々が勝手気ままに踊る、あるいは踊らないっていうことなのかなって思いますけどね。僕らはそれを提供する音楽の1つでしかないっていうか。究極なことを言ってしまえば、「楽しく過ごしてもらいたい」だけなんですよ。「この曲は振り付けが決まってるから、こうやって踊ってほしい」というものではないですね。勝手に帰ってもいいし、途中から入ってきてもいいしって感じです。
──改めて『Extended』は、どんなアルバムですか?
JxJx : ザックリとヌケのいいもの、そういったものを追求したアルバムかな、と。ダンスミュージックの面白いところは、説明的ではなくて、なんかミステリアスな余地があるんですよ。そこが聴いていて楽しいところですし、すごく影響を受けてます。例えば、気持ちいい言葉って比較的に説明的な表現が多いんですよね。単語として強いというか、その一言で全部描かれきってしまうような言葉が多くて、そういうことではないなと思ってて。
──なるほど。
JxJx : そこで、タイトルの『Extended』って、元の曲に対して引き伸ばしていくとか、拡張されたって意味で、よくダンスミュージックの12インチとかで使われている言葉なんですけど、その引き伸ばされた部分に余地だったり、今見えている景色以外のものまで広がっていくようなおもしろさがすごくあるなと思って名付けました。
──アルバムを制作する上で、ヒントになった音楽はありますか?
JxJx : 「On」という曲で顕著に表れているんですけど、ディスコRe-Editっていうスタイルがやっぱりおもしろいなと思っていて。あるフレーズをダンスしやすいように繰り返していくわけですよ。こういう音楽って元のフレーズから繰り返されることによって、新しいものに生まれ変わっていくおもしろさがあるじゃないですか。こういうスタイルは目新しいモノではないですが、やっぱりあの感じが良いなと思ってて。ポイントは「それを生演奏で普通に、当たり前のアレンジとしてサラっとやってみようかな」という感じで、つくりました。
YOUR SONG IS GOODの編成って変だな〜
──ちなみに来年で結成20周年を迎えますが、これまでの活動を振り返ってどうですか?
JxJx : いや~1つのバンドをこんなに続けるつもりはなかったですね。僕自身はあんまり長く続けることに重きは置いていないタイプの人間だなとは思っています。ただ、どうして、ここまで続けられたのか原因はなんとなく見えていて…… 多分1枚ごとにやることやスタイルを変えていて、同じ人と結成と解散を繰り返しているような感じでやっていたから、20年も続けてこれたんだと思います。
──たしかに、YOUR SONG IS GOODって作品ごとに変化し続けている類い稀なバンドですよね。
JxJx : そもそもバンドの成り立ちが変なんですよね。こういう音楽をやりたいと思って結成するときって、普通だったらそれに向けた編成をするじゃないですか。例えばスカのバンドだったらホーンセクションがいて、ギターと鍵盤がいて、ドラムとベースがいて、みたいなジャンルにあった編成ってあると思うんですけど。僕たちの場合は友達同志で集まったからとか、できる楽器がたまたまこんなだった、みたいなスタンスなんですよ。
今だって、曲をつくる時に「なんで、この編成なんだろう……」って悩むことありますから(笑)。「うわっ! 思った感じならないなー」ってことを20年続けちゃってるような感じがありますね。それを納得するところまで毎回作り上げている感じ。主観的に見ても、客観的に見て、「YOUR SONG IS GOODの編成って変だな~」っていつも思ってます(笑)。
──そんなYOUR SONG IS GOODを突き詰めていくと、どこに行き着くんでしょうか?
JxJx : うわ~難しいですね…… 強いて挙げるなら憧れのバンドはTHE SPECIALSかなあ。でも、これは地球上の何十万バンドが言う答えだと思います。そのうちの1つが僕達。
──未だにTHE SPECIALSが神格化されているのは、どうしてだと思います?
JxJx : 抜群にカッコイイからじゃないですか。音、スタイル、アティテュードのすべてがあそこにあるんですよね。バンドっていう形で言うところの最高の仕上がりだと思います。
──ちなみに特にお気に入りの作品ってありますか?
JxJx : 今日の気分で良いですか? 『The Special AKA Live!』に収録されてる「Guns of Navarone」。あれは最高のカバーですね。
──そういえば、所属されているカクバリズムが今年15周年を迎えますよね。改めてYOUR SONG IS GOODとの関係を教えてください。
JxJx : いまとなっては大人の関係でもあるんですけど、根本的なところは遊び友達かなと思ってますね。カクバリズムを立ち上げる時、角張渉に話していたのは「自分たちの居場所=遊び場を作ろう」という。友達だから、空気はゆるいんですけど、しっかり譲れないところがあるから15年も続いたんだと思います。もっと仕事仕事してくると、ちょっとダサくても良いかなって余地が出てくると思いますけど、友達からダサイと思われたくないじゃないですか。そんな関係性があって。それはバンド対レーベルもそうですし、横のレーベル・メイトとの繋がりでもそんなところはあるのかな。
──客観的に見て、カクバリズムに所属しているアーティストのカラーってどう見えてますか?
JxJx : それは完全に角張渉の好みですね。「キミは本当に、そういうバンドが好きだね~」って思って見てます(笑)。商業的というよりも、本当に気に入ったアーティストしか呼ばないので、そこが大事なんですよね。ある種、恋愛スタイルというか、そこがややこしいところでもありますけど。
──どういうことですか(笑)?
JxJx : 「俺よりも、他のバンドが好きなんじゃないか」って、ヤキモチがあるというか。「もっと、こっちを向いてほしい」みたいな(笑)。お互いが好きで惹かれあっているから。そこが唯一の欠点でしょうね。
配信中の過去作もチェック!
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LIVE SCHEDULE
〈6th ALBUM “Extended”Release ONEMAN TOUR〉
2017年5月20日(土)@愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2017年5月28日(日)@宮城 仙台enn 2nd
2017年6月3日(土)@大阪 梅田Shangri-La
2017年6月11日(日)@福岡 Early Believers
2017年7月1日(土)@東京 渋谷WWWX
〈the band apart SMOOTH LIKE GREENSPIA〉
2017年5月13日(土)@大阪 服部緑地野外音楽堂
LIVE : YOUR SONG IS GOOD / the band apart / and more…
〈森、道、市場 2017〉
2017年5月14日(日)@愛知 蒲郡ラグーナビーチ / ラグナシア
LIVE : YOUR SONG IS GOOD / cero / and more…
〈GREENROOM FESTIVAL’17〉
2017.05.21 SUN @ 横浜赤レンガ地区野外特設会場
LIVE : YOUR SONG IS GOOD / cero / and more…
〈SOUL TIME IN TOKYO “OPENING PARTY”〉
2017年05月26(金)@TOKYO CULTUART by BEAMS
LIVE : JUN “JxJx” SAITO(YOUR SONG IS GOOD)+ VIDEOTAPEMUSIC(Special Session)
DJ : ALOHA GOT SOUL(from Hawaii) / DJ NOTOYA
〈SOUL TIME IN TOKYO “AFTER PARTY”〉
2017年5月26日(金)@三軒茶屋 a-bridge
DJ : JUN “JxJx” SAITO(YOUR SONG IS GOOD) / 髙城晶平(cero) / ALOHA GOT SOUL(from Hawaii) / HIROSHI KAWANABE(TOKYO No1 SOULSET) / DJ YAMA / DJ NOTOYA
〈何かにつけて打ち上がる会 〜YOUR SONG IS GOOD「Extended」レコ発ツアー金沢場所〜〉
2017年6月17日(土)@金沢 MANIER
LIVE : YOUR SONG IS GOOD / Hotel New Tokyo
DJ : サイトウ “JxJx” ジュン(YOUR SONG IS GOOD) × 今谷忠弘(Hotel New Tokyo) / 3SHINE(KAZ×TAMA) / よふかしレコード(eouzen × おばけのキーン) / 百万石ストアーズ(FUNKEY LEMONADE × mppn1800)
〈『Extended』レコ発&カクバリズム15周年キックオフイベント『NEW MEMORIAL HITS』〉
LIVE : YOUR SONG IS GOOD / cero
PROFILE
YOUR SONG IS GOOD
1998年東京で結成。カクバリズム所属。通称YSIG。サイトウ"JxJx"ジュン、ヨシザワ"MAURICE"マサトモ、シライシ"JICHO"コウジ、ハットリ"SHORTY"ヤスヒコ、タカダ"DAATAKA"ヒロユキ、タナカ"ZEERAY"レイジに、現在、サポートパーカッショニストの松井泉を加えた7人体制。
はじまりはパンク・ロック、今はあえて言うならダンス音楽を演奏するインストゥルメンタル・バンド。DIYなスタジオライヴから、ライヴハウス、クラブ、FUJIROCKグリーンステージ等の巨大野外ロックフェスまで、ジャンル、場所、雰囲気、メジャー / インディ、時間帯、問わず、定評のあるライブを展開中。
またオリジナル・アルバム、7インチ・シングル、コンピ等、これまでに数多くの作品を、様々なスタイルと対峙しながら生み出すも、2013年、これまでのイメージを大幅に更新した異常なるFRESH感搭載のニュー・アルバム、その名も『OUT』をドロップ。トロピカルなルーツミュージックを大胆に解体、ハウス / ディスコ / テクノ / ベース、また時にポストロック的、もしくはプリミティヴな感覚でもって再構築、オリジナルな生演奏ダンスミュージックへの昇華に成功。Being Borings, LORD ECHO(From NZ)、Force Of Natureと最高のリミキサー陣を迎えた『OUT』からのアナログ12inchシングル・リカット・シリーズ3タイトルをリリース。
9月には新曲とGonnoリミックスを搭載した最新12インチ『Waves』をリリース。約3年半ぶり6枚目となるニュー・アルバム『Extended』を2017年5月10日にリリースする。感度良好な音楽愛好家達からの賞賛を浴びつつ、只今、キャリア史上もっとも目が離せないGOD ONLY KNOWS状態で諸々進行中である。WAH! WAH! WAH! WAH! WAH! WAH! WAH!