ニヤリとする仕掛け満載の遊び場が完成!!──バンドマンでもラッパーでもないMomって何モノ?!
「カッコイイ」を内包した「カワイイ」クリエイティヴを表現するシンガー・ソングライターでトラックメイカーのMomが初のフル・アルバム『PLAYGROUND』をリリース! 自らトラックを作成し、ネットを中心に楽曲をアップする若いミュージシャンが増えているここ最近ですが、その中でも特出したメロディ・センスを携えているのが、このMomなんです。今後そんな次世代ミュージシャンの先頭を走り続けること間違いなしの彼はどのように音楽を手にしたのか、インタヴューで彼の人物像を掘り下げます! どこか懐かしい匂いが漂うメロディ・センス抜群なポップ・ミュージックをいますぐ君のプレイリストに追加しよう!
ところどころに散りばめられた遊び心が楽しい!
INTERVIEW : Mom
Momの音楽はMVやジャケット写真のアートワーク込みで、どこか懐かしさを感じさせる。ただ「あのアーティストっぽい」とかではない。完全に彼のオリジナルでありながら、聴いていると90年代の匂いや温度が漂ってくる。その理由がこのインタヴューで解明されたと思う。 小学生の頃、B‘zに惹かれて「自分も音楽を仕事にしよう」と思ったMom。その後、ヒップホップと出会い、そこで自分らしい音楽を見出していく——今回は、彼の生い立ちから現在まで、どのように歩んできたのか迫ってMomというアーティストがどう出来上がったのかを掘り下げた。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 作永裕範
小学3年〜5年生までB‘z以外は聴いてなかった
マネージャー : (カメラマンに向かって)カーテン開けますか?
カメラマン : いや、写真的には開けなくても大丈夫ですよ。
Mom : 助かります。僕、高所恐怖症なので。
──怖いのは高所だけですか?
Mom : そうですね。あとは恐怖症じゃないですけど、納豆が超嫌いでした。
──普段、納豆の匂いを嗅ぐ場面ってそんなにあります?
Mom : もともと家が納豆工場だったので常に匂いが充満していたんです(笑)。で、家族も食事の時は当たり前のように納豆を食べるから、子供の頃から逆に抵抗があって。
──ちなみに小学1年生のMomさんは、親に隠れてORANGE RANGEを聴いてたそうですね。
Mom : 小さい頃から恥ずかしいのが嫌で。ORANGE RANGEってエッチな表現の曲があるじゃないですか。そういうのを親に認知されたくなくて、バレないように聴いてました(笑)。
──小学1年でORANGE RANGEを聴くのは、早熟だと思うんですよ。普通は『忍たま乱太郎』とか『ドラえもん』とかアニソンに興味を持つじゃないですか。
Mom : 姉が音楽を聴く人だったので、その影響でヒット曲をいろいろと聴いてました。
──初めて自分から好きになったアーティストは誰ですか?
Mom : B‘zです。2006年に『喰いタン』というドラマの主題歌(「結晶」)を担当してたんですけど、それを聴いてハマりました。音楽はもちろんですけど、稲葉さんのビジュアルも好きで。学校から帰ったら、ひたすらB'zのDVDを観る生活をしてました。そのあと、ファンクラブにも入って小学3年〜5年生までB‘z以外は聴いてなかったです。
──B‘zって、Momさんの音楽にも影響してると思います?
Mom : 稲葉さんってダサくて女々しい歌詞をたまに書くんですよ。その「情けなさ」がすごく好きでした。メロディの感じもそうですけど、そういう音楽から滲み出る人懐っこさは影響を受けているのかもしれないです。
──以前、高橋優さんに影響を受けた音楽を教えていただいたら、稲葉さんの『マグマ』をあげていて。僕が理由を聞くと「あそこまでのスーパースターなのに、歌詞がカッコ悪いし、弱々しさを曝け出している。そこに惹かれました」と。
Mom : そうなんですよね。僕も稲葉さんのソロ作品も好きですけど、そういう情けない面が強く出ていて「可愛いな」と思って。そういうところが好きでしたね。
今の時代は違和感が大事だと思う
──そこから、どのように音楽と接してきたんですか?
Mom : B‘zとエアロスミスが共演をしたことがあったんです。それから、小学6年生でエアロスミスも聴くようになって。芋づる式にマッチョな洋楽を聴くようになったんですけど、ぜんぜん好きになれなくて。その後はオアシス、レディオヘッド、ソニックユース、ピクシーズのような繊細さを纏っているようなバンドを聴くようになりました。
次に音楽雑誌を読んで「90年代オルタナティヴ・ロック特集」に紹介されたCDを聴いたりして。そこから2000年代の音楽を知り、ザ・ストロークス、ザ・ホワイト・ストライプス、ブロック・パーティとかニューウェーブっぽいものからインディ・ポップなバンドを聴くようになりました。それで、他のクラスにギターをやっている奴がいて、グリーンデイのコピーをして。他にはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの「Feel Good Hit Of The Summer」をギターで弾いて、和訳した歌詞を友達に歌わせてパソコンに打ち込んで遊んだりしましたね。
──それが中学1年生ですよね。その年齢にしては、かなり本格的だなと。
Mom : 自分のクリエイティヴを形にしたい欲は昔からあって。漫画を読まないのに、手書きで漫画を描いてみたり、そういう作ることが好きなんです。何か残したいというか。
──高校時代はどう過ごしていたんですか。
Mom : ロックをやりたくて軽音楽部に入ったんですけど、バンドをやっている人たちってクセの強い人が多いから、自分とあんまり合わなくて。「僕はバンドに向いてないのかもしれない」と、その時に思って1年ほどで退部しました。その後に音楽の価値観を変えた出来事が起こりまして。僕はCDの収集家で、ひたすら中古CD屋さんで好きなCDを買い漁ってたんです。ある日、CDを取り込んでいたパソコンが壊れてしまって、「ネット上で公開している音源って何があるんだろう」と調べたら、チャンス・ザ・ラッパーの『Acid Rap』というアルバムがあがっていたんです。そこには、いままで聴いてきた音楽にはないものが詰まってて、言葉の乗せ方とかリズムも新鮮だったし、何より音楽を身軽にやってると思ったんです。それで、チャンス・ザ・ラッパーと同世代のラッパーが「MIXTAPE」という形で作品をたくさん出してて。リック・ロス、タイラー・ザ・クリエイター、エイサップ・ロッキーも「MIXTAPE」をきっかけに知りました。あとは、バッドバッドノットグッドという若いジャズバンドの作品も聴いて、めちゃくちゃクールだなって。
「自分がやりたいのはこっちじゃないか」と気づいて、それから高校時代はブラック・ミュージックをひたすら掘ってました。僕が共通して好きだと思ったのは、ニュースクール以降のマットな質感のするブラック・ミュージック。その後は、ディアンジェロも好きになったし、ひたすらヒップホップのクラシックを聴いたり、最近のブラック・ミュージックも聴くようになって。特にフランク・オーシャンが好きでしたね。
──フランク・オーシャンのどこに惹かれたんですか?
Mom : 『ブロンド』は人生で1番いいと思ったアルバムなんです。ビジュアルも好きだし、ありそうでない音のバランスも好きだし、いまの時代は違和感が大事だと思うんですけど、その違和感も感じさせる。ピッチを意図的に上げていたり、変なフレーズがたくさんあるんですけど、それが全部美しさにまとまる感じがグッときましたね。
──Momさんが曲作りをはじめたのは高校生の頃ですよね。
Mom : 高校1年生の春休みですね。軽音楽部を辞めて時間ができたから「じゃあ、音楽を作るしかないでしょ」と。その時はHIPHOPと出会いたてだから、自分の中で音楽をうまく咀嚼できてなくて。それを音にするのは難しい状態だったので、その時はギター・ポップみたいな感じの曲を作ってました。携帯の『GarageBand』で作るようになったのは、高校1年生でしたね。
──作った曲はどこかで披露したんですか?
Mom : ライヴに出ることは一切なかったですけど、作った音源をいろんなレコード会社に送って反応を伺ってました。それが高校2年生の頃で、とにかく行動力がありましたね。
──反応はどうだったんですか?
Mom : いやぁ〜ダメでした。
──今の音楽と違うんですか。
Mom : ぜんぜん違います。酷かったと思いますね(笑)。案の定あんまり良い反応がもらえず、次に送ったのが高校2年生の夏休み。そしたら、いまのスタッフから2日後に連絡がもらえて「ヤバイ!」と思って。ただ、すぐに契約とかじゃなくて、曲ができる度にひたすら音源を送り「ここはこうした方が良いよ」みたいなアドバイスをもらうようなやり取りが続きました。その後、新人開発部の方に誘ってもらって、2回ほど弾き語りでライヴをさせてもらいました。3年生になったら受験勉強があるので、ピタッと音楽を辞めたんですけど、結局その時期が1番音楽を聴いてしまって。だから、あんまりいい大学に入れなかったですね(笑)。
メジャーな人で、こんなにローファイ感な人はいないだろう、と
──なるほど(笑)。その後、どうやってアーティストになったんですか?
Mom : 大学に入ってから、コンスタントに曲をネットにアップしてたんです。そしたらの〈Ano(t)raks〉というネットレーベルの方から「ウチで作品を出さないか」と誘っていただいて、『G・E・E・K』を配信でリリースしました。そのアルバムは、今回の『PLAYGROUND』にも入ってる「Boyfriend」という曲を収録してて。当時はiPhoneで作ったから、めちゃくちゃローファイなんですけど、そのEPを出したくらいから自分の中のMom像が見えてきました。日本語RAPをぜんぜん違う方向で咀嚼してやろう、と。
──今までの日本語ラップに対して、Momさんが壊していることは何でしょう。
Mom : ミックスに変な箇所が多いし、音も荒い。それをJ-POPという文脈の中で鳴らしている痛快さはありますね。逆にメジャーな人で、こんなにローファイ感な人はいないだろう、と。今作はクレオとか、レジー・スノウとか、そういうミュージシャンたちの音を参考にしているんですけど。フランク・オーシャンもそうですけど、そのままの音像でアプローチする人は日本にあまりいないと思うんです。何かあればすぐ生楽器に変えたりするのは「あぁ、日本っぽいな」と、ちょっとがっかりしちゃう部分があって。自分が大事にしてるのは音なんですよね。オモチャ感とかガラクタ感が好きなのに、これを日本でやったら「あの音が良いのに、キレイな音になっちゃうだろうな」って。「もっと軽くて良いのに」と。
──Momさんの音楽を聴くと、良い曲を飄々と見せる感じがRIPSLYMのPESさんっぽいなと思うんですよ。油断させつつ、ものすごいスキルフルなことをやっている。
Mom : ロックの人たちって「この人はいろんな音楽を知っているんだろうな」と思わせるアプローチをする傾向があって。逆に「めちゃくちゃ音楽を知ってるんだけど、あえて魅見せてない感じ」それがヒップホップの人たちに対する認識で、僕自身ものすごく参考にしました。音楽が出来るだけ敷居の低いものとして、受け入れらたらうれしいなって思います。
──ちなみに今回で取材は何本目ですか?
Mom : 3本目です。
──インタヴュアーから、作品についてはどんな反応をされました?
Mom : 「え、そんなんで!?」って驚かれる方が多かったです。
──「そんなんで?」とは?
Mom : 車の中でヴォーカルを録ったり、オートチューンをiPhoneで録ってることに驚いてましたね。僕はこれをそのまま出すことに意味があるんだと、使命感もありつつ。あとはもっと音楽を聴かないような、今時の若者だと思われてたみたいで。それを聞いてしめしめと思いました。いわゆるYouTube世代とも言われる年代だと思うなので、もっと雑食に流行りの曲を聴いてると思われていたみたいなんですけど。
──むしろCD派ですからね。
Mom : そうなんです(笑)。もともとが超アナログ人間なので。
──同世代の人と価値観が違ったりします?
Mom : そんなこともないですよ。渋谷、原宿、高円寺とかで洋服を買いに行くし。…… なんか、人からの見え方を大学に入ってから考えるようになって。暗い奴に見られたくないし、安い奴にも見られたくない意識が強くて。そういう考えは、アーティストとしての見せ方にも直結してると思います。
──ところで、大学にはちゃんと通っていますか?
Mom : いや…… あんまり(笑)。単純に大学を軽視してるところがあるんです。
──どういう意味ですか?
Mom : 別に大学に行こうが、行くまいが僕は音楽を仕事にしたいと思ってたんです。だから、大学は社会へ出るまでの猶予期間として、4年間を利用してやろうと思って入ったんです。
──卒業までにミュージシャンとして、生計を立てられるようにと。
Mom : そうですね。だからこそ、いっぱい曲を作ることができました。
──話をお聞きすると、高校生の頃からレコード会社に自分の音源を送ったり、大学生になったら曲を発表し続けたり、行動力もモチベーションも高いですよね。
Mom : それは自分の好きなことだからですね。逆に、興味のないことには、全くやる気を出せないんです。学生の頃から先生に「やれば出来る子なのに」とずっと言われてました……だけど、やらなかった。
──それは大人への反抗?
Mom : いや、そういう病気だと思う(笑)。
──そんな病気ないですよ!
Mom : アハハハハ、自分が興味のないことは本当にやらないんですよ。だから、こういう我を出せるアーティストという仕事が向いているのかもしれない。逆に「これ以外で自分は何ができるんだ?」とも思ってます。
『PLAYGROUND』のご購入はこちらから
過去作も配信中!
LIVE SCHEDULE
Mom presents 『PLAYGROUND』 release party
2018年12月6日(木) 渋谷@TSUTAYA O-nest
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
出演 : Mom / betcover!! / さとうもか
チケット : 2300yen+1D
https://www.diskgarage.com/ticket/detail/no079839
PROFILE
Mom
シンガー・ソングライター / トラックメイカー。現役大学生の21歳。
「カッコイイ」を内包した「カワイイ」クリエイティヴを表現するため、音源だけではなくジャケットやMusic Videoなどのアートワークもすべて自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる様は、言い例えるなら、次世代に向けた“CRAFT HIP HOP”。
すべてのトラックをiPhone、ノート・パソコンのガレージバンドを駆使し制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないキャッチーなメロディセンスが光る。
【公式HP】
https://www.mom-official.jp
【公式ツイッター】
https://twitter.com/karibe_mom