THIS IS JAPAN、危機を乗り越え食らいついた新たな“味” ──3rd EP『WEEKENDER』をリリース
東京インディー・シーンを代表するオルタナ・ロック・バンド、THIS IS JAPAN。今年〈フジロック〉や〈BAYCAMP〉といった夏フェスに参戦し、そのパフォーマンスにさらなる磨きをかけてきた彼らが、2019年11月27日(水)に3rd EP『WEEKENDER』をリリース。前作『FROM ALTERNATIVE』では疾走感のある爆音が炸裂したオルタナ・サウンドが印象的だったが、今作ではそういったイメージとはまた違った魅力も感じさせる1枚になった。なぜこのような変化が起こったのか。それを確かめるためにインタヴューを行なった。
新機軸爆発の新作、配信中!
INTERVIEW : THIS IS JAPAN
結成以来、オルタナティヴを標榜しながら音楽シーンと対峙してきたTHIS IS JAPANにとって、2019年は大きなフェスの舞台を踏み、存在感を見せた年となった。その1年を締めくくるかのようにリリースされる今作『WEEKENDER』は、2018年に配信されたレゲエタッチの「SUNNY」(映画「ギャングース」挿入歌)、ミニマルなリズムで踊らせる「Yellow」、ポップなメロディと尖ったサウンドが対照的な「手紙」といった曲が示しているように、バンドにとってもこれまでと異なるアプローチをとった作品だったようだ。また、「SUNNY」を除き作詞は全てかわむら(Dr)が担当している。こうした変化の背景には何があったのか? メンバー4人に話を訊いた。もうすぐ、世界中から日本に注目が集まる2020年がやってくる。“THIS IS JAPAN”の名に相応しい活躍へ向けて、大いなる序章となるインタヴューをどうぞ。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 宇佐美亮
ちゃんと筋が通っていればカッコ悪くないんだ
──OTOTOYのインタヴューは1年半ぶりですね。2019年も残り1ヶ月あまりですが、今年はどんな1年でしたか。
かわむら(Dr) : 今回の作品にもつながることなんですけど、2019年を振り返るとかなり曲を作っていたなと。いままではライヴ活動の延長で曲が生まれていたものを、上手く外に出していたと思っているんですけど、今年はちゃんと自分たちの音楽作りを意識して活動していた気がします。もちろん、ライヴも多かったんですけど。
杉森ジャック(Vo&Gt) : 1月ぐらいから3月ぐらいまで、結構みっちり制作してました。それと、今年は野外のフェスとかにも出させていただいたんですけど、記憶として雨が多かったですね(笑)。その雨の中でライヴをするっていう新鮮な感じがありました。
──雨の中のライヴって、傍から見てるとドラマティックに映ったりしますけど、実際やる側はどう思ってるんですか?
杉森 : 「止まねえかな?」って思ってます(笑)。〈フジロック〉も〈BAYCAMP〉も、どちらもはじめて出させていただいたんですけど、持ち時間を全力でできたというのは最高だったし、雨の中でもお客さんが待っていてくれて観てくれたというのは本当にありがたかったですね。
小山祐樹(Gt&Vo) : 本当に、立ってられないぐらい降ったので。〈フジロック〉は中日だったんですけど、その日だけ朝から土砂降りで、お酒飲んでたら“雨割り”になっちゃうぐらい(笑)。ライヴでは僕らは屋根があったんですけど(苗場食堂に出演)、雨の中でお客さんが観ていてくれたのは感動しましたね。中学生の頃を思い起こすと、まさか自分が〈フジロック〉に出られるとは思わなかったですし、その感動もありました。「やってきてよかった」って、希望が持てる一年でした。
水元太郎(Ba) : 制作期間に、「こういう方向がいいんじゃないか」っていうことをみんなで話し合っていて、それに対して半信半疑で「いいんじゃないかな」ってやっていたんですけど、〈フジロック〉に出ていろんなバンドを観たときに、良いなと思うバンドは一本筋が通っている気がして。それを観て、自分たちは間違ってないんじゃないかなっていう自信が持てたことが、今年のハイライトでした。
──今年前半の制作期間を経ての大きな舞台で、バンドのやっていることに確信が持てた?
水元 : う〜ん、確信まで行ってるかはわからないですけど(笑)。いいんじゃないかなって。
かわむら : 確信なのかはわからないけど、バンドとして自分たちにできることをやって前に進んで行くこと、変わっていくことを恐れずに取り組んで行くということは、ちゃんと筋が通っていればカッコ悪くないんだっていうことはすごく思いました。
──オルタナティヴを打ち出しているTHIS IS JAPANが、いろんな音楽ファンが集まる大きなフェスに、どんな気持ちで臨んでいたんでしょうか。
かわむら : 〈フジロック〉で大きなステージをいくつも観たんですけど、どのバンドもめちゃくちゃ尖っているというか。我々が〈フジロック〉に行って異端という感じじゃなくて、その大きいステージに立つ人たちの“異端さ”に、めちゃくちゃビビらされたような気持ちは、正直あったよね?
杉森 : うん、ありました。
かわむら : 「マスに向けて」なんていうのは思い上がりだなっていうのはあったし、だからこそ、俺たちが信じることをやらないといけないなという思いがありました。
杉森 : それはあったね。純粋に自分たちがやりたいと思ったことを、嘘をつかずにちゃんとやりきることが大事だし、やり切っても受け止めてもらえるんじゃないかっていう希望みたいなものはありました。逆に、ちょっとでも迎合したりとか、当てに行ったりとかすると、純度が失われて誰にも刺さらないものになってしまうんじゃないかなっていう、気付きは〈フジロック〉に出たときにありましたね。
小山 : どのアーティストも、何かに対して発言したり歌っているというよりも、ステージの上でどんどん洗練させて行って、それを観せているというか。僕らは前まで「何かに対して何かをやってやりたい」という気持ちが原動力になっていたところもあったんですけど、最近は、それよりもステージに立ったときに何を作り上げられるかという方に意識が行ってるんじゃないかと思います。
水元 : 僕個人の気持ちで言うと、前まではデカいものとか流行に対して嫌な気持ちを持っていて、それに対してやっているようなところがあったんです。でも、バンドの音楽が向かう先はそういうものじゃないんだっていう気持ちにはなりました。
2018年末ぐらいから、曲ができなくなったんですよね
──今年1月から制作期間があったということですが、今作に収録された7曲のうち“SUNNY”は2018年に配信されていた曲ですね。これまでになかった印象の曲ですが。
かわむら : “SUNNY”は、映画『ギャングース』(入江悠監督)の挿入歌ということで、監督とディレクターから、「こういう尺で、こういうビートで」という要望があったうえで作った曲ではあるので、これまでの曲作りとは毛色が違うというのはあるかもしれないです。
杉森 : “SUNNY”は他の6曲とは作り方が違うし、客演でWUJA BIN BINにホーンやパーカッションを入ってもらって、いままでとは違うけど、THIS IS JAPANらしいものはやれたかなと。そういう意味では、最後にこの曲があるのは座りがイイなと思ってます。映画「ギャングース」の挿入歌として制作をしたんですけど、映画館で自分の曲が流れてくるとういうのはうれしかったですし、そこですごく思い入れが生まれました。あと、THIS IS JAPANはテンポが速い曲が多いんですけど、これぐらいゆっくりめでも、THIS IS JAPANとしてちゃんと成り立つんだなっていうのがわかったことが、バンドとして1番の収穫だった気がしますね。
──こういうレゲエタッチなテイストって、メンバーのみなさんの音楽的な引き出しにもともとあったものなんですか?
杉森 : さっき、かわむらが言っていたようにリファレンスを、もらっていたんですけど、自分の中でレゲエでパンクっぽいものって考えたときに、The Clashの『London Calling』以降の感じは「これだったらできるかも」という感じありました。他のメンバーはどうなんですかね?
小山 : もともと、「The Clashの“Rudie Can't Fail”のイメージで」という話があって。僕らも、レゲエ自体詳しいわけじゃなくて、イギリスとかレゲエを吸収したニューウェーブとかポストパンクっていう角度でしか知らなかったんですけど、かわむらと水元はFISHMANSとか、ダブのノリというのは引き出しにあったかもしれないですね。
水元 : 僕は、逆にFISHMANSしか引き出しになかったです。柏原譲さん(ex. FISHMANS / 現Polaris)が尊敬する3大ベーシストのひとりなので。そのイメージで弾いたんですけど、そこには届かなかったです。むずかしかった(笑)。
一同 : (笑)。
──“SUNNY”が出来てから、その後の6曲が生まれて行ったんですか?
杉森 : “SUNNY”はちょっと別枠で作っていて、残りの6曲は今年1月からのプリプロ期間に作って行きました。
かわむら : そもそも、ライヴを中心に曲を作るというやり方でずっとやってきたんですけど、曲作りの期間は1ヶ月に10曲ずつ出していって。その中で自分たちの要素を出しきって、いま自分たちは何ができて何がしたいのかというのを、ライヴと並行してやっていくという制作方法だったんです。“グルメ”と“apple me”に関しては、ちょっと先んじてあった曲というか。ライヴをやっていった中で生まれた曲でもあって。
──ライヴをやりながら曲が生まれる、ということについて訊きたいんですけど、要はできた曲をまずライヴで披露して、そこから揉んでいくみたいなことですか?
かわむら : いや、「ライヴでこういう曲をやりたいから作る」という感じなんですよ。いま自分たちがやりたいライヴで、「こういう曲、ああいうものがやりたい」ということから、曲作りが発信するというのは、ずっとあるんです。
──へえ〜! 曲ができたからライヴで披露する、ということじゃないんですね。
杉森 : そうなんですよ。
小山 : 割と未完成と言っていいぐらいの状態でもうライヴでやってしまって、やっているうちにそれぞれの「あ、これいいかも」というのが定着していって変わっていく。初期の段階ではそういうのが多かったです。今回で言うと、“グルメ”や“apple me”はそのやり方で作りました。
かわむら : 他の曲は、“曲を作ろうとして作った曲”です。
──それを、1月から3月の制作期間に作ったということですね。そもそも、どうして曲作りの方法に違いができたんですか?
かわむら : 簡単に言うと、行き詰ったんですよね。いままではずっと杉森と小山を中心に曲を作って、言いたいことを乗せてそこからライヴで実現していくという形だったんですけど。2018年末ぐらいから、曲ができなくなったんですよね。
杉森 : そうなんですよ。『FROM ALTERNATIVE』(2018年5月2日リリース)は自分の書いた曲が多いアルバムで、その後にも頑張って曲を書いているんですけど、本当の意味での新しい曲ができなくて。メンバーに聴かせてみても、「前の他の曲との違いがわからん」とか、「本当に魂を込めてるのか?」みたいな反応で、なにか響いてないんだなっていうことがあって。いろいろと自分なりに曲作りについて模索したんですけど、これがなかなかできないんですよ。アコギを弾いて作ってみたりとか、それでもできないので公園にアコギを持って作ってみたりとか。そこで、「閃いた!」と思って家に帰って録音して、朝聴いてみるとなにも良くないなみたいな(苦笑)。
そういう時期が結構続いてて、当然歌詞については曲よりも遅いので歌詞もできなくなってきて。それでどうしようかなと思ってたんですけど、1月からめちゃくちゃ曲を作ろうという話になったので、自分のやりたい音にフォーカスしていって、「こういう曲をやりたい」という気持ちだけで、なんとか出していって。そんな中で、かわむらと小山が「これは良いものを感じる」というものを見つけて、4人で揉んで曲にしていったんです。“SUNNY”は俺が1人で作った曲だったかなと思うんですけど、他はメンバー4人で作った感じです。
かわむら : いままでは杉森頼みで曲を作っていたんですけど、今回行き詰っちゃったんで、曲が降りてくるのを待つみたいなことはせずに、自分たちがインプットしてきたものを素直に出して行こうと思ったんです。それには曲を作るしかないということで、「4人の力を合わせてやろう」ってみんなで決意して。それぞれがやれることを確認しながら曲を作りましょうということで始まったのが、今年1月〜3月の曲作り期間だったんです。
──なるほど、あえて期間を設けたという?
かわむら : もちろん、新しいものを出さなきゃいけないという期限的なものもあったんですけど、根本には杉森に頼っていたところを、ちゃんと原点に立ち返って4人の音楽をぶつけてみようぜっていうことで。1ヶ月10曲、3ヶ月で30曲を作るというノルマを課したのは、その決意の表れです。
──4人で力を合わせてとはいえ、それだけの曲数を作るのって並大抵じゃないですよね。具体的にはどうやって作っていったんですか。
かわむら : 4人の中で1番音楽を聴くのがたぶん小山なんですよ。いままでの曲作りでも、ギター・ワークだとかアレンジでもリズムのキモになっているようなおもしろい部分は、小山が担ってきたと思っていたんです。そこで、4人で話し合って、基本的に手を動かすのは小山でやってみようというのはありましたね。ただ、作りはじめたときにはそれは明言していなかったんですけど。作っていくなかで、いまは小山中心で曲を作って行くのが1番おもしろいなと思ったんですよね。
小山 : たぶん僕が1番、研究所、ラボラトリー感があって(笑)。杉森さんは、情熱タイプなんですよ。なので、曲作りとしては、情熱タイプのまま、僕はそんなにラボに滞在せずに完成する曲もあれば、ポッと出たアイディアを僕の研究所でいろいろいじって出来た曲もあれば、研究所だけで完結した曲もあります(笑)。
──なるほど、“小山ラボ”で完結している曲もあることが、1枚の中でのイメージの違いに繋がっているのかもしれないですね。
小山 : そうかもしれないですね。もちろん、4人で作ってはいるんですけど。
──それにしても、これまで通りに曲ができない、というのはバンドにとって危機も感じたんじゃないですか?
かわむら : 危機も危機、だよね?
一同 : ははははは(笑)。
かわむら : 一時期、超ピリついてましたから。ただ、制作期間に入ったらピリつく暇もなかったですね。1ヶ月に10曲っていったら、みんなの力を合わせないとできないですから。
小山 : 制作に関しては、マンネリといったらなんですけど、空気が淀んでいる感じがあったんです。それを1月から3月にいったん窓を全部開けて、風通しを良くしてまっさらの状態で作ろうって切り替えました。誰がリーダーという感じでもないバンドでもなので、誰が先頭に立ってやるのかっていうことが、ぼやけてきていたというのもありましたね。
──おもしろいEPですよね。「激しく疾走感のある曲をやっているバンド」みたいな想像で聴くと、それだけじゃないというか。“Yellow”なんかを聴くと特にそう感じます。
かわむら : たしかにそうですね。“Yellow”は小山ラボ・プロデュースというか(笑)。
小山 : もともと、さっきおっしゃった、「疾走感があってギターが炸裂していて」っていうイメージに物足りなさを感じているところから、制作がはじまっているので。そういう曲は置いといて、まさに“Yellow”はいままで何をやっていたかとかは一切考えずに作った感じはありましたね。
芯はやっぱり変わらないんだな
──そこが、杉森さんが行き詰っていた「新しさ」を感じる部分になったんでしょうか。
杉森 : そうですね。新しさを感じるし、新しいことをちゃんとやりたいというのはすごくあったし、“Yellow”はライヴでもちゃんとやれているので。あとは、歌詞ですよね。今回、歌詞はかわむら君が6曲書いているんですけど、“Yellow”の歌詞は、俺が遅刻してくることへの叱責というか(笑)、開き直りのような歌詞だと思うんですけど、これは自分ではなかなか曲にできないなって。でも俺、この曲を歌うの好きなんですよ(笑)。普通の人は歌っていてつらいし嫌だって思うかもしれないけど、俺は歌っていてめちゃくちゃ気持ちいし、新しい曲作りの仕方として良いなって素直に思います。
──今回、かわむらさんが歌詞を全面的に書くことになったのはどうしてなんですか。
かわむら : THIS IS JAPANは、歌詞にしろサウンドにしろ、ひとつ決まってることをみんなでやれって言ってる感じじゃなくて、誰かが書いた歌詞に意見を出し合うこともあって。その中で、杉森がなにを歌詞にするかって悩んでいるときに、自分と小山が「杉森になにを言ってもらったら1番カッコイイか」ということをずっと考えていて。それで歌詞を書いたんですけど、杉森がその歌詞にしっかり魂を乗せて歌ってくれた感触があって。自分の歌詞でTHIS IS JAPANの曲をやるというのは、すごくおもしろいなと思ったんです。それで気付いたら全部歌詞を書いていた感じです。
──杉森さんは、それを歌うことへの抵抗みたいなことはなかったですか?
杉森 : 最初はやっぱり、どうだろうな? と思っていたんですけど、できあがった歌詞を見たら、これは不思議なんですけど、俺よりも俺みたいだなって思ったんです(笑)。それは、よくよく考えたら合点がいくことで。俺はあんまり客観的に自分のことを観るのが得意じゃないというのと、俺とかわむらはもう10年以上の付き合いで。この地球上にいる人の中で、杉森を観察してきた人ランキング1位だと思うんですよ。2位が母、みたいな。
かわむら : (笑)。
杉森 : それで、バンドという共同体の中で、同じような美学をシェアして音楽を作るときに、たぶん俺よりも俺のことをわかってるんじゃないかなって。
かわむら : そんなことはないですけどね(笑)?
杉森 : 俺のことをわかってるというよりも、「お前はこういう風に見えてるぜ」っていう、鏡みたいな感じかな? 曲が書けなくて、俺の中で鏡にモヤがかかっているのを拭いて「こういう感じだよ」って言ってくれて「ああ、そうだ!」って思い出していく感じがありましたね。俺が好きな曲、歌いたいことを1つ1つ思い出すというか。それを消化していく中で自分のものになってきたという感触があります。
──それによって、自分がどうして曲が書けなくなっていたのかとか、なんで行き詰っていたのか、ということも徐々に解決していきましたか?
杉森 : 前よりは、解決に向かっていると思います。前は、曲を作るときに自分の心と対話していて。でも曲ができない自分の心と対話しても、「つらい」と言うに決まってるし。だから、みんなに聴かせた曲にも「つらい」とか「これからどうしよう」っていう曲とかがあって(笑)。そうじゃなくて、「俺がこういう風に生きたいんだ」っていうベクトルみたいなことは、今回の制作によって前よりもわかるようになりました。
かわむら : とはいえ、このEPの中にも杉森がきっかけになってできてる曲はたくさんあるので、まったく書けなくなっちゃったというわけではないです。
──“Yellow”“手紙”の流れが異色な感じがしますけど、これは小山さんが中心になって作られた曲なんですか?
小山 : そうですね、“手紙”はほぼほぼ僕の原案に、かわむらが歌詞を付けたんです。この曲に関しては、作ったあとに「変だなあ」って思いました(笑)。もともと何をしようとしているのか僕でもわからないし、これは何のジャンルなんだろうな? みたいな。
かわむら : すごくビートが特徴的じゃないですか? 小山が曲作りにあたって、いままでは歌心とかギター中心に考えていたのが、ビート中心に考えて作ったことが“Yellow”“手紙”にすごく現れていて。それが印象の違いになっている理由だと思います。そこからはじまっているっていうのに尽きると思うんですよね。
──ああ、なるほど。“Yellow”はビートがミニマルっぽかったりしますよね。
小山 : そうですね。僕はずっとギターで歌いながら曲を作っていたので、それを1回やめて、リズムパターンを組むところからはじめるという作り方をはじめてやったので。それが出ている2曲ですね。
かわむら : 新しいアプローチを飲み込めたかなと思ってます。歌心はあるし、芯はやっぱり変わらないんだなっていうのはありますね。
──たしかに、歌心はありますよね。
かわむら : 歌心はあります。それは、忘れることはないんじゃないかなって思います。
──対照的に“悪魔とロックンロール”は、もともとのTHIS IS JAPANらしさを感じました。これはどうやってできた曲ですか?
杉森 : これは、最初に小山がA、B、サビを作ってきて、その後に俺が別のAを作って、それを聴いたかわむらが歌を作るっていう方法で(笑)。
小山 : 僕はもともと緻密な計算を元に作っていたんですけど、それを1回ハンマーでぶっ壊して、もう1回成型するみたいな流れで出来ました(笑)。
杉森 : ごちゃ混ぜ感があるけど、ちゃんと歌に1本筋があるというところが、ディスジャパらしい曲だなって思います。
かわむら : 作り方自体は特殊ではあるんですけど、この曲はちゃんとスタンダードというか、THIS IS JAPANの魅力を真っ直ぐ伝える曲を作ろうって言って作りはじめた曲なんです。小山と杉森が曲を作っていて、スタンダードさと色濃い部分がくっついてできた、それこそ王道な曲だと思うんです。これを聴いたときに、「杉森にこれを言ってもらいたいな」っていう言葉とかメロディを自分が乗っけたという感じなので。そういう意味では、結果的にシンプルな強さが生まれた曲だと思います。
水元 : THIS IS JAPANって真っ直ぐなビートというか、8分なら8分を刻まないといけないようなところがあったんですけど、それを上手く崩したいなというところがあって。それがちょうど上手くできたのが“悪魔とロックンロール”のAメロだったかなと思います。そういうのを全曲で楽しくやってます(笑)。
──じゃあ、特にアレンジで苦心したようなところはなかった?
水元 : なにをやっても大丈夫、というのは結構思いました。アプローチにしても、今回小山から出てきたり杉森さんから出てきたり、かわむらさんが歌を付けたりというところもあって。より自分らしさを出していっていいんだなっていう思いはありましたね。
──“悪魔とロックンロール”の歌詞に出てくる〈ウィークエンド〉という歌詞が、アルバム・タイトルの『WEEKENDER』に繋がっているわけですか。
かわむら : アルバム・タイトルは、曲が全部出揃ってから付けたんですけど、みんなでタイトルを決めようって話したときに、いろんな歌詞を見ている中で1番パチッと来たのが〈ウィークエンド〉という言葉で。曲を並べたときに、1番キーワードになる言葉だなって感じたんです。我々はそもそも、「バンドをやりたくてバンドをやっている人たち」というか、目的のためにバンドをやっている集団ではなくて、「4人でバンドをやろうぜ」って言ってバンドをやっている、ということが前提にあって。
今回、行き詰ったりしていたんですけど、いっぱい曲を作ってこのEPが出来たときに、バンド活動をすることが、すごく前向きで希望に溢れることだと再認識できたような感じがしたんです。『WEEKENDER』という言葉の響きとか、週末という意味、その裏にあるストーリーとかが、すごく前向きだなって。それは、自分たちがバンドをやる意味とか、今回EPを出したことと直結するなと思ったんです。それで『WEEKENDER』というタイトルにしました。
──今回のEP発売に先駆けて、コンピレーションアルバム第2弾『NOT FORMAL 〜NEW CHALLENGER〜』が11月13日(水)にリリースされましたね。これはどんな思いで企画しているのでしょうか。
杉森 : コンセプトは変わっていないですけど、目的みたいなものは変わったと思っていて。前作は『NOT FORMAL 〜NEW ALTERNATIVE〜』というタイトルで、「ここにこんなにカッコいいバンドがいるぜ」っていうのを、なるべく高いところに掲げてお知らせする、みたいな気持ちがあったんです。だから、“NEW ALTERNATIVE”と言いつつ、いわゆるオルタナじゃないジャンルのバンドも出てもらいましたし、スタンスとして共通しているバンドと一枚岩になっておもしろいものを見せたいなという気持ちで作っていたんです。
あれから2年経ってライヴハウスの空気も変わってきているなって感じていて。若い子たちが、やりたいことをやりまくってるなというのを、いろんなライヴハウスで観るようになってきたんです。しかもカッコイイし、ちゃんとお客さんにも届いている感じがしていて。だとしたら、みんなにお知らせするということを第一目的にするんじゃなくて、俺たちがおもしろいと思ったバンドを、よりギュッと濃くして距離が近いものを提示したいという意識の変化はありますね。ごちゃまぜだけど、1つの盤に向かって行くおもしろさがあると思います。
──12月7日(土) 新宿motionでリリース記念ライヴを開催、LINE LIVEの生配信も実施ということですが、この日は重大発表もあるそうですね?
杉森 : そうです、重大発表があります。それは当日のお楽しみで(笑)。よろしくおねがいします。
編集 : 鈴木雄希
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LIVE SCHEDULE
THIS IS JAPAN“アウト ストア ライブ”
2019年12月7日(土)@新宿motion
時間 : OPEN 12:30 / START 13:00
※『WEEKENDER』CD購入者全対象(対象のCDジャケ持参にて入場可)
※ライヴ当日、新宿motion入り口での購入も可能
THIS IS JAPAN presents〈NOT FORMAL Vol.10〉
2019年12月22日(日)@下北沢 BASEMENTBAR & THREE
時間 : OPEN 16:30 / START 16:50
出演 : THIS IS JAPAN / aoni / 1980YEN / Emily likes tennis / The Whoops / SEAPOOL / 逃亡くそタわけ / FRSKID / 奮酉(FURUTORI) / Bearwear / 勃発 / 揺らぎ / RiL / ROKI / and more…
【その他ライヴ情報はこちら】
http://thisisjapan.net/?page_id=7
PROFILE
THIS IS JAPAN
THIS IS JAPAN、通称ディスジャパ。
2011年サークルで先輩後輩である4人が、大学在学中にTHIS IS JAPANを結成。
2012年9月30日 1stミニ・アルバム『ジャポニカ学習装置』、2013年 10月26日に2ndミニ・アルバム『URUSEI BOKURA』発売。2014年8月14日には全国流通の1stフル・アルバム『THIS IS JAPAN TIMES』を発売。2016年8月3日には全国流通2枚目となるミニ・アルバム『DISTORTION』をリリースした。ライブは年間40〜50本行い、フェスにも多く出演。
そして、2017年11月22日には、メインストリームにとって変わる可能性を持った18組のアーティストを集めた通称オルタナコンピ(CD)『NOT FORMAL 〜NEW ALTERNATIVE〜』を企画・制作。初回生産分が発売初日で在庫がなくなるという、コンピでは昨今稀な現象が起こし注目度がさらに上昇した。
2018年5月2日THIS IS JAPANの覚醒盤となる2ndミニ・アルバム『FROM ALTERNATIVE』が完成した。その後、ワンマンや企画ライヴを行う一方、同年10月12日公開、三木監督作品映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の主題歌“体の芯からまだ燃えているんだ”のアレンジ・演奏をコンペで勝ち取り担当し、話題となった。
2019年はさらに7月27日 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉(苗場食堂)、9月15日〈BAYCAMP2019〉にも出演。滝のような雨の中オーディエンスと共に完全燃焼した。
【公式HP】
http://thisisjapan.net/
【公式ツイッター】
https://twitter.com/this_is_japann