インパクト大のアー写は“伝説”のメタル・バンドにあり!──怒髪天、“FLATBACKER”、“E・Z・O”愛を語らう!
結成39年目を迎えたいまもなお、我が道をひた走るロック・バンド、怒髪天。6曲入りの最新作『more-AA-janaica』をリリースしたばかりの彼らが久しぶりに登場です! これまで怒髪天の作品の多くはOTOTOYでは未配信でしたが今作より配信がスタート、これまでの作品の数々も全タイトル追加されております。これを記念し、今回OTOTOYでは怒髪天と同郷である札幌の“伝説”の先輩バンドを語らう特別鼎談をお届け。ヒントは今作のアーティスト写真にあり!
2023年も我が道ひた走る、6曲入りアルバム!
INTERVIEW : 怒髪天 × 高橋太郎
「誰!?」怒髪天のニュー・アルバム『more-AA-janaica』のインパクト大なアーティスト写真が公開されたときそう思った人は多いはず。しかしながら、80年代のメタル、パンク・ハードコアを愛する音楽ファンからは「あのバンドのオマージュか!」と絶賛の声が挙がっている。そのバンドが北海道札幌市で結成されアメリカへと進出、瞬く間に活動を終えた“FLATBACKER”、“E・Z・O”だ。今回アルバムのリリースを記念して、ベーシストとしてバンドに在籍したTAROこと高橋太郎さんをお招きして、増子直純(Vo)、上原子友康(Gt)との鼎談が実現した。怒髪天をはじめ数々の札幌出身バンドに多大な影響を与えた伝説のバンドの元メンバーにして、現在は〈ビクターエンタテインメント スピードスターレコーズ〉でプロデューサーを務めている高橋さんを前に、ひたすら「カッコイイ!」を連呼して“FLATBACKER”、“E・Z・O”への愛とリスペクトを語るふたり。貴重なエピソード満載のトークをご堪能いただきたい。
“FLATBACKER”、“E・Z・O”とは
1982年に札幌にて結成。ヘヴィ・メタルだけではなくスラッシュ・メタルやハードコア・パンクのエッセンスも取り込んだサウンドで〈ビクター〉より2枚のアルバムをリリース。1986年に2ndアルバムをリリース後は活動フィールドを世界に移すため渡米し、バンド名を“E・Z・O”(イーズィーオー)へと改名。歌舞伎を彷彿させるメイクを施し、当時アメリカでブームとなっていた“忍者”をキーワードに活動。改名後の1stアルバムではプロデューサーにキッスのジーン・シモンズを迎える。ガンズ・アンド・ローゼズとのクラブ・ツアーなどを経て、1990年解散。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
写真 : 浦将志(アー写を除く)
パンク・バンドに近くてテクニックもあるっていう、奇跡のバンドだった
──『more-AA-janaica』発売おめでとうございます!アーティスト写真のインパクトが強烈ということで今回の鼎談をオファーさせていただいたんですけど、反響はいかがですか?
増子直純(以下、増子) : もう、エグいです。ただ、まずなによりもこれを見て太郎さんがどう思ったのかなと。
上原子友康(以下、上原子) : そうだよね(笑)。
増子 : ポーズも一緒ですから、最初怒られんじゃねえかって。撮影はなかなか苦労しました。ひとりヅラですけど(笑)。立てる髪もないですから。
高橋太郎(以下、高橋) : なんか既視感があるなと思いました(笑)。最初にご連絡をいただいたときに、FLATBACKERの写真と伺っていたので、厳密に言うとE・Z・Oなんですよね。そこは違いますよっていうことはお伝えしました。当時いっぱい写真を撮ったうちのどれかだろうとは思うんですけど、なんかこういう姿形は覚えてます。思いっきり構図が一緒ですね。
増子 : ありがとうございます。北海道出身のバンドマンや友達、同級生とかから「やってんな!」って食いつきが半端なかったんで。あと、GLAYのTAKURO君から「これ、(ファンクラブの)会報に載せていいですか」って連絡がありました(笑)。この前会ったんですけど、「兄貴、どうかしてますよ!」って。
高橋 : TAKUROさんが僕らのことを好きでいてくれたってのは聞いてたんですけど、面識はなくて。よろしくお伝えください。
上原子 : 僕は元々メタルも大好きなんで、本当に夢が叶ったというぐらい嬉しかったですね。普段、怒髪天ではこういうことはできないんで、めっちゃノリノリで撮影できました。太郎さんの位置をやらせていただいたんですけど、写真を見てものすごく細かいところまで、角度とかもだいぶ再現されてると思います。
増子 : 我々世代の北海道のバンドにとっては、もう本当に神様のような存在ですから。
高橋 : 何をおっしゃいますか。でも北海道にいたときは面識がなかったですよね。2、3年すれ違っていて。
増子 : そうですね。ただ、本間さん(ドラマーのHIROこと本間大嗣)に何度かお会いしてよくしてもらったりはしていたんです。〈スタジオZIG〉だったかな? 1回スタジオで一緒になって。
上原子 : 僕は留萌出身なんですけど、高校生のころから大好きで。札幌に出てきて練習スタジオにいたら、隣のスタジオから聴こえてきたんですよ、『皆殺し』(FLATBACKERのデモ・カセットテープ)が。
増子 : ZIGは扉ほとんど閉まってないですからね。べニアみたいな壁で、全然防音されていないっていう(笑)。
上原子 : そうそう。それで隣から聴こえてきて、「うわっ! FLATBACKERいるんじゃないの!?」って、もう大興奮で。増子ちゃんは札幌の人なので、「よかったら紹介するよ」って、ドラムの片づけをしていた本間さんにサインをもらったんです。
高橋 : 覚えてます、そのスタジオ。ベース・アンプがちっちゃいACE TONEで、ボリューム2ぐらいでもすぐ歪んじゃって、でもいい音で。僕らはFLATBACKERを組んで 2ヶ月とかで、〈札幌音楽祭〉に出て賞をもらったんですけど、あのスタジオのオーナーのかたが勝手に申し込みをしたんですよ(笑)。だから恩人なんですけど、なにもお礼も言わずに上京してしまって。
増子 : すぐ上京しちゃいましたよね? 我々は本当に『皆殺し』のカセットをみんなが聴いてましたから。俺はハードコア・パンク・シーンにいたんで、「メタルじゃねえだろ」っていう世代だったんですけど。ただFLATBACKERだけは別格で。いままで聴いたことがないっていうか、パンクとメタルのちょうど間というか。で、やっぱり演奏が上手い。パンクは基本下手だからね(笑)。だけどFLATBACKERはほぼパンク・バンドに近くてテクニックもあるっていう、奇跡のバンドだったんだよ。 みんなカセットが伸びてビロンビロンになるぐらい聴いたよね?
上原子 : 聴いてたねえ。僕も、本物のカセットテープは手に入らないんで、ダビングダビングで回ってきた、もう伸び伸びになったテープをずっと聴いてました。
増子 : いっつもCHAOS U.KのファーストとFLATBACKERばっかり聴いてたから、テープが伸びてテンポが変わってるんだよね。「ちょっとこれ遅くねえ?」って(笑)。
──高橋さんが怒髪天というバンドを認識したのはいつぐらいか覚えてますか?
高橋 : 僕はFLATBACKERで東京に行って、そこから1年ぐらいしてアメリカに行くことになったので、(日本のバンド事情は)それからは知らなくて。バンド解散後に日本に帰ってきてディレクターになってからなので93、4年ぐらいだと思います。
増子 : 札幌にいるころは、バンドやってるって言ったって愚連隊みたいなもんだったから。いろんな勘違いしてたんで。
高橋 : でも今振り返ると、僕らが上京してから3、4年後に吉村(秀樹)さんのbloodthirsty butchersとかeastern youth、怒髪天とか、すごく良いバンドが出てきたんだなって思います。
増子 : FLATBACKERは本当にあっという間にアメリカまで行っちゃったんで。
──E・Z・Oに改名してから、『ミュージック・ステーション』にニューヨークからの中継で出演して“MILLION MILES AWAY”を演奏しましたよね(1989年7月14日)。
高橋 : はい、“ヘビーメタル・ブレックファースト・パーティー”っていうタイトルで。そんなのあるわけないんですけど(笑)。『ミュージック・ステーション』の生中継がニューヨークの朝の時間だったのでそういう設定になっていたんです。E・Z・Oのときは、あまりに大きな渦のなかにいたので、なにをやってるんだかあんまりわかってなかったような気がしますね。
──その中継のときに高橋さんが「我々からしたら札幌から東京に出るのも、札幌からニューヨークに出るのも大した違いはないです」とコメントしていたのが印象的でした。
増子 : それは同じですよ。札幌を出て東京に来たときがどのぐらいの感覚だって言ったら、もうニューヨークに来たぐらいの感覚なんで(笑)。北海道からしたらそれほど変わらないですよ。
高橋 : 本当にそうだったんです。
増子 : でも本当に、うちの10歳下のマネージャーもFLATBACKER、E・Z・O大好きですよ。ものすごく詳しいですから。我々が10何年前に最初にくるりのツアー〈百鬼夜行〉に呼んでもらったときなんか、みんな太郎さんのほうを向いちゃって。岸田(繁)なんかどうでもいいもん。
一同 : ははははは(笑)。
上原子 : 「誰だと思ってるんだよ、太郎さんだよ!?」って。
──それぐらいのレジェンドなわけですね。
増子 : そうですよ。謎も多いし。
上原子 : その謎の多さがカッコイイというか。昔、札幌インディーズ・メタルのミニコミ誌『RANDOM』っていうのがあって、FLATBACKERもいつも載っていてそれを読んで盛り上がっちゃって。僕はジャパメタはもちろん、LOUDNESS、44MAGUNUMとか、洋楽もアイアン・メイデンとかいっぱい聴いてましたけど、やっぱりズバ抜けてFLATBACKERが大好きで。僕はあのデモ・テープ(『皆殺し』)がヘヴィ・メタルのアルバムのなかではナンバーワンだと思ってます。カッコイイなあって。
高橋 : いやあ、ありがとうございます。
増子 : いまだにツアー中にFLATBACKER、E・Z・Oも普通に聴いてるもんね?テンション上がるんですよ。1回、ライジングサンのセッション企画で“ハード・ブロウ”(アルバム『戦争 -アクシデント-』収録)をカバーしたよね(RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO)。
高橋 : 僕はそのライヴを観させていただいて。フルコピでしたね。
増子 : イントロから死ぬほどカッコイイからね。カセットのやつもエグいもんね。
上原子 : ビロンビロンのテープで聴いてたのもあるんですけど、ちょっと怖いというか。ミステリアスな部分があるっていうか、クリアな音で聴くのとは違う感じがあって。同じ北海道にいてすぐにアメリカに行っちゃうところとかも、なんだか謎に包まれていました。
高橋 : いや、本当になにも考えないでやっていたんです。ドラムの本間はジャパメタが大好きなんですけど、ギターもヴォーカルもそれぞれみんな方向性が違っていて僕もヘヴィ・メタルはそんなに聴いてなくて。でも4人が好きだったバンドが、モーター・ヘッドとスラッシュ・メタルのはしり的なヴェノムというバンドで、そのふたつは面白いなっていうのは共通していたんです。あとはそれぞれのルーツが合体してああいう音楽になっていたんです。