彼らは新たな音楽的高みを目指す──忘れらんねえよ、2ndミニ予約スタート、ベストも配信開始
忘れらんねえよが2ndミニ・アルバム『俺よ届け』をリリースする。OTOTOYでは予約配信(本配信は10月19日より)を開始。また、これに合わせて2月にリリースしたベスト・アルバム『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』も配信スタート。これまでの彼らのトレード・マークとも言える“熱い”楽曲たちと、今後の彼らのスタイルを予期させるような新曲3曲にて構成された本作は、その名の通り、彼らの過去と、現在・未来へと向かうその活動姿勢を示した作品となっている。『俺よ届け』はベスト・アルバムをリリースし、ある種の一区切りを抜けた彼らの未来への眼差しを強く感じる作品だ。新たな高みを目指して、彼らはどこへ向かっているのか? 今週末10月9日(日)に迫った〈Zepp〉ワンマン「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」の開催を前に柴田隆浩にインタヴューを行った。
2ndミニ・アルバム予約配信スタート
忘れらんねえよ / 俺よ届け
1. 俺よ届け
2. 俺の中のドラゴン
3. 眠れぬ夜は君の名をググるよ
4. うつくしいひと
5. まだ知らない世界
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 257円(税込) / アルバム 1,050円(税込)
MP3
単曲 257円(税込) / アルバム 1,050円(税込)
ベスト・アルバム配信開始
忘れらんねえよ / 忘れらんねえよのこれまでと、これから。
【Track List】
01. 別れの歌
02. バレーコードは握れない
03. 世界であんたはいちばん綺麗だ
04. 犬にしてくれ
05. 寝てらんねえよ
06. バンドやろうぜ
07. ばかもののすべて
08. 愛の無能
09. 絶対ないとは言い切れない
10. ばかばっか
11. この高鳴りをなんと呼ぶ
12. 体内ラブ~大腸と小腸の恋~ (feat.玉屋2060%、MAX from Wienners)
13. バンドワゴン
14. 中年かまってちゃん
15. 戦う時はひとりだ
16. 僕らパンクロックで生きていくんだ
17. 夜間飛行
18. 僕らチェンジザワールド
19. この街には君がいない
20. 北極星
21. CからはじまるABC
22. 忘れらんねえよ
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 257円(税込) / アルバム 2,101円(税込)
MP3
単曲 257円(税込) / アルバム 2,101円(税込)
ITNTERVIEW : 柴田隆浩
あの手この手で世間に音楽を届ける方法を試みてきた歴史を経て誕生した今作『俺よ届け』を聴くと、これまで漂っていた青臭さやいらだち、溜まっていた余計なものをすべて出し切った後の、とてもスッキリして瑞々しい忘れらんねえよの現在を感じることができる。これまで幾度となく取材を行ってきたが、今回のインタヴューではかつてないほど音楽について雄弁に語ってくれた柴田隆浩(Vo.Gt)。その表情はとてつもなく晴れやかで清々しい。そうなのだ、今まさに彼は音楽家としての賢者タイムに突入しているのだ。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
「俺、絶対間違ってない」っていう自信がある
──ちょうど1年前の〈BAYCAMP 2015〉あたりから、「忘れらんねえよのライヴがすごく良い」っていう声を色々な人から聞くようになったんですよ。もちろんそれまでもライヴには定評があったんですけど、柴田さんの中で感じている変化ってありますか?
柴田隆浩(以下、柴田) : 実際にパワーアップしている感じが2つあるんですよ。1つはバンドとして、音楽的なグルーヴが良くなっていて。マシータさんと一緒にやってちょうど1年過ぎたくらいですけど、去年の〈BAYCAMP〉あたりから、すごく音楽的に演奏が良くなってきたんです。それと、ライヴでの発声もそれまでと違うというか、リズムと声質のところが変わって、単純に音楽的に技術が向上してるんですよね。もう1つはライヴに対する意識の変化、自信がついたのかもしれないですね。ライヴって、前までは単発、単発っていう考えだったのが、今は全部のライヴが1つの道になっているイメージというか、1個ずつ積み上げて行ってるんですよ。だからセトリもあんまり変えないし。そうすると自信がついてくるんですよね。ゼロからの戦いじゃないというか、もう100積み重ねているから、どんなに滑ったとしてもそんなに悪い点数にはならんな、みたいな。そういうことを続けて行ってあんまりビビらなくなったし、大らかな気持ちになってきたんですよね。音楽をちゃんとやろうっていう気持ちになってきているというか。
──これまで色々なことを実践、検証してきた結果、純粋に音楽を楽しめるようになってきた?
柴田 : たぶん、色々考えてトライ&エラーを重ねてきて、ようやく成熟してきたんじゃないですかね。俺らのライヴのスタイルは間違いなくこっちだ、これをやれば刺さるっていうものが。
──それは、言葉が刺さる歌が真ん中にある音楽っていうことでしょうか。
柴田 : そうそう。でも、全部が表現だから。登場もSE選びもそうだし、お客さんの上にダイヴして立ち上がって手紙を読むのも表現だし、その全部、1個1個に対して「俺、絶対間違ってない」っていう自信があるというか。それが今の時点で完成したっていう感じで、それをライヴごとにどんどん磨いていくっていう感じ。
──その結果生まれた『俺よ届け』は、そういう意味では憑き物が落ちたかのような清々しい作品になりましたね。
柴田 : ね!? 俺らの音楽的向上とか、歌詞表現の挑戦みたいなものが表現できたと思います。ベスト・アルバムを出したときからだいぶ気にならなくなってきていたんですけど、「世の中的にこれが流行る、流行らない」みたいなことは、完全にもう、マジでないですね。それよりは、今自分たちが持っている技術を全部ぶち込みたいっていう方が大きいです。あと、歌詞でちゃんと挑戦したいというか、本当に俺にしか書けない歌詞世界にトライしてみた作品です。
「俺よ届け」が1番、挑戦としては新しいことができた
──今作で特にそういったトライをしてみた曲を挙げてもらうとしたらどの曲になりますか。
柴田 : やっぱり「俺よ届け」が1番、挑戦としては新しいことができたと思っていて。立場を明確にしたかったんですよ。歌の主人公はどういう奴なのかっていうのをハッキリさせたくて。要はクラスの2軍3軍的立場にいて、オラついてる1軍を横目で見ながら「チッ面白くねえんだよ」って小さい声でボソボソ言ってるような奴(笑)。でも家に帰ると1人で「さみしいなあ」っていう。そういう歌っている主人公の立場をハッキリさせたいというか。特にサビでは本質に触れたくて意識しました。「そんなつまらないやつを好きにならないでよ」っていう歌詞は、本質に行けたかもしれないって思っていて。今まではそこまでハッキリと掬い上げられてなかった気がするんですよ。それって理屈ではたどり着けないところで、この曲では俺にしか言えない言葉にたどり着いた気がしているんです。
──確かに、これまでの曲だったら「好きにならないでよ」までは言っていない気がしますね。ふてくされて文句言って終わるというか(笑)。
柴田 : そうそう。それで「でもまあいいか、ビール飲もうぜ」っていう。それはそれでいいと思うんだけど、もっと人間のエグいところまで行きたくて。それを言わないと、俺が書く理由がないというか。だから、俺以外に書けないものを書かないと詞としてだめでしょっていうのがあって。それが「俺よ届け」で1番書けたと思います。
──「俺よ届け」は7月19日リキッドルームの〈ツレ伝サマー〉で初めて聴きましたけど、サビがすぐに覚えられるくらいキャッチーな曲で。これまであったようでなかった曲ですよね。
柴田 : そう、Aメロが結構特殊なんですよ。この曲はサビが先にあって、そこから「サビを引き立たせるAメロってなんだ?」っていうことを考えて。あとは、コピーしたくなるイントロ・Aメロにしたかったんですよ。楽器の演奏としてもシンプルなんだけど、何か印象に残るっていうのをやりたくて超頑張ってここにたどり着いたんです。
──Aメロからサビに行くブリッジのところがすごく好きなんですよ、この曲。
柴田 : ああ~嬉しい。あれは今までになくてコード進行的にもなかなか変わった感じですね。意識的にはサビを立てるためのAメロって決めて、そのうえでAメロだけ聴いてもキャッチーっていう風に考えたのは初めてかもしれない。
──今回は柴田さんとNARASAKIさん、松岡モトキさんによる3人でのプロデュースということですが。
柴田 : そうです、曲ごとにプロデュースしています。エンジニアは「うつくしいひと」がいつもやってもらっている、速水はやみさんっていうすごく繊細なミックスを得意とする人で。もう1人がRADWIMPSの代表作とかを手掛けている中村研一さんです。それで5曲中3曲やってもらっているのが釆原史明さんなんですけど、釆原さんの音は全部の楽器が耳元で鳴っている感じのバッキバキな音で、すごく好きですね。
──「俺の中のドラゴン」がそうですか?
柴田 : そうです、これは釆原さんがエンジニアをやっています。
──この曲もリキッドでやりましたけど、これまた今までにないラウドなアレンジで。
柴田 : これもやってみたかったんですよね。俺の中では「ばかばっか」の進化形っていう感じで、あれよりもぶっとく、サビもスケール感があるものを作ろうと思って。この曲は構成をすごく考えてて。リズムの組み合わせとか。例えば1Aと2Aのリズムって違うし、イントロのフレーズがリズム違いで2サビの後に来てとか、パズルのようにできていて。今までそういう作り方ってしたことがなかったんですけど、「Pro Tools」を使って切ったり貼ったりしてデモを作ってベストな流れ、構成を作って完成させたんです。今までは、初期衝動とか、考えすぎずに出しきることに重きを置いて作ってきたんですけど、「俺よ届け」と「俺の中のドラゴン」の2曲に関しては突き詰めて作りましたね。ストレートなパンク・ソングもやりたいんだけど、今はもっと1曲の始まりから終わりまでを立体的で豊かな感じにしたいんですよ。山あり谷あり、ときには雨も降って、でも晴れた、みたいな。そういうストーリーを作りたいなって。「俺よ届け」も、2サビの後にCメロがきて、あそこはめっちゃ気に入っているんですけど、その後に来る間奏に、これは松岡さんから教えてもらったんですけど、サビの代理コードっていうやつを使っていて。そういうのを入れると立体的になるんですよね。表現されている感情が単純じゃなくなるというか。
音楽的にどういうチャレンジができるんだろう
──今日は、いつになく曲の解析というか音楽的な話をしますね! ミュージシャンだから当たり前なんだけど(笑)。
柴田 : 今はそれが面白いんですよ(笑)。だって、それをやらなかったら今までと同じになっちゃうんですよね。別に「CからはじまるABC」や「この高鳴りをなんと呼ぶ」があるからいいじゃん、みたいな。ドキュメンタリーみたいな歌詞なら「別れの歌」があるからいいじゃんっていう。そこはもういいから、今ハマってるのは、音楽的にどういうチャレンジができるんだろう、表現としてどこまで人と違うものが自分たちができるんだろう、みたいなことなんです。
──ベスト・アルバムを出した後の作品っていう感じですよね。
柴田 : うん、そうかもしれない。『俺よ届け』は忘れらんねえよを好いてくれている人に喜んでもらえるんじゃないかなと思いますね。音楽以外のストレスがだいぶなくなったから。音楽活動っていう意味で相当恵まれている環境にいると思うし、ストレスがあんまりないんですよね。次Zeppワンマンをやることにしても、「お客さん入らなかったらどうしよう」みたいな感じじゃなくて、ソールドは頑張らなきゃいけないけど「まあ、なんとかいけるでしょう」みたいな、そういうところでの悩みがないというか。
──ストレスがなくなったということと繋がるかどうかわからないんですけど、〈ツレ伝サマー〉でギターとキーボードのサポートでロマンチック☆安田さんを入れてライヴをやりましたよね。
柴田 : はい、はい。
──個人的にずっと思っていたことなんですけど、忘れらんねえよのライヴに1つだけ不満があって、それは「体内ラブ」の間奏をやらないことだったんです。
柴田 : ははははは! 弾けないんです(笑)。
──音源は玉屋 2060%さん(Wienners)が弾いているし、柴田さんはライヴでは弾かないっていうのは前にもインタヴューで直接聞いて知っていたんですけど、やっぱりあの曲は間奏がある方が絶対良いなと思っていて。リキッドのライヴでは安田さんを入れて久々に間奏をやってすごく盛り上がりましたよね。
柴田 : すごかったですよね、あれ!? でもね、間奏をやらなかったのはじつは左手がジストニアっていう病気になっちゃって、巻き指でギターがある程度しか弾けなくなっちゃったんですよ。プレイスタイル的にはそれでも良いというかライヴで爆音だから歌をしっかり歌っていればいいんですけど、どうしても自由度は制限されるんですよね。そうなったときに、今まで3人にこだわってきたけど、(正式メンバーは)2人になっちゃったし、「増やしてよくね?」って話になって。梅津君は割と「楽器入れようよ。キーボードあった方が良いでしょ」っていう感じで。形にこだわるよりは、脳内で鳴ってる音楽とかやりたい音楽がちゃんとできた方が良いなって思うようになったんです。
──なるほど、そういう事情があったとは知りませんでした。ただ、形にこだわらなくなったことで表現できる音楽の幅は広がりますよね。そういうところにも今の音楽的な挑戦を楽しんでいる姿勢があるというか。
柴田 : うん、そうですね。
──「俺の中のドラゴン」はかっこいいサウンドなのにバカバカしい歌詞で、だけどちゃんと真面目なメッセージも入っているんですよね。
柴田 : そう、これは俺の得意技というか(笑)。この歌詞は1つの俺のスタイルとしてあるんだろうなって思っていて。「別れの歌」とか「この高鳴りをなんと呼ぶ」みたいな曲と、バカバカしい内容の曲の間の曲をやりたかったんです。「せつねえ~」っていうところまで行くんだけど、入りがクソしょうもないネタというか。その間が新しいトライというか。
──「うつくしいひと」なんかは、本当に美しい曲なのに、両極端の曲を作れる人だなあって思いますよ。
柴田 : ぶっちゃけ、「うつくしいひと」は俺じゃなくても書けると思うんですよ。でも、「俺よ届け」「俺の中のドラゴン」があっての「うつくしいひと」に意味があると思うし、でも「うつくしいひと」の歌詞の世界も俺の中にあるものだから。それもちゃんと入っているというのは、1枚のアルバムの中で表現したいこと、言いたいことを全部言った感じですね。
そしてワンマンへ
──今回は、邪念みたいなものがスッキリしたような感じが随所にありますね。
柴田 : まあ売れるな売れないかなんてコントロールできないし、そういう部分はスッキリしているんですよね。でも、一方で人間としてのムカつきとか、腹が立つことはあるから、俺は今そこだけを歌いたい気持ちになっていて。例えば、この前パスタ屋さんで1人で飯食ってたら、隣に大学生の男3人と女3人がいて、「ゆう子はさあ~」みたいな、すぐ下の名前で女の子を呼ぶ感じのやつらが盛り上がっていて。「ぜってぇ~こいつらに俺の音楽はわからねえんだろうな。バーカ!」って思うわけですよ(笑)。
──(笑)。それがダイレクトに歌詞に反映されているわけですね。
柴田 : そうです。そういう気持ちはあるんですよ、ずっと。だから、売れる売れないみたいな歌よりは、俺が人間として何に感動して何にムカついて何を思っているか、理屈とか倫理を超えて思っていることを言いたいんです。
──いよいよ、10月9日(日) Zepp DiverCityでワンマン・ライヴ〈僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ〉が行われます。
柴田 : まだこれから何をやるか考えるところですけど、結構トライですね。〈ツレ伝ツアーファイナル〉のときは、それまで〈ツレ伝ツアー〉を8か所くらいやってから、セトリもバンドのアンサンブルも本当に成熟したものでファイナルになっているから、完全にベストな状態でやってるんですけど、今回はそういう流れのライヴじゃないじゃないですか?一発勝負ですから、そこの難しさはあります。でも、マシータさん、プラスギターとかピアノとか入れようという感じもあるから、勢いで押すパートも作るつもりだけど、しっかり演奏してしっかり歌って、楽器もちゃんとリッチに入っているみたいなところも作りたいなと思っていて。それが今の忘れらんねえよっていうバンドの一面でもあるから。
過去の配信作品
LIVE INFORMATION
忘れらんねえよ Zeppワンマン
「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」
2016年10月9日(日)@Zepp DiverCity
時間 : OPEN 17:00 / START 18:00
料金 : 3,500円(税込)※2階席完売、1階スタンディングのみ発売中
PROFILE
忘れらんねえよ
僕らはばかの ひとつ覚えだ
ロックロールと君が ずっと好きだ
柴田隆浩(ボーカル、ギター)
梅津拓也(ベース)
>>忘れらんねえよ 公式ページ