ポスト3.11のこの国へ、勝手にしやがれが問う13の物語——強烈なメッセージが込められた11thアルバム『パンドーラー』
右手にジャズ、左手にロック、心にパンクを。そして本作では背中に大きな大きな13の物語を背負っている。活動開始18年目、熟練のブラス・アンサンブルで情熱的なサウンドを鳴らす勝手にしやがれが、最新作『パンドーラー』を発表した。11作目のアルバムとなった今作は、震災後の日本が抱える問題を真っ向から描いた問題作だ。〈原子の力 人々は夢を見てた〉、〈100万年後なんて気にしなかった〉、〈取り返しがつかないかもしれない〉。「パンドーラーの匣」と題された1曲目から、フロントマンの武藤昭平はストレートにそう歌う。OTOTOYでは、そんな強烈なメッセージの込められた本アルバムを配信するとともに、武藤へのインタヴューを敢行、同作に託された思いを明らかにした。
震災後の日本に贈る渾身の11thアルバム!!
勝手にしやがれ / パンドーラー
【配信フォーマット】
ALAC / FLAC / WAV / mp3
【価格】
2,160円(単曲は各205円)(税込)
【収録曲】
01. パンドーラーの匣
02. Dr. ベクレキュリー
03. ネヴァー・トゥー・レイト
04. カーン
05. アイ・ラヴ・ユー・アゲイン
06. 3×11
07. 恐るべき子供たち
08. タクシー・ソング
09. ゼチェ・プラジナイズド
10. シャイン・サンシャイン
11. パンドーラーの悩み
12. ゴースト・タウン
13. アーク
武藤昭平 コメント
勝手にしやがれ渾身の、衝撃的な超問題作であり超名作。
2011年3月11日の震災以降、日本が抱えている問題を、架空の物語として13の曲達に吹き込みました。開けてはいけないパンドーラーの匣を開けてしまったであろう我々、そして我々の今の技術では到底コントロールが出来ない、エネルギーの源になる物質の発見をしてしまった、そんな架空の博士の助手の告白から物語は始まります。
また、その物語を追いかけるにふさわしいサウンド。トータル・コンプレッサーに頼らない、自然で迫力のあるハイクオリティーなサウンド作りにも成功しました。まるで映画を見るような、そんな感覚でこのアルバムを、冒頭から最後の最後まで堪能してみてください。
そしてあなた方自身の考え方や行動に、少しでも影響を及ぼせられたら本望です。
武藤昭平
INTERVIEW : 武藤昭平(勝手にしやがれ)
『パンドーラー』は真正面から震災後の日本をテーマとして歌ったメッセージ・アルバムだ。本当に正直なことを言ってしまえば、最初に聴いたときに「どうして今この内容を歌うのか?」と思ってしまった。そして、震災から3年が経ち、あの日感じた恐怖や焦燥や怒りからいかに自分が遠ざかり、愚鈍になっているのかを痛感し、恥じた。このアルバムから聴こえてくる曲たちは、そんな後ろめたい気持ちにグサッと刺さるのではなく、軽やかに、耳触り良く届いてくる。それは楽曲が持つメロディの良さと共に、今回彼らが試みた音作りが成功していることも大きな理由となっているのだが、なによりインタヴューの中で武藤昭平が語っている「アイ・ラヴ・ユー・アゲイン」への想いが、この作品が持つ本質を物語っている。TOSHI-LOWとオダギリジョーがそれぞれ楽曲で参加しているのも興味深いこのアルバムについて、武藤にたっぷり話を訊いた。
インタヴュー & 文 : 岡本貴之
「ああ、いいアルバムだね、でも何か考えさせられるね」っていう
——ここ最近は勝手にしやがれ & 渡辺俊美、武藤昭平 with ウエノコウジ、加山雄三 King ALL STARSなど多方面での活動が目立ちましたけど、このアルバムの構想はずっと練っていらっしゃったんですか?
武藤昭平(Dr / Vo)(以下、武藤) : なんとなく温めてはいましたね。アルバムを出したら次をどうしようというのは常に考えてはいるものですから。でもまあ、色んなことをやってるから、勝手にしやがれでは何をすべきかという。ただいい曲が出来たからじゃあやろう、というのはつまらないなって。毎回毎回、「これ出したら死んでいいや」くらいの気持ちでいい物を作ってきたんで。話題作りでアルバムを出すのはナンセンスな話だから、やっぱりコンセプトと共に「何が言いたいか」をしっかり決めていかないとな、というのはあって。そんな中で、今回はこういうことをやるべきじゃないかなということが膨らんできて、こういう作品になったんです。
——ハッキリと明確なメッセージがあるアルバムになっていますが、こうしたコンセプトは武藤さんが震災後に関わってきた「東北ライブハウス大作戦」や「中津川ソーラー武道館」などのライヴ活動が大きく影響しているのでしょうか?
武藤 : そうですね。そういう活動をしているミュージシャンと仲がいいというのもあるし、ただそれに触発されたわけではなくて俺自身でも、震災後に日本が抱えている問題というのは決して無視はできないなと思っていて、それと向き合いながらも何かそれなりにメッセージや作品を出せたらなって。特に拘束されていないミュージシャンが一番そういうメッセージを発しやすいんじゃないかなと思うんです。そういう意味では(佐藤)タイジさんやBRAHMANのTOSHI-LOWも本当にまっすぐ音楽の活動をしているし、そういうのを見て俺もやっぱり感動するし、俺なりに作ることってなにかできないかなとは思ってましたね。
——テーマ自体は重たいものですけど、音楽として楽しめる作品になっているのは、言葉で誰かを責めたり、お説教するような内容じゃないからだと思うんです。
武藤 : うん、深い根底には重たいテーマを掲げてはいるけれども、1つのエンターテイメントの作品として作ったので。例えば最近公開されているハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』があるじゃないですか? 「ゴジラ」って、普通に娯楽大作ですけど、ゴジラはなぜ生まれたのかという根底には原爆とかがあって。今回のゴジラだって日本のどこかの原子力発電ところの爆発というものが原因で出てきたとかいうことに繋がるわけですよ。テーマはそういう重たいところに根付いているけど、「ゴジラ」と言う娯楽作品になっている、なんかそういうことなんですよ。そういうエンターテイメントを作りたかった。ただ忘れちゃいけないテーマは根底に眠っているというか。
——内容的には架空であって架空でないというか。
武藤 : 根本的なテーマは一貫しているんで。震災が起きてその後に原発の問題が起きて、「じゃあどうする? 日本人として?」というところから目をそむけてはいけないし、だからと言って説教臭くはしたくないし。「ああ、いいアルバムだね、でも何か考えさせられるね」っていう、意味のある物を作りたかったですね。
——「Dr. ベクレキュリー」というのは武藤さんがそういう意思のもとに生み出した架空の人物なんでしょうか?
武藤 : ベクレルさん(アントワーヌ・アンリ・ベクレル)とキュリー夫人という、放射能を発見した2人の科学者の名前を足して2で割ったんですけど(笑)。ただそれを博士だと言ってしまうと、逆に強がりを言っちゃうなと思ったんで、「博士の助手」にしたんです。
——「Dr. ベクレキュリー」は昨年1月の東京キネマ倶楽部で初披露されて以来ライヴで演奏されているようですが、だいぶ前からあった曲なんですか?
武藤 : 「パンドーラーの匣」と「Dr. ベクレキュリー」は2年前くらいからあったんですよ。勝手にしやがれのアルバムを作りたいなと思いながら、ず〜っと何をテーマに歌えばいいかが全然出てこなくて。たまたま、大飯原発が再稼働するとなったときに色々自分で調べて「これはなんかおかしいな? 俺は反対だな」って個人的に思って。俺もいてもたってもいられなくて、首相官邸前のデモ活動とかに参加したときに「パンドーラーの匣」というのがポロっと出てきたんですよね。そのときに、こういうことを歌う姿勢って大切だなって思って、そのまま「Dr. ベクレキュリー」も出来たんです。そのときにひらめいたものが今回のアルバムの核になってますね。それまでは何を歌ったらいいのか全くひらめかなくて。ただ“いい曲”って言っても、これまでも作ってきたつもりだし(笑)。
隣の人への優しさを忘れたら、復興なんて絶対できないと思います
——ただ、勝手にしやがれは今年で結成17年ということもあって、これまでも時代を反映する曲は歌ってきましたよね?
武藤 : うん、だから今の時代に生きているから自然にそういうことになったと思うんですよ。2002年に発表した作品は2001年の9月にレコーディングしていて、アメリカの同時多発テロがあったんです。レコーディングの最中にそのニュースを知って、それまでに書いていたそういうテーマに近いような歌を全部書き直して、テロリズムみたいなものを反映したんだけど、やっぱり時代時代で自分が感じたものをそうやって詰め込んでいくというのは、自分の衝動としてやりたいというか。もともとパンクス出身なので(笑)、おかしいものはおかしい、嫌なものは嫌ということを自然に反映して歌にするというのは意味があるなと思っているんですよ。だから今回の作品がこうなったのも自然なことで。
——ミュージシャンとして自然なことということですね。
武藤 : いや、“人間として”ですよ。ミュージシャンとしてというよりも。やっぱり目を背けてハッピーだっていう生き方も俺の中では嫌だっていう気持があるんで。
——「アイ・ラヴ・ユー・アゲイン」という曲は武藤さんの自問自答が表れているように聴こえたんですが、いかがですか。
武藤 : 自問自答というか、「アイ・ラヴ・ユー・アゲイン」もこのアルバムのデカいテーマなんだけど、震災が起こって以降… いや、起こらずともみんなが持たなきゃいけない気持ちって、電車に乗ったときに隣の赤の他人に優しくできるかどうかがまず根本だと思うんですよ。俺、20年位前にバイク事故で骨折して松葉杖で通わなきゃいけなかった時期があったんだけど、松葉杖をついた俺に席を譲る人はほとんどいなかったんですよ。
——ええ、本当ですか?
武藤 : うん。たまに譲ってくれる人がいて、「あ、大丈夫ですよ」とかって言うんだけど(笑)。でも最近電車で松葉杖をついてる人がいたら、「ああ、座ってくださいよ」って俺は率先して声を掛けるし、明らかに年配の人には声を掛けるんだけど、俺以外に声を掛けてる人の姿をあまり見ないというか。たまには見るし、俺も携帯いじってて気がつかないときもあるけど、そうすると他の人が譲っていたりして。でもそういう優しい人がいることは嬉しいことじゃないですか。自分のわがままを通すために図々しくするんじゃなくて、人に優しくするために図々しいことは正しいと思うんですよね。だからそういうことにもっと図々しくなってほしいと思うんですよ。「アイ・ラヴ・ユー・アゲイン」はそういう気持ちなんです。「愛してるよ」って1回は言えるけど、もう1回、もう1回って言えるかというと、絶対飽きるんですよ。それを飽きずにずっと言えるかどうかが人への優しさの継続だと思うんですよね。それをやらないと、震災が起きたときはみんなが「助け合おう」ってなったけど、何年か経ったときに忘れちゃう。もう1度「愛している」って言えるのかということなんですよ。
——震災という大きな出来事だけじゃなくて個人の生活に密接に繋がってることというか。
武藤 : 自分を犠牲にしてまで、支援はできないと思うんですよ。自分のペースでいいと思うんです。でも隣の人への優しさを忘れたら、復興なんて絶対できないと思います。その根本的なテーマが「アイ・ラヴ・ユー・アゲイン」にすごく込められてる感じですね。
——震災後の活動の中でも交流のあるTOSHI-LOWさんが「パンドーラーの匣」に参加していますが、TOSHI-LOWさんの本領発揮と言うか、イキイキしてますよね(笑)。
武藤 : ははははは、確かに。
——BRAHMANやOAUの曲でもここまでストレートにこうした歌詞を歌ったものはない気がします。この曲はもともとTOSHI-LOWさんをフィーチャーしようと思って書かれた曲なんですか?
武藤 : いや、それはまったくないですね。OAUと勝手にしやがれが同じイヴェントに出たときに楽屋で会って、そろそろレコーディングに入ることを話してたら、TOSHI-LOWが「俺にも歌わせてくれよ。スーツ作ってくるから」とか言ってて(笑)。そういうふうに参加したい意思を伝えてくれたから、「パンドーラーの匣」はもうアレンジもだいぶ出来てたんだけど、TOSHI-LOWが参加するならこの曲だな、と。〈GET UP STAND UP 今こそ さぁ立ち上がれ〉っていう歌詞をTOSHI-LOWが歌ったらすごく説得力があるなと思って、レコーディングでは俺がある程度歌ったものを聴かせて。そうしたら「こういう風に歌ってみる」って色々工夫したりAメロを掛け合いにしてみたりというアイディアを出してくれたんで。
——震災のことが色濃く表現されているという意味では、「タクシー・ソング」と「ゴーストタウン」はそこから抜け出そうとする人と、そこに立ち尽くしている人という、対になっている印象です。こうした内容は実際に武藤さんが被災地で感じたことが言葉になっているんでしょうか。
武藤 : 福島の郡山とかに何度もライヴに行っているけど、現地の友達とかに話を聞いたりして。放射能問題で国はちゃんと教えてくれないけど、実際にヤバいと感じて子供連れの一家とかは引っ越している人もどんどん増えているらしくて。でも震災の前に郡山に行ったときは、アーケードの通りとかは土曜日の夕方とかでも結構シャッターが降りてて。別に震災とかと関係なく、だいぶ過疎が進んでるんだなっていうイメージもあって。俺の生まれ育った北九州の黒崎っていうところも、もう炭鉱もないし製鉄ところも公害問題でほとんど動いてないから、俺が小さい頃にすっごい広いアーケード街で栄えてたイメージがあったんだけど、ライヴで久々に行ったらやっぱり土曜日の夕方でも9割シャッター閉まってるんですよね。そういう実際に過疎が進んでいるものと震災で過疎が進んでいるものとあるんだけど、震災を幹にせずに考えなくてもそういう問題ってあるよなって。ただ、郡山に震災後に行ったときに抜け出す人もいる反面、俺は放射能で癌になろうがこの町が好きだから離れないんだよっていう人の話を聞いたりしたこともあるし、逆に震災後の方が郡山って栄えているような気がして。「こんなに賑やかだっけ?」って。それはそれで色んな想いがあるけど、そういう現状に目をそむけずに言っておきたいという気持がありますね。
この音像は、これからの時代の主流になっていくものじゃないかな
——こうした街の風景を描いている曲と共に、インストが5曲入っていますが、言葉がない曲を作るときはどんなことをイメージしているんでしょうか?
武藤 : その音からなんの風景が見えてくるかということですけど、単純に曲だけを考えたら、これは言葉を乗せずに演奏だけで攻めた方がかっこいいね、って思えたからそうしてるんです。
——インストの中で「ゼチェ・プラジナイズド」はオダギリジョーさんが曲を書いていますね。僕は「チェリー・ザ・ダストマン」(2006年に発表された勝手にしやがれとオダギリジョーのコラボ・シングル)をバンドでコピーしたことがあります(笑)。
武藤 : あ、ありがとうございます(笑)。
——オダギリさんが曲に参加するのはそれ以来ということになりますか?
武藤 : 「チェリー・ザ・ダストマン」あたりからすごく親交が深くなったんですけど、でもその前からオダギリ君は勝手にしやがれのことを気に入ってくれてて、俺もオダギリ君の俳優としてのキャラが大好きだったんです。
——「ゼチェ・プラジナイズド」はどのように生まれた曲なんですか?
武藤 : オダギリ君が簡単に打ち込みだったり友達と演奏したものを録り溜めしてて、「良かったら聴いてほしい」ってデモだけもらってて。その中の1曲に「ゼチェ・プラジナイズド」があって。曲のイメージを聞いたら「ゼチェ・プラジーニ村」っていう、バルカン・ジプシー・ブラス・バンドとかあの辺の、ファンファーレ・チォカリーアっていうバンドが輩出された、ぶっちゃけ地図にも載らないような村なんですよ。でもそこの住民はみんな音楽が好きで全員楽器ができるような。オダギリ君はテレビでその村を訪れたときにブラス系のバンドで迎えてくれたことにすごく感動して、そのイメージに触発されて曲をメモ的に書いていたらしくて。それを勝手にしやがれでアレンジしてみたら、結構ハマるな、と。地図に載らない村ということで、過疎の話もアルバムに出てくるし、なんかコンセプトにピッタリだなと。それで「この曲、勝手にしやがれヴァージョンでやらせてもらっていい?」って言ってレコーディングしました。
——今回はレコーディングの面で新たにトライしたことはありましたか?
武藤 : レコーディングに関しては目標があって、それに合わせてエンジニアも決めていて。だいたいこれまでの勝手にしやがれの音作りや世間で流行ってるバンドの音作りって最終的にトータル・コンプというのをガシッとかけて、余分なものが削減されて、一体感と共に演奏に迫力が出るんですよ。CDをパッと鳴らしたときにいきなりデカい音を出せるレベルも稼げるし。勝手にしやがれはギターがいないバンドなんで、迫力を出したいということもあってそういうものに頼ってきた部分があるんだけど、今回はそういった音作りを最初からしたくなくて。結局、ドラムも細かいニュアンスとか出てこないんですよね。グシャっとなっちゃうから。スティックで打面を叩くタッチのニュアンスを大切にしたいなと思って、今回はコンプをかけないでくれって言ったんです。だから他のCDと比べるとレベルは小さいけど音はいいから、つい自分で音を上げたくなるような。めちゃくちゃ音がいいと思うし、最後まで聴き終っても全然耳が疲れないような音作りはちゃんと出来たかなと思います。曲によって、これは歪ませた方がいいというものにはトータル・コンプをかけているものもありますけど。
——そうした音作りは武藤さんのドラム・プレイや歌にも影響をしているんでしょうか?
武藤 : そうですね。今、結構緩急をつけた叩き方をしているので。歌もそうですし。そのダイナミクス、歌や演奏の表情ってライヴではすごく気を付けているんだけど、それをトータル・コンプをかけることによってグシャってなってしまうのがもったいないから、ということで今回の作戦になったんですけど。でもこの音像というのは、これからの時代の主流になっていくものじゃないかなと俺は思ってて。昔と違ってマイクや録音機材の性能もすごく上がってるわけだから、コンプレッサーというものに頼らずにローエンドからハイエンドまでキチっと録れている。それを再生するのにもいい形になっていて、実際に演奏でのレヴェルも稼げているというところをちゃんとやれたら、コンプをかけないでも、耳に優しく身体に響く、いい音像の作品は作れるということがわかりました。さらに音の良さを求めるのであればやはりアナログに回帰していくのかなということはあるけれど、今はフォーマットとして配信とかCDとかで音の制限があるので、どうしても聴感上聴こえてくる音の域しか再現できないんですね。実は楽器って聴こえてこないものもすべて鳴ってるわけですよ。俺の声なんか普通に歌ってても、倍音がすごく色んなところで鳴っているんです。その中のピッチをどこで取るか。だからマイクとEQ(イコライザー)を変えることで、俺の歌ってめちゃくちゃヘタクソにも聴こえるんですよ。でも倍音をひっくるめてピッチを取るから聴感上聴こえない部分も一杯あって、それを浴びたときにいい音を人が肌で感じるんです。要は耳じゃなくて肌で感じる音まで再現できることが理想なんですよ。でもそれが一番できるのがアナログなので。デジタル音源もそこに近いものがなんとかできないかなとは思うけど、結局プレスかけちゃうと一緒なので。
——OTOTOYは配信サイトですけど、勝手にしやがれでDSD録音 / 配信とかいうことにも興味はありますか?
武藤 : うん、そういうことも今後やっていくかもしれない。音のあり方というのはどんどん追及していかなければいけないと思うし、実際ライヴで感じるような身体で浴びる音と、CDで耳で聴く音像ってどうしても違うと思うんですよね。でもそれをどうやって再現できるかというのはひとつの勝負だと思うし、そういったものには貪欲でいたいなと思います。今回はこういう形でまずやってみたけど、もっともっと何かあるかもしれない。それが心地いい音としてお客さんに提供できるのであれば、そういったものが今後主流になっていくと思いますね。音楽ってやっぱり耳じゃなくて身体で聴くんですよね。それは聴こえてない倍音を身体で浴びているんです。そこまで感じないと、無理があるんじゃないかなと思いますね。CD聴いたらそうでもなかったけどライヴで感動したっていうことがあるのは、そういうことなんですよ。
——勝手にしやがれは、もともとそういうバンドでもあるし。
武藤 : うん、全部が生の楽器だしね。そういう意味ではアコースティック・バンドですからね(笑)。完全に生音のバランスの中で成り立っているバンドなので、お客さんが聴くときの感じはデジタルで音を組み立てているバンドとは聴こえ方が違うと思うので。
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LIVE INFORMATION
〈勝手にしやがれ パンドーラー・ツアー〉
10月18日(土) @桐生 Club With Live Music VAROCK Kiryu
10月19日(日) @宇都宮 POP Garage
11月1日(土) @札幌 BESSIE HALL
11月22日(土) @名古屋 BLUE NOTE
11月24日(月・祝) @梅田 シャングリラ
12月7日(日) @浜松 窓枠
〈OPERATION Que HATACHI〉
2014年9月22日(月) @下北沢 CLUB Que
開場 / 開演 : 18:00 / 18:30
料金 : 前売4,300円(1ドリンク別)
出演 : 勝手にしやがれ / Yellow Studs
詳細 : http://www.ukproject.com/que/ (CLUB Que)
〈OPERATION Que HATACHI〉
2014年9月23日(火) @下北沢 CLUB Que
開場 / 開演 : 18:00 / 18:30
料金 : 前売4,300円(1ドリンク別)
出演 : 勝手にしやがれ & 渡辺俊美 / カルメラ
詳細 : http://www.ukproject.com/que/ (CLUB Que)
PROFILE
勝手にしやがれ
右手にジャズ、左手にロック、心にパンクを。
セックス・ピストルズの邦題、ゴダールの映画タイトル、あるいは沢田研二の大ヒット・シングル曲をバンド名に持つ、勝手にしやがれ。97年の活動開始以来、さまざまなジャンルのジャズをパンク・ロックの精神で独自の音楽に昇華。ギター・レスで、ドラムスがヴォーカルを担当する独特のスタイルが特徴の7人組。時代の流行り廃りにまったく流されることなく、かつ、新鮮に、圧倒的な存在感を醸し出す。