ハイレゾで蘇る、激動の幕末の模様——音楽家、川井憲次による「花燃ゆ」サウンドトラック
もはや日曜夜8時の定番である、NHK大河ドラマ。今期放送中の大河ドラマ「花燃ゆ」は、幕末動乱期を舞台に、井上真央演じる、吉田松陰の妹の文と、松陰の志を継いだ若者たちの青春群像劇である。その劇中を、ダイナミックかつ繊細な音楽で彩った音楽家、川井憲次によるオリジナル・サウンドトラックを24bit/48kHzのハイレゾでお届け! 作品に寄り添うかのようにフィットした川井憲次の音楽、そしてより鮮明なハイレゾ音源で、ドラマの世界にもう一度思いを馳せてみては?
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」オリジナル・サウンドトラック Vol.1(24bit/48kHz)
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / aac(24bit/48kHz) : 単曲 300円(税込) / アルバム購入 3,000円(税込)
【Track List】
01. 花燃ゆ メインテーマ -- ソプラノ : 志方あきこ、演奏 : NHK交響楽団 / 02. 大輪のごとく~文のテーマA / 03. 杉家の暮らし / 04. 邂途に咲く者 / 05. 騒動A / 06. 女の幸せ~花占い / 07. 小田村伊之助のテーマ / 08. 兄への憧憬 / 09. 日の本の大樹~松陰のテーマA / 10. 新芽の志! / 11. 盟友、ともにあり! / 12. ちゃぶ台騒動! / 13. 久坂玄瑞のテーマ / 14. いつ闘る? 今でしょ! / 15. 花煙 / 16. 高杉晋作のテーマ / 17. 覚醒 / 18. 未知の探求 / 19. 女に生まれたからこそ / 20. 悪夢のトラウマ / 21. 騒動B / 22. 文のふしぎな引力 / 23. 異国襲来 / 24. 獄中からの呻き~鬼神の面 / 25. 月光の惑い / 26. 見えなくも固い糸 / 27. 刻の移ろい / 28. 運命の軌道 / 29. 花燃ゆ紀行1
川井憲次が音で描く幕末動乱期のダイナミズム
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のオリジナル・サウンドトラックが24bit/48kHzのハイレゾで登場した。本作を手掛けているのは、「機動戦士ガンダム」や「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」といった人気アニメ作品から「サンサーラ・ナーガ」、「三國志Online」等ゲーム音楽、さらには数々の実写映画、はたまたTBS「オールスター感謝祭」の「赤坂5丁目ミニマラソン」で佳境に差し掛かった辺りで流れる「悲運の標的」(OVA「ドラゴンフィスト」サウンドトラック収録曲)まで、幅広い守備範囲で劇伴音楽を制作することで支持を得ている大御所の川井憲次だ。
以前とあるロック・バンドを取材した際に、中心メンバーの口から自らのバックボーンとなっている音楽家の1人として、川井憲次の名前が挙がったことがある。そのメンバー自身がアニメ・ゲーム音楽を好んで聴いていたことも理由の一つとなっていたのだが、バンド自体の音楽性はシンフォニックで壮大なプログレッシヴ・ロックであった。そうした形でバンド界隈にまで川井が作り出した音楽の影響が波及していることに驚かされたが、川井が最近手掛けた「機動警察パトレイバー」の実写化映画『THE NEXT GENERATION -PATLABOR-』のサントラを聴いてみると、疾走感のあるリズムとストリングスを多用した楽曲は様式美的なロックの匂いも感じさせており、決して意外なことではないことがわかる。そしてその音楽性は、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で描かれる激動の時代を見事に表現することに成功している。
この壮大なスケールの物語を、いかなる音楽を以って表現すれば良いか? 「花燃ゆ」の劇伴に求められた命題に応えるべく川井が生み出したのは、激動の時代を生き抜いた人々の強固な意志を感じさせるドラムとストリングス、コーラスによる輪郭のくっきりとしたオーケストラゼーションによる力強いサウンドと、琴の音色を含む柔らかなサウンドによる対比。それはすなわち、吉田松陰を始めとする男性の登場人物たちと女性である主人公・文の人生が絡み合い、ストーリーが展開していくことを示唆している。その2つが織り込まれた「花燃ゆ メインテーマ」は、勇敢な志士たちを思わせるコーラスに揺れるような女性ソプラノが重なることでドラマの全体像を想起させるものとなった。主要登場人物たちのテーマ曲も用意されており、ピアノの音色が優しい「大輪のごとく~文のテーマA」に対して、「小田村伊之助のテーマ」や「日の本の大樹~松陰のテーマA」といった男性を描いた楽曲では管楽器やストリングスで豪快な音像を作り、はっきりとコントラストを表しているのが印象的。箸休め的なユーモアを感じさせる「ちゃぶ台騒動!」や「いつ闘る? 今でしょ!」というちょっと苦笑いなタイトルの曲までが楽しめる前半と、徐々に緊迫感を増す「異国襲来」、「獄中からの呻き~鬼神の面」といった後半まで、いずれも曲ごとに表情豊かにアレンジされた楽曲たちを聴くことができる。
これまで数々のジャンルを越えた映像作品の音楽を手掛けてきた川井だが、今作では生音にこだわることでより一層ヒューマニズムに溢れた音作りを追及しており、渾身の作品群となっている。OTOTOYではよりスケールの大きさを感じることが出来る24bit/48kHzのハイレゾ音源で配信されているので、是非ドラマと共に楽しんでほしい。(text by 岡本貴之)
川井憲次WORKS
川井憲次 / ガールフレンド(仮) オリジナル・サウンドトラック(24bit/48kHz)
川井憲次による、大人気恋愛ゲーム「ガールフレンド(仮)」アニメ版のサウンドトラック。「花燃ゆ」に比べて、ブリリアントな音色とおとなしいアレンジが多用されているため、アニメの世界感にあった、日常を思わせるサウンドとなっている。
川井憲次 / THE NEXT GENERATIONパトレイバー オリジナル・サウンドトラック1 / 2(24bit/48kHz)
1988年の発表から、いまだに多大な影響を与え続けている人気アニメ「機動警察パトレイバー」の実写版映画「THE NEXT GENERATION-PATLABOR-」のオリジナル・サウンドトラック。まさに川井節とも言えるような壮大なストリング・アレンジが満載の今作は、ぜひハイレゾで聴いていただきたい音が詰まった作品です。
>>THE NEXT GENERATIONパトレイバー特集ページはこちら
川井憲次 / NHK特集ドラマ「下町ボブスレー」オリジナルサウンドトラック
東京下町で暮らす町工場の職人たちが、初の国産ボブスレーのソリ「下町ボブスレー」を作って、オリンピックに挑戦する!? この実話をもとに、モノづくりに誇りをもつ職人たちと、職人の心意気が詰まったボブスレーで戦う女子選手の、情熱と奮闘を描く「希望」のドラマ。
PROFILE
川井憲次
1957年4月23日東京生まれ
ギタリストとして活動した後、86年に押井守監督作品「紅い眼鏡」で映画デビュー。
「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「AVALON」「イノセンス」「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」等の押井守監督作品の他、中田秀夫監督作品「リング」「リング2」「ガラスの脳」「カオス」「仄暗い水の底から」「怪談」「L change the WorLd」「インシテミル」「クロユリ団地」「MONSTERZ」、鶴田法男監督作品「予言」「おろち」、清水崇監督作品「輪廻」、金子修介監督作品「DEATH NOTE」「DEATH NOTE~the Last name」、マックス・マニックス監督作品「レイン・フォール/雨の牙」、益子昌一監督作品「さまよう刃」、水島精二監督作品「劇場版 機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-」、佐藤信介監督作品「修羅雪姫」「GANTZ」、英勉監督「貞子3D」、ヤマサキオサム監督「薄桜鬼」などの映画に参加している。テレビシリーズでは、「めぞん一刻」「らんま1/2」「機動警察パトレイバー」「Fate/stay night」「精霊の守り人」「東のエデン」等アニメーションの他、「ウルトラマンネクサス」「七瀬ふたたび」「科捜研の女」「鉄の骨」「梅ちゃん先生」「塚原卜伝」「火怨・北の英雄アテルイ伝」「鼠、江戸を疾る」「BORDER」「すべてがFになる」等のTVドラマも担当。海外作品では、フランス映画「SAMOURAIS」「BLOODY MALLORY」、フランスドキュメンタリー番組「よみがえる第二次世界大戦~カラー化された白黒フィルム~」の他、韓国映画「南極日誌」「美しき野獣」、香港映画「セブンソード」「かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート」「葉問 Ip Man」「楊家将~烈士七兄弟の伝説~」「ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪」、合作映画「墨攻」「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」を担当。