気づいたら私もプログレの体に──XOXO EXTREME、初フル・アルバム・リリース&現体制ラスト・インタヴュー!
唯一無二のプログレ・アイドル・ユニットとして2016年12月より活動を開始したXOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)が初のフル・アルバム『The Both Sides Of The Bloom』をリリース! 国内外から高い評価を得つつ、2019年7月には、渋谷WWWにてバンドを率いてのワンマン・ライヴも成功に収めた彼女たち。今作ではプロデューサーである大嶋尚之による楽曲はもちろん、姫乃たまや里咲りさ、宮野弦士なども参加、アイドルの人生を描いたコンセプチュアルな作品に仕上がっております。そして今作のリリース直後、2019年9月16日の新宿MARZでのライヴを持ってメンバーである楠 芽瑠が卒業を控えている彼女たちに現体制ではラストとなるインタヴューを敢行! アルバムのことから卒業、これからについてなどたっぷりと話を聞きました。
アイドルの人生を描いた、初のフル・アルバムをハイレゾ配信!
INTERVIEW : XOXO EXTREME
インタヴュー&文 : 南波一海
編集 : 高木理太
写真 : 大橋祐希
卒業した後のグループのことをめるたんが一番考えてくれてる
──最近、グループ表記がxoxo(Kiss&Hug) EXTREMEからXOXO EXTREMEになりましたよね。
一色 萌(以下、一色) : ヌルっと。
──しれっと変わりましたよね。それはどんな理由で?
一色 : そもそも読みづらいっていうのと、長いというのもあって。「xoxo」で「キス&ハグ」って読むじゃないですか。だから「xoxo(Kiss&Hug)」って読み仮名をつけていたんですけど、もう読んでもらえるんじゃないか、なくてもいいかなって。「XOXO EXTREME」っていう表記は、実はメログリさんとのコラボ(MELLOW GREEN WONDER との「ν-Romantica」)のときあたりから出てきていて。よく見ている人の中では、そのあたりから、おや? と思っていたかもしれないです。
楠 芽瑠(以下、楠) : 本当は何度かタイミングがあって。前にも、この発売のときに括弧を取りたいですみたいなことは言っていたんですけど、取り逃しちゃってた(笑)。そうしたら最近、私たちも何も言われず括弧が外れていて、Twitterでファンの人が言っているのを見て知りました。
──レコード盤『WORKS』の表紙はXOXO EXTREMEになっていて、背を見るとxoxo(Kiss&Hug) EXTREMEになっているんですよ。
一色 : おっと、表記揺れが。
大嶋 尚之(プロデューサー) : そこはデザイナーさんの独断で。
──そうなんですね。そこが分岐点なのかなと思ってました。
一色 : そういうことにしましょう! でも、(XOXO EXTREMEの表記は)すっきりしていいんじゃないかなって思っています。ライヴのタイムテーブルを作る人に親切になりました。
小嶋 りん(以下、小嶋) : よく、EXTREMEだけ違うグループみたいに思われて。
一色 : xoxo(Kiss&Hug)で1組、EXTREMEで1組みたいな2組扱いされてて(笑)。
──混乱を招くこともあったと。この表記になってよかったですね。初のアルバムがこのタイミングでリリースされたわけですけど、楠さんは以前から卒業を考えていたという話でしたよね。もし、小日向まおさん(2019年5月末に脱退)の活動休止がなかったらもっと早く卒業していたかもしれなくて。
楠 : そうですね。
──だとすると、アルバムにも参加していなかったかもしれない?
楠 : アルバムは去年のうちから出そうって話は出ていたんですけど、それもメンバーの休業があったりで延びてしまって。結局、ちゃんまお(小日向)が辞めることになったので、さらに録り直しも増えて、歌割りも変えなきゃいけなくなった結果、アルバムも私の卒業も同時に延びた感じです。ただ、私が辞めるって自分の中で決めた当初はアルバムを作る話は出ていなかったので、もし、ちゃんまおの活休がなく、私が去年の末に辞めていたら、もしかしたら…。
一色 : でも、芽瑠さんがアルバム1枚も出さないで終わりっていうのは流れ的にもないかなと思ったから、もし去年卒業ということになってたら、多分、急いで作ったんじゃないですかね。何もかもがうまいこと予定通りに進んでいたら、去年の年末にアルバムもできていて、ちゃんまおもいて、るりちゃんもちょっと参加の5人バージョンが録られていて、そのアルバムを出したあとに芽瑠さん卒業だったのかなって気がする。
──いずれにせよ楠さんのいるアルバムは作っていたと。それがいろいろズレて、いまに至るわけですね。この4人体制になってからの活動はいかがでしたか?
小嶋 : 最初はるりちゃんの参加していない曲のほうが多かったから、ワンマンに向けて必死にレッスンを重ねて。最初はワンマンもるりちゃんはそんなにがっつり参加する予定ではなかったよね?
一色 : 当初は2、3曲だけ出るという可能性もあったんですけど、そういうわけにもいかなくなって、結構短い期間で曲を詰めなきゃいけなくなって。るりちゃんはやったことのない曲を覚えないといけないし、私たちも今までとフォーメーションと歌割りが変わってくるし。必死に7月のワンマンまで駆け抜けて。で、7月のワンマンが終わったらすぐ芽瑠さんの卒業に向けてリリースやいろいろあったので、ずっとバタバタしてきたかも。
──浅水さんは一気に覚えなきゃいけなくなったわけですね。
浅水 るり(以下、浅水) : そうですね。状況としてはピンチだったのかもしれないですけど、そこをチャンスに変えるかどうかでこれからの自分にもグループにも大きく影響すると思ったので、必死に食らいついてました。本当に余裕がなかったです。良くも悪くも目の前のことしか見えなかったので、あっという間に時間が過ぎていって、気づいたら曲が入ってました。キツいとか思う余裕もなかった気がします。1曲覚えたら次はこれやろうみたいな感じで、ずっと動いていた感じです。
──新メンバーだけでなく3人も対応に追われ。
楠 : 短期間で3人バージョンを一気に作ったんですよ。るりちゃんは全部は参加できないので、ダンスと歌を知っている私たちがとりあえず3人で作って、時間を見つけて、その曲を4人バージョンで作り直して。
──その4人バージョンは旧4人バージョンとは違うわけでしょう。
楠 : 違いますね。
一色 : 3人に割り振ってからの新たな4人バージョンだったので。歌えるところをるりちゃんに渡す感じだったので、全然違いますね。
楠 : 今、ちゃんまおがいたときのバージョンをやってって言われてもできないし、もう3人バージョンもわからない。その都度覚えるしかなかったし、急遽すぎて、先生を呼んでいる時間もなかったんですよ。自分たちで対応してライヴして、4人ができたら3人バージョンを忘れて、みたいな。
──それを数ヶ月ずっと続けてきて。もう卒業どころじゃなくて、とにかくやらなきゃいけないことが次から次にやってくるみたいな。
楠 : そうなんですよ。でも、せっかくこの4人で固まったと思いきや、私が辞めたらまた振り出しに戻るじゃないですか。最近は卒業以降の話も出るようになり、いついつレッスンをして、この曲からやっていこう、みたいな話を先月あたりからしているんですよね。
一色 : 芽瑠さんしかわからない振りとかもあるから、卒業した後、レッスンに来てもらってちょっとお手伝いしてもらおうと思っていて。芽瑠さん卒業のライヴの週からレッスン詰め詰めなんです。
楠 : 多分、相当泣いて卒業すると思うんですけど、その2日後にまた会うんですよ。
──振り入れをしないといけない(笑)。ちゃんと後のことを考えているのが立派ですよね。そもそもはもっと前に卒業するはずだったのに、今はマズいということでここまで続けてきたわけですし。
小嶋 : めるたんが卒業した後のグループのことをめるたんが一番考えてくれてるんですよ(笑)。私たち以上に。しっかりしないきゃなと思う。
楠 : そういう性格なんですよね。先が決まってないとストレスになっちゃうんです。実際、辞めたら関係ないんですけど、それを放り投げられるかと言ったらできなくて。これから先、何年も面倒見れるかって言ったらそれはまた違う話ですけど、辞めたあとの数ヶ月とかは気にかかっちゃうし、自分にも少なからず責任はあると思うので、お風呂に入ってるときも、とりあえず3人でできる曲はなんだろう? って考えてます。
──私が抜けたあとすぐにできる曲はどれだ? みたいな(笑)。
一色 : 芽瑠さんが抜けたあと、わりとすぐに生バンドのライヴがあるんですよ。持ち時間が50分あるので、3人でできる曲を相当作らないきゃいけないじゃないすか。1~2週間で。だから今日はみんなでできる曲を話し合わなきゃなと思いながらレッスン場に行ったら、芽瑠さんが、3人でできるセットリストをこんな感じで組んできたよって言ってきて(笑)。セトリがほぼできてました。
──すごい!
楠 : これなら50分埋まると思うんだけどって。考えちゃうんですよね。で、この日とこの日なら私レッスン行けるけどどうかなって話して。私の権限で歌割りが決まるわけじゃないんですけど、そこも勝手に考えてます(笑)。こうなるんじゃないかみたいな。フォーメーションも頭の中で勝手に考えて。
小嶋 : この前、めるたん(楠)が、新曲の「Salty Sky」の歌割り考えてて。でも私、そこの音がすごく好きなので歌いたくないですって言って。聴いていたい(笑)。
楠 : でも、りんりん(小嶋)になると思うよ。
一色 : …っていう話をしています。最近は。
ピンク担当になれないならそのグループに入りたくないくらいだった
──楠さんの卒業まで5日(取材時)しかないわけですが、シンプルに寂しいとかそういう気持ちは?
楠 : 前までは寂しいなとか思っていたんですけど、ここに来てあと5日と思ったときに、え、本当に辞めるの? 嘘なんじゃない? とか思ったり。それ以降の土日がけっこう空くんですよ。そりゃそうなんですけど。まだ今後の予定がそんなに決まってないので、スケジュールを見た時に、これが当たり前になるんだっていうのが今はまだ信じられない。卒業まで予定が結構詰まっているんです。一昨日まで大阪遠征をしていたり、バタバタすぎて実感が湧かなくなってきたので、最後のライヴの次の日くらいに辞めた実感が出てくるのかな。
──いまもすごく自然な感じで話してますもんね。とはいえ、残るメンバーからしたら、リーダーが抜けるのってめちゃくちゃ大きなことじゃないですか?
一色 : そこはもう頑張るしかないです。いる人で頑張るにしても、もう無理かもと思ってやるのか、もっと売れるぞっていう気持ちでやるかどうかで変わってくると思うので、弱気になっちゃいけないなと思ってます。強がりでもなんでもなく、頑張るぞって気持ちしかないです。
小嶋 : 私はまだ全然想像がつかないし、いま5日後と聞いてびっくりしたくらい実感がないんですけど、キスエクの可愛い要素のめるたんが抜けるので、格好いいキスエクになるのかなって。どうする?
一色 : りんりんが可愛い担当になってもいいよ。
小嶋 : 遠慮しておきます(笑)。
──キスエクの可愛いポストが抜けてしまうと。
楠 : いや、私以外のメンバーはあまりアイドルアイドルしていないというか。
一色 : もともとザ・王道アイドルみたいなものに憧れて入ってきていないというか。私たちは変わった音楽をやっていると知った上で入ってきていて。芽瑠さんはちょっと違うんですよね。Sugary Hugっていう前身のユニットがあって、可愛いのをやりたいというのが大元にあって、その上で、ちょっと変わっている音楽に可愛いを乗せるってスタイルだったので。そう思うと、たしかに可愛い要素が抜けてしまうのが寂しいなって気はするんですけど。
──声もアイドル的な高い声ですしね。
楠 : たしかに今後、歌割りを振るのが難しいパートがわりと多い。私は別に上手くはないんですけど、キャラとして任せてもらっていたパートが多いので。みんなはそうじゃなくて、ちゃんと歌うタイプだから、私がやっていた台詞っぽいところとかラップみたいなところをみんなが歌っていくのは苦戦しそうな曲もありそう。
一色 : 歌詞を変えなきゃいけない曲もあるし。名前が入ったりしているので。
──浅水さんはたくさん歌割りをもらえるチャンスじゃないですか。
楠 : 大阪遠征のとき、るりたんが可愛い担当をするって言っていた話を聞きましたよ。
浅水 : いや、ファンの人に(可愛い担当に)なってよって言われて、あ、ハイって返事をしたら…私、るりたんになるんですか(笑)。
楠 : そう聞いたよ。
浅水 : じゃあ、そういう心づもりをしておきます(笑)。
小嶋 : 絶対なんないだろ!
浅水 : (メンバー・カラーの)ピンクももらって。
楠 : (食い気味に)それはちょっと譲れないかな。
──そこはダメなんですね(笑)。
楠 : 今後、誰かが入ってきても、まだ別の色で対応できると思うんですよ。
──ピンクは永久欠番みたいになる?
楠 : みんなはそこまでの色のこだわりがないと思うんですけど、私はピンク担当になれないくらいならそのグループに入りたくないくらいだったんです。だから既存のグループでピンクがいる時点でダメなんですよ。そこには入れない。モチベが上がらない。私はここに最初に入れたので、色はピンクでって言えたんです。
大嶋 : めるたんは入る条件のひとつにピンクというのがあって。
──ピンクだったら入りますと(笑)。
楠 : 第2号のピンクが来ますって言われたときに譲れるかって言われたら…辞めている立場なんですけど、譲れないかなぁ(笑)。よっぽどの「これはピンクだ」っていう子が来たら大丈夫です。
一色 : これは相当ハードル高いですね。
──自分が辞めたあとに気になるのはピンクの行く末ですか。
楠 : そうですね。別にパートをあげるとかは構わないし、可愛い系担当ですって子が入っても全然いいですけど、ピンクだけは(笑)。前にいたグループはメンバー・カラーがなかったんですけど、でも、色が欲しいじゃないですか。だから勝手にピンクって言ってたくらいなんです(笑)。だからピンクは殿堂入りにしたい。濃いピンクとかだったらまだいいかな。色が足りなくなってしまったのであれば。
キスエクの曲ってやっぱいいよなって思ってるんです
──色が足りなくなるくらいメンバー増えないでしょう(笑)。そろそろアルバムの話をしましょうか。グループ初のフル・アルバムですが、アイドルの始まりから終わりまでを描いたコンセプト作品なんですよね。意外だったのは既発曲があまり入っていないことで。
一色 : 8曲中6曲が新曲。キスエクは音源が多くて、ちょこちょこ形にしてきたので、ああ、これ入らなかったのか…って思うことはそんなになかったです。「Time and tide wait for no man」は去年の私の生誕でお披露目して、その後、長い間出てなかったので、今回入って嬉しいなっていうのはあったりします。
楠 : 新曲全部好き。アルバムを出すなら今までの曲を集めて出すより新曲を出したほうがお客さんの満足度も高いと思うんですよ。アルバムの楽しみって新しい曲を聴けるワクワク感じゃないですか。再生して新しい曲が流れる楽しみってあると思うので、自分もこうやって出せたことは良かったなと思う。タイミング的にも、いろいろあったけど、ちょうどいいものが出せたと思います。
──浅水さんはこれが初の音源になるんですよね。
浅水 : 自分の声がCDに入って、それがお店に並ぶっていう感覚がまだ不思議な感じです。今まではリリイベとかも参加してたけど…。
──自分の声が入ってないものにサインする違和感というか。
浅水 : みたいな気持ちもあったけど(笑)、堂々とアルバムが出ましたって言えるようになったのは嬉しいです。そういう最初の気持ちを忘れたくないなって思います。
小嶋 : 私たちも「The Last Seven Minutes」が初めてタワレコさんとかに並んだ時は同じように嬉しかったな。
──アルバムの推し曲を教えてください。
一色 : 1曲だけ挙げるのは難しいけど、みんな好きだし好評なのは「オレンジ」ですね。里咲りささんに作っていただいた曲で。ファンの人からもすごい好評で、最近だと一番感想もらうかもしれない。
楠 : 歌詞があんなに女性目線だったのが初めてだったんです。以前、「悪魔の子守唄」でイチノセサトミさんに書いてもらったんですけど、あれはプログレ用語が入ってきたりだったので。「オレンジ」は女の子っぽい感情的な歌詞でってリクエストしたので、できあがった歌詞を読んだときに、すごく歌いやすいなと思いました。「オレンジ」を初披露したときはすごい反響だったよね。
一色 : ファンのかたからも、今までになかった歌いかたをしている部分があるって言ってもらえました。何回か転調があって、そのたびに雰囲気が変わるので、今まで聴いたことない歌いかたのパターンを1曲のなかでいくつも聴けるという。歌詞も普段よりも感情移入しやすいので、歌いかたとか表情とか踊りかたも変わってきたのかなっていうのはあります。こんなにも好評だよってことを里咲さんに伝えたいんですけど、なかなか会えてないんですよね。「初恋の通り道」と合わせて聴くのも物語的にオススメです。セットで披露することも多い曲です。芽瑠さん好みですよね?
楠 : 私は一番好きというか、自分っぽいかなと。「週末幻想曲」にちょっと似た雰囲気がある。優しいし可愛いみたいな。「初恋~」の歌詞が私の卒業と絡めて聴けるっていうので、ファンの人からも泣けたって声もいただいて。実際、私の卒業を絡めて作詞したというのを聞いたので、より好きになりました。7月のワンマンのときもこれを2曲目で歌って泣きかけました。
──時間的にまだ大丈夫そうなので、全曲について伺っていきたいと思います。アルバムの1曲目が「Birth」になります。
一色 : 7月のワンマンはアルバムの曲順にやったんですけど、ライヴの始まりに本当にぴったりで、ワクワク感を煽ってくれるんじゃないかなと。キラキラした電子音が入っているのが宇宙感もあるし、私はキスエクがいろいろやってきた曲の世界観をちょっとずつ集めた感じの曲だと思ってます。
楠 : すごいオシャレ。私、そんなに音楽詳しくないんですけど、聴いたときに音がかっこいいと思ったので、多分かっこいいんだと思う(笑)。終わりかたが壮大で、一曲聴き終わったあとの満足感もある。ただ…振りが4人で作れてないんですよ!
一色 : 振り入れが間に合わなくて、でもどうしてもやりたいっていうことで、ワンマンではマイクスタンドでやらせてもらうってところに着地したんです。
楠 : ワンマンのオープニングで、新衣装で、照明も凝ってもらったから成り立ったんですけど、それを対バンイベントでできるかと言ったら厳しいじゃないですか。振りもない状態ですし。だから、私はこの曲を1回しか歌えなかったんですよ。それがちょっと心残り(笑)。すっごい好きなんですけど。
一色 : 1回でもできてよかったです。
楠 : 振りを作ったとしても、また3人バージョンに変えないといけないですしね。私がいなくなったあとに3人で「Birth」の振り入れをしようって声が聞こえてくるじゃないですか。へえってなりました(笑)。どんな振り付けになるんだろうって考えながら聴いてます。
一色 : こうなりましたって動画を送りますね(笑)。
──3人は変わった音楽をやると知った上で入ってきたという話でしたけど、そうではなかった楠さんが曲に対してすごく柔軟で、ポジティヴな感想が出てくるのがいいですよね。
楠 : そうなんですよ! 今となってはキスエクの曲ってやっぱいいよなって思ってるんです。正直、最初はイヤでした。ポップなアイドル・ソングが好きだったので、そうじゃない曲を歌ってる自分がイヤになった時期もあって。途中でなにやってるんだろうって思って、それがイヤで辞めたくなったこともあったんですよ。でも今は、自分っぽくないなって曲も好きになったし、アルバムの曲だと…「Salty Sky」とかは最初、ちょっとムムって思ったんですけど、今は好きだなって思うようになったし。その変化は自分でも驚きです。
一色 : いつ頃からか、芽瑠さんがライヴ前に楽しそうになって、すごくホッとしたんですよ。初期メンバーはSugary Hugをやっていたふたりと、別のところでやっていたネネちゃんと、未経験の私がいて。曲に対して全員がどうしようっていう雰囲気だったんですよね。芽瑠さんはもっと可愛い曲歌いたいなってずっと言ってたし(笑)。だから最初はライヴの前は無表情だったんですけど、だんだん楽しそうになっていって。
楠 : 3対1だったんですよね。リーダーとして引っ張っていかなくちゃいけなかったんだけど、3人がすごい自由奔放だったので。
一色 : そうだったかなぁ。
楠 : そうだよ! 今だから言うけど、めちゃくちゃストレスだった(笑)。
──バラバラだった?
楠 : 今もバラバラではあるんですけど、みんなそれなりに経験を積んできたから、こうしなきゃいけないとかこれをしたらよくないとかがわかってきたんです。前は、忘れ物するとか、必要なもの持たずにステージに出ちゃうとか、ライヴで言わなきゃいけないことを忘れるとかがしょっちゅうだったので、またかよってイライラして毎回疲れてた時期があったんですよ。それプラス、曲も好きになれなくて。これでアイドルは最後って決めて入ったグループだったのに…っていう。よく大嶋さんにも相談してました。でも、いつの間にか楽しくなって、メンバーも落ち着き、辞めたくないなって思えるほどになりました。
──自然と曲も好きになって。
楠 : 本当に嬉しいことですよね。
大嶋 : りんちゃんが入ってしばらくした時に、「楽しくなってきました」って言ってたよね。
小嶋 : 小嶋のおかげか。
楠 : それはないな(笑)。でも実際、りんりんが入ってきたあたりで、この4人でやっていくんだっていうのがようやく見えてきたんですよ。それまでは変動が多かったので。「あ、楽しくなってきたな」とか「これでいけるんだ」って思うようになって、その4人の状態がわりと続いたってことは、そう思ったのは間違いないってことだと思うんです。色々あったけど、メンバーには恵まれたなとは思います。
15秒ずつ飛ばして、次はこんな感じかって聴いてました(笑)
──辞めていった人も少なくないなかで、メンバーに恵まれたと言えるのは素晴らしいですね。本題に戻りましょう。「Salty Sky」。
小嶋 : 好きな曲です。Quiさんの林さんが作ってくれた曲で。聞いた話によると、以前からあった「色のない世界」と同じ時期に作られた曲みたいで。結構古い曲なんですよね。ちょっと雰囲気が「色のない世界」に似てるんですけど、でも今までにない感じでもあって。ふんわりしてるのが好きです。
楠 : ダンスも結構魅せるというか振りが多くて。
一色 : 歌うところが少ない分、ダンスの見どころが多い感じ。
楠 : 優しく踊るところもあれば力強く踊るところもあって。全体的には流れるような振りになってるよね。
一色 : あと、最初はもっと長かったんですよね。10分くらいあって。それが7分くらいに落ち着いて。
小嶋 : 削られた部分がすごい好きだった(笑)。でも、さすがに歌がない状態を10分ぶっ通しで聴けないから、15秒ずつ飛ばして、次はこんな感じかって聴いてました(笑)。
楠 : わかる。
小嶋 : 15秒飛ばすとまったく曲の世界観が変わってるから、ちょっと戻って変わり目を聴くみたいな。
──そんな聴きかたするんですか!
楠 : します。仮歌が送られてきた時も、歌が始まるまでが長いから飛ばして(笑)。やっと歌始まったと思ったら、またすぐ長い間奏に入って…。歌割りのところに何分何秒って書くんですよ。そこまで飛ばして、聴いて、また飛ばしてってやらないと練習できないんですよ。だから飛ばしまくりです!
──最高です(笑)。次が「Time and tide wait for no man」。序盤に少し触れましたが、やっと音源化された曲ですね。
一色 : 宮野弦士さんに作っていただいて。私、フィロソフィーのダンスさんとか寺嶋由芙さんがすごい好きなのですごい嬉しくて、いつ音源化されるのかなって思ってたら1年ちょいかかりました。
楠 : これもファンの人にすごい反響があった曲で、皆も音源をずっと楽しみにしてたから、今回やっと収録されて嬉しいという声もあります。ライヴでやると、おお! って言われたりするよね。
一色 : これもいつもと雰囲気違うよねってよく言われます。
小嶋 : 宮野さんもプログレ好きみたいですよね。
一色 : 以前、プログレ・トークのイベントで宮野さんに来ていただいてお話したことがあって。小さい頃は寝るときと目覚ましにピンク・フロイドの「Time」をかけてたって聞いて(笑)。「Time and tide~」の最後のサビのときにジリリリって入るのは目覚ましを意識したんですかね。
──それは面白いエピソード!
楠 : 「鬱。」はもう定番ですね。
──何パターンあるんだっていうくらい音源化されてきた曲ですもんね。「凛音~rinne~」も既発曲です。
小嶋 : るりちゃんの声が入ったよね。どうだった?
浅水 : 「凛音~rinne~」は雰囲気がすごい好きで。春夏秋冬で1人ずつパートあるんですけど、私、夏のパートか…ってちょっと思ったんです。夏がすごい嫌いなので。でも、歌うと本当に好きで。“夏が終わる”っていう歌詞ですし。“始まる”だったら声がちょっと暗かったかもしれないです(笑)。
──ちなみに夏のどんなところが嫌いなんですか?
浅水 : 暑いのが苦手なのと、あと町中の人が一気に元気になる感じについていけないので苦手です(笑)。冬になったらあの人達はどこに行くんだろうって思っちゃいます。
楠 : スノボじゃん?
浅水 : スノボかぁ。
──既発の「鬱。」と「凛音~rinne~」を入れたのはアルバムのコンセプトにも合ったということなんですよね。
一色 : はい。沿うのをピックアップしていった結果、こうなったという。
楠 : 結果的に入ってよかったよね。定番の「鬱。」は新しい4人の声になったのもいいし、「凛音~rinne~」はライヴでやる頻度は少ないんだけど、音源としておしゃれな曲なので。アルバムにもすごく合ってるなって思いますし。
一色 : るりちゃん入りのフォーメーションを組めてなくて、結局ライヴでできてないんですよ。だから逆に音源で残せたのはよかったです。
楽しかったなって思い出のまま終わらせたい
──ラストの「アイドルの冥界下り」は姫乃たまさん作詞で。アイドルに響くであろう、リアリティのある言葉が綴られていますよね。
一色 : 私、姫乃さんがすごく大好きなんです。作詞していただけるのがすごい嬉しくて、歌詞を読んだ時に、姫乃さんが10年やってきたアイドルとしての目線も入ってるのかなと思いつつ、キスエクのことも普段からすごく気にしてくださっているので、メンバーそれぞれのことも考えながら書いてくれたんだなっていうのがわかる歌詞で。嬉しかったですね。
楠 : 作詞していただいただけでもすごいことなんですけど、そのあとにメッセージをいただいたんですよ。歌詞の説明と共に、みなさん色々あると思いますけどアイドル活動頑張ってください、応援してますみたいな感じの文をいただいて。すごくありがたいことだし、愛を感じました。
一色 : 嬉しいですよね。姫乃さんこそお大事にしてくださいっていう状況の中で…。
大嶋 : 救急車で運ばれた週に書いてくれた歌詞なので。
──LP『WORKS』のライナーノーツもそのあたりの時期ですよね。めちゃくちゃ切羽詰まっていた状況で。
大嶋 : ライナーノーツが運ばれる直前で、歌詞が運ばれたあと。
──とんでもないビフォーアフターじゃないですか!
一色 : 最悪、間に合わないことも考えたんですよ。休んでくださいっていう状況だと思うので。
楠 : さすがにその状況で催促するのは無理だし、(アルバムの完成が遅れることが)説明すればみんなもわかることだからってメンバーとも話してて。そんなに無理に書いていただくのもねって言ってたら…。
一色 : その夜に来ました。すごい。歌っていると、なんかわからないけどグッときて毎回泣きそうになるんですよ。
楠 : ポップに始まるんですけど、最後は壮大で感動的な終わりかたで。ワンマンで初披露したんですけど、この曲もすごい反響がありました。振り入れもバタバタになっちゃって、ワンマンの2日前くらいに完成したくらいだったから、やるのに必死で。今となっては余裕になったので、それぞれ感情を込めながら歌いやすくなったと思うんですけど、あのときは必死だったから、みんなからいい感想をいただけたのが嬉しかったです。まだ自分たちの曲にできてなかったから、そういう風に聞こえてるんだっていう驚きがありました。
一色 : それで自信を持てましたよね。みんなは誰が作詞作曲したのかもわからない、まっさらな状態で聴いてたので。もし姫乃さんが作詞したって先に言ってたら、そういう風に見ちゃってたと思うんですけど、それがない状態でも「すごい歌詞だった」「いい曲だね」「振り付けよかった」って全部褒められたんです。
楠 : あと、この曲は出だしがポップで、私らしいパートだなって思ってたんですけど、ここまでゴリゴリな感じの可愛いでしょ? っていう感じの歌詞とか曲調を久しぶりに歌ったから、意外と恥ずかしかったんですよ(笑)。私はこういう曲をやりたかったはずなのに、今となっては「久しぶりにやってんな、私」っていう。気づいたら私もプログレの体になっていたんだって。
──すごい発見(笑)。いい話じゃないですか! といったあたりで時間が来てしまいました。充実の全8曲ですよね。
一色 : はい。よかった、間に合って。
楠 : よかった。でももったいないですね。
──このアルバムが出たあとに4人の歌が生で聴けるのはたった1週間ですもんね。ともかく間に合ってよかったです。アイドル・楠芽瑠としてのインタビューも最後になるんですよね。楠芽瑠になる以前の時代を含め長いアイドル人生が終わってしまうわけですが、いかがですか。
楠 : そうですね。終わっちゃいますけど…私は辞めようと思わなければずっと続けてしまうので。いまだに辞めたくないなって思うんですけど、本当に辛くなって、辞めたい辞めたいとしか思わずに辞めていくのってすごいイヤだと思うんですよ。もっとやっていたかったなとか、楽しかったなって思い出のまま終わらせたい。自分のアイドル人生はそうでありたいと思っていて。このタイミングで辞めるのもったいないな、いま辞めちゃうのか…ってすごく思うんですけど、でも、そう思えるグループと出会えて、その気持ちのまま卒業できるのは本当にありがたいことだなって思います。ファンのみんなにもまだ続けてよって言っていただいているのもすごくありがたいです。最後にこうしてアルバムとして形にできたし、キスエクの中で一番大きい2ndワンマンもかなりいい感じのDVDになったので、集大成を形に残せたのはよかったなと思います。悔いなしです。
──グループとしてはこれからも続いていくわけですが。
一色 : 芽瑠さんが抜けたから終わったなって思われないように頑張りたいです。頑張ります。更に次の集大成を作らないといけない。
小嶋 : そうだね。
──浅水さんは最後に言っておきたいことはありますか?
浅水 : 大丈夫です!
楠 : るりちゃんはかなりいいときに入ってきたと思う。私からしたら羨ましいくらい。入ったときは色々覚えたりしないといけなくて大変だったけど、状況としては、かなりいいワンマンから始まり、アルバムも出て。ここからは上がっていく一方だと思うので。アイドル人生を満喫して欲しいです(笑)。
『The Both Sides Of The Bloom』の購入はこちらから
過去作はこちらにて配信中!
LIVE SCHEDULE
楠芽瑠 卒業ライブ 〜さよならメルティリュージョン!〜
2019年9月16日(月)@新宿MARZ
開場 : 17:00 開演:18:00
出演 : XOXO EXTREME / TAKENOKO▲ / cana÷biss / +tic color
前売 : 2,500円 当日3,000円(1Drink別)
詳細やその他のライヴなどはこちらをご確認ください
PROFILE
XOXO EXTREME
XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム)は、楠 芽瑠、一色 萌、小嶋りん、浅水るりの4人による、プログレッシヴ・ロックを基調とした楽曲を歌い踊る、唯一無二のプログレアイドル・ユニット。2016年12月より活動開始。
2017年に発売したシングル「えれFunと”女子”TALK~笑う夜には象来る~」(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)に対して元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。その後もフランスの大御所プログレバンドMAGMAの「The Last Seven Minutes」公認カヴァーや、世界的ギタリストTim Donahue参加の「キグルミ惑星」、日本のプログレバンドの雄、金属恵比須とのコラボレーションで90年代プログレを代表するバンド、ANEKDOTENの「Nucleus」の公認カヴァーを行う等、国内外より高い評価を受ける。
2019年7月には、渋谷WWWにてふたつのバンドを擁したワンマンライブを成功させ、今、最も勢いに乗っている。
Official HP : https://www.xoxo-ex.com/
Twitter : https://twitter.com/xoxo_extreme