KEN TASAKIとSHIN TASAKIの兄弟ユニットSPANOVAの新作『It's no illusion / Home Documentaries 00』が24bit/48kHzの高音質音源でリリース。前作『SetsunaLized SetsunaRider』の発表から1年も経たずにリリースされるこの作品は、ゲスト・ドラマーに曽我部恵一バンド、口ロロ、L.E.D.で活躍するオータコージ、元エスカレーターズの立花聡を迎え、よりライブ感を前面に出しつつKENとSHINの醸し出すエレクトラ感との融合を図った新機軸の作品となっている。また3月3日より3月10日まで、1曲目「No Name」のフリー・ダウンロードも決定です。
>>「No Name」のフリー・ダウンロードはこちらから
SPANOVA / It's no illusion / Home Documentaries 00
1. No Name
2. It's no illusion
3. Neo-Fi
4. Snow Dog
5. Sweet Rider
【特典】
アルバム購入者には、20枚から成るデジタル・ブックレットが同梱されてきます!
※フリー・ダウンロード期間中(3月3日~3月10日)は単曲扱いで全曲購入されると、800円とアルバム価格より安い値段になります。ですが、デジタル・ブックレットを希望のお客様はまとめ購入で全曲お求め下さい。
【補足】
HQDの再生方法や、よりいい環境で聞く為のページを用意いたしました。ご覧になって下さい。
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前作『SetsunaLized SetsunaRider』もお忘れなく
SPANOVA / SetsunaLized SetsunaRider
彼らが子供の頃、ラジオで聴いた80'sや70'sのロックやポピュラー・ミュージックからもらった淡い幻想そのままに、未知の響きに導かれ出会ったjazzやソウルやヒップ・ホップ、現代音楽などの光を浴びて来た2人。そこから変化してきたことが、この『SetsunaLised SetsunaRider』の5曲に集約されている。長きレコーディング時期を経て、彼らがこの楽曲達と一緒に生活しながら辿り着いた1つの場所である。
INTERVIEW
日々を過ごしていく中で、「ああ、完璧だな。」と思う瞬間がごく稀にある。それは陽だまりと桜吹雪の中を黒猫がかけていくのを見た時だったり、雪の日の夜におぼろ月を見ながら、向こうの方で踏切がカンカンカンと鳴り響いているのを聞いた時だったり。その瞬間、今生きている現実が幻想の世界とは比べ物にならないほどに美しく、魅力的に見える。そこにストーリーがあろうとなかろうと、最高にドラマチックな風景がそこにはあるのだ。
今回リリースされるSPANOVAの『It’s no illusion/Home Docummentary00』は、そういう瞬間を音で切り取ったような作品だ。聴きながら、映画の中に取り込まれたような気分になる。幻想的できれいな音なのにどこか現実感があるのは、その音が持つ人肌の温度と整理された都会的なメロディのせいだろう。発表までに7年半かかった前作『SetsunaLized SetsunaRider』をリリースした後、彼らはそれまで滅多にしてこなかったライヴを少しずつ再開し始めた。そしてその中で生まれていった曲達を拾い集め、作品としてまとめたのが今作。前作では圧倒的な音世界を築き上げ、今作ではタイトルに「Docummentary」とあるように、記録的な要素の強いシンプルな作品を完成させたSPANOVA。この兄弟にとって「SPANOVA」とは何なのか? また、CHEMISTRYなど多くのメジャー・アーティストに楽曲を提供し、時にプロデュースまで手掛け、様々なCM音楽を手掛けてきた彼らにとって、そもそも音楽とはどういう存在なのか? このインタビューを読み『It’s no illusion / Home Docummentary00』を聴いて、彼らの今をとらえて欲しい。
インタビュー & 文 : 水嶋 美和
人生と音楽が混じりあう旅
——前作『SetsunaLized SetsunaRider』は完成までに7年半かかりましたが、今作『It's no illusion / Home Documentaries 00』は前作から1年足らずと間があまり空いていませんね。いつ頃から作り始めたんですか?
SHIN TASAKI(以下、S) : 一昨年の夏からドラマーを迎え入れて3人でライヴしてたんですけど、俺らもそんなにライヴを頻繁にする方じゃないしせっかくならその夜にしか無い雰囲気を出したいと思って、ライヴの度に新しい曲を作って演奏してたんです。レコーディングに入り始めたのは去年の10月末やな。
KEN TASAKI(以下、K) : 曲は出来てたんで、ベースになるものは一発録りに近いぐらいラフに録りました。
——以前はほとんどライヴしませんでしたよね?
S : 俺たちは作曲の方に意識が向いてたから、やりたいとも思わなかった。
K : 作曲の仕事をしたりミックスする方が楽しかったんです。
S : レコーディングなら何回も録り直し出来て、その中でどう違和感のないものを作っていくかという面白さがあったんですけど、そういう視点で見ればライヴって荒だらけなんですよね。でも荒があっても伝えたいものがしっかりあれば、自分達でデザインしきったもの以上の音楽が生まれるかもしれない。そう考えるようになったかな。
——それは前作を出してからですか?
S : そうですね。前作を出すまでに7年半かかって、その間に人生についても色々と考えるじゃないですか。浮き上がったり落ち込んだり繰り返すバイオリズムの中で、落ち込みきったところで気付くものも多々あって、それは例えば周りの人の支えとか音楽に対する素直な気持ちやったりするんですけど、そういうのを自分の体を通して真っすぐに表現したいと思うようになったんです。それがライヴをやろうという気持ちに繋がっていったかな。一年半ぐらいライヴをやっていく中で、その夜ごとに思いがあって、曲が出来てきて、そろそろそれを録音してもいいんじゃないかと思って今作の制作に入り始めたんです。
——なぜドラムを入れようと思ったんでしょう?
K : コンピューターだけだと自宅の延長線上なので、ライヴでやる意味があまりない。さっきSHINが話した通り、自分の体を通して表現したいという思いが強くなってきて、生演奏にこだわろうと思ったんです。
S : 俺らは昔から音楽をやっていて、音を追求していく中でプログラミングやサンプラーの面白さも知ってるんやけど、頭でごちゃごちゃ考えずにみんなで音を出して合わせる、そういう良さも体に染みついてるんです。だから、自分達が観たいライヴの風景にドラムは不可欠なんですよね。ミュージシャンが演奏してる姿が自然に浮かんでくる音がいいなと思うんです。例えば、50、60年代のジャズのレコードとかを聴くと、まさにそこで音楽が起こってる訳じゃないですか。それを50年後の人間がいいと思って聴いている。その瞬間にしかあり得ない何かっていうのが音楽のマジックだと思うんですよね。それをそのまま残して伝えることが出来たら、と思って作ったのが今作で、参加してくれたドラマーの立花聡さん、オータコ—ジ君、エンジニアの森岡徹也さんやHAL STUDIOの2人とならそれができると思いました。だから今作を作る上でのコンセプトは如何に意図的なものを入れないかということでしたね。
——じゃあ、記録的な意味合いも強い?
S : そうですね、それは大きいと思います。やっぱりライヴで生まれるものとレコーディングで作り込むものとでは伝えたいことも多少違いますし、ライヴで聴く側の人間と演奏する側の人間が直接向かい合って、その時に自然に出てくる音達をあまり加工せずに伝える今回みたいなスタイルの音源は、シリーズ化してこれからも残して行きたいですね。
——じゃあタイトルの最後の00という数字はこれから増えていくんですね?
S : それでもいいし、00の後は000で延々と0が増えてくのもいいかな。
——これから続く、シリーズの番号としての00か、0に戻るという意味合いでの00か、どっちともとれるなと思ったんです。最初の「No Name」でも、曲の最後で最初に戻って、延々にループしそうな感じがありますよね。
S : それは面白いですね… 何も考えてませんでした(笑)。
K : 全くもって(笑)。
S : でも、確かに。俺たちももう若くないんで、行ったっきりのものよりちゃんと戻ってくるものがいいんですよね。興奮をまき散らして終わるんじゃなくて、終わったらいつもの空間に戻ってくる。循環する感じ。ゼロ感っていうのがずっとテーマにあって、やっぱり足し算では言い切れないものがあるんです。何度も「またここに戻ってきたな」って思って、繰り返してる。でもその度に何かが少し違っていて、見たい風景も多少変わってきたりしてて、人生と音楽とか色々と混じり合いながら、そういう旅を2人でやってる感じはありますね。
K : 高尚な話になったな(笑)。
S : いやいや(笑)。ゼロって言葉が好きなんですよね。可能性も見えてくるし。
——前作の『SetsunaLized SetsunaRider』に続いて、今作最後の曲「Sweet Rider」でも「Rider」という単語が出てきていますね。
K : これは間違いなく繋がっていますね。
S : 音楽も人生も波みたいやと思うんですよね。さっき言ったバイオリズムみたいな好不調の波だけじゃなくて、もっと色んなものを含んだ波があって、俺たちはそれに乗っかって生きている。そういう感覚があるんですよ。
——「Sweet Rider」や「No Name」の環境音が印象的でした。この音を入れようと思ったのはなぜですか?
K : 「Sweet Rider」の雨の音は、ハプニングなんですよ。あれはクイックを使わずに一発録りでレコーディングしたんですけど、その時にちょうど雨が降り始めて、これもとっちゃえって外にマイク立てて。そしたらちょうど曲が一番盛り上がるところで雨が強くなったんです。
——他のアーティストでも水の音が入ってる曲はありますが、すごい生温かい音だなと思ったんですよ。タイトルも「Sweet Rider」だし、意識的にそういう音色にしたのかと思ってました。偶然なんですね。
K : 偶然、雨とセッションしたんです。
S : ドキュメント感は毎回レコーディングでもこだわってるんやけど、あのエピソードはすごい象徴的ですね。
——「No Name」の子供の声はどうですか?
K : あれは近所の神社で録って、後から重ねました。
——かなり初期の曲ですが、98年の「魂は木の葉のように」にも入ってますよね。
S : 俺らの癖みたいなものなんですよ。口では言えないな、入れたらはまるなって思うんやけど、理由はない。
K : 感覚的なものなんですよね。
——曲を作る時、どういうところから始めますか?
S : 今回はセッションやな。
K : なので、オータ君が叩いた曲はオータ君と、立花さんが叩いた曲は立花さんと一緒に作った感じがありますね。
ストーリーに即して作るというのは合わない
——他の方を交えてSPANOVAの音源を作るというのは以前にもあったのでしょうか?
K : 9年ぶりとか。生で作ってる音源もすごい久しぶりですね。
S : ライヴで昔の曲もやればいいのにって、色んな人に言われるんですけど、俺たちとしてはまだ出来る状態じゃないんですよね。今も進行している途中なので、振り返るには早すぎる。まだ自分たちが本当の意味で何をやろうとしているのかわかってないんです。もう少し進んでから束ねたいところですね。
——初期の頃と今では音楽性も変わってきましたよね。昔はもっとポップスで、今は音響系に寄っていっている印象を受けます。
K : この変化も人生と共に変化してきて、意識的にジャンルを選択して進んできた訳ではないんです。だから昔に戻りたいと思ってもなかなか難しいと思うし、全く同じ作品にはならないと思う。
S : ライヴをやってすごい感じたのは、ずっと一本の道を歩いてきたということ。たくさん枝分かれしてる中から一本の道を選んで歩いてきたんじゃなくて、たった一本の道を歩きながら色んな風景を見てきて、今もそこを歩いてるんやなって。それはすごい大事な実感なんですよね。
——音楽を作る上で何かの影響を受けたりはしますか?
S : やっぱりインターネットの普及で音楽の情報がすごい入ってくるようになったから、そういう時代の影響はありますよね。昔は好きなCDを何回も聴いてっていう世界だったけど、今はほとんどの曲が買う前に試聴できて、俺たちは聴いたことのない響きの音楽がすごい好きやから、そういうのを追いかけながら自分達が何をやりたいのかも確かめずに進んで来たけど、未知の響きが好きだからといって根も葉もないことはやりたくない。俺たちの音楽のマジックみたいなものを、ちゃんとリアルな形で表現していきたいんですよ。昔は知らない国の知らない路地をどんどん進んでいく感じがあったけど、今はちょっと違うな。もっと両足を地面に付けてる。
——地図を見ながら、場所を確かめて歩いてる感じ?
S : それもあるけど、それよりももう少しゆったり、地球を感じながら、大きな視野で進んで行ってる感じ。SPANOVAって2人が真摯に音楽に向かい合って、それがぶつかった時に出てくる1つの現象みたいなとこがあって、そういうのをゆったりと感じる余裕が歳くって出てきた気がするんですよね。昔ほど自分自身に例えられなくなってきてる。持ち物でもないし、触れられないものとして考えるようになりましたね。
K : 過去を否定して前に進んだ訳ではなくて、自然に変化してきたものやから、もしかしたらまた過去のSPANOVAのテイストのような曲を作るかもしれないし、その辺は俺らにもわからない。
——多くのミュージシャンに楽曲を提供されていますが、それによる影響は?
K : そんなには無いかな。
S : その時はあるかもしれないけど、結局は無いんですよね。KENがピアノを弾いたり、俺がギターを弾いたりして曲が出来てっていうシンプルな状態だと、曲ってどういう方向にもいけるんですよね。やっぱり楽曲提供する時は明確なキャラクターを求められるから、仕上げの段階でそっちに寄せながら作っていくんですけど、根っこの部分ではぐっとくるかこないかっていうので決めるから、曲が埋まれる瞬間のエネルギーはそれほど変わらないです。
K : 楽曲提供か、プロデュースまでやるか、CM音楽かでも変わってくるんですけど、基本的には半分はクライアントの意向に沿って、半分は自分の体を通して出てくる音やから、どうしても変えられない自分の感性が残る。SPANOVAの時はそういうこと考えずに、全部自分の表現。パーセンテージの違いですね。
S : 世の中に出ると流通の形式も違うし、認知度も違えば聴く層も違う。そうやって出した後には多少変わる部分もあるかと思うんですけど、俺たちは音楽に対してそんなに余裕もって接してないんで、しばらくしたら結局元のとこに戻る。それほど影響はないですね。でもそういう音楽をめぐるあれこれっていうのは全部楽しいんで。
K : 僕らは元々作曲家志望でもあったんで、曲を作ること自体はすごく好きなんです。
——『It's no illusion / Home Documentaries 00』をずっと聴いてると、外に出て歩きながら聴きたくなったんです。すると、ふとした瞬間に映画の中に入ったような感覚があったんですよね。先ほど「如何に意図的なものを入れないか」という風に話してましたが、そういう部分も全く意識はされませんでしたか?
S : 意識はしてませんでしたが、そうやって音楽の中に入って聴いてもらえるのは嬉しいですね。俺も音楽の中に入りたい気持ちがあって、すごく良く出来ていても入る余地が無い音楽はあまり好きじゃないんです。音が壁みたいになってて、壁を見てるだけみたいな。気が付いたら周りに音楽があるという感じが好きなんですよね。良い音楽作る人ってコンセプチュアルな人達も多いんですけど、SPANOVAの場合はそれがうまくいかなくて、コンセプトが強いと滲んでくる部分がなくなってしまうんですよ。分かりやすいストーリーがあってそれに即して作るっていう方法は俺たちには合わない。ただやっぱりコンセプトはないくせに、ストーリー感はあって、でも曖昧で、はっきりしたもんじゃない。淡いですね。だからそこは聴く人が広げていってくれればと思います。
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LIVE information
「林勇気展 〜 あること being / something」
3月5日(日)@兵庫県立美術館 ギャラリー棟1F ホワイエ
open : 17:30 / start : 18:00
entrance : FREE
出演 : rimacona
info : 兵庫県立美術館 078-262-0901
「Le 15e anniversaire」
3月11日(金)@渋谷 O-nest
open : 19:00 / start : 19:30
entrance : adv : 2500 / door : 3000 (without 1drink)
出演 : d.v.d / NETWORKS / and more...
info : O-nest 03-3462-4420
PROFILE
田崎 憲、田崎 晋の兄弟によるユニット。SPANOVAとして、作品をリリースするほか、作曲、プロデュースなど多岐にわたる活動をしている。シカゴの名門HEFTYRECORDSからもリリースし、エレクトロニカ・シーンでも注目を集めている。