既聴の音を未聴の音にアウトプットし続ける音楽家MimiCof
ベルリンを拠点とする音楽家midori hiranoのソロ・プロジェクト1stフル・アルバム
MimiCof / RundSkipper
nobleレーベル作品で人気のmidori hiranoによる新ソロ・プロジェクトMimiCof、待望の1stフル・アルバム! flauでの作品やJan Jelinekとの活動で知られるEl Fog藤田正嘉がヴィブラフォンで参加、また、Carsten Nicolai(Alva Noto)と共にraster-notonの創設者で電子音響のパイオニアFrank Bretschneider(aka KOMET)、今や時のクリエーターSerph、大注目のネット・レーベル分解系レコーズを主催するGo-qualia、最新作『an4rm』が非常に高い評価を受けているFugenn & The White Elephantsの4組がリミキサーとして参加。
京都に生まれ、現在はベルリンに拠点に移し音楽活動に勤しんでいる女性音楽家、midori hirano。ピアノなどのアコースティック楽器、電子音、サンプリング、ボーカルを巧みに操り、既聴の音を重ねひたすらに未聴の音をアウトプットし続ける彼女の新しいソロ・プロジェクトがMimiCofだ。元々ソロ・アーティストなのに敢えて新しい名義で活動を始めたのはなぜなのか。それは、今まで同居させていた生楽器音と電子音を一度切り離すため。midori hiranoの活動は生楽器を主体とし、MimiCofでの活動はコンピューターを多用し、エレクトロニック・ミュージックに寄ったアプローチを主としている。といっても、MimiCofの音楽の中にもピアノの音が登場する。しかし、何て冷たい音なのだろう。彼女の音楽を集中して聴くと、段々アコースティックの音が冷たく響き、電子音の重なりが温かく聞こえてくる。
ドイツ語で「丸い」を意味するRundを地球と見立て、その上をスキップする人という意味で、『RundSkipper』と名付けられた今作。MimiCofの音楽は、スキップという言葉が持つような軽快なイメージからはむしろ離れているように思える。南極に取り残されたような、酸素の薄いヒマラヤの山頂で必死に呼吸するような、生きている実感と地球と対峙する緊迫感。気が付けば脳波の様な電子音が思考を侵食し始めている。抗えば怖いが、身を委ねてしまえば叙情的な風景が音の隙間に垣間見え、切なくも心地よい。音質によって印象が全く変わるので、是非とも高音質をお勧めしたい。
(text by 水嶋美和)
PROGRESSIVE FOrM ARCHIVE
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MimiCof PROFILE
京都府出身、1979年生まれ。現在ドイツ/ベルリン在住の音楽家。大学をクラシック・ピアノ専攻で卒業した後に、ピアノを始めとするアコースティック楽器に加え、電子音やフィールド・レコーディング、サンプリング、ボーカルなどを自在に操りながら多彩な音楽を作り出し、これまでにmidori hiranoとしてはMIDIクリエイティブ/nobleから2枚のアルバムを発表。その他、国内外のレーベル・コンピレーションや、アーティストとのコラボレーションにも数多く参加。2008年にリリースされたセカンド・アルバム「klo:yuri」は世界的に知られる老舗のニュース雑誌「TIME誌」で取り上げられ、またイギリスの国営放送BBCのラジオ番組でも収録曲およびロンドンで行ったライブについて紹介されるなど、海外のメディアにおいても大きく認知される事となる。また自身の作品制作以外にも、国内外の映画のサウンド・トラックを担当するなど映画音楽の分野にも活動の場を広げ、2008年2月にはベルリン国際映画祭主催の若手映画製作者向けプログラム「Berlinale Talent Campus」に作曲家部門では当年唯一の日本人として招聘される。2008年以降はベルリンを拠点にヨーロッパ各地でライブ・パフォーマンスを数多く行っており、2011年2月にはベルリンの大型フェスティバルClub Transmedialeに、Bernd Friedmann & Jaki Liebezeitのライブ映像を担当しているJeffers Eganと共にオーディオ/ビジュアル・セットでの出演を果たし、signal, Deadbeat&Lillevän(ex-Rechenzentrum), Monolake, Tikiman with Scionらとステージを共にする。現在は生楽器を主体にした楽曲を制作するmidori hiranoとしての活動と平行し、コンピュータによるプロセッシング等を多用するなどエレクトロニック・ミュージック的なアプローチを中心とした新しいソロ・プロジェクトMimiCofとしてその表現の幅を広げており、2011年6月にはMimiCofとしては初のフル・アルバム『RundSkipper』をPROGRESSIVE FOrMよりリリースする。