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子どもを救う特別養子 30年目の光と課題

日本は「養子後進国」

 貧困や虐待など何らかの事情から、親元で暮らすことができない子どもが全国に約4万6000人いる。乳児院には毎年約3000人が預けられている。日本では長い間、親がいない子どもや実の親が育てられない子どもは施設へと考えられてきたが、欧米では養子縁組や里親に預けることにより、家庭で育てられる子どもが大半だ。
 日本でも、家庭的な環境で特定の大人から愛情を受けて育つことの大切さは、当然のように認識されてきた。大規模施設から小規模施設へ、そして家庭へという流れも徐々にできてきた。
 そんな中で注目されつつあるのが、間もなく30年を迎える「特別養子縁組」制度だ。まだよく知られておらず、縁組成立件数は少ないが、2016年末には「養子縁組あっせん法」も成立した。「特別養子」の可能性を広げる取り組みと課題を報告する。(時事通信社編集委員・三浦直美)

◇  ◇  ◇

 特別養子制度は、1987年の改正民法成立を受け、88年に施行された。養親の実子と同様に戸籍に記載され、実の親との関係は切れる。早くから親子関係を築くことを重視し、対象の子どもは原則6歳未満とされ、6カ月以上の監護期間と家庭裁判所の審判を経て縁組が決まる。厚生労働省の「特別養子縁組に関する調査」によると、1歳以下で縁組が成立したケースが過半数を占めている。

 よく知られる「普通養子縁組」制度が、子どもの年齢に制限がなく、実の親との親族関係が続き、戸籍には「養子」「養女」と記載されるのとは異なる。一時的な養育を担う里親制度とは、さらに大きな違いがある。

 戸籍上の実子になるため、送り出す実親も受け入れる養親もより強い責任や覚悟を伴い、受け入れ先できょうだいができた場合も同じ実子になることで、子どもが実態も法律上も「安定」した家庭で育つと期待されるのが、特別養子制度だ。

 しかし、2015年の特別養子縁組成立件数は544件。ここ3年ほど増加傾向にあるものの、親元で暮らせない子どもの数を考えれば、非常に少ない。欧米では年間数千件、数万件単位で成立している。日本はいわば「養子後進国」なのだ。

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