時事ドットコムニュース
連載
礒﨑敦仁のコリア・ウオッチング
2024年は秋から年末にかけて、北朝鮮をとりまく情勢が目まぐるしく変化した年だった。11月の米国大統領選挙で北朝鮮との対話に前向きなドナルド・トランプ氏の政権復帰が決まったかと思えば、韓国では12月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が独善的な非常戒厳令を宣布することによって自らを窮地に追い込んだ。そんな中、北朝鮮はウ…
学生時代の1995年に訪れたシリアの首都ダマスカスの街には、今は亡きハーフェズ・アル=アサド大統領と、サングラスをかけた彼の長男バーセル氏の肖像画がたくさん掲げられていた。父の後継者と目されていたバーセル氏は前年1月に交通事故でこの世を去っていたが、権力世襲を準備する名残であったのだろう。隣国のレバノンでも同じ肖像画…
世界中を驚かせた韓国の戒厳令騒動は、北朝鮮にとっても寝耳に水だったようだ。朝鮮中央通信や『労働新聞』といったメディアはすぐに反応しなかったし、韓国の不安定化に乗じて挑発行為を行うようなこともなかった。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はここ数年、韓国を「徹底的な敵国」と呼び、同じ民族同士の特殊な関係と位置付けてきた…
1年ぶりにベトナムを訪れた。ハノイの大気汚染は相変わらず深刻だが、ベトナム人研究者のスクーターに2人乗りし、活気あふれる街を通り抜けるのは爽快そのもの。そういえば私も学生時代に二輪免許を取ったが、乗らなくなって久しい。互いの研究について話し合いながら、流れる街並みを眺めていると、民族衣装アオザイを着た若い女性たちが、…
米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏の再登板が決まってから、北朝鮮情勢について展望を問われることが多くなった。在任中に北朝鮮の最高指導者と会談した米国大統領はトランプ氏しかおらず、金正恩国務委員長と対面した場面が強く印象に残っているためだろう。現段階で米朝交渉が再開されるタイミングを見計らうことはできないが、この問題…
北朝鮮とロシアの関係が急接近しています。金正恩氏とプーチン氏の首脳会談は昨年以降2度も開かれ、今年6月は二人の親密ぶりが報道を通して伝えられました。両国の関係がくー図アップされる一方、北朝鮮と中国の関係は微妙です。外交樹立75周年を迎え、両国は24年を「友好年」と位置付けていますが、両国の首脳会談は既に5年以上開催されてません。何が起きているのでしょうか。北朝鮮政治を専門とする礒﨑敦仁慶大教授が読み解きます。
つい先日、オーストラリア国立大学の「上級朝鮮語(韓国語)」の授業でゲスト講演する機会があった。わずか8人の少数精鋭クラスであり、そのうち3人は1年間の韓国留学経験を持っていた。同大学が位置する首都キャンベラでは、高校までの義務教育課程で日本語が第1外国語となっているケースが多い。また、オーストラリアへの留学生数は中国人が圧倒的に多く、特に都市部では中国語をよく耳にする…
2018年~19年、3度の米朝首脳会談に臨んだトランプ氏と金正恩氏だったが、北朝鮮の人権問題を強く非難するバイデン政権の発足で交渉は中断。しかし、米朝交渉を進めない限り、北朝鮮が抱える安全保障上の懸念が払拭されることはなく、国連安保理による経済制裁の解除も見込めない。トランプ再登場が現実味を帯びる中、正恩の思惑を探った。
社会主義体制下で相手を呼ぶとき、「同志」を用いることはよく知られている。ソ連の「スターリン同志」「ブレジネフ同志」などといった具合である。ロシア語では「タバーリシチ(това́рищ)」と言う。日本語の語感ほど堅苦しいものではなく、仲間や友人といった意味であり、政治的な意味を込めなければ「~さん」と訳すこともできる。
平壌中心部に林立する立派な高層マンション。金正恩政権が「人民が最も喜ぶ事業」「第一次的な重要政策課題」として住宅建設に力を入れた結果、ここ数年で平壌の景色は大きく変わった。だが、その恩恵を受けられるのは一部だけで、高層マンションのすぐ裏手には古いバラック住宅が広がっている。そうした様子は、現地に直接足を運ばなくともG…
久しぶりに長野県松本市を訪れた。市議選に立候補する友人のためにウグイスボーイ(「カラス男」ともいう)のボランティアを買って出たのだ。松本は、作家の萩原遼さんと勉強合宿で訪れた思い出の地である。応援マイクを握り、ワゴン車で市内を走り回りながら、萩原さんのことを懐かしく思い出していた。そういえば、萩原さんが平壌から追放されて、ちょうど半世紀になる。
3月のハノイは雨もなく涼しい。過ごしやすいはずなのだが、深刻な大気汚染の影響で毎日が曇り空だった。研究仲間との意見交換会に参加するため久しぶりにベトナムを訪れた。
「土下座」を強要された経験がおありだろうか。昨年9月のことだ。韓国ソウル・金浦(キンポ)空港に降り立った私は、70代の重鎮研究者2人とともに市内に向かうべくタクシーを探した。空港ビルを出てすぐのスタンドには、すでに数人の列ができていた。
3月13日から米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」が実施された。曲がりなりにも北朝鮮と対話が成り立った韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権下では中止措置が取られたため、春季定例演習としては5年ぶりの大規模訓練となった。いまや世界10位の軍事大国にのしあがった韓国が、核大国の米国と協力を深めるとなれば、矛…
2月8日、朝鮮人民軍創建75周年記念閲兵式(軍事パレード)が開催された。2021年1月の朝鮮労働党第8回大会で策定された「国防科学発展及び兵器システム開発5カ年計画」を着実に進めていることを内外に示した形だが、最大の注目点は「尊敬するお嬢さま」の登壇であった。
「後継者を育てたい」とジャーナリストの知人がつぶやいた。長年にわたって独自の北朝鮮取材を続けてきた彼は、自らのノウハウを後進に伝えたいが、ジャーナリストを目指す若者はなかなかいないという。畑は違うが同じく北朝鮮を観察対象にしている研究者としても、大きくうなずける話だった。
北朝鮮研究者・ウオッチャーにとって毎年元日は朝から分析に追われるのが常だ。新年を展望するための素材が発表されるからだ。発表のスタイルにはその時々の権力者の個性が反映される。初代の金日成氏は、歴代のソ連指導者と同様に「新年の辞」を恒例としたが、肉声の公表を好まなかった2代目の金正日氏は、この「新年の辞」を踏襲せず、朝鮮…
チェウニ(1964年生)は、99年に日本でデビューした韓国人女性歌手だ。日本レコード大賞新人賞を受賞した「トーキョー・トワイライト」(2000年)や、「アリベデルチ・ヨコハマ」(14年)などのヒット曲を持つ。何度かライブに足を運んだことがあるが、ステージから観客の顔が見えるくらいの小さな会場で表現力豊かな歌声に聞き入…
北朝鮮の思考を理解するうえで重要な手掛かりの一つは、最高指導者の肉声を伝える演説である。2011年12月に父の急死を受けて権力を継承して以降、金正恩氏は折に触れて党や国家の会議で発言してきたが、19年3月の最高人民会議代議員選挙で代議員(国会議員)職から外れた後は、不定期で同会議に出席し「施政演説」を行うことが慣例…
ウランバートルには格別な思いがある。社会主義体制を放棄して間もない1990年代前半、バックパックを背負って親友と真冬のモンゴルを旅した。3ドルもあれば熱いシャワーのある宿に泊まれたが、乾燥した内陸国であるがゆえ、魚介類はもちろんのこと野菜も不足しており、毎食どの食堂に入っても羊肉ばかりで滅入(めい)ってしまった。モン…
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