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偉大な祖父、曾祖父の背中を追って 『燃えよ剣』出演の尾上右近さん

松平容保役でのスクリーンデビュー

 幕末の新選組をめぐる人間模様を多彩な男優陣が演じ、その魅力を競う映画『燃えよ剣』(東宝系で公開中)。その中で注目を浴びる一人が歌舞伎俳優の尾上右近さん。若手の実力派として歌舞伎ファンにはよく知られた存在だが、映画への出演は初めてとなる。

 演じたのは会津藩藩主の松平容保。京都守護職を務め、新選組の後ろ盾となるが、徳川幕府の崩壊後、ついには逆賊扱いされてしまう悲劇の大名だ。「撮影現場の空気と共演した皆さんに刺激を受けた」という右近さんに話を聞いた。

◆映画「燃えよ剣」特設ページ◆

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 ―おじいさまは映画の大スターだった鶴田浩二さん。右近さんも映画での仕事に興味をお持ちだったと聞きました。

 以前から、歌舞伎を中心としながら、いろんな活動をしたいと思っていて、映画もそのうちの一つでした。もともと好きだったし、自分の人生が豊かになるという思いや、歌舞伎の中での「膨らみ」にもなるという期待感がありました。

 ―映画の現場は普段務めている舞台とは、役への向き合い方も含めて違いが多かったのでは?

 戸惑いは特にありませんでした。それは時代劇ということが大きい。着物が着崩れないようにする工夫の仕方とか、あらかじめ持っている“武器”があったからだと思います。歌舞伎とは全く違うベクトルで、この映画における容保像を探っていくのは楽しい作業でした。

 演じる上での違いはたくさんありましたが、“間(ま)”の大切さはジャンルに関係なくすべてに共通するなと実感しました。映像だと(編集作業などで)操作していただくことも可能ですが、それでも自分が気持ちを打ち込める瞬間の“間”を探すのは、舞台も映像も変わりがないなと。

 原田眞人監督から「伝え過ぎると伝わらない」とアドバイスされたことがすごく印象に残っています。それ以外は、僕がどんなふうにやるかを監督が楽しみにしているところがあって、結構好きにやりました。セッションのように思う存分自分をぶつける感じでしたね。

 ―劇中、容保は新選組に深い共感と信頼を寄せながら、徳川慶喜(山田裕貴)に振り回され、結局は彼らを見捨てざるを得なくなります。

 容保は幕府と新選組との板挟みで苦しみますが、今回の作品では彼の人間的な苦悩の部分が色濃く描かれています。殿様というと、一般的には何を考えているのかが分からないようなイメージがありますが、その隠された裏面をちゃんと見せていると思います。

 演じていて、昔も今も同じだなと感じました。現代でも容保のように、何かの板挟みになって、選択を迫られることはある。そのときに自分の信念を貫くのか、それとも別の道を選ぶのか。そこは時代や身分が違っても変わることはない。同じ人間だという点で、演じる自分にとっても、とても共感度は高い役でした。

 新選組に関しても、これまでは何か神格化されている感じがして、同じ人間という感覚ではなかなか見られなかった。でも、今回はすごく短い時間の中で濃く生きた人たちの実在感に引き込まれました。

「沖田総司のひたむきな目」に刺激

 ―容保がひそかに土方歳三(岡田准一)と沖田総司(山田涼介)に会い、孝明天皇(坂東巳之助)から賜った御宸翰(ごしんかん=天皇直筆の手紙)の内容を二人に明かして感極まる場面は特に印象的でした。過激な攘夷派・倒幕派を抑えられずに苦しむ孝明帝の無念を代弁するかのような力強い演技から、容保の心情がダイレクトに伝わってきます。

 あの場面は沖田の顔がすごく良かった。言葉のやりとり以上に、その目を見た時に、(沖田の)この上もなく真剣なひたむきさが伝わってきました。あの表情に自分も背中を押された気がしたし、すごく刺激をもらえました。空気の共有をすごく濃く感じた瞬間でもありました。

 沖田役の山田涼介さんは同じ高校の1級下でした。こういう形で再会を果たしたことにすごい縁を感じますね。

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