2024年10月06日11時00分
国が「遺族厚生年金」を見直す議論をしているのを知っていますか。焦点は、会社員や公務員の夫を亡くした妻への生活保障はどうあるべきか。SNSでは「専業主婦は終わった」との声も出ています。今回は、人生100年時代を生きる若い女性にこそ、知ってもらいたい遺族年金見直しの解説です。
◇「生涯」が「5年」給付に
遺族年金とは何でしょうか。簡単に言えば、一家の働き手を亡くした家族に給付されるお金です。亡くなった人が国民年金加入者なら、子または子のある配偶者は「遺族基礎年金」が給付されます。「子」とは18歳到達年度の末日までの子を意味し、イメージとしては高校卒業までの子です。受給額は、例えば配偶者と子1人で年額105万800円(2024年度)。子の数に応じて加算されます。
亡くなった働き手が厚生年金(会社員や公務員)の場合は、「遺族厚生年金」が給付されます。金額は生前の収入などによって変わります。子のない配偶者は遺族厚生年金(夫の死亡時、40歳以上65歳未満の妻には年61.2万円の中高齢寡婦加算あり=24年度)だけですが、子と子のある配偶者は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が給付されます。
では、厚生労働省が審議会に7月末に示し、了承された遺族年金の見直し案とはどのようなものでしょうか。焦点は遺族厚生年金です。現在は夫の死亡時に妻の年齢が29歳まで(子がない場合)なら5年間の有期給付、30歳以上であれば再婚などをしない限り、生涯受け取れます。
見直し案は、5年有期給付の対象を段階的に20年程度かけて「59歳まで」に拡大。中高齢寡婦加算は「将来に向かって段階的に廃止することを検討」します。既に遺族厚生年金を受給している人や60歳以上の人は現行通り生涯にわたって受給できるので、見直し案の影響はありません。
また、厚生年金に加入する妻を亡くした夫の遺族厚生年金も、同様の制度にすることが盛り込まれています。
狙いは、遺族厚生年金をめぐる男女差の解消です。現行制度は会社員の夫と専業主婦の妻という「昭和モデル」を基につくられました。上記の通り妻は原則生涯受給ですが、夫は妻の死亡時に55歳以上でないと受給権がありません(給付は60歳から)。
総務省の労働力調査によれば、今や共働きが1200万世帯を超え、専業主婦(404万世帯)の3倍です。夫婦ともに生計を支える立場となった家庭が多くなった令和の時代に、昭和モデルはそぐわないと言えるでしょう。見直しは20年程度かけて進めるため、現在50代の人に影響は少ないとみられますが、20~30代には大いに関係します。
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