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2023/08/10 18:00

AmiideとJyodanが新ユニット、Otomodatchiを結成──CIRRRCLEの解散を経て、生まれた変化とは

Otomodatchi[photo by Shinsuke Yasui]

ライター、斎井直史によるヒップホップ連載〈パンチライン・オブ・ザ・マンス〉。前回はラップ・グループ、CBSのインタビューをお届けしました。あれから約5ヶ月ぶりとなる今回は、Hiphop / R&Bヴォーカルデュオ、Otomodatchiにインタビュー。東京とロンドンを基盤に活動する日本人R&BシンガーソングライターAmiideと、LAを拠点とするアメリカ人ラッパー、Jyodanにリモートで話をききました。2020年12月に解散したCIRRRCLEの元メンバーでもあるふたりは過去、現在、そして未来をどう捉えているのか。

第37回(2023年3月掲載)はこちら

5年ぶりのアルバムをリリース──CBS


CIRRRCLEのインタビューはこちら

CIRRRCLEインタヴュー「ここは3人が自由になれる場」──斎井直史「パンチライン・オブ・ザ・マンス」 第27回


INTERVIEW : Otomodatchi

Amiide / Jyodan [photo by Shinsuke Yasui]

CIRRRCLEという元気なラップ・グループにインタビューを申し込んだのは2019年でした。色鮮やかでバウンシーなA.G.O.のビートに、それを乗りこなす緩急豊かなJyodanのラップと、落着いていて艶やかなAmiideのヴォーカル。彼らは国内外の楽曲と並べて聴いても、際立ってポジティヴでフレッシュでした。そんな彼らにインタビューをしてみると、Jyodanは日米を行き来して育ったがゆえに居場所の無さに悩みつづけており、Amiideも同性愛者として生きづらさを抱え、決してポジティヴな側面だけではない彼らが生きている現実が見えました。だからこそ、CIRRRCLEを日本におけるマイノリティの居場所として活躍させようと裏方から力強く働きかけたMariが彼女の持つ使命感と夢を熱く語ってくれた時は、筆者もその熱に感化されました。それはまるで、己の居場所を探す冒険に出る計画を聞かされたかのような印象でした。

しかしながら、2020年12月にCIRRRCLEの突然の解散。おそらくなにかあったのではないかと思いながら、遠くから行く末を眺めるしかありませんでした。そして先月、JyodanとAmiideによるOtomodatchiというユニットが初EP『We’re Still Friends』をリリース。これを機に、解散当時の話を聞いても良いのではないかと思った次第です。

解散後はどうしていたのか。過去をどう振り返るのか。CIRRRCLEとOtomodatchiの違いとはなにか。かつてよりも控え目な印象の楽曲が大半を占めた今作ですが、その理由が本人達から語られました。

Otomodatchi、はじめてのEP『We’re Still Friends』


コロナをきっかけにみんなの気持ちがバラバラに

──まずは、Otomodatchiのプロジェクトがスタートした経緯を教えていただきたいです。

Amiide:CIRRRCLE解散後、私はソロで活動していて、去年の12月にJyodanと久しぶりにパフォーマンスする機会があったんですね。それがめちゃくちゃ楽しかったので、その後Jyodanとガンガン曲を作りまくれて「これでEPもいけるじゃん」ってなったんです。

Amiide - From The Top (feat. Chocoholic) [Official Music Video
Amiide - From The Top (feat. Chocoholic) [Official Music Video

──それまでAmiideさんは音楽に対してのモチベーション低下に悩んだと明かしていますね。

Amiide:そうですね。CIRRRCLEに全部を注いでたので、頑張る目標がなくなって迷子になった時期がありましたね。だからソロも「なんかやらないと」みたいな感じもありました。その頃のプロデュースはだいたいChocoholicちゃん、あとZuma.にも時々頼んでいて、あのふたりがいなかったら多分音楽を続けていられなかったと感謝しています。

Zuma.(右) / 東京にて撮影

──Jyodanさんは解散後、どうでしたか。

Jyodan:辛かった。本当に辛かった。まさにあれは自己喪失だった。だって、あれは僕の全てでしたから。ただ最悪で、とても悲しくなった。

──CIRRRCLEがなぜ解散してしまったのかなっていうのは、聞きにくいけど、どうしても気になってしまうんですよね。突然の解散に見えましたから。

Amiide:やっぱりコロナがすごい大きくて。CIRRRCLEで最後に出した『BESTY』(2020年)は、〈Suppage Records〉と〈SPACE SHOWER MUSIC〉をレーベルとして出してくれたんです。それもJyodanのビザをなんとかするためにすごい動いててくれたけど、コロナがはじまってどうしてもビザが取れないってなったんですよね。

Jyodan:僕はそれまでは英会話学校の先生をしていたけど、仕事と音楽の繰り返しで貯金も尽きてきて、滞在費や食費ですら大変だった。どんどん病んでいったよ。

Amiide:Jyodanは2018年にLAへ移ってから、しばらく日本とLAを行き来する生活を続けてたんです。だけど、もっとCIRRRCLEで頑張るためにビザを取ろうと動いていた時にコロナがはじまって、その予定も動かなくなっちゃって、みんなの気持ちがバラバラになったというか…。

──とりあえずリモートで曲を作り続けていこう、とはならなかったのですか。

Amiide:そうですね。ただ、コロナがはじまる前に「これからもっと成長するにはライヴしたりとか、同じところにいないとね」みたいな話になっていたんですよ。

Jyodan:同じ国、同じ街、同じ時間にいるっていうのはとても大事なんだ。音楽だけでなく、映画、本、人生について喋ったりするのが大事なんだ。スクリーンを通したやり取りだけでは、その感覚が狂ってしまう。いまでもロンドンにLAで、いつも目が覚めてない時間でのやり取りだから大変なんだけどね(笑)。

photo by Shinsuke Yasui

──楽曲制作以外の時間も共有するっていうのは、大事なのでしょうね。アーティストでなくとも、容易に想像できます。

Jyodan:そう。小さなジョークとか、ちょっとした出来事とかね。誰もそういったものを大事だと思わないでしょ。それこそ、Otomodatchiでも書いていることなんだ。

Amiide:あと多分、すごく大きいのが、CIRRRCLEはずっとインディペントとでやってきたけど、スポンサーやレーベルが必要になると、やっぱり、納期とかもあるじゃないですか。インディペンデントだと自分たちのタイミングで予定が立てられますけど、『BESTY』を作ったときは結構ギリギリだったんですね。Jyodanも実は風邪ひいてて(笑)。

Jyodan:あの時は飛行機のなかで風邪をひいてしまって、本当に体調が悪かった。それでも1回のセッションで全部録り終えたんだ。いま聴き返しても、あの自分の声は嫌いだよ(笑)。

Amiide:間に合わせる意識が結構強かったから、制作の楽しさが失われていってたんじゃないですかね。

この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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自分が聴きたい音楽を追求し続けていく──ロック・バンド、続きはらいせの美学を表現したファースト・EP

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イズミカワソラ×ニラジ・カジャンチ ── 新作『Continue』の意外な制作過程を語る

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ただ、承認されて自立していたい──励ましもせず、突き放しもしないステレオガールのアティテュード

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出発点である自分と向き合うきっかけに──ミクロを意識したJYOCHOの新作

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1万通りの1対1を大切にするpolly──つぶれかけていたロマンを再構築した新作

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理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

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これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

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音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

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バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

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原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

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PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー  ── 集団として闘い、大衆を救う決意

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余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

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The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー  ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

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“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

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初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

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ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

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ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

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BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

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キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

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京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

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谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

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ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

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日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

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謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

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Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

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ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

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自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

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「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

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パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

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[インタヴュー] Otomodatchi

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