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林官房長官らのバンド「ギインズ」とは 政治の「無関心」に一石?【政界Web】

2024年05月10日11時00分

 1970年代のニューミュージックを思わせるギターの音色に、男性ボーカルのハーモニー。演奏するのは林芳正官房長官(63)=衆院山口3区=らによるバンド「Gi!nz(ギインズ)」だ。彼らはなぜ、政治活動の傍らで音楽活動を続けるのか。(時事通信政治部 木田茜)

きっかけは「無関心」

 バンドのメンバーは、ビートルズの音楽に親しんだ50~60代の4人。リーダーでボーカルとギター・ピアノを担当する林氏に加え、自民党の浜田靖一国対委員長(68)=衆院千葉12区、ボーカル=、松山政司参院幹事長(65)=参院福岡選挙区、ボーカル・ギター=の現職国会議員が参加する。衆院議員だった小此木八郎元国家公安委員長(58)=ボーカル=は、2021年の政界引退後もギインズの活動を続けている。

 ギインズを名乗るグループは、97年に林氏と山本一太参院議員(現・群馬県知事)で結成した2人組が「元祖」だ。その後メンバーは変遷し、98年に林氏と浜田、小此木両氏、石崎岳衆院議員(当時)の4人体制に。00年衆院選で石崎氏が落選した後、松山氏が加わって現在の形になった。

 彼らの活動のきっかけは、若者の政治への無関心が叫ばれている現状と「若者は決して無関心ではない」という思いだった。「メッセージを従来のカビ臭い大演説や、堅苦しいパンフレットではなくてもっと身近で親しみのもてる伝え方―例えば音楽―で発信してみてはどうだろう。軽快なポップスやロックのメロディーにのって発信される時、メッセージは新しく生まれ変わり、多くの人々と共有することができる」。05年1月に発売されたファーストアルバムの歌詞カードには、彼らの熱い気持ちが添えられている。

 楽曲の特徴は、社会へのメッセージ性だ。たとえば、代表曲の一つである「東京卒業」はサビの部分で「今帰ろう心の故郷(ふるさと)へ あたたかな地球を今見つけられる僕らがいる」と語り掛けている。東京一極集中が叫ばれる中、地方に目を向けるよう促すような歌詞だ。

 また、「少しの勇気―Peace Together―」は骨髄バンク支援のチャリティーソング。小此木氏が98年に骨髄液を提供した患者からのお礼の手紙などを基に、林氏が作詞・作曲した。

 18年1月にはセカンドアルバムも発売。コンサートやCDの収益は、骨髄バンクやコソボ紛争の難民支援などのチャリティー活動に寄付している。

政界の中心に

 昨年12月、ギインズメンバーを取り巻く状況は大きく変化した。自民党派閥の「政治とカネ」問題を受け、松野博一官房長官や高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長が辞任し、後任として林氏が官房長官に、浜田氏が国対委員長に起用された。今年1月には松山氏も参院幹事長となり、小此木氏を除く三人は政権の中枢を占める。

 政策通で知られる林氏は記者会見や国会答弁もそつなくこなす。浜田氏や松山氏が党要職に就き、国対や参院自民の雰囲気がよくなったとの声は党内で少なくない。一方、「官房長官は裏金問題でもっと汗をかくべきだ」(党重鎮)、「国会運営が野党ペース」(閣僚経験者)との指摘もある。

 林氏は3月の記者会見で、音楽活動に関し「公務や議員活動と両立しながら続けていきたい」と語っているが、ギインズが最後にコンサートを行ったのは新型コロナウイルス感染拡大前の19年。昨年末に開催を予定して練習していたが、中止になった。

 メンバーの一人は「今やったら批判される。政治資金問題が終わらないとできない」と漏らす。ギインズの活動を再開できるかどうか。政治への信頼回復に向けたメンバーの働きがいっそう注目される。(2024年5月10日掲載)

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