政治ジャーナリスト・泉 宏
日本維新の会の新たなリーダーを選ぶ代表選が1日、投開票され、吉村洋文大阪府知事(49)が新代表に選出された。「10・27衆院選」敗北に伴う馬場伸幸代表(59)の辞任表明を受けたもので、「国政政党としての維新の在り方」が最大の争点となったが、維新共同代表を務めてきた吉村氏が、党内の圧倒的な支持で他候補に大差をつけて当選した。
吉村氏は同党創業者の橋下徹、松井一郎両氏の後継者として、同党の中核となる「地域政党・大阪維新の会」を率いてきただけに、今後は「大阪主導の党運営が一段と加速する」(党幹部)との見方が広がる。その一方で、衆院選で落選した音喜多駿前政調会長(41)、小野泰輔前衆院議員(50)ら〝東京組〟は「全国規模の国政政党を目指すという基本戦略に逆行しかねない」との不満を募らせ、小野氏は党離脱の構え。このため党内には「吉村氏の対応次第で〝東西対立〟が激化し、党崩壊の新たな火種になりかねない」(同)との不安が広がる。
維新は今回衆院選で、大阪全19選挙区で勝利する一方、東日本の小選挙区では全滅。加えて、比例代表で約300万も得票を減らし、公示前の44議席が38議席に落ち込んだ。しかも、衆院選後の各種世論調査の政党支持率では、衆院選で議席4倍増と大躍進した国民民主党に抜かれ、野党第3位に転落しつつある。
そもそも維新は、今回衆院選で「野党第1党の獲得」を大目標に掲げ、小選挙区は前回衆院選の1.7倍に当たる163人を擁立した。それだけに、吉村氏は敗北直後から「結党以来最大の党存亡の危機」として、馬場氏ら党執行部の責任を厳しく追及。続投に強い意欲を示した馬場氏も、吉村氏らの「辞任要求」に抗し切れず、藤田文武幹事長(43)と共に退任表明に追い込まれたのが実情だ。
〝非大阪組〟との対立回避が党再生のカギに
11月17日告示の代表選には吉村氏、金村龍那衆院議員(45)、空本誠喜衆院議員(60)、松沢成文参院議員(66)=届け出順=の4氏が出馬し、2週間にわたり「党再生」を巡る論戦を展開。ただ、党内での支持が圧倒的な吉村氏の当選が確実視されたため、主要メディアは代表選をほとんど〝無視〟し、「吉村新体制」での自公政権との距離や野党連携の在り方などでの吉村氏の対応に取材を集中させてきたのが実態だ。
そうした中、衆院選で馬場執行部への大きな打撃となったのが、「裏金議員の筆頭格」とされた萩生田光一元自民党政調会長が出馬した東京24区で、前維新代表の松井氏が萩生田氏の応援演説に駆け付けたことだ。同区には維新が候補者を擁立していただけに、党内からは「裏金の象徴とみられる萩生田氏の応援はあり得ない」との声が噴出、松井氏は「萩生田氏とは20年来の親しい友人」と釈明したが、結果的に馬場代表辞任の要因の一つになったとみられている。
代表選での最大のポイントは、「『全国政党』か『大阪地域政党』かという、政治路線の選択」(党幹部)で、〝非大阪組〟とされる金村、空本、松沢3氏は、揃(そろ)って「〝大阪偏重〟の是正」を訴えたが、大差で敗北した。代表選出を受け吉村氏は共同代表(国会議員団代表)に旧民主党で代表も務めた前原誠司元国土交通相(62)=衆院京都2区、当選11回=を指名する一方、衆参同日選も想定される来夏の「政治決戦」に向け、「野党統一候補」擁立のための野党内調整を呼び掛ける考えも示したが、他野党の反応は複雑だ。さらに、維新内には「加わったばかりの前原氏への不信感」(若手)もあり、当面「吉村新代表が批判勢力との対立を回避できるかが、維新再生への最大のカギ」(同)となりそうだ。