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「女子ゴルファー日本一」原英莉花が、師匠ジャンボ尾崎から受けた薫陶

飛躍期した飛ばし屋

 今年の「女子ゴルファー日本一」を争った日本女子オープン選手権(10月1~4日)で、21歳の原英莉花が初優勝した。福岡県宮若市のザ・クラシックGC(6761ヤード、パー72)を舞台に繰り広げられた同大会。原は同じ1998年度生まれの黄金世代、小祝さくらとのマッチレースの様相を呈した戦いを制し、ツアー通算2勝目を国内メジャー大会初制覇で飾った。追われる立場の最終日にスコアを伸ばし、通算16アンダーで勝ち切ったメンタル面、飛距離が自慢のショットに加えパットの技術向上など、総合力の高さを示してつかみ取ったビッグタイトル。その背景には、高校時代から師と仰ぐゴルフ界のレジェンド、「ジャンボ」こと尾崎将司の存在があった。(時事通信運動部 前田祐貴)

◇ ◇ ◇

 横浜市出身の原は湘南学院高(神奈川県横須賀市)に在学中、知人の紹介で知り合った尾崎将に弟子入りした。2度目の受験となった2018年のプロテストに合格し、同年の賞金ランキング38位でシードを獲得。19年にリゾートトラスト・レディースでツアー初優勝を果たし、賞金ランクは14位に上がった。173センチの長身から繰り出す豪快なティーショットが魅力で、19年の平均飛距離253.33ヤードはツアー4位。有数の飛ばし屋でもある。

 さらなる飛躍を期した20年。2月に尾崎将が主宰するジュニアレッスン会に参加して「冷静かつ大胆に、自信を持って、やる時はやる」と意気込み、師匠からは「今年は一皮むけるような、優勝争いを数多くできる強いゴルファーを目指してもらいたい」とエールを送られた。オーストラリアで行われた米ツアーのISPSハンダ女子オーストラリア・オープンでは25位に入った。

 新型コロナウイルスの影響で大幅に遅れた6月下旬の国内ツアー開幕戦、アース・モンダミン・カップでは最終日に67をマークし、優勝した渡辺彩香と2打差の5位になった。上々のスタートを切ったが、約1カ月半空いた後の第2戦からは2試合連続予選落ち。くしくもその2試合は、昨年から尾崎将の指導を受けるツアールーキーの笹生優花が連勝。同じ門下生の後輩に先を越されてしまった。

オープンの重み知る

 その後の3試合も優勝争いに加わることはなく、空き週だった9月下旬、練習場を併設するジャンボ邸を訪れた。尾崎将は、原の自信のない様子を見抜いたのか「お前、来週(日本女子)オープンじゃないかよ!」と一喝。男子の日本オープン選手権で歴代2位の5勝を含むツアー通算94勝を挙げている師匠の言葉から、ナショナルオープンの重みを再確認させられた。「ジャンボさんにとってオープンは大きいものなんだな、と感じた。強い気持ちを持って挑もうと切り替えられた」

 原は用具の面でも尾崎将に支えられた。新たにもらったアイアンのシャフトを手持ちのヘッドに挿して練習場で打つと、弾道が高くなって安定感が増した。高校時代から指導を受けてきたジャンボから「今までで一番いい」と背中を押され、大一番を前に投入を決断した。

 5番アイアンで180ヤード飛ばせるほど飛距離も伸び、ユーティリティー1本が不要になった。代わりに、ウッドのクラブで1番(ドライバー)以外は従来、4番(バフィ)だけだったが、それを3番(スプーン)と5番(クリーク)の2本に変更。今年の日本女子オープンのコースはツアー史上最長で、その攻略に向けたクラブセッティングを組めたことも、原が信条とする「攻めのプレー」の一助となった。

「何がショットだよ」

 日本女子オープンではパッティングが光った。ここでも、きっかけは尾崎将の言葉だ。ショットの不調を相談してきた原を、「(1ラウンド当たりの平均)30パットを切れないのに何がショットだよ」と突き放した。昨季の平均パット数は30.6881で86位。まな弟子の課題を的確に指摘し、奮起を促した。

 測定機器を使ってパッティングを分析すると、打ち出した時にバックスピンが掛かる傾向があることが分かったという。これではボールが不規則に回転してしまう。そのため、「手元を下げて、肩でストロークするように意識した」。きれいな順回転で打てるように修正し、練習を重ねた。

 その成果を象徴していたのが、3日目の最難関ホールとなった9番のバーディートライ。下り12メートルのパットは、大きくフックする。「タッチを合わせようと思って(ラインを)深く読んだ」。絶妙の感覚で打ったボールは、カーブを描いてカップに吸い込まれた。このホールでただ一人のバーディーを奪うと、力強く右拳を握った。

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