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「女子サッカーには可能性しかない」 WEリーグ高田春奈チェアに聞く②

2023年11月30日15時30分

 日本女子初のプロサッカーリーグとして誕生したWEリーグは、3シーズン目を迎えた。昨秋、チェア(理事長)に就任した高田春奈氏に、リーグの盛り上げに向けた意気込みや、女子サッカーやスポーツを取り巻く環境など多岐にわたって話を聞いた。(聞き手・時事通信運動部 中原さくら) ◆第1回を読む ◆第3回を読む

第1回から続く)
 ―選手とサポーターが参加する運動会を実施しているクラブもある。
 「リーグとしては、『WEアクション』と呼ばれる理念推進活動は、お願いしてやってもらうようにしている。ジェンダーに関わることなどを、リーグの主導でやっていく。Jリーグという先輩がいて、ホームタウン活動などを通して、地域の中にそのクラブが必要とされる存在になっているというのを示してくれている。クラブ側で率先して企画してやれていることもたくさんある」

 ―WEリーグのクラブがない地域でファンを増やす取り組みは。
 「大相撲ではないですけど、地方巡業みたいな感じでやりたいなというアイデアはずっと出ていて。私自身もやりたいと思うが、地方でやるとなるとお金がかかる。本当に事業的な部分で、なかなかやり切れていない。ただ、やはりJリーグは今、60クラブが41都道府県にあって、なでしこリーグが22クラブあると考えると、もっとサッカー界全体の中で女子サッカーを盛り上げていく協力関係をつくっていくのは必要なのかなと思う」

W杯で日本の女子サッカーに自信

 ―どうリーグ、女子サッカーの機運を高めるか。
 「スポーツなので、結果は分からない。例えば、W杯でいい結果を出したらWEリーグにもお客さんが増えるんじゃないか、(スター)選手が誕生するんじゃないかみたいな期待をするのは、よくないというか、できない。今の女子サッカーの状況はどうなのかということを現実として受け止めて、それをリーグの中でどう生かしていくかと考えなきゃいけないな、と始まる前は思っていた」
 「W杯で想像以上にいいサッカーをやってくれた。結果という意味では(東京)オリンピックと同じベスト8だし、それだとみんな評価してくれないのでは、と何となく思っていたのが、皆さんが『なでしこジャパンはすごい強くなってるね』とか、世界の女子サッカーに関わる人たちがみんな『日本はすごかった、本当だったら決勝に来るべきだった』みたいなことを言ってくれて、中身の部分を、自信を持って今後につなげていかなきゃいけないと思った」
 「WEリーグからもたくさん(代表に)選んでもらったので、彼女たちがWEリーグに戻ってリーグ戦などを戦っていく時に、『国内リーグだとつまんないよね』と言われないような環境をクラブの皆さんと一緒につくっていくことが改めて大事だと思った。メディアの皆さんへの働きかけというところで、やっぱり選手たちが主役なので、選手たちをたくさん取り上げていただいて、国内でサッカーをやるってこんなにいいんだなって選手たちに思ってもらえるようにしたい」

オーストラリアで感じた可能性

 ―「女子サッカーには可能性しかない」とW杯後に語っていた。最も変えたいところは。
 「海外の選手たちは、自信がすごくあふれているような感じがした。それは、自信がある、誇りがある、迷いがないとか、いろんな要素があると思うんですよね。そういうふうに思える環境をつくっていくことだと思っている。サッカー界の中での女子の位置付けを高めることなどもある。サッカー界、サッカーファミリーの皆さんと一緒に、選手たちのために環境を整えることは、自分たちもできる。W杯が終わった後は、JFAの皆さんとも、女子を盛り上げるチームの皆さんとも、前以上にコミュニケーションを取って、なでしこジャパンの親善試合をどう盛り上げるかという話をしたりとか。WEリーグはWEリーグでやるのではなくて、なでしこジャパンとか、女子サッカー界全体のイベントとしてお互いが盛り上げていくような連携を、最近は意識してやれている。そこは、W杯が終わってからの変化というか、効果。W杯前も一緒に盛り上げようというのはあったんですけど、それがより強くなった」

 ―W杯当時を振り返ってみて。
 「オーストラリアの国自体の空気感が、みんな本当に女子サッカーに注目していた。女子サッカーで、私はシドニーにしか行ってないですけど、盛り上がっていたし、老若男女が見ていた。そういう力を女子も持っている。私は女子サッカーに可能性しかないと思っているけど、それを感じてない人からすると、『本当?』みたいな。『男子の方が面白い』と終わりそうなものを、他国で女子サッカーがこれだけの力を持っていることを実際に証明してくれたということだと思う。自信を持って、『女子サッカーには可能性しかない』と言えるというのは、オーストラリア行ってみて思った」

JリーグとWEリーグの交流を

 ―宮沢や植木は海外へ。海外からもWEリーグへの流れは。
 「多分海外の選手たちも、日本にプロリーグができたということを何となく知っていて、この選手がいたと知ってもらったのも今回の大会だと思っている。自発的に、日本のプロリーグで試合してみたいと思ってくれるような選手が増えていけば、そういう移動ももっと活性化すると思う。そういうところまでたどり着けたらいいなと思う。男子の延長線上で、宮沢ひなたがマンチェスター・ユナイテッドに行ってすごいと言うけれど、男子のプレミアリーグとJリーグほどの差はないだろうと思っている。なので、同じノリで『そっちの方がはるかにすごい』みたいに言われることがちょっと悔しいところ。イングランドのクラブの人と話をしたが、女子チームを盛り上げるために、男子が積極的に関わっている。今のJリーグとWEリーグがそういう関係になってるかというと、まだそうでもない」(第3回に続く) ◆第1回を読む ◆第3回を読む

 高田 春奈氏(たかた・はるな) 国際基督教大から2001年、ソニー入社。05年にジャパネットソーシャルキャピタルを設立し、社長に就任。20~22年までJリーグ長崎の社長を務める。22年9月にWEリーグ2代目チェア(理事長)に就任し、日本サッカー協会副会長、Jリーグ特任理事も兼任。長崎県出身。46歳。

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