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2025-03-09

離思

離思五首

唐 元稹

其一

自愛残粧暁鏡中,環釵漫簪緑絲叢。

須臾日射胭脂頬,一朶紅蘇旋欲融。

其二

山泉散漫繞階流,万樹桃花映小楼。

閑読道書慵未起,水晶簾下看梳頭。

其三

紅羅著壓逐時新,吉了花紗嫩麴塵。

第一莫嫌材地弱,些些紕縵最宜人。

其四

曾経滄海難為水,除却巫山不是雲。

取次花叢懶回顧,半緣修道半緣君。

其五

尋常百種花斉発,偏摘梨花白人

今日江頭両三樹,可憐和葉度残春。

2025-03-01

ChatGPTと詩作してみた

漫画蒼天航路」で曹操が胡人の娘水晶に愛を告げるシーン(アモーレ!)で、曹操なら詠んだであろう漢詩を「短歌行」を参考に考えてみました。

修正案を出してください。

『蒼々と深きその瞳 天より悠(ひろ)く我が心を覆い

ただ君がための故に 思い耽りて今に至る』

蒼天」を組み込んでみました。

元ネタの詩

青青子衿 悠悠我心

但爲君故 沈吟至今

ChatGPTの改修提案

『『蒼天に似るそのまなざし 我が心もまた同じ色に染まる

ただ君がための故に 思い耽りて今に至る』』

短歌からはかなり外れるけれど、日本語詩として自然かなとは思う。

どちらがいいだろうか。

2025-02-18

anond:20250218185240

水晶発振子について質問です

ChatGPTさんは「3.579MHzの水晶を使うと3.579MHzのCWが出る」と回答してくれましたが、周波数水晶発振子によって固定されるということですか?

そうだとしたらとても不便に思えました

水晶発振子の周波数は固定されるのか?

結論から言うと、水晶発振子は基本的に「決まった周波数しか振動しない」 ため、1つの水晶周波数自由に変更することはできません。

しかし、これには「確かに不便だが、その分メリットがある」という理由があります

また、実際の電子回路では、複数方法周波数を変更することが可能 です!

1. なぜ水晶発振子の周波数は固定されるのか?

水晶発振子(Quartz Crystal)は、「水晶特定周波数機械的振動する性質」を利用した部品 です。

水晶は 「特定周波数しか共振しない」 ため、基本的にはその周波数しか動作しません。

📌 水晶振動の仕組み

水晶電圧を加えると「決まった周波数」で振動する 物質ピエゾ効果)。

3.579MHzの水晶なら、必ず3.579MHzで振動する。

10MHzの水晶なら、10MHzでしか振動しない。

2. なんでそんな不便なものを使うの?

かに、「1つの水晶でいろんな周波数を作れない」のは不便ですが、その代わりに 水晶発振子には非常に大きなメリット があります

水晶発振子のメリット

めちゃくちゃ正確! 周波数のズレ(誤差)がほとんどない。(温度変化などで若干ズレるが、通常±0.001%以下)電子時計通信機器で、正確な時間周波数を作るために必須

安定してる! 一度発振すれば、周波数がブレたり、勝手に変わったりしない。無線通信ラジオ放送では、周波数がズレると通信不能になるため、安定性が重要

ノイズに強い! 発振がクリーンで、余計な雑音(ノイズ)が少ない ので、無線通信に適している。

📌 もし水晶発振子がなかったら…

発振回路が周波数を正しく維持できず、無線通信不安定になる。

時計パソコンの内部クロックがズレて、時間が狂う。

→ だから、「周波数固定」というデメリットよりも、正確で安定した発振ができるメリットの方が大きい!

3. それでも周波数を変えたい!どうする?

「1つの水晶周波数を変えられない」のは不便ですが、電子回路では いろんな方法周波数を変更することが可能 です!

方法①:水晶を切り替える

「使う水晶物理的に切り替える」 方法

例えば、無線機では「3.579MHzの水晶」「10MHzの水晶」などを複数搭載し、切り替えることで周波数を変更できる。

例:水晶切り替え回路

(スイッチ)
[ 3.579MHz ] ←─→ [ 10.000MHz ]

無線機トランシーバーの「周波数チャンネル切り替え」に使われる方法

方法②:可変コンデンサを使う

水晶発振子に「可変コンデンサ」を並列に入れると、発振周波数を少しだけ調整できる!

ただし、大きく変えることはできず、せいぜい±100Hz~1000Hzくらい。

📌 可変コンデンサを使った微調整

[水晶発振子] ──── [可変コンデンサ] → 周波数微妙に変わる

ラジオ周波数微調整や、精密な測定機器に使われる。

方法③:PLL(フェーズロックループ)を使う

PLL(Phase-Locked Loop)という回路を使えば、水晶周波数自由に変更できる!

基準となる水晶発振子」+「周波数を変えられる発振器」 を組み合わせることで、さまざまな周波数を作り出せる。

📌 PLLの動作イメージ

[ 10MHzの水晶発振子 ] → [ PLL回路 ] → [ 9MHz / 10MHz / 11MHz などを出力 ]

スマホWi-FiFMラジオなどの通信機器は、ほぼ100% PLLを使っている!

PLLを使えば、「1つの水晶」で好きな周波数を作れる!

方法④:DDSダイレクトデジタルシンセサイザ)を使う

DDS(Direct Digital Synthesizer)という技術を使うと、もっと自由周波数を変えられる!

デジタル信号処理を利用して、好きな周波数信号を作り出せる。

📌 DDS動作イメージ

[ 10MHzの水晶発振子 ] → [ DDS ] → [ 1Hz~10MHzのCW自由に生成! ]

ラジオ無線機レーダー、計測機器などに使われる!

最新の無線機は、PLL + DDSを組み合わせて周波数自由に変えている!

4. まとめ

水晶発振子は「決まった周波数しか発振しない」ため、1つの水晶自由周波数を変えることはできない。

しかし、その代わりに「超正確」「超安定」「ノイズが少ない」という大きなメリットがある。

周波数を変更する方法はいくつかあり、PLLやDDSを使うと自由周波数を作れる。

現代通信機器スマホWi-Fiラジオなど)は、PLLやDDSを組み合わせて周波数自由に変更している!

anond:20250218184824

Q1(NPNトランジスタ, 増幅素子)の役割ちょっとからないです、もっと高卒おじさんにも分かるように解説してください

Q1(NPNトランジスタ)の役割をわかりやす解説

Q1(NPNトランジスタ)は、CW発信器の「心臓部分」 です。

ここでは、トランジスタが具体的に何をしているのか?なぜ必要なのか? を、

水道蛇口の例え を使って、なるべくわかりやす説明します!

1. トランジスタ基本的な働き

トランジスタ(Q1)は、「スイッチ」や「増幅器」として働く電子部品 です。

CW発信回路では、「発振を助ける」 という重要役割を持っています

📌 トランジスタの基本動作

(1) 小さな電流を流す → 大きな電流を流せるようになる(電流を増幅)

(2) ONにすると電気流れる → OFFにすると止まる(スイッチ

トランジスタは 「蛇口のコック」 のように、流れる電流コントロールしています

さな電流ベース電流)があると、大きな電流コレクタ電流)を流せるようになります

2. CW発信回路におけるQ1の役割

CW発信器では、Q1(トランジスタ)は「発振回路の増幅」と「発振の継続」 を担っています

📌 CW発信器の電流の流れ

(1) 水晶発振子が振動して小さな電流を発生

(2) Q1(トランジスタ)がそれを増幅

(3) 増幅された電流が再び水晶発振子に戻る(発振が継続する)

3. 例え話で理解する!

トランジスタを 「水道蛇口」 に例えると、CW発信回路の動作が分かりやすくなります

(1) トランジスタなし(増幅しない場合

🚰 水道蛇口トランジスタ)がないと…

蛇口なし → 水がチョロチョロしか出ない(信号が弱すぎて使えない)

水晶発振子の振動は、とても小さな電流しか作れない。

そのままだと、CWとして使うには弱すぎる。

(2) トランジスタあり(増幅する場合

🚰 トランジスタ蛇口役割をする

蛇口を少し開く(ベース電流) → 水が勢いよく流れるコレクタ電流

トランジスタがあることで、水晶発振子の弱い振動(小電流)を増幅できる。

これにより、CWとして安定した信号が得られる。

📌 CW発信器での働き

(1) 水晶発振子が少し振動する(小さい電流

(2) Q1(トランジスタ)がその振動を増幅(電流を強くする)

(3) 増幅された信号が発振回路を維持し、CWを安定化

まりトランジスタがないと、CWが小さすぎて送信できない! ということです。


4. トランジスタQ1の具体的な動作

CW発信器では、Q1の役割は次の2つに分かれます

(1) 発振回路の「発振を助ける」

水晶発振子が少し振動すると、Q1がそれを増幅し、回路全体で振動が続くようにする。

📌 発振の仕組み

水晶発振子(小さい振動) → Q1が増幅 → 水晶発振子に戻る → 繰り返し

こうして、CW信号が安定して発生し続ける!



(2) 出力信号を強くする(増幅)

発振したCW信号は、そのままだと小さすぎるため、Q1で増幅する。

これにより、後段の増幅回路やアンテナへ送る準備が整う。

📌 信号増幅の流れ

水晶発振子の微弱信号 → Q1で増幅 → 安定したCW信号

5. まとめ

✅ Q1(トランジスタ)は、CW発信回路の「蛇口」のような役割をする!

水晶発振子の弱い振動を、トランジスタが増幅して安定したCW信号を作る。

トランジスタがないと、CW信号が弱すぎて使えない!

✅ Q1は「発振の継続」と「出力信号の増幅」を担当する。

anond:20250218182419

連続波の具体的な回路図を教えてください

連続波(CW)発信器の具体的な回路図解説

CW(Continuous Wave, 連続波)は、無線通信モールス符号送信などで使われる基本的な波形です。

ここでは、CWを発生させるための基本的回路図と、その仕組みについて詳しく解説します。

📌 CW発信器の基本回路図

CWを生成するためには、安定した周波数正弦波を発生させる発振回路 が必要です。

一般的に、水晶発振子(Quartz Crystal)を用いた回路が使われます

          +Vcc  (電源, 例: +5V, +12V)
           │
           R1抵抗, ベース電流制限)
           │
           ├──────┬───────────
           │       │
           │       C1コンデンサ, 交流成分を安定化)
           │       │
          Q1(NPNトランジスタ, 増幅素子)
           │       │
           │       C2  (コンデンサ, 発振を安定化)
           │       │
          水晶発振子(Quartz Crystal, 周波数決定素子)
           │
          GNDグラウンド, 電流基準点)

📌 各部品の説明

(1) +Vcc(電源)

回路に電力を供給する端子 で、+5V や +12V などの直流電源 を使用します。

CW発信回路が動作するためには、トランジスタ電流を流す必要があります

「Vcc」は「Voltage at Collector(コレクタ電圧)」の略 で、特にトランジスタ回路で使われます

📌 +Vcc の例

+Vcc = 5V  → マイコン回路(Arduino, ESP32 など)
+Vcc = 12V → 無線送信機やラジオ回路


(2) R1ベース抵抗, 電流制限

トランジスタベース電流制限する抵抗 です。

トランジスタ(Q1)が動作するためには、ベース(B)に適切な電流必要ですが、そのまま流すと過剰な電流が流れてしまい、故障の原因になります

そのため、R1を挿入し、適切な電流(通常 1kΩ ~ 10kΩ の範囲)を供給します。

R1 がない → トランジスタ電流が流れすぎる → 過熱故障リスク
R1 がある → 適切な電流制御 → 安定した動作


(3) Q1(NPNトランジスタ, 増幅素子)

トランジスタは、小さな信号を増幅する素子 であり、CW発信回路の中心的な役割を担います

水晶発振子の共振を利用して、安定した高周波CWを生成する ために使われます

発振回路としては、コルピッツ発振回路やハートレー発振回路 などの方式が使われます

📌 Q1の働き

入力:微弱な振動
↓
Q1(トランジスタ)で増幅
↓
出力:安定したCW連続波)


(4) 水晶発振子(Quartz Crystal)

CW周波数を決定する最も重要部品 です。

水晶物理的な振動を利用して、非常に正確な周波数電波を作り出します。

例えば、3.579MHzの水晶を使うと3.579MHzのCWが出る ようになります

📌 水晶発振子の働き

水晶発振子 = 周波数を決定する「音叉」のようなもの一定周波数振動し、安定したCWを生成

(5) C1, C2(コンデンサ, 発振安定化)

発振回路の動作を安定化させる役割 を持ちます

C1, C2 は、交流成分の平滑化やフィードバックを補助するために使われる。

📌 C1, C2の働き

C1高周波信号を安定させる

C2:発振周波数を微調整

適切な容量のC1, C2を選ぶことで、発振が安定する。

(6) GNDグラウンド, 電流基準点)

電流基準点(0V)であり、回路の動作には必須 です。

すべての電子部品は「+Vcc」からGND」に向かって電流流れるので、GNDがないと回路が動作しない。

📌 GNDがないとどうなる?

+Vcc → R1 → Q1(トランジスタ) → ??? (電流が流れない!)

GNDがないと、電流の流れが閉じないため、回路は動作しない。


📌 CW発信器の応用

このCW発信器は、以下のような用途に応用できます

(1) CWモールス送信

CW信号を生成し、モールス符号キー(電鍵)を使ってON/OFFすることで、CW電信モールス通信)が可能になる。

📌 モールス通信の仕組み

CW発振器 → 増幅 → 電鍵(ON/OFF) → アンテナ

電鍵を押すと CWON、離すとOFF になる。

これを短点(・)や長点(-)として送信

(2) CWを使ったラジオ放送(AM変調

CW信号を作り、それを振幅変調AM)することで音声送信可能

AMラジオ放送の基本は、CW + 変調回路(AM回路)。

📌 回路の仕組み

CW発振器 → 変調回路(AM変調) → 増幅 → アンテナ

📌 まとめ

CW連続波)を作るには「水晶発振器」を使うのが一般的

トランジスタ回路(Q1)でCWを増幅し、安定した信号を作る。

R1抵抗)でベース電流制限し、トランジスタ動作を安定させる。

C1, C2(コンデンサ)は発振を安定させる役割を持つ。

GNDグラウンド)がなければ回路は動作しない。

CWモールス電信AM変調などの通信技術に応用される。

送信機に使う場合は、増幅してアンテナから無線送信する。

2025-02-17

anond:20250217194509

今までの話を聞いていると送信者と受信者時間を合わせることが非常に重要に思えます

19世紀の頃などはどのように対応していたのですか?


19世紀通信における「時間の同期」の問題解決

おっしゃる通り、送信者と受信者が正しく通信するためには「時間の同期」が非常に重要 です。

しかし、19世紀の頃は現代のような精密な電子時計GPS時計がなかった ため、時間を合わせること自体が大きな課題でした。

では、当時の電信無線通信ではどのように時間の同期を取っていたのでしょうか?

以下、19世紀通信技術における「時間の同期」の問題と、その解決策 を解説します。


1. なぜ時間の同期が重要なのか?

通信では、送信者と受信者が「いつ信号を送るのか、いつ受信するのか」を一致させる必要があるため、時間の同期が不可欠です。

📌 時間の同期が必要理由

時刻を基準通信を行う場合(例: 時報電信、定時報告)

時間を決めて送信する場合(例: スケジュール化された電信無線通信

周波数ホッピング方式のように、時間ごとに動的に周波数を変える場合

距離通信では、信号の遅延を考慮する必要がある

鉄道軍事通信では、ミスを防ぐために正確な時間が求められた


2. 19世紀時間の同期方法

(1) 手動の時計合わせ(天文観測 + 精密時計

19世紀当初、各都市標準時刻は、天文台で太陽位置を測定することで決められていた。

天文学者が観測した時刻を、正確な時計クロノメーター)で保持し、それを基準に各地の時計を合わせる。

📌 例: グリニッジ天文台の時刻を基準にする

イギリスでは、グリニッジ天文台時計基準にし、そこから鉄道駅や政府機関に正しい時刻を配布していた。

これが後の「グリニッジ標準時GMT)」の基礎になった。


(2) 時報電信電信を使った時刻配信

電信技術の発展により、時刻を電信で送る方法が生まれた。

主要な都市には「標準時信号」が送られ、これを基準に各地の時計を合わせた。

[標準時発信局] →(電信)→ [鉄道駅や工場]

鉄道会社や政府機関は、毎日決まった時間に「標準時」のモールス符号を受信し、それに基づいて時計修正した。

(3) 「時報ボール」(Time Ball)

電信が普及する前、または電信を補助する手段として、港町などで使われた方法

毎日決まった時間に、大きな「時報ボール」を塔の上で落とし、目視時計を合わせる。

📌 時報ボールの仕組み

天文台の時計が正午(12:00)になる。

その信号が港に伝えられる(電信または手動)。

港の塔にある大きなボールが定刻に落とされる。

船の乗組員や商人は、それを見て時計を合わせる。

📌 時報ボールの利用例

イギリスロンドングリニッジ

アメリカニューヨークタイムズスクエアの「ニューイヤーボール」はこの名残)

日本横浜港にもあった


(4) 「リレー式」通信時間差を考慮

距離通信では、電信信号が送られるのに時間がかかるため、送受信のタイミング意識した設計必要だった。

例えば、アメリカ大陸横断電信1861年)では、**「この信号を受けたら○秒後に次の中継局送信」**というルールが定められていた。


(5) 無線通信における同期技術

19世紀から無線電信マルコーニなど)が発展すると、無線通信でも時間の同期が重要になった。

特に複数の局が同じ周波数を使わないように、送信スケジュールが決められた。

📌 無線電信時間管理

無線局が「この時間帯はこの局が使う」と決められていた(固定割り当て方式)。

国際通信では、標準時基準運用(例: 「毎時00分~05分はこの周波数使用」)。


3. 19世紀後半~20世紀初頭の時間同期の発展

(1) 「標準時」の制定

19世紀後半になると、鉄道網の発展により、各地で異なる時刻を使うと混乱が生じるようになった。

そこで、「標準時制度Time Zone)」が制定され、各国の電信鉄道通信がそれに基づいて動くようになった。

📌 標準時の例

1884年:「国際子午線会議」でグリニッジ標準時GMT)が採用

日本では1888年に**日本標準時JST)**が導入。

(2) 水晶時計電波時計の登場

20世紀初頭、水晶時計クォーツ時計)の登場により、より正確な時間管理可能になった。

さらに、無線電波を使って時刻を同期する「電波時計」が登場し、送受信のタイミングを正確に合わせることができるようになった。

4. まとめ

19世紀通信では、送信者と受信者時間を合わせることが非常に重要だった。

天文観測による時刻測定と、精密時計クロノメーター)での時間保持が基本だった。

電信の発展により、「時報電信」が各都市に送られ、鉄道商業活動活用された。

✅ 「時報ボール」という物理的な目印で時間を知らせる方法も使われた。

✅ 長距離通信では、リレー方式を使い、時間差を考慮して送受信を調整した。

無線通信の発展により、標準時制度が整備され、時間同期の精度が向上した。

20世紀には水晶時計電波時計が登場し、より正確な同期が可能になった。

水晶電波時計登場以前ではけっこう時間にばらつきが出てしまうように思えます、どのくらいの誤差があったのですか?

水晶時計電波時計が登場する前の時間の誤差はどのくらいあったのか?

水晶時計電波時計が登場する以前、19世紀20世紀初頭の時計の精度は、使用する時計の種類や管理方法によって大きく異なりました。

一般的に、秒単位の精度は確保できず、日単位で数秒~数分の誤差が発生することが普通 でした。

ここでは、当時の時計の種類ごとにどの程度の誤差が生じたのかを詳しく解説します。

1. 当時の時計の種類と精度

(1) 天文時計19世紀基準時計

誤差: 1日あたり±0.1秒~1秒

天文台で観測される「正確な時刻」の基準として使われた時計

振り子時計の中でも特に精度の高いもので、気圧・温度変化による影響を最小限にする工夫がされていた。

📌 使用

グリニッジ天文台イギリス

パリ天文台フランス

江戸時代末期~明治日本でも使用明石天文台など)

(2) 精密振り子時計クロノメーター

誤差: 1日あたり±1秒~5秒

主に鉄道軍事科学実験などで使用され、当時としては非常に精度の高い時計

温度変化による膨張・収縮の影響を防ぐため、金属合金で作られた「格子振り子」などの工夫が施された。

📌 使用

鉄道の時刻管理(駅に設置)

軍艦海軍での航行

電信局の時刻同期

(3) 船舶クロノメーター

誤差: 1日あたり±2秒~10

航海中の船では、「正確な時刻」を知ることが経度測定に不可欠 だったため、高精度の「海洋クロノメーター」が使われた。

船の揺れに影響されないよう、振り子ではなくヒゲゼンマイ式の時計使用された。

📌 問題

船上の温度変化により、時間の進みが速くなったり遅くなったりすることがあった。

船員は毎日決まった時間に天測(太陽や星の観測)を行い、誤差を補正する必要があった。

📌 使用

大航海時代探検(ジョン・ハリソンクロノメーター

19世紀蒸気船軍艦

(4) 鉄道時計19世紀後半~20世紀初頭)

誤差: 1日あたり±5秒~30秒

19世紀後半、鉄道が発展すると、各駅の時計を同期する必要が出てきた。

「駅の時刻表示」や「運転士・駅員の携帯時計」は、1日に数秒~数十秒の誤差があった ため、定期的に修正された。

📌 問題

駅ごとに時刻が異なることがあり、誤差が大きいと列車事故の原因になった。

時報電信」を利用して、毎日決まった時間時計修正 することで対応

📌 使用

イギリス鉄道網(グリニッジ標準時採用

アメリカ大陸断鉄道(標準時の導入)

日本鉄道明治時代の鉄道省)

(5) 一般懐中時計腕時計19世紀末~20世紀初頭)

誤差: 1日あたり±30秒~2分

個人が持ち歩く時計懐中時計、後の腕時計)は、気温や振動の影響を受けやすく、精度が安定しなかった。

安価時計は1日に数分ずれることも珍しくなかった。

📌 問題

都市ごとに時刻がバラバラだったため、時計時間が違うことで、約束時間に遅れることもあった。

鉄道の普及により「標準時」を採用する必要が出てきた。

📌 対応

町の時計屋で「正確な時刻」を定期的に修正するサービスがあった。

駅の大時計基準にして、個人時計を合わせる習慣があった。

3. 時間の誤差をどうやって補正していたのか?

当時の時計は1日あたり数秒~数分の誤差が出るため、定期的に「正確な時刻」に修正する作業必要だった。

以下の方法で、誤差を最小限に抑える努力がされていた。

(1) 天文台の時刻を基準補正

各国の天文台が観測した「正しい時刻」を、政府機関電信局が管理

毎日決まった時間に、時刻を修正する習慣があった。

(2) 時報電信電報で時刻を配信

電信技術が発展すると、「正午時報電信」などが送信され、全国の駅・軍・工場銀行などで時計修正

(3) 時報ボール目視による時刻合わせ)

天文台や港湾都市では、大きな「時報ボール」を塔の上から落とし、それを見て時計を合わせた。

2025-02-03

anond:20250203120757

老眼って近くのものにピントを合わせられなくて

それは老眼に対する本質的な誤解がある。

老眼とはピントを合わせる能力のものが衰えることなのだ。

ピントを合わせる能力が低下すると、水晶体の厚みが変化しない状態でピントがあう距離しかピントが合わなくなる。

水晶体の厚みが変化しない状態でピントがあう距離」が遠い人は、遠い距離しかピントが合わず

逆に近い人は、近い距離しかピントが合わない。

2024-12-29

anond:20241229000409

泣くがいい。声をあげて泣くがいい。その涙は新しい時代を呼ぶ水晶となってアルカトラスに届くことだろう。この感動こそがロック新時代突入の証しなのから

2024-12-10

銀杏水晶を作ってしまった

一日十粒までしか食べてはいけないのに、一口食べたら止まらない

ほんま、悪魔の食い物やで

2024-12-03

anond:20241203104021

占いって言っても色々あるからなー…

水晶占いとかタロットカード占いとかは統計関係ないだろうし、

手相星占い統計だっていうけど、いつのどんな時代統計だよって思うとなんか途端に怪しげな感じがしてくる。

とはいえ人間の行動はだいたい似通ってくるってことを考えると、「こうすれば大体こうなる」程度の統計っていうかマーケティングっていうかそういうものはまあそうなる可能性が高いっていうのはあながち間違ってもない。

あるいはそう信じてる人が多いからこそそうなるっていう社会現象みたいなもの存在することも理解できる。

優秀な占い師っていうのは実は、まあカウンセラーに比べたら独善的な部分も結構ありそうな気もするけど、案外カウンセラーと同じようなことをしてるんじゃあないかと思ってる。

カウンセラーは「こうしなさい」みたいなことはできないけど、自分でもうどうしていいかわかんなくて、でもとにかく動き出さないとならない時に運任せみたいに決めてもらっちゃいたい時に頼るのが占い師なのかなって。

2024-12-02

anond:20241201210119

定期的にダイレクトメールで届く謎のお婆さんの風水やら水晶やらドラゴンやら宝くじ依存しているのを見ると

なにか托卵のような嫌悪感がある

2024-11-28

ワイが彼女にあげた水晶玉🔮←こんなやつ、太陽の光が集まってボヤを起こしたらしい

ボヤで済んで良かったけど、水晶玉って危険なんだな、知らなかった

2024-11-15

anond:20241114215406

タメ口で、段落なしで、弱者男性になりきって、体験談風に書いて。テーマ婚活であった変な人

Copilotに投げてみた

婚活サイトで知り合った人と初めて会うことになったんだけど、最初の5分で「これヤバい」と思った。待ち合わせのカフェに行ったら、彼女がすでにテーブルに着いていて、おもむろにお守りと水晶を並べ始めたんだ。なんだろうって思ってたら、「私、霊感が強いの」と真顔で言われて、一瞬言葉が出なかった。その後も会話が進むたびに、私のオーラがどうのとか、前世の話とか、まるでオカルトオンパレード挙げ句の果てには、私に合うパワーストーンを選んでくれるとか言い出して、さすがに引いてしまった。普通の会話すらまともにできなくて、最後は「急用ができた」と嘘をついて逃げるようにカフェを後にした。これが婚活現実かと、ちょっと心が折れかけた瞬間だったよ。それにしても、次はもう少し普通の人に出会えることを願うばかりだね。

うーん、この

2024-10-15

田房永子さんについて私が知っている二、三の事柄

45歳の漫画家が運転免許を取って初めてわかった「保護者の集まりで誰とも話さず立っている父親たちの境地」 車の運転をして「男性の目線で見える世界」が見えた気がした | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

で、多くのブクマカを「何言ってんだこの人……」と困惑させている田房(たぶさ)永子さん。

[B! 自動車] 45歳の漫画家が運転免許を取って初めてわかった「保護者の集まりで誰とも話さず立っている父親たちの境地」 車の運転をして「男性の目線で見える世界」が見えた気がした

この方は、結構から論の飛躍と雑な一般化がすさまじく、「何言ってんだこの人……」という感じなので、検索して思い出せたものをいくつか。

どぶろっくネタ批判

どぶろっくと痴漢の関係 by |LOVE PIECE CLUB(ラブピースクラブ)

反論

「どぶろっくと痴漢の関係」を読んで

「膜」では「なぜ痴漢は痴漢をするのか」を説明できない - 最終防衛ライン3

この中での

田房さんは妄想は必ず実行され実現すると考えているように感じられます

という指摘は、今見ればもしかしてだけど田房さんの本質を捉えていたのかも。

後に田房さん自身アンガーマネジメントができず、夫へのDV常習者であったことを告白しているのだけど、

それって、田房さんが「思ったこと(夫をぶっ叩きたいと思ったこと)」と、「実行・実現すること(夫をぶっ叩くこと)」の間に境界線がなかったこと、加害行為でも躊躇なく実行していることと、リンクしているのかな、と。

とあるイラストレーターへの非難から

とあるイラストレーターが、旅先で女子中高生を観察してイラストに起こし、性的視線(「美人」とか「えっちな体型」とか「むちむち」とか)を感じさせる文章とともに旧twitterにアップしたり、クラクションを鳴らしてこちらへ注目させたりして炎上、という話題を受けてのエントリ

女子中高生に固執する成人男性たち by |LOVE PIECE CLUB(ラブピースクラブ)

田房さんらしい飛躍&「自分妄想現実である」という前提に立っての論の組み立て&大げささはありつつも、イラストレーター非難する本筋自体はまあ、悪くない。

が、田房さんが以前に書いていたコラムとセットになると、なかなか面白いことに。

神輿男のケツ by |LOVE PIECE CLUB(ラブピースクラブ)

※メインのエピソード自体は、田房さんの性的視線がよく分かって、結構好き。嫌みではなく。

「明らかに自分の中の中年細胞活性化している事実」って何すか。自分の劣情を中年全体のものとして敷衍しないでほしい。田房さんは田房さん、「他の中年」は「他の中年」であって、同じではないのだから

その上、これ。

神輿男のケツ」

女向け商品度★★★☆☆(個人的に)

「女の人の体は美しいじゃないですか。美しいものを見て感動するって、人間として豊かなことでしょう」とか言うオッサンに限って平然とギンギンに勃起してる傾向ある度★★★★★

「酸いも甘いも知りつくし」た中年は、エロを超越して「美」として認識する、なんてこと言う人まったく信用できない度★★★★★



「女向け商品度★★★☆☆(個人的に)」は、その意味合いもひどいが、文章もひどい。「私向け商品度」でいい。「こじらせた中年女性向け商品度」なら、自虐としてぎり許容範囲か、アウトかの境かな。

「私」と「女」を同一視し、雑に一般化したがる手癖のせいで、「女向け」と言っておいて、「個人的に」という妙な注釈がつき、結果、「神輿男のケツは、個人的には女(全体)向け商品だと思うよ」と主張してしまっている。

2番目の項目もひどい。

先に自身行為

まりもったいないから見ておく」という感じだった。それは、その人と性的な縁はないだろうから、せめてその人の性的な部分(生ケツ)と少しでも関わりを持っておきたい、という、人間として“卑しいランキング”かなり上位の動作だった。その映像若いケツ)を目で盗む、短時間自分水晶体に写し込む、に近い。

と、自虐的に落としていたのに、ここでは「おっさん」に転嫁している。劣情を催していたのは、twitterメッセージを送ってきた男性ではなく、あくまで田房さんやん。

その他

[B! 結婚] 同じ40代で「昭和な夫」と「令和な夫」がいるのはなぜなのか(田房 永子)

htnmikiさんのコメントが全てかと。まあ、そういうネタを拾って文章漫画で語ってお金をもらうのが、今の田房さんのお仕事なので、しょうがないといえば、しょうがないのだけれど。

田房さんにも、評価の高い記事はあります

[B! 教育] 中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育 最初に「相手とのコミュニケーションの一環である」ことを学ぶ

2024-10-12

anond:20241004112542

もし失明したら今ある生活は一変するのは想像に難くない。

だったら生きている意味価値もないと死ぬしかないと考えるのは早計だろう。

失明した後の話は実際に書いている人もいるのでその時に参考にすればいい。

じゃあ失明する前の話になるが、事故で突然の失明に至ることもあるだろう。

たとえば交通事故労災事故傷害事故による突然の失明もあるが、これは予防策は難しい。

病気や加齢に伴う緑内障白内障は何とか進行を遅らせることはできる。

緑内障は視神経が高血圧などによって血流が悪く視神経が死滅して徐々に見えづらくなっていくもの

例えると、デジタルカメラの光センサが徐々に劣化して反応しづらくなるようなもの

これは毎月、眼科医にいって眼圧検査視力検査をして、数か月ごとに視野検査(見える範囲)をやる。

それから眼圧を下げる目薬をして進行を遅らせるくらいしかない。

白内障水晶体(レンズ)が白く濁って見づらくなるもの。これは濁りを取ったり、水晶体(レンズ)を

交換する手術でなんとかなる。

ここで、緑内障は光センサに相当する視神経が死滅してしまもので、これは交換も再生も利かない。

目もそうだけど、歯も大事にしないといけない。体というものは100歳くらいにはほぼ人が死んで

しまうこともあり、食生活運動大事なんだよね。

これって食べ過ぎ飲みすぎ、運動しなさすぎ、といったことや心の病で壊れていくけど、壊れたり

自覚症状出た時には遅いから。気を付けていくことだね。

2024-10-02

九  与次郎が勧めるので、三四郎はとうとう精養軒の会へ出た。その時三四郎は黒い紬の羽織を着た。この羽織は、三輪田のお光さんのおっかさんが織ってくれたのを、紋付に染めて、お光さんが縫い上げたものだと、母の手紙に長い説明がある。小包みが届いた時、いちおう着てみて、おもしろくないから、戸棚へ入れておいた。それを与次郎が、もったいないからぜひ着ろ着ろと言う。三四郎が着なければ、自分が持っていって着そうな勢いであたから、つい着る気になった。着てみると悪くはないようだ。  三四郎はこのいでたちで、与次郎と二人で精養軒の玄関に立っていた。与次郎の説によると、お客はこうして迎えべきものだそうだ。三四郎はそんなこととは知らなかった。第一自分がお客のつもりでいた。こうなると、紬の羽織ではなんだか安っぽい受け付けの気がする。制服を着てくればよかったと思った。そのうち会員がだんだん来る。与次郎は来る人をつらまえてきっとなんとか話をする。ことごとく旧知のようにあしらっている。お客が帽子外套給仕に渡して、広い梯子段の横を、暗い廊下の方へ折れると、三四郎に向かって、今のは誰某だと教えてくれる。三四郎はおかげで知名な人の顔をだいぶ覚えた。  そのうちお客はほぼ集まった。約三十人足らずである広田先生もいる。野々宮さんもいる。――これは理学者だけれども、絵や文学が好きだからというので、原口さんが、むりに引っ張り出したのだそうだ。原口さんはむろんいる。いちばんさきへ来て、世話を焼いたり、愛嬌を振りまいたり、フランス式の髯をつまんでみたり、万事忙しそうである。  やがて着席となった。めいめいかってな所へすわる。譲る者もなければ、争う者もない。そのうちでも広田先生のろいにも似合わずいちばんに腰をおろししまった。ただ与次郎三四郎けがいっしょになって、入口に近く座を占めた。その他はことごとく偶然の向かい合わせ、隣同志であった。  野々宮さんと広田先生あいだに縞の羽織を着た批評家がすわった。向こうには庄司という博士が座に着いた。これは与次郎のいわゆる文科で有力な教授であるフロックを着た品格のある男であった。髪を普通の倍以上長くしている。それが電燈の光で、黒く渦をまいて見える。広田先生坊主頭と比べるとだいぶ相違がある。原口さんはだいぶ離れて席を取った。あちらの角だから、遠く三四郎と真向かいになる。折襟に、幅の広い黒襦子を結んださきがぱっと開いて胸いっぱいになっている。与次郎が、フランスの画工は、みんなああいう襟飾りを着けるものだと教えてくれた。三四郎肉汁を吸いながら、まるで兵児帯の結び目のようだと考えた。そのうち談話だんだん始まった。与次郎ビールを飲む。いつものように口をきかない。さすがの男もきょうは少々謹んでいるとみえる。三四郎が、小さな声で、 「ちと、ダーターファブラをやらないか」と言うと、「きょうはいけない」と答えたが、すぐ横を向いて、隣の男と話を始めた。あなたの、あの論文を拝見して、大いに利益を得ましたとかなんとか礼を述べている。ところがその論文は、彼が自分の前で、さかんに罵倒したものから三四郎にはすこぶる不思議の思いがある。与次郎はまたこっちを向いた。 「その羽織はなかなかりっぱだ。よく似合う」と白い紋をことさら注意してながめている。その時向こうの端から原口さんが、野々宮に話しかけた。元来が大きな声の人だから、遠くで応対するにはつごうがいい。今まで向かい合わせに言葉をかわしていた広田先生庄司という教授は、二人の応答を途中でさえぎることを恐れて、談話をやめた。その他の人もみんな黙った。会の中心点がはじめてできあがった。 「野々宮さん光線の圧力試験はもう済みましたか」 「いや、まだなかなかだ」 「ずいぶん手数がかかるもんだね。我々の職業も根気仕事だが、君のほうはもっと激しいようだ」 「絵はインスピレーションですぐかけるからいいが、物理実験はそううまくはいかない」 「インスピレーションには辟易する。この夏ある所を通ったらばあさんが二人で問答をしていた。聞いてみると梅雨はもう明けたんだろうか、どうだろうかという研究なんだが、一人のばあさんが、昔は雷さえ鳴れば梅雨は明けるにきまっていたが、近ごろじゃそうはいかないとこぼしている。すると一人がどうしてどうして、雷ぐらいで明けることじゃありゃしないと憤慨していた。――絵もそのとおり、今の絵はインスピレーションぐらいでかけることじゃありゃしない。ねえ田村さん、小説だって、そうだろう」  隣に田村という小説家がすわっていた。この男は自分インスピレーション原稿の催促以外になんにもないと答えたので、大笑いになった。田村は、それから改まって、野々宮さんに、光線に圧力があるものか、あれば、どうして試験するかと聞きだした。野々宮さんの答はおもしろかった。――  雲母か何かで、十六武蔵ぐらいの大きさの薄い円盤を作って、水晶の糸で釣るして、真空のうちに置いて、この円盤の面へ弧光燈の光を直角にあてると、この円盤が光に圧されて動く。と言うのである。  一座は耳を傾けて聞いていた。なかに三四郎は腹のなかで、あの福神漬の缶のなかに、そんな装置がしてあるのだろうと、上京のさい、望遠鏡で驚かされた昔を思い出した。 「君、水晶の糸があるのか」と小さい声で与次郎に聞いてみた。与次郎は頭を振っている。 「野々宮さん、水晶の糸がありますか」 「ええ、水晶の粉をね。酸水素吹管の炎で溶かしておいて、両方の手で、左右へ引っ張ると細い糸ができるのです」  三四郎は「そうですか」と言ったぎり、引っ込んだ。今度は野々宮さんの隣にいる縞の羽織批評家が口を出した。 「我々はそういう方面へかけると、全然無学なんですが、はじめはどうして気がついたものでしょうな」 「理論上はマクスウェル以来予想されていたのですが、それをレベデフという人がはじめて実験証明したのです。近ごろあの彗星の尾が、太陽の方へ引きつけられべきはずであるのに、出るたびにいつでも反対の方角になびくのは光の圧力で吹き飛ばされるんじゃなかろうかと思いついた人もあるくらいです」  批評家はだいぶ感心したらしい。 「思いつきもおもしろいが、第一大きくていいですね」と言った。 「大きいばかりじゃない、罪がなくって愉快だ」と広田先生が言った。 「それでその思いつきがはずれたら、なお罪がなくっていい」と原口さんが笑っている。 「いや、どうもあたっているらしい。光線の圧力は半径の二乗に比例するが、引力のほうは半径の三乗に比例するんだから、物が小さくなればなるほど引力のほうが負けて、光線の圧力が強くなる。もし彗星の尾が非常に細かい小片からできているとすれば、どうしても太陽とは反対の方へ吹き飛ばされるわけだ」  野々宮は、ついまじめになった。すると原口が例の調子で、 「罪がない代りに、たいへん計算がめんどうになってきた。やっぱり一利一害だ」と言った。この一言で、人々はもとのとおりビールの気分に復した。広田先生が、こんな事を言う。 「どうも物理学者は自然派じゃだめのようだね」  物理学者と自然派の二字は少なからず満場の興味を刺激した。 「それはどういう意味ですか」と本人の野々宮さんが聞き出した。広田先生説明しなければならなくなった。 「だって、光線の圧力試験するために、目だけあけて、自然を観察していたって、だめだからさ。自然献立のうちに、光線の圧力という事実印刷されていないようじゃないか。だから人工的に、水晶の糸だの、真空だの、雲母だのという装置をして、その圧力物理学者の目に見えるように仕掛けるのだろう。だから自然派じゃないよ」 「しか浪漫派でもないだろう」と原口さんがまぜ返した。 「いや浪漫派だ」と広田先生がもったいらしく弁解した。「光線と、光線を受けるものとを、普通自然界においては見出せないような位置関係に置くところがまったく浪漫派じゃないか」 「しかし、いったんそういう位置関係に置いた以上は、光線固有の圧力を観察するだけだからそれからあとは自然派でしょう」と野々宮さんが言った。 「すると、物理学者は浪漫自然派ですね。文学のほうでいうと、イブセンのようなものじゃないか」と筋向こうの博士比較を持ち出した。 「さよう、イブセンの劇は野々宮君と同じくらいな装置があるが、その装置の下に働く人物は、光線のように自然法則に従っているか疑わしい」これは縞の羽織批評家言葉であった。 「そうかもしれないが、こういうことは人間研究上記憶しておくべき事だと思う。――すなわち、ある状況のもとに置かれた人間は、反対の方向に働きうる能力権力とを有している。ということなんだが、――ところが妙な習慣で、人間も光線も同じように器械的の法則に従って活動すると思うものから、時々とんだ間違いができる。おこらせようと思って装置をすると、笑ったり、笑わせようともくろんでかかると、おこったり、まるで反対だ。しかしどちらにしても人間に違いない」と広田先生がまた問題を大きくしてしまった。 「じゃ、ある状況のもとに、ある人間が、どんな所作をしてもしぜんだということになりますね」と向こうの小説家が質問した。広田先生は、すぐ、 「ええ、ええ。どんな人間を、どう描いても世界に一人くらいはいるようじゃないですか」と答えた。「じっさい人間たる我々は、人間しからざる行為動作を、どうしたって想像できるものじゃない。ただへたに書くから人間と思われないのじゃないですか」  小説家はそれで黙った。今度は博士がまた口をきいた。 「物理学者でも、ガリレオ寺院釣りランプの一振動時間が、振動の大小にかかわらず同じであることに気がついたり、ニュートン林檎が引力で落ちるのを発見したりするのは、はじめから自然派ですね」 「そういう自然派なら、文学のほうでも結構でしょう。原口さん、絵のほうでも自然派がありますか」と野々宮さんが聞いた。 「あるとも。恐るべきクールベエというやつがいる。v※(アキュートアクセント付きE小文字)rit※(アキュートアクセント付きE小文字) vraie. なんでも事実でなければ承知しない。しかしそう猖獗を極めているものじゃない。ただ一派として存在を認められるだけさ。またそうでなくっちゃ困るからね。小説だって同じことだろう、ねえ君。やっぱりモローや、シャバンヌのようなのもいるはずだろうじゃないか」 「いるはずだ」と隣の小説家が答えた。  食後には卓上演説も何もなかった。ただ原口さんが、しきりに九段の上の銅像悪口を言っていた。あん銅像をむやみに立てられては、東京市民が迷惑する。それより、美しい芸者銅像でもこしらえるほうが気が利いているという説であった。与次郎三四郎九段銅像原口さんと仲の悪い人が作ったんだと教えた。  会が済んで、外へ出るといい月であった。今夜の広田先生庄司博士によい印象を与えたろうかと与次郎が聞いた。三四郎は与えたろうと答えた。与次郎は共同水道栓のそばに立って、この夏、夜散歩に来て、あまり暑いからここで水を浴びていたら、巡査に見つかって、擂鉢山へ駆け上がったと話した。二人は擂鉢山の上で月を見て帰った。  帰り道に与次郎三四郎に向かって、突然借金言い訳をしだした。月のさえた比較寒いである三四郎ほとんど金の事などは考えていなかった。言い訳を聞くのでさえ本気ではない。どうせ返すことはあるまいと思っている。与次郎もけっして返すとは言わない。ただ返せない事情をいろいろに話す。その話し方のほうが三四郎にはよほどおもしろい。――自分の知ってるさる男が、失恋の結果、世の中がいやになって、とうとう自殺をしようと決心したが、海もいや川もいや、噴火口はなおいや、首をくくるのはもっともいやというわけで、やむをえず短銃を買ってきた。買ってきて、まだ目的遂行しないうちに、友だちが金を借りにきた。金はないと断ったが、ぜひどうかしてくれと訴えるので、しかたなしに、大事の短銃を貸してやった。友だちはそれを質に入れて一時をしのいだ。つごうがついて、質を受け出して返しにきた時は、肝心の短銃の主はもう死ぬ気がなくなっていた。だからこの男の命は金を借りにこられたために助かったと同じ事である。 「そういう事もあるからなあ」と与次郎が言った。三四郎にはただおかしいだけである。そのほかにはなんらの意味もない。高い月を仰いで大きな声を出して笑った。金を返されないでも愉快である与次郎は、 「笑っちゃいかん」と注意した。三四郎はなおおかしくなった。 「笑わないで、よく考えてみろ。おれが金を返さなければこそ、君が美禰子さんから金を借りることができたんだろう」  三四郎は笑うのをやめた。 「それで?」 「それだけでたくさんじゃないか。――君、あの女を愛しているんだろう」  与次郎はよく知っている。三四郎はふんと言って、また高い月を見た。月のそばに白い雲が出た。 「君、あの女には、もう返したのか」 「いいや」 「いつまでも借りておいてやれ」  のん気な事を言う。三四郎はなんとも答えなかった。しかいつまでも借りておく気はむろんなかった。じつは必要な二十円を下宿へ払って、残りの十円をそのあくる日すぐ里見の家へ届けようと思ったが、今返してはかえって、好意にそむいて、よくないと考え直して、せっかく門内に、はいられる機会を犠牲にしてまでも引き返した。その時何かの拍子で、気がゆるんで、その十円をくずしてしまった。じつは今夜の会費もそのうちから出ている。自分ばかりではない。与次郎のもそのうちから出ている。あとには、ようやく二、三円残っている。三四郎はそれで冬シャツを買おうと思った。  じつは与次郎がとうてい返しそうもないから、三四郎は思いきって、このあいだ国元へ三十円の不足を請求した。十分な学資を月々もらっていながら、ただ不足だからといって請求するわけにはゆかない。三四郎はあまり嘘をついたことのない男だから請求理由にいたって困却した。しかたがないからただ友だちが金をなくして弱っていたから、つい気の毒になって貸してやった。その結果として、今度はこっちが弱るようになった。どうか送ってくれと書いた。  すぐ返事を出してくれれば、もう届く時分であるのにまだ来ない。今夜あたりはことによると来ているかもしれぬくらいに考えて、下宿へ帰ってみると、はたして、母の手蹟で書いた封筒ちゃんと机の上に乗っている。不思議なことに、いつも必ず書留で来るのが、きょうは三銭切手一枚で済ましてある。開いてみると、中はいつになく短かい。母としては不親切なくらい、用事だけで申し納めてしまった。依頼の金は野々宮さんの方へ送ったから、野々宮さんから受け取れというさしずにすぎない。三四郎は床を取ってねた。  翌日もその翌日も三四郎は野々宮さんの所へ行かなかった。野々宮さんのほうでもなんともいってこなかった。そうしているうちに一週間ほどたった。しまいに野々宮さんから下宿下女を使いに手紙をよこした。おっかさんからまれものがあるからちょっと来てくれろとある三四郎講義の隙をみて、また理科大学の穴倉へ降りていった。そこで立談のあいだに事を済ませようと思ったところが、そううまくはいかなかった。この夏は野々宮さんだけで専領していた部屋に髭のはえた人が二、三人いる。制服を着た学生も二、三人いる。それが、みんな熱心に、静粛に、頭の上の日のあたる世界をよそにして、研究をやっている。そのうちで野々宮さんはもっと多忙に見えた。部屋の入口に顔を出した三四郎ちょっと見て、無言のまま近寄ってきた。 「国から、金が届いたから、取りに来てくれたまえ。今ここに持っていないから。それからまだほかに話す事もある」  三四郎ははあと答えた。今夜でもいいかと尋ねた。野々宮はすこしく考えていたが、しまいに思いきってよろしいと言った。三四郎はそれで穴倉を出た。出ながら、さすがに理学者は根気のいいものだと感心した。この夏見た福神漬の缶と、望遠鏡が依然としてもとのとおりの位置に備えつけてあった。  次の講義時間与次郎に会ってこれこれだと話すと、与次郎はばかだと言わないばかりに三四郎をながめて、 「だからいつまでも借りておいてやれと言ったのに。よけいな事をして年寄りには心配をかける。宗八さんにはお談義をされる。これくらい愚な事はない」とまるで自分から事が起こったとは認めていない申し分である三四郎もこの問題に関しては、もう与次郎責任を忘れてしまった。したがって与次郎の頭にかかってこない返事をした。 「いつまでも借りておくのは、いやだから、家へそう言ってやったんだ」 「君はいやでも、向こうでは喜ぶよ」 「なぜ」  このなぜが三四郎自身はいくぶんか虚偽の響らしく聞こえた。しか相手にはなんらの影響も与えなかったらしい。 「あたりまえじゃないか。ぼくを人にしたって、同じことだ。ぼくに金が余っているとするぜ。そうすれば、その金を君から返してもらうよりも、君に貸しておくほうがいい心持ちだ。人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ」  三四郎は返事をしないで、講義を筆記しはじめた。二、三行書きだすと、与次郎がまた、耳のそばへ口を持ってきた。 「おれだって、金のある時はたびたび人に貸したことがある。しかしだれもけっして返したものがない。それだからおれはこのとおり愉快だ」  三四郎まさか、そうかとも言えなかった。薄笑いをしただけで、またペンを走らしはじめた。与次郎それからはおちついて、時間の終るまで口をきかなかった。  ベルが鳴って、二人肩を並べて教場を出る時、与次郎が、突然聞いた。

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「あの女は君にほれているのか」

 二人のあとから続々聴講生が出てくる。三四郎はやむをえず無言のまま梯子段を降りて横手玄関から図書館わきの空地へ出て、はじめて与次郎を顧みた。

「よくわからない」

 与次郎はしばらく三四郎を見ていた。

「そういうこともある。しかしよくわかったとして、君、あの女の夫になれるか」

 三四郎はいまだかつてこの問題を考えたことがなかった。美禰子に愛せられるという事実のものが、彼女の夫たる唯一の資格のような気がしていた。言われてみると、なるほど疑問である三四郎は首を傾けた。

「野々宮さんならなれる」と与次郎が言った。

「野々宮さんと、あの人とは何か今までに関係があるのか」

 三四郎の顔は彫りつけたようにまじめであった。与次郎一口

「知らん」と言った。三四郎は黙っている。

「また野々宮さんの所へ行って、お談義を聞いてこい」と言いすてて、相手は池の方へ行きかけた。三四郎は愚劣の看板のごとく突っ立った。与次郎は五、六歩行ったが、また笑いながら帰ってきた。

「君、いっそ、よし子さんをもらわないか」と言いながら、三四郎を引っ張って、池の方へ連れて行った。歩きながら、あれならいい、あれならいいと、二度ほど繰り返した。そのうちまたベルが鳴った。

 三四郎はその夕方野々宮さんの所へ出かけたが、時間がまだすこし早すぎるので、散歩かたがた四丁目まで来て、シャツを買いに大きな唐物屋へはいった。小僧が奥からいろいろ持ってきたのをなでてみたり、広げてみたりして、容易に買わない。わけもなく鷹揚にかまえていると、偶然美禰子とよし子が連れ立って香水を買いに来た。あらと言って挨拶をしたあとで、美禰子が、

「せんだってありがとう」と礼を述べた。三四郎にはこのお礼の意味が明らかにわかった。美禰子から金を借りたあくる日もう一ぺん訪問して余分をすぐに返すべきところを、ひとまず見合わせた代りに、二日ばかり待って、三四郎は丁寧な礼状を美禰子に送った。

 手紙文句は、書いた人の、書いた当時の気分をすなおに表わしたものではあるが、むろん書きすぎている。三四郎はできるだけの言葉を層々と排列して感謝の意を熱烈にいたした。普通の者から見ればほとんど借金の礼状とは思われないくらいに、湯気の立ったものであるしか感謝以外には、なんにも書いてない。それだから自然の勢い、感謝感謝以上になったのでもある。三四郎はこの手紙ポストに入れる時、時を移さぬ美禰子の返事を予期していた。ところがせっかくの封書はただ行ったままであるそれから美禰子に会う機会はきょうまでなかった。三四郎はこの微弱なる「このあいだはありがとう」という反響に対して、はっきりした返事をする勇気も出なかった。大きなシャツを両手で目のさきへ広げてながめながら、よし子がいるからああ冷淡なんだろうかと考えた。それからこのシャツもこの女の金で買うんだなと考えた。小僧はどれになさいますと催促した。

 二人の女は笑いながらそばへ来て、いっしょにシャツを見てくれた。しまいに、よし子が「これになさい」と言った。三四郎はそれにした。今度は三四郎のほうが香水相談を受けた。いっこうわからない。ヘリオトロープと書いてある罎を持って、いいかげんに、これはどうですと言うと、美禰子が、「それにしましょう」とすぐ決めた。三四郎は気の毒なくらいであった。

 表へ出て別れようとすると、女のほうが互いにお辞儀を始めた。よし子が「じゃ行ってきてよ」と言うと、美禰子が、「お早く……」と言っている。聞いてみて、妹が兄の下宿へ行くところだということがわかった。三四郎はまたきれいな女と二人連で追分の方へ歩くべき宵となった。日はまだまったく落ちていない。

 三四郎はよし子といっしょに歩くよりは、よし子といっしょに野々宮の下宿で落ち合わねばならぬ機会をいささか迷惑に感じた。いっそのこと今夜は家へ帰って、また出直そうかと考えた。しかし、与次郎のいわゆるお談義を聞くには、よし子がそばにいてくれるほうが便利かもしれない。まさか人の前で、母から、こういう依頼があったと、遠慮なしの注意を与えるわけはなかろう。ことによると、ただ金を受け取るだけで済むかもわからない。――三四郎は腹の中で、ちょっとずるい決心をした。

「ぼくも野々宮さんの所へ行くところです」

「そう、お遊びに?」

「いえ、すこし用があるんです。あなたは遊びですか」

「いいえ、私も御用なの」

 両方が同じようなことを聞いて、同じような答を得た。しかし両方とも迷惑を感じている気色がさらにない。三四郎は念のため、じゃまじゃないかと尋ねてみた。ちっともじゃまにはならないそうである。女は言葉でじゃまを否定したばかりではない。顔ではむしろなぜそんなことを質問するかと驚いている。三四郎は店先のガスの光で、女の黒い目の中に、その驚きを認めたと思った。事実としては、ただ大きく黒く見えたばかりである

バイオリンを買いましたか

「どうして御存じ」

 三四郎は返答に窮した。女は頓着なく、すぐ、こう言った。

いくら兄さんにそう言っても、ただ買ってやる、買ってやると言うばかりで、ちっとも買ってくれなかったんですの」

 三四郎は腹の中で、野々宮よりも広田よりも、むしろ与次郎非難した。

 二人は追分の通りを細い路地に折れた。折れると中に家がたくさんある。暗い道を戸ごとの軒燈が照らしている。その軒燈の一つの前にとまった。野々宮はこの奥にいる。

 三四郎下宿とはほとんど一丁ほどの距離である。野々宮がここへ移ってから三四郎は二、三度訪問したことがある。野々宮の部屋は広い廊下を突き当って、二段ばかりまっすぐに上がると、左手に離れた二間である。南向きによその広い庭をほとんど椽の下に控えて、昼も夜も至極静かである。この離れ座敷に立てこもった野々宮さんを見た時、なるほど家を畳んで下宿をするのも悪い思いつきではなかったと、はじめて来た時から、感心したくらい、居心地のいい所である。その時野々宮さんは廊下下りて、下から自分の部屋の軒を見上げて、ちょっと見たまえ、藁葺だと言った。なるほど珍しく屋根に瓦を置いてなかった。

 きょうは夜だから屋根はむろん見えないが、部屋の中には電燈がついている。三四郎は電燈を見るやいなや藁葺を思い出した。そうしておかしくなった。

「妙なお客が落ち合ったな。入口で会ったのか」と野々宮さんが妹に聞いている。妹はしからざるむねを説明している。ついでに三四郎のようなシャツを買ったらよかろうと助言している。それから、このあいだのバイオリン和製で音が悪くっていけない。買うのをこれまで延期したのだから、もうすこし良いのと買いかえてくれと頼んでいる。せめて美禰子さんくらいのなら我慢すると言っている。そのほか似たりよったりの駄々をしきりにこねている。野々宮さんはべつだんこわい顔もせず、といって、優しい言葉もかけず、ただそうかそうかと聞いている。

 三四郎はこのあいだなんにも言わずにいた。よし子は愚な事ばかり述べる。かつ少しも遠慮をしない。それがばかとも思えなければ、わがままとも受け取れない。兄との応待をそばにいて聞いていると、広い日あたりのいい畑へ出たような心持ちがする。三四郎は来たるべきお談義の事をまるで忘れてしまった。その時突然驚かされた。

「ああ、わたし忘れていた。美禰子さんのお言伝があってよ」

「そうか」

「うれしいでしょう。うれしくなくって?」

 野々宮さんはかゆいような顔をした。そうして、三四郎の方を向いた。

ぼくの妹はばかですね」と言った。三四郎はしかたなしに、ただ笑っていた。

「ばかじゃないわ。ねえ、小川さん」

 三四郎はまた笑っていた。腹の中ではもう笑うのがいやになった。

「美禰子さんがね、兄さんに文芸協会演芸会に連れて行ってちょうだいって」

里見さんといっしょに行ったらよかろう」

「御用があるんですって」

「お前も行くのか」

「むろんだわ」

 野々宮さんは行くとも行かないとも答えなかった。また三四郎の方を向いて、今夜妹を呼んだのは、まじめの用があるんだのに、あんのん気ばかり言っていて困ると話した。聞いてみると、学者だけあって、存外淡泊である。よし子に縁談の口がある。国へそう言ってやったら、両親も異存はないと返事をしてきた。それについて本人の意見をよく確かめ必要が起こったのだと言う。三四郎はただ結構ですと答えて、なるべく早く自分のほうを片づけて帰ろうとした。そこで、

「母からあなたにごめんどうを願ったそうで」と切り出した。野々宮さんは、

「なに、大してめんどうでもありませんがね」とすぐに机の引出しから、預かったものを出して、三四郎に渡した。

「おっかさんが心配して、長い手紙を書いてよこしましたよ。三四郎は余儀ない事情で月々の学資を友だちに貸したと言うが、いくら友だちだって、そうむやみに金を借りるものじゃあるまいし、よし借りたって返すはずだろうって。いなかの者は正直だから、そう思うのもむりはない。それからね、三四郎が貸すにしても、あまり貸し方が大げさだ。親から月々学資を送ってもらう身分でいながら、一度に二十円の三十円のと、人に用立てるなんて、いかにも無分別とあるんですがね――なんだかぼくに責任があるように書いてあるから困る。……」

 野々宮さんは三四郎を見て、にやにや笑っている。三四郎はまじめに、「お気の毒です」と言ったばかりである。野々宮さんは、若い者を、極めつけるつもりで言ったんでないとみえて、少し調子を変えた。

「なに、心配することはありませんよ。なんでもない事なんだから。ただおっかさんは、いなかの相場で、金の価値をつけるから、三十円がたいへん重くなるんだね。なんでも三十円あると、四人の家族半年食っていけると書いてあったが、そんなものかな、君」と聞いた。よし子は大きな声を出して笑った。三四郎にもばかげているところがすこぶるおかしいんだが、母の言条が、まったく事実を離れた作り話でないのだから、そこに気がついた時には、なるほど軽率な事をして悪かったと少しく後悔した。

「そうすると、月に五円のわりだから、一人前一円二十五銭にあたる。それを三十日に割りつけると、四銭ばかりだが――いくらいなかでも少し安すぎるようだな」と野々宮さんが計算を立てた。

「何を食べたら、そのくらいで生きていられるでしょう」とよし子がまじめに聞きだした。三四郎も後悔する暇がなくなって、自分の知っているいなか生活ありさまをいろいろ話して聞かした。そのなかには宮籠りという慣例もあった。三四郎の家では、年に一度ずつ村全体へ十円寄付することになっている。その時には六十戸から一人ずつ出て、その六十人が、仕事を休んで、村のお宮へ寄って、朝から晩まで、酒を飲みつづけに飲んで、ごちそうを食いつづけに食うんだという。

「それで十円」とよし子が驚いていた。お談義はこれでどこかへいったらしい。それから少し雑談をして一段落ついた時に、野々宮さんがあらためて、こう言った。

「なにしろ、おっかさんのほうではね。ぼくが一応事情を調べて、不都合がないと認めたら、金を渡してくれろ。そうしてめんどうでもその事情を知らせてもらいたいというんだが、金は事情もなんにも聞かないうちに、もう渡してしまったしと、――どうするかね。君たしか佐々木に貸したんですね」

 三四郎は美禰子からもれて、よし子に伝わって、それが野々宮さんに知れているんだと判じた。しかしその金が巡り巡ってバイオリンに変形したものとは、兄妹とも気がつかないか一種妙な感じがした。ただ「そうです」と答えておいた。

佐々木馬券を買って、自分の金をなくしたんだってね」

「ええ」

 よし子はまた大きな声を出して笑った。

「じゃ、いいかげんにおっかさんの所へそう言ってあげよう。しかし今度から、そんな金はもう貸さないことにしたらいいでしょう」

 三四郎は貸さないことにするむねを答えて、挨拶をして、立ちかけると、よし子も、もう帰ろうと言い出した。

「さっきの話をしなくっちゃ」と兄が注意した。

「よくってよ」と妹が拒絶した。

「よくはないよ」

「よくってよ。知らないわ」

 兄は妹の顔を見て黙っている。妹は、またこう言った。

だってしかたがないじゃ、ありませんか。知りもしない人の所へ、行くか行かないかって、聞いたって。好きでもきらいでもないんだから、なんにも言いようはありゃしないわ。だから知らないわ」

 三四郎は知らないわの本意をようやく会得した。兄妹をそのままにして急いで表へ出た。

 人の通らない軒燈ばかり明らかな路地を抜けて表へ出ると、風が吹く。北へ向き直ると、まともに顔へ当る。時を切って、自分下宿の方から吹いてくる。その時三四郎は考えた。この風の中を、野々宮さんは、妹を送って里見まで連れていってやるだろう。

 下宿の二階へ上って、自分の部屋へはいって、すわってみると、やっぱり風の音がする。三四郎はこういう風の音を聞くたびに、運命という字を思い出す。ごうと鳴ってくるたびにすくみたくなる。自分ながらけっして強い男とは思っていない。考えると、上京以来自分運命はたいがい与次郎のためにこしらえられている。しかも多少の程度において、和気靄然たる翻弄を受けるようにこしらえられている。与次郎は愛すべき悪戯である。向後もこの愛すべき悪戯者のために、自分運命を握られていそうに思う。風がしきりに吹く。たしか与次郎以上の風である

 三四郎は母から来た三十円を枕元へ置いて寝た。この三十円も運命翻弄が生んだものである。この三十円がこれからさきどんな働きをするか、まるでわからない。自分はこれを美禰子に返しに行く。美禰子がこれを受け取る時に、また一煽り来るにきまっている。三四郎はなるべく大きく来ればいいと思った。

2024-09-06

anond:20240906170521

あるある

水晶エメラルドオイル処理がデフォルトだし、ルビーとかサファイアは加熱処理済が一般的というやつだね。

逆にそういうのをやってなくてしかも美しい石というのもあるにはあるが、我が月給の3倍注ぎ込んでも手が届かないようなお値段がついているw

それに比べればお値段的には多少の加工は折り込み済みと思って買ってるよ。何なら普通に合成石も買ったしw

人類の叡智はすごいねあんなにきれいな石を合成で生み出せるとは。ぶっちゃけ宝石個性求めないなら合成石が一番良い選択な気がする。(比較的)安価だし、安定して美しいし。

2024-08-31

anond:20240830234355

勝手にっていうか、月の千年王国シルバーミレニアムは銀水晶プラスエネルギー地球マイナスエネルギーを消して地球生命庇護してきた、名目ともに地球人類の上位存在なんだから、そのプリンセス・セレニティの生まれ変わりである月野うさぎが月の千年王国の名代として地球マイナスエネルギーしばくのは、歴史的正統性に裏打ちされた行為と言って良いのでは。

2024-08-12

anond:20240811204233

 こういうことで弱者男性叩きとかしたがるのは、むしろ新潮カス右翼だったりするけどね。

 荘野頼子みたいな最低最悪な弱者男性差別の糞フェミババアを暴れさせてたのが新潮

 水晶なんたらとかいう、男尊女卑に抗議してるとかいういつもの体で、ホームレス問題とか自殺者は男性の方が多いこととか、生きづらいのも弱い立場の男の方が酷いってことも無視して、逆にしたら都合が良い部分だけ逆にしてワガママ描いただけの小説とか本当に酷いよ。

 その男尊女卑で得をしてるのは権力者の男だけなのに、その権力者男は叩かず、むしろ新潮みたいな最悪なところに媚びへつらってるくせに、弱い立場の男ばっか叩く。

 それが三島由紀夫大好きな新潮かい右翼と、実はそいつらに裏で手を組んで操られてる糞フェミババアもの本性なんだよ。

2024-06-14

水晶マナ

シールドゾーンマナゾーン兼ねるギミック出てきそうな気がする

どっちも裏向きだしシールドを1枚選んで裏向きのまま水晶マナとして扱ってもよいみたいな

2024-03-16

anond:20240316160944

占いキャバクラもしくはホストクラブ一種だよね

ぶっちゃけ占い方法なんかなんでもいい、大差ない

タロットも易も水晶も全部一緒、あれは今は無きごきげんようの何が出るかな?サイコロと同じ役割から、いわばフリ

占い師で1番大事なのは客とのトーク

占いの客が占いに期待していることは、自分話題占い師と楽しくお喋りすることだよね

2024-03-09

天然石すき

宝石の原石もすき

ダイヤモンド指輪かいらないから、手のひらサイズ水晶欲しい

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