散歩中の身に注がれる視線の「正体」
オーストラリア第3の都市ブリスベン。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出規制が続く中、楽しみの一つが心身の健康維持のために許されている「散歩やジョギング」だ。だがしばらく前から、「ある視線」を感じるようになった。通りに面した窓の向こうから、はたまた一軒家の2階のバルコニーから。
殺伐とした世の中の不穏な視線…というのではまったくない。むしろ何やらほんわかとあたたかく、けがれを知らない無邪気な視線。これはなんだとそちらのほうに目を向けると…目に飛び込んでくるのはクマをはじめとしたかわいらしいぬいぐるみ!
一方、足もとに目を向けると、色とりどりのチョークで描かれた絵と、「笑顔を絶やさず!」「やさしくしよう!」「きっとだいじょうぶ!」などという意味の英語で書かれた前向きなメッセージ!
この記事では、外出制限下にあってもまわりの人たちを勇気づけようとするオーストラリア人たちのポジティブな様子を、みなさんと分かち合いたい。
先手を打った対策が奏功
その前に、まずはオーストラリアの現在の状況に触れておこう。
この原稿を執筆している2020年4月16日時点で、オーストラリアの新型コロナウイルス感染者は6479人、死者は63人。ちなみにオーストラリア連邦政府統計局が過去の人口とその増加率をもとに発表している推計総人口は、同日時点で2566万人と日本の約5分の1だ。いわゆる「感染爆発」には至っておらず「比較的抑え込めている」と言えるだろう。
その理由の一つが、先手を打った外出制限だ。「500人以上の集会は禁止(学校や会社は除く)」と、初めて海外からの入国者以外にも外出に関する規制を打ち出したのは3月15日。イタリアの感染者数が急増し始めたころだ。
その8日後の23日には「映画館やカジノ、ナイトクラブやジム、宗教施設は閉鎖、レストランや飲み屋は店内飲食禁止でテークアウトのみ可」となった。その1週間後の30日には、「屋外を含む公的な場所において3人以上で会うこと」が禁止された。つまり2人でジョギングや散歩をするのは可(1人としなかったのは女性などの安全確保のため)だが、3人では不可となった。
4月16日の時点では、州によって多少異なるが「他者との物理的距離の確保」「通勤、日用品や薬などの必須の買い物、医療機関への受診などを除く不要不急の外出の禁止(「自粛」ではない)」といった規制もかかっている。
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