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「ぬいぐるみ」と「チョークアート」で世の中を明るく

「ぬいぐるみ探し」で散歩中に「宝探し」気分を

 客観的に見れば、どんよりと重苦しい雰囲気に包まれていてもおかしくはない規制だらけの世の中になっているが、そうした状況下でも何とか楽しく生きようとするのが、この国の人たちだ。

 「陽気なオージー(オーストラリア人)」という言いまわしは極めて画一的なとらえ方で、中にはもちろんそうでない人もいる。ただ一般的に見て、明るい性格の人が多いのは間違いない。すれ違った見ず知らずの人を相手にちょっとした冗談を口にする、というよりも、口にせずにはいられないというタイプも多い。

 そうしたオーストラリア人たちの中で今、自然発生的に楽しまれていることの一つが冒頭にも書いた「テディベアハント」だ。

 ではこの「テディベアハント」で何をするかというと、基本的には見つけるだけ。だが「ああ、あそこにいる」とか「あんなところにも!」と「発見」ができれば、散歩もただの運動ではなく「宝探し」的なの楽しみが味わえるものになる。そしてぬいぐるみたちの無垢(むく)な視線と、その向こうにある設置した人たちのやさしさに癒やされ、ほんわかとあたたかな気持ちになる。

 ぬいぐるみを置く場所は「窓の内側」が基本だが、そこはやはり他人を楽しませることが好きな人が多いオーストラリア人。門の鉄柵や門柱で堂々と出迎えてくれるぬいぐるみもいれば、バルコニーに勢ぞろいして盛大に歓迎してくれるふわふわ軍団もいる。植木の枝の上やガスメーターのためのスペースといった意外な場所に何食わぬ顔で置かれているぬいぐるみの存在に気づくと、「あっ、見つけだぞーっ!」とまさに「宝探し」の気分を味わえる。

ぬいぐるみの場所が分かる地図アプリも
 置かれているのは、やはりこの国のぬいぐるみの代表格であるクマが多い。だが他の動物もいる。バルコニーの手すりからだらりとぶら下がっているナマケモノを「発見」したときは、「そうだよなあ。こんなときだから焦ったり切羽詰まったりしても仕方がないよな。のんびりいこうか」などという気分になる。

 この「テディベアハント」の写真などを集めたフェイスブックグループなども、あちこちで自主的につくられている。オーストラリア国内で最大かつ最も活発なグループである「テディベアハントNSW(ニューサウスウェールズ州の略)」の4月16日時点における1日の平均投稿者数は、なんと約480件。平均すると毎日3分に1件の投稿があることになる。またこうしたフェイスブックグルーブの中には、どこにぬいぐるみが置かれているかを示す「地図アプリ」を持つものもある。

 ちなみにこの「テディベアハント」、オーストラリアだけのムーブメントではない。私がお世話係を務める海外在住ライター集団「海外書き人クラブ」の仲間たちにざっと聞いたところ、少なくとも米国、英国、アイスランド、オランダ、ニュージーランドなどでも同様のことが行われているようだ。そもそもどの国で誰が始めたのか定かではないが、おそらくこんな世界的なものになるとは想像もしていなかっただろう。

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