“思索の海”に飛び込んで言葉を紡ぐ──伊東歌詞太郎が語る、その作詞術
ラジオ、ネット番組のパーソナリティーから声優業まで、マルチな才能を展開する注目のSSW、伊東歌詞太郎がTVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」EDテーマ『真珠色の革命』をリリース。さまざまな方法での表現を行なっている彼は、どのような思索をめぐらせながらアウトプットを行なっているのか、その秘密を探りました。また、これまで聴いてきたなかで、衝撃を受けた歌詞についても語ってもらっています。伊東歌詞太郎の歌詞のルーツを知ることのできる重要なインタヴューをぜひ、ご覧ください。
TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」EDテーマ『真珠色の革命』
INTERVIEW : 伊東歌詞太郎
2021年11月26日に新シングル『真珠色の革命』を発売したSSWの伊東歌詞太郎。今作の表題曲は、TVアニメ『ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド』のエンディングテーマとのことで、アニメ主題歌を書く時の心構えや、楽曲に込めた思い、アニソンならではの曲作りへのこだわりを聞いてみた。
すると、話題は自然と昔から大好きだという作詞についての考え方や、スピッツを始めとしたJ-POPの先達たちへの愛へと波及していき、この人は本当に歌うことが好きなんだと思わされた。立て板に水を流すように話す彼の名調子に、終始現場が笑いに包まれていたこの日。音楽活動のみならず、執筆活動やレギュラーのラジオ番組を持つ彼ならではの”人を楽しませたい”という姿勢が存分に味わえたインタヴューであった。
インタヴュー&文: 荻原梓
撮影: 宇佐美亮
歌詞を30分以上かけて書いたことがない
──表題曲「真珠色の革命」はいつ頃できましたか?
伊東 : アニメのタイアップって結構前から話が来てるんですよ。たぶんアニメーションを当てはめるとなると制作の初期段階から曲があった方が制作側としても作りやすいんだと思います。だから曲そのものはかなり前に完成してますね。今回の場合で言うと「こんな感じの曲でお願いします」ということは1年くらい前から言われてたんですけど、実際に内容を把握していくのは7〜8ヶ月前あたり。そこから徐々に自分の中に作品の知識を入れ始めて、曲自体が出来上がったのは今年の4月頃だったと思います。それで実際にレコーディングする日まではその2ヶ月後くらいでした。
──曲に関してなにかオーダーはありましたか?
伊東 : 監督さんの意向にもよるので、完全に自由な場合もあるし、始めから細かく指定されてる場合もあります。今回に関してはプロットと脚本を読み込んで、そこから自分が思い浮かんだことを形にしていったというイメージです。例えばあらかじめキーワードが指定されていたりすることもあるんですけど、今回はそういうものは意識せずに作れました。
──曲から作り始めるのでしょうか? それとも歌詞から?
伊東 : いつも僕は歌詞とメロディが同時に出てくるタイプなのですが、今回は元々作っていた曲があって、それはそれで思い描きたいものがあったんです。その元々の描きたかったものと、今回の『ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド』の世界観との間に少し差があったので、後から歌詞を書いて寄せていったという流れでした。
──歌詞はすんなり書けましたか?
伊東 : すんなり書けましたね。いままで曲を作るにあたって難産だったことって一度もないんです。歌詞を書くのが好きなんですよね。あまりミュージシャンの方で歌詞を書くのが好きな人って少ないんですけど、僕は大好きで。それが僕の特徴でもあるんじゃないかな。自分は“思索の海”って呼んでるんですけど、その海の中に潜って取ってきて書くんです。そうすると、書いた歌詞に自分ってこういうことを思ってるんだ、本心ではこう思ってるんだと気付かされることがあります。曲から逆に自分を教わるみたいなことがあるんですよ。
──執筆活動もされてますが、歌詞を書くのと小説と書くのとで違いはありますか?
伊東 : 歌詞も小説も、根本の話をするとなにかを表現するという意味で同じなんです。だけどその過程ですよね。過程が圧倒的に違う。音楽を作るのはワープなんです。自分の描きたいものがあって、その目的地に「よし!」って飛んでいって一瞬で仕上げる。だから歌詞を30分以上かけて書いたことがないんです。早い時なんて、4分半の曲を4分半で作ったことがあるくらいで(笑)。そのくらい歌詞を書くのが好きなんですよね。でも小説の場合はマラソンです。ゴールに向かってひたすら1日10時間以上書くんです。それで1日頑張っても「まだここなんだ……」みたいな。そういう感覚が小説を書いてる時はありますね。