【BiSH】Episode83 セントチヒロ・チッチ「伝えていきたいことを考え続けると決めた」

昨年2020年12月に開催された約1年ぶりの有観客ライヴ〈REBOOT BiSH〉を成功させ、今年さらなる飛躍を予感させる“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。13周目となるメンバー個別インタヴューの第1回は、これまでグループの核として活動してきたセントチヒロ・チッチに昨年のライヴの秘話や、ソロでの活動も加速させる各メンバーへの率直な想い、春からの目標を伺いました。
INTERVIEW : セントチヒロ・チッチ

PEDROの武道館もアイナ・ジ・エンドの東京国際フォーラムも素晴らしかった。でもその勇姿を見届けつつも、ずっとBiSHのことを考え続けるセントチヒロ・チッチがいることを忘れてはいけない。溢れ出る〈REBOOT BiSH 2020.12.24@東京・国立代々木競技場第一体育館〉への言葉を聞くと、僕はそう思わざるを得ないんだ。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 井上沙織
写真 : 大橋祐希
歌を届ける覚悟を持たなきゃダメだなと思う。
──まずは久々の有観客ライヴ〈REBOOT BiSH 2020.12.24@東京・国立代々木競技場第一体育館〉の話から。チッチさんはずっと泣いていましたよね。
チッチ : その日に至るまでみんないろんな思いを抱えてきて、下手なことはできない、最高のBiSHを見せなきゃいけないみたいな思いを持っているメンバーももちろんいたと思うんですけど、私の中では何よりメンバー自身がこの時間を楽しんでほしいと思っていたんですよね。私もいち人間として何の感情も隠さずに楽しみたいと思っていたので、泣くのを我慢する気は一切なくて。上手く歌うことよりも、そのときの感情を向かってきてくれている人たちにぶつけたいなっていう気持ちが大きかったから。実際、私は紗幕越しに清掃員が見えた時点で泣き出してしまったんですけど(笑)。
──はい。幕が落ちたときにはボロボロ泣いていました。
チッチ : 上手く歌うことは大事だし、それももちろん合っているけど、1年弱の間が空いてやっと対面できる瞬間ってもう二度と来ないと思ったんですよ。だから自分の中でちゃんとそれを刻みたいなって。

──もう感情に任せて。
チッチ : そうですね。THE感情っていう日だった。もともと感情的になりやすいからそりゃ泣くだろうなとは思っていたんです。でもそれが私だから。お互いに会いたかったわけだし、ずっとできなかったことがやっとできた瞬間に爆発してしまったのかなって思います。一つ一つの歌詞がすごく自分に響いて、自分たちの歌に泣いている瞬間も多かったです。
──この日の“My landscape”は静かに始まる特別な演出でしたね。めちゃくちゃ格好良かったです。
チッチ : 〈REBOOT BiSH〉の演出は山田監督がしてくれて、“My landscape”はピアノバージョンでやるから新しい振り付けをしてほしいって言われたんです。あのピアノの静かに燃えている感じを立てない振り付けで表現したのはすごくアイナらしいなと思いましたね。アレンジが良かったから失敗したくなかったし、あの日の“My landscape”はすごく好きでした。
──特に印象的だった瞬間や曲はありましたか。
チッチ : “LETTERS”を歌っているとき、2020年で一番いい歌を作れて届けられているなってすごく感じたんですよね。届けたい人たちにやっと直接届けられたし、自分の言葉のように歌っているから感情がどんどん溢れてきて。お客さんの泣いている顔を目の当たりにしたら心が揺さぶられました。あとは“BUDOKANかもしくはTAMANEGI”ですかね。
──それはどうしてですか。
チッチ : あの曲は本当は武道館で歌いたい曲で、BiSHの大事なライヴのときに渡辺さんがセットリストに入れてくれることが多い、覚悟の曲でもあるんです。こういう世界になったいま、私たちがステージに立つ資格、歌を届ける覚悟を持たなきゃダメだなと思っていて。だから感動というより、ちょっとの怯えもありながら泣いているっていう感じがありました。
──なるほど。曲の持つ意味合いも少しずつ変わってきている。そんな中、先日アユニはPEDROで武道館に立ちましたよね。
チッチ : アユニの武道館とBiSHの武道館をよく比べられるんですけど、別物で。アユニが武道館に立ったからBiSHが武道館に立てるわけではないし、BiSHが武道館に立たないでなんでアユニが武道館に立つんだっていう意見もよくわからないし。アユニはPEDROとして戦ってきて、そこに覚悟を持って立っているわけだから、それに対して比べるものではないと思っていて。
──はい。
チッチ : 最近リリースした「東京」って曲が好きで、武道館で歌っているのを観たときに親みたいな気持ちになってボロボロ泣いてしまったんですよね。いままで頑張ってきたことがすごく伝わってきたから。いまアユニはいろんな人にすごく愛されているし、嘘のない感情をPEDROでぶつけているのもわかったから、観ていて気持ちよかったです。
──アユニ自身もPEDROとBiSHをすごく分けている感じがしていたんですけど、武道館でPEDROのスタッフ、BiSHのスタッフ、お客さんに向けて挨拶をしたあと、最後メンバーに挨拶したのは感動しました。
チッチ : 私も分けたいのかなと思っていたから言わないと思ったんですよね。最後はお母さんとお父さんかなと思ったんです。後々みんなにも聞いたら、みんなも言うのか… 言わないのか… ってずっとドキドキしていたらしくて(笑)。メンバーはBiSHのスタッフに含まれていると思っていたんですけど、最後に名前を呼ばれたときに滝みたいに涙がうわーってなりましたね。
──また涙が(笑)。でもそうなりますよね。
チッチ : すごく大事に喋ってくれていたし、私たちはアユニの心の支えになれていたのかなと不安だったし。ストレスになっていることもあったかもしれないけど、抱えている大きいものに立ち向かっているときに気を使わない私たちとの時間が大事だったのかもしれないなって。リスペクトの思いが伝わってきたからアユニらしいなと思いましたね。
