彼女にとって、世界で1番魅力的な“まほうのおんがく”——YMCKも絶賛! 歌う8Bitガール、谷本早也歌デビュー!
今やJポップはもちろん、ロック、ダンス・ミュージックなどあらゆるジャンルで聴かれる、“ピコピコ音”こと8-bitサウンド。そんな愛らしい音色に心奪われ、抜群のポップ・センスでもって楽曲を作り続ける8Bitガール、谷本早也歌が1stアルバム『まほうのおんがく』をリリースした。作詞・作曲・トラックメイキング・歌唱まですべて自らで行った本作は、童謡やアニソンを思わせる楽曲や、テクノ・ポップ名曲「ジェニーはご機嫌ななめ」や相対性理論のカヴァーなどヴァラエティー溢れる作品となっている。
今回彼女へのインタヴューでは、本作が出来るまでの過程、そして8bitサウンドへの愛を赤裸々に語ってもらった。ファミコン世代の方もそうでない方も楽しめる“まほうのおんがく”を、ぜひ彼女の発言とともにお楽しみいただきたい。
谷本早也歌 / まほうのおんがく
【Track List】
01. 日常 / 02. まほうのおんがく / 03. Labyrinth / 04. バイト / 05. 朝寝坊 / 06. 三角形 / 07. 戦闘モード / 08. せんせいあのね / 09. Race / 10. ジェニーはご機嫌ななめ / 11. 雨上がり / 12. Tick Tack / 13. パチェリャーラ パチェリャーラ / 14. パン屋さんの食パン / 15. 箱の中の少女 / 16. Forest / 17. 帰路 / 18. たまたまニュータウン / 19. SAKURA / 20. Starry Night
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 199円(税込) まとめ購入 1,799円(税込)
mp3
単曲 150円(税込) まとめ購入 1,500円(税込)
INTERVIEW : 谷本早也歌
彼女(谷本早也歌)は、とても素敵に変態だと思います。だって、世界で1番魅力的な音は、8bitって言うのですから! 大変! これは、ハイレゾ配信を推進してきたOTOTOYにとって、脅威の存在だっ! ってことで、闘いを挑んだら、その愛くるしさにノックアウトしてしまいました…。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 鶯巣大介
写真 : 大橋祐希
8bitの音って、私は何時間聴いても飽きないんです
——谷本さんは8bitサウンドのどんなところが好きなんですか?
私も自分でなんでこんなに好きなのか分からないんですけど、世界で1番魅力的な音だと思っているんです(笑)。本当にかわいいなって。8bitの音って、私は何時間聴いても飽きないんですよ。かわいすぎるんですよね、いつ聴いても。
——あはは(笑)。すごい愛情ですね。好きになったきっかけは?
高校生のときにYMCKさんを知ったんです。昔からファミコンのゲームを兄がよくやっていたので、その後ろで流れるBGMはよく聴いてたんですけど、まさかそれに歌をつけるっていうグループがいるって知って本当に衝撃を受けたんですよ! そこからどはまりしちゃって。
——ゲームは好きだったんですか?
私は自分がやるほうじゃなくて見るほうが好きで。っていうのも私はRPGとかでモンスターを倒せないんですよ。私なにかを殺すっていうのがすごく苦手で。だからRPGをプレイしてる兄を見てるのが好きだったんです。
——いまお兄さんの話が出ましたけど、谷本さんの実家は音楽一家だそうですね。
はい。母親が音楽家でピアノの先生でしたり歌の先生をしています。父親は、昔カシオペアが好きで、そのコピー・バンドを趣味でやっていたっていう経験があって、ピアノは弾けるんですよ。いまもたまに弾いてたり。それで兄は昔からピアノがほんとに上手で、本当に天才だと思っていて。いまは東京藝術大学を卒業して、指揮者とかピアノ伴奏をしています。ずっと小さいときから音楽のない世界は考えられなくて、常に自宅ではピアノの音とか、歌だったりがずっと流れていた環境でした。
——谷本さんは音楽性みたいな部分で、家族の誰かの影響を受けていますか?
本当に誰の影響を受けているのかわからなくて。自宅ではわりとクラシックを聴いてきたはずなんですけど、私は中学生のころにBUMP OF CHIKENにどはまりしてしまったんですよ。なのでバンド・サウンドにのめり込み始めて。高校時代もいろんな音楽を知りたくて、音楽を吸収するばかりでした。でも地元の和歌山県はCDショップもあんまりなくて、インターネットだけが頼りだったので、ネットサーフィンでYMCKさんも知りましたね。
自分の曲が童謡みたいな存在であったらなと思います
——なるほど。そんななか谷本さんが1番最初に作曲したのはいつ?
最初は小学生のとき。音楽の授業中だったんですけど。私はピアノがすごく弾けるってわけではないんですけど、自宅にピアノを弾ける環境が常にあったので、なんか適当に弾きながらメロディを作るっていうのはすごい好きで。その当時は、特に歌詞とかは付けてなかったんですけど、勝手に即興で弾いてみたりとかしてましたね。
——早いですね(笑)。いまはどんなときに曲ができるんでしょう?
本当にふとしたときですね。常に曲のことを考えているんですけど、電車乗ってたら、電車の曲作ろうとか思ったり、料理しててサランラップを見てたら、サランラップの曲を作ったりとか。日常生活のなかで、なにかあることは全部音楽にしようとしてる自分がいます。お風呂入っていたりとかしてパッと思い浮かんだら、すぐパソコンと向い合って、もうひたすら作り続けるみたいな感じです。
——日常と密接に結びついているんですね。たしかに今作は20曲と曲数自体は多いですけど、どれも平均2分くらいですし、題材も身近で親しみやすい印象を受けました。
そうですね。私が表現したいこと、常に求めているのはやっぱりかわいい音楽、童謡みたいな音楽っていうのが主としてあって。例えば童謡の「ぶんぶんぶん」とかってすごい短いじゃないですか。でも世間では子供から大人まで、すごい親しまれていますよね。そういう楽曲が作れたらいいな、自分の曲が童謡みたいな存在であったらなと思います。
——谷本さんはミュージシャンになりたいっていう気持ちは昔から強かったんですか?
音楽と関わりたいって気持ちが漠然とはありましたね。子供が好きだったことや、童謡を聴いて育ったこともあって、子供と音楽を融合させるっていう形が保育を通してできたらいいなとも思って、愛知県の幼児教育の短期大学に進学するんです。それで週1ペースで童謡を作るっていう作曲ゼミに入っていたり。みんなの前で発表したりとか、実習行ったときは子どもたちの前で、自分の歌を歌ったりとかをしながら、自宅ではDTMでピコピコ鳴らしていたっていう感じでした。
——当時やっていたことは、全部いまと繋がってはいるんだ。
そうですね。それで通っていたのがすごく特殊な学校、お昼までしか授業がなかったんですよ。お昼の12時に授業が終わって。そこからあとは自分の好きな時間っていう感じだったんですよ。なので、すごく自由な時間があって、そこで音楽作りとか、あと私は手芸も好きなので、そういうもの作りにひたすら没頭する大学時代でしたね。
——それで卒業後に上京すると。
はい。大学を卒業するタイミングで、保育の仕事をしようか、それともやっぱり音楽か、元々進路にすごく迷っていたんです。そのときは音楽と関わりたいっていう本当に漠然とした思いだけがあったんですけど、でも音楽だけで生きていけるっていう自信もないというか。あと2ヶ月で卒業式ってときにも、全然就職活動してなくて、進路が決まってなかったんですよ。でもそんなタイミングでおばけさん(レーベル・オーナー)からお話をいただいて。それをきっかけに、じゃあとりあえず東京に行こうと思いました。
「みんなのうた」に起用されたいって夢がずっとあって
——じゃあ出てきて半年くらいですか?
いや、もう上京して3年目です。
——あれ? CDを出そうという話で上京したのに、そこから3年もかかっているんですね。
そうなんです。それは完成するまでに私に迷いがあったからで。私はエレクトロ・ポップとか、テクノ・ポップとか、もちろんレーベル・オーナーであるDJおばけさんの音楽ユニットHer Ghost Friendも好きで、そういう音楽も作りたいっていう理想があったんですね。それで制作の初めに打ち合わせしたときは、今作みたいなチップチューンで固めるっていう感じじゃなくて、いろんなジャンルを含めたアルバムにしようっていう話だったんです。
——でも今作は全体的にピコピコしたアルバムになっていますよね。
私はLogicで楽曲を作っているんですけど、ソフトのなかには無数の音の種類があるのに、どうしてもMagical 8bit Plug(※)の音でしか曲を作れなくなっちゃったんですよ。やっぱり8bitの音がどんな音よりも飛び抜けて好きなんですよね。それに改めて気づいたというか。でもアルバム制作のためには、それ以外の曲も作らなきゃいけないっていう思いがあって。なので1年目は8bit以外の音で曲が作れない自分に悩みました。それで1年が過ぎちゃって。
※Magical 8bit Plug : YMCKのYokemuraによって開発されたプラグイン形式のソフト・シンセ。往年の8bitゲーム機のようなシンプルな音を作ることが可能。
——ほかの音で楽曲を作ってみても、なにか違うと。
作ろうとして頑張ってみたんですけどね。あえてMagical 8bit Plugを使わずに曲をつくるっていう課題を自分に課して、曲を打ち込むんですけど、途中で止まっちゃうんですよ。本当は上京した年に作品をリリースする予定だったんですけど、曲を全然おばけさんに送れなくて。それで私はCD制作を断られる覚悟で「私この音じゃないと曲が作れません!」って電話をしたんですよ。そうしたら、おばけさんは「でもCDを作りたいんだよね」って言ってくださって、それでチップチューンっていうジャンルで行こうと決まったわけなんです。そういう1年目でした。でもまた次の年に新しい悩みが出てきて。
——なかなか完成しないですね(笑)。今度はなにが?
チップチューン・アーティストとして活動している人たちは、本当にゲームボーイ実機とか、ファミコン本体だったとか、ちゃんと制限されたなかで、その音だけを使用して楽曲を作ってるんです。でも私はLogicを使って、しかもなかにはファミコンの音だけじゃなく、ちょっと別の音も入れたりしてるんで、それを正統なチップチューンとは呼べないんじゃないかと思ってしまったんです。
—— チップチューン原理主義というか、ジャンルのルーツ的なところで思い悩んでしまったんですね。
それでゲームボーイで動作するNanoloopっていうシーケンサー・ソフトがあるんですけど、それで曲を作ることにすごくはまってしまって。「Nanoloopで作った曲こそがチップチューンだ」と思うようになったんです。チップチューンのアルバムって言ってリリースするなら、Nanoloopで作った曲だけで、まとめるべきなんじゃないかと思い始めてしまって…。
——なるほど。
でもすでにその時点でCD制作は始まっていて、このCDを作るのに40曲くらい持ってって、みんなで選曲会をしていたんです。それで選曲が終わったあとに、ほんとにこれでいいのかな… って。本当に私面倒くさかったんです(笑)。そう思いながら、おばけさんとかに相談してて。
——でも結局吹っ切れたというか、自分が思い描くチップチューンだけにはこだわらなかった?
そうですね。結局自分で納得できたというか。主にはMagical 8bit Plug、要はファミコンの音を使って作った曲がほとんどなので、その音のジャンルをたどれば、これはチップチューンと呼んでもいいかなと。とにかく私は自信がなかったんですよ。このアルバムに入ってる曲に対して、すごく自信がなくて、これをチップチューンって呼ぶこと対しても自信がなかった。それもあって、リリースまで踏み出せなかったんですけど、なんかそれ以上におばけさんから返ってくる言葉とか、周りの人の反応とか、それで自信を持たせてもらったというか。それが大きいですね。
——8bitサウンドへの愛情が大きすぎるゆえの悩みと戦ったアルバム制作だったんですね。
はい。本当に集大成です。このアルバムには、大学時代にGarageBandで制作をしていた時代の曲から、社会人になって悩み続けた時代まで、ここ5、6年のいろんな曲が入っています。なかには「Forest」っていう8bitサウンドではないものも入っていたりして。上京してLogicを買ったばかりのときに、試しに作った曲なんですけど。なのでNanoloopを使って作った曲も入りつつ、Logicで作った曲も入りつつ、GarageBandで作った曲も入りつつ、本当に私そのもの。なにも隠さないというか、私が作った音楽ですって表現できています。
——今作は3年かかりましたけど、話を伺う限り、谷本さんは多作ですよね。次の作品もすぐ出していくんですか?
いろんな私のいろんな音楽があっていいんだなと思えたので、リリースできたらいいなって思います。アルバムを作ることに対して、型にはめないと1枚の作品にならないと思っていたので、そうじゃなくてもいいってことに気づけたことで、絡まっていた糸がするする解けたというか、いまもう更に自由に音楽を作れる感じがあるんです。
——今後どんな活動をしていきたいですか?
ライヴもやりたいですし、誰かに楽曲提供もしたいです。それに私は童謡とかが好きだったので、自分の楽曲が「みんなのうた」に起用されたいって夢がずっとあって。なのでそれが次の目標です。大きな夢としては、やっぱり子供から大人まで、親しいみやすい童謡的存在になれる曲を作りたいなって思いがあるので、誰かに楽曲を提供したりとかだったり、自分で曲制作をするうえでも、そういうことを考えていきたいです。
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チップチューンのジャンルにおいて、世界的に活躍する音楽ユニット、YMCK。2004年11月にウサギチャンレコーズからリリース、累計4万枚以上の大ヒットを記録したYMCKの記念すべきインディーズ・デビュー・アルバム。レトロゲーム・サウンドにキュートなガール・ヴォーカルが乗ったPOPなサウンドが特長の本作。ファミコン世代の人には懐かしく、最近の人には新しい、ポップでキュートな新感覚ピコピコ・サウンド!
GAME BOYSが前作のREMIXアルバム『1.5』から3年の沈黙を破りファースト・アルバムを発表! ジャンル問わず自宅のジャンク・レコードからサンプリング(多くは80年代歌謡、AOR、ゲーム音楽、映画OST etc.)されたという、音数少なめで脱力気味なトラックがクセになる! その懐かしくも新しいセンスは、HIP HOPに馴染みのない方にも存分に楽しめる内容。
Her Ghost Friend / るきんふぉーわんだー(24bit/48kHz)
一切のシーン等との関わりなく突如出現し、エレクトロ・ポップ・ファンの心をわし掴みにしたShinobu OnoとDJ ObakeによるユニットHer Ghost Friendのセカンド・アルバム。緻密さを増したエレクトロニックなサウンド・プログラミングと、空想的で物語性を帯びた詩世界をふわり漂う愛らしいヴォーカルが、まだ見たことの無い宇宙へと誘う。
LIVE INFORMATION
2015年8月3日(月)@下北沢mona records
2015年8月14日(金)@愛知DRPC特設野外ステージ
2015年8月29日(土)@岡崎CAM HALL
2015年9月12日(土)@大阪 ロフトプラスワンウエスト
PROFILE
谷本 早也歌
音楽一家の長女として生まれ、幼少期から主に童謡を聞いて育つ。小学生の頃から作詞・作曲に興味を持ち、ピアノで即興作曲をするようになる。
兄の影響でゲーム音楽を好んで聞くようになり、高校時代に出会った8bitミュージック・ユニット「YMCK」の音楽に衝撃を受けてチップチューンという音楽ジャンルの存在を知る。そこから、電子音楽への興味が湧きDTMを独学で開始。
主にYMCKが提供しているMagical 8bit Plugを使用して他のアーティストのアレンジ作品や、オリジナル楽曲を制作。現在では、Logicだけではなく、任天堂ゲームボーイの名作音楽ソフト「nanoloop」も使用して、ポップでキャッチーな音楽を作り続けている。nanoloopでの楽曲は「i my me mine」という名義で作品展開中。
自身をモチーフにした“わたしちゃん”というキャラクターも存在し、様々なアーティストがわたしちゃんを描いている。