【BiSH】Episode60 アユニ・D「今年はいろいろ初挑戦してみたいことがある」
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2018年3月発売のメジャー3rdシングル『PAiNT it BLACK』がオリコン・ウィークリーチャート1位を獲得、日本レコード大賞新人賞を受賞し、12月22日には幕張メッセ9・10・11ホールにて2万人規模の単独ワンマン公演〈BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL “THE NUDE”〉を成功させた"楽器を持たないパンクバンド”BiSH。2019年も止まらぬ勢いで走り始めたBiSHに9周目となる個別インタヴューを敢行。第3回は、アユニ・Dの声をお届けする。
『北斗の拳 35th Anniversary Album “伝承”』より、 BiSH「Small Fish」を配信中
INTERVIEW : アユニ・D
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BiSHが急成長し続ける理由は、アユニ・Dが覚醒し続けるからだ。PEDROでのベース・ヴォーカルは、さらに彼女の覚醒を後押ししているため、そちらも見逃せない。
そんな中、不安な便りが…… アユニ・Dは、合宿オーディションにいくことが心底嫌だそうです。大丈夫かしら…… 頑張って欲しいですね。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 井上沙織
写真 : 外林健太
グルーヴを感じる、ということを学べた気がします
──幕張メッセのライヴ、素晴らしかったです。自己採点したら何点ですか?
アユニ・D(以下、アユニ) : 100点。
──おお!
アユニ : いままでのライヴで1番楽しかった気持ちが強くて。ステージング、キャパ、生バンド、映像、センターステージと初めてのことも多くて、精神的にも体力的にも追いこまれていたけど、そのぶん達成感も大きかったです。
──当日までの練習は大変でしたか。
アユニ : センターステージ用の振り付けに全部変えなくちゃいけなくて、どうなることやらと思ってました。1曲目「stereo future」の走る場面で、本番の何日か前までは500メートルって聞いていたんです。だからみんなで「1サビまでに500メートル走るの?」「無理じゃない?」って話していて。
──500メートルは無理でしょう(笑)。
アユニ : スタッフさんの読み間違いで本当は50メートルだったんですけど、私たちも規模感がわからなかったので「幕張ってそんなに大きいんだ!」って思っていたんですよ(笑)。そういうギリギリな感じが本番直前まで続いてましたね。
──幕張で印象的なシーンはありますか。
アユニ : 「サラバかな」でお客さんの顔を見て泣きそうになりました。それまで「サラバかな」はそこまで好きじゃなかったんです。曲の爽やかな感じとかにそこまで感情移入できなくて。でも幕張では後ろのほうまでお客さんが見渡せて、こんなにみんな叫びながら顔をくしゃくしゃにしているんだってことがわかって。その光景がとてもよくて、はじめて「サラバかな」を好きになりました。ちょっと涙が出ましたね。
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──ハシヤスメの茶番はどうでしたか?
アユニ : 最近副音声を録るためにみんなで映像を観たんですけど、声もでないくらい呆れたというか、しばらく無の時間が続いていました(笑)。最初の15分くらいシーンとしていて「これは何の時間なんだ!?」って。
──ソロの約束をとりつけたくだりなんかすごかったですよね。
アユニ : 最後までつまらなく終わるのかなと思っていたら、本番はやる女・ハシヤスメだったのでよかったです。
──幕張を経験して、自身で成長したと思うことはありますか?
アユニ : グルーヴを感じる、ということを学べた気がします。自分のことで精いっぱいにならないように、自分のことだけに集中しないように、メンバーの細かい体の表現をみたり、生バンドとの距離感を意識したりして。センターステージで自分の視界にメンバーがいないときでも、みんながいてくれることを考えながらできました。
ギャング・オブ・フォーをめっちゃ聴いていて
──幕張後、レコード大賞やバラエティ番組などテレビへの出演も増えてきましたよね。そういう活動についてはどう感じていますか?
アユニ : 人目にさらされることが多くなったので、何を言われてもやりたいことをやろうと思っています。それこそテレビに出たり、メンバーそれぞれがいろんなジャンルで活動したりしているので、いろんな考えの人が私たちを知ると思うんです。そんな中で、私たちはやりたいことをやっているという意思を出していかないとダメだなと思います。
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──アユニ個人としてはどうなっていきたいですか。
アユニ : 芸能人になりたいわけではないので、ライヴ、音楽が大事ですね。
──ベースはいまも続けているんですか?
アユニ : ほぼ毎日弾いてます。耳コピして好きな曲を弾いたり、のちのち作曲したいと思っているのでDTMを習ったりしていて。
──ええ! チッチはドラムを習ってるって言ってましたけど。
アユニ : チッチとは「ふたりで何かやりたいね」って話をしていて。いつか遊びででもやれたらいいなあ。最近は音楽もすごくたくさん聴くようになって、掘り下げていくと海外の昔のバンドが出てくるんですよね。チッチが詳しいので教えてもらったりしていて、最近だとドリーム・ワイフっていう女の子3人組とか、昔のものだとギャング・オブ・フォーをめっちゃ聴いていて。
──この前は中尾憲太郎さんにも教えてもらっていたよね。
アユニ : いまナンバーガールが世界一好きなバンドなので本当に嬉しかったです。PEDROを始めて田渕(ひさ子)さんきっかけで聴いて、そこからどっぷりはまりました。
──そしてナンバーガールの復活も決まって。
アユニ : きっとPEDROで「透明少女」をやっていいか聞いたときには、ナンバーガールの復活は決まっていましたよね? よくその状況でOKを出してくださったなと思って。夢みたいであんまり現実味がないんですけど、楽しみです。
「逃げるほうが勇気いるよ」って言われて
──さて、合宿に行くじゃないですか。
アユニ : (食い気味で)嫌ですよホント! 助けてくださいよ!! 渡辺さんに会うたびに「次の合宿はアユニだな」って言われてたんですけど、どうせいつもの嘘だろうなと思っていたし、私はずっと「合宿に行くことになったら自分で船を予約して逃げるんで」って宣言していたんです。だから合宿参加者の発表のときも絶対私じゃないだろうと思いながら聞いていて。そしたら「BiSH、アユニ・D」って……。みんなが意気込みを語っている中、私は全人類を睨み倒してました。話を振られても私は意気込みとかないし、チッチが代わりに喋ってくれて。
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──今もふざけんなって思ってます?
アユニ : はい。WAggの子たちは自由参加って言われても「私たちは全員出ます!」って感じで、オーディション候補生の子たちも気合いを入れて来るから、「そんな大人数の中でなんで私がひとり行かなあかんねん」って気持ちで。私はマイナスなことしか言わないのでまたどんどん嫌われていくし、24時間監視されて「こういう人間だったのか」ってバレるだろうし。それを隠すつもりもないので自分にデメリットしかなくて。今でも理解できません。
──去年モモコが参加しているのをどう思っていましたか。
アユニ : ずっと胸が痛かったですね。ただモモカンは本当に優しいので、候補生の身になってダンスを教えてあげたりしていて。私にはそういうのできないなって思います。
──今年はアユニがやらなきゃいけないんですよ。
アユニ : どうなりますかね。でもモモカンに「唯一誰も来ない部屋があって、本当にダメだったらそこに逃げ込めばいい」って教わったので、その裏技を使います。
──そんなこと言ったらみんな探すんじゃないですか?
アユニ : いままでの映像もそうなんですけど、宮地(エリザベス宮地)さんからうまく逃げてて、「近づくな、来んな」オーラを醸し出していると本当に宮地さん来ないので。それがうまくいけば。あと、共同生活が嫌なんですよね。お風呂に全員で入るとか洗濯機を回せないとか。そんな地獄の合宿によく候補生の方は応募しますね。
──地獄の合宿(笑)。
アユニ : びっくりですよ。結果はどうであれ、全員幸せになってほしいです。これ全部書いていいですからね! 全員に私の意思を知られたい。
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──清掃員の反応はどうですか?
アユニ : 「合宿頑張ってね」って言われるんですけど、絶対に「わかった」とは言わずに「頑張らないよー!」って答えてます。
──船で逃げ帰るのも見てみたいですけどね。
アユニ : いままで逃げた人っていないですよね。でもそれをモモカンに言ったら「逃げるほうが勇気いるよ」って言われて、確かにそうだなって。逃げるのにも勇気が必要ですもんね。
──合宿を乗り越えてひとつ成長したアユニを見られるのを楽しみにしていますよ。
アユニ : 私多分成長できないですよ。意気地なしだから結局逃げ出すこともできずに終わると思います。もちろんやれるだけやろうとは思ってますけど。
夏がすごく好きになりました
──4月からは〈LiFE is COMEDY TOUR〉が始まりますが、どんなツアーにしたいですか。
アユニ : 幕張で発表されてまだまだ先だと思っていたらもう来月のことなので焦ってます。昨年末でBiSHの知名度が上がったと思うので、初めて来る人にももっと興味を持たせられるようなライヴができたらいいなと思います。
──BiSHとして、今後の展望はありますか?
アユニ : 去年夏フェスにたくさん出させていただいたので、はじめの一歩で終わらないで、また今年も出られたら嬉しいです。夏は大嫌いだったんですけど、去年夏フェスにたくさん出て、夏がすごく好きになりました。
──個人としてはどうですか。
アユニ : PEDROはこれからも楽しみですし、曲も作りたいと思っているし、今年はいろいろ初挑戦してみたいことがあるんです。メンバーもやりたいことがあるので、やりたいことが表現できる夏になればいいですね。
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前回の記事はこちら
PROFILE
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人からなる楽器を持たないパンク・バンド。BiSを作り上げた渡辺淳之介と松隈ケンタが再びタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当する。ツアーは全公演即日完売。1stシングルはオリコン・ウィークリーチャートで10位を獲得するなど異例の快進撃を続けている。