15周年のneco眠る、新作アルバムはあえて無責任につくった?! ──『Typical』を独占ハイレゾ配信開始
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今年2017年に結成15周年を迎えた“neco眠る”。そんなアニバーサリー・イヤーに、彼らから新作アルバム『Typical』が届きましたよ〜!! 新メンバー・おじまさいり(Key from CASIOトルコ温泉)加入後初、そして実験性とポップ・センスが高次元で結合した前作『BOY』以来、実に3年ぶりとなるフル・アルバムとなっております!!!
初期作を担当していた森雄大(Gt)、前作で全曲の作曲を担当したBIOMAN(Synth)、栗原ペダル(Gt)、そして新メンバーのおじまさいりがソングライティングを担当、さらにスチャダラパーやロボ宙、安部勇磨(never young beach)なども参加し、各人の個性が爆発した10曲を収録! そんなバラエティに富んだポップで踊れる今作『Typical』を独占ハイレゾ配信を開始するとともに、メンバーの森雄大、おじまさいりへのインタヴューを掲載します!
3年ぶりフル・アルバム! ハイレゾはOTOTOYだけ!
neco眠る / Typical
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 432円(税込) / アルバム 2,376円(税込)
【収録曲】
1. Typical Step
2. 斗喪駄地是露
3. ひねくれたいの feat.スチャダラパー+ロボ宙
4. XLT
5. 木
6. SAYONARA SUMMER feat.安部勇磨(never young beach)
7. いっしょに帰ろう
8. Empty Moan
9. だるだるのおうどん
10. 毎日流れる
INTERVIEW : neco眠る(森雄大、おじまさいり)
neco眠るを聴くと銭湯に行きたくなるな〜。届いた新作『Typical』は変わらずにゆるく、でもこだわりは強くて、やっぱり最高にneco眠る〜。そこに不思議とゆるいおじまさいりさんが加入したから、もうneco眠るは、最高にだるだるのおうどんなんだと思います。neco眠るが日本にいて良かったなぁ〜!
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
文&構成 : 鈴木雄希
写真 : 酒井麻衣(冒頭アーティスト写真以外)
自分がやってることに無責任になれた
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──おじまさんの加入は、いつごろ?
おじまさいり((Key from CASIOトルコ温泉 / 以下、おじま) : 私は去年(2016年)の秋の京都メトロ〈感染ライブ〉からです。
──森さん的に「この音が欲しい」みたいな感じだった?
森雄大(Gt / 以下、森) : 音というか人ですよね。正式メンバーにキーボード担当のneguraくんがいるんですけど、ここ数年はずっと本業が忙しくて来れなくなっていて、幽霊部員的な。ライヴはサポート・メンバーに入ってもらって活動してたんですけど。今年15周年なのでそれに向けてバンドとしてどうやっていくかをBIOMAN(Synth)と栗原くん(栗原ペダル/Gt.)と話してて「正式メンバーとしてキーボードを誰か入れよう」ってなったときに、それはもうさいりちゃんでしょうと。
森 : 単純によく知ってる人だし、CASIOトルコ温泉とかEMERALD FOURとか彼女がやっている音楽を聴いてセンスが合うのはわかってた、昔ドクロズのサポートでキーボード弾いてたイメージもあって。あとメンタルが強そう。
おじま : 私が1番移動に強くて、丈夫な方なんですよ(笑)。
──おじまさんから見て、neco眠るはどんな雰囲気なんですか?
おじま : 私、何個か他のバンドに入っているんですけど、全部打ち込みに歌が乗ってる感じなんですよ。だから、生で演奏してるのに乗せるっていう感覚が全然違って、それがかなり新鮮でした。
──なるほど。2017年で15周年ということですが……。
森 : 単純に、15周年という理由を付けないと何もやらないし、すぐダラダラしてしまうので、やるならちゃんとやろうと思って。
──15周年で決めたことは、リリースをするってこと?
森 : そうですね。1年の流れを決めようと。安部(勇磨)くん(never young beach / 以下、ネバヤン)とスチャダラパー(以下、SDP)、ロボ宙さんを入れたシングル(「SAYONARA SUMMER / ひねくれたいの」)とかもそう。もちろんさいりちゃんが入ってもらったこともやし、あとツアーですね。
──それまでの2、3年は、比較的ゆったりと?
森 : そうですね。『BOY』を出したときも、次はすぐリリースしようみたいな事言ってたんですけど、結局はふわっとしてしまって。みんな仕事とかそれぞれの活動もいろいろあって、結局はダラダラしてしまうという、いつものルーティンに陥りそうなところを、「これはあかん」と思って動き出しました(笑)。
──バンドとして、大きい動きや音楽的に新しいことにトライしたいということはあった?
森 : まったくないですね(笑)。
おじま : えっ(笑)。
森 : それよりも単純に作品を作るという。前のアルバムは全曲BIOMANがつくっていて、自分的には作曲スランプにも陥っていたし、どうしていいかわからないみたいな感じで……。
──なるほど。
森 : そのときちょうどレーベル(〈こんがりおんがく〉)も忙しくなって来て、レーベル業務や録音とかの裏方のほうに手一杯になったりとかもしてましたね。でもそっちの方が性に合ってるなというのがずっとあって。自分のことよりも人のことばっかりやっていたり。
──そのスランプっていうのは改善されたんですか?
森 : 改善されたのかな(笑)。
おじま : でもやっぱり、森さんがつくった1曲目(「Typical Step」)とか、neco眠るっぽいですよね。
──それを訊くとスランプから脱出したっていう状況なのかとも思ってしまうんですが。
森 : 脱出はしてないんじゃないですかね(笑)。ただ、自分がやってることに無責任になれたというか。
──無責任! スランプになったのはなぜなんですか?
森 : 初期の頃はたとえばゼロ世代みたいな周りの大阪のカッコいい先輩たちの独自の音楽がたくさんある中で自分は何をやったらいいのか、やれるのかを考えてようやく行き着いたのが、いまのneco眠るの原型で。自分なりの回答というか。
おじま : ああ、そうか。
森 : それで運よくいろんなところに呼んでもらえたりしたんですけど、メンバーにサラリーマンがいたりとかして、実際、土日しか動けない状態のまま、ライヴばっかりやって、バンドとして全く中身は前進してないのに忙しくなっていくという状況もきつくて。何をやっていいのか分からなくなってきてたのもありましたね。
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おじま : なるほど。
森 : もう自分達がやってることに飽きたというか、おもしろくなくなってきた。ゆっくり向き合ったり作ったりすることもできず。メンバー脱退もあって休止しました。休んでいる間に同世代のceroとかoono君(oono yuuki)とかいろんな人と出会って、自分達よりもかっこいいことをやっている人たちが一杯いるんだって思ったんです。そのうえで何をやったらいいのか、みたいなことをまた考えてしまって。別に気にする必要ないんでしょうけど。
おじま : そうだったんですね。そういうところはCASIOトルコ温泉と一緒です(笑)。
森 : 何となくわかる(笑)
──特にゼロ世代の時代は特徴的でしたからね。
森 : 自分だけにしかできないことを、いかにやれるかみたいな。
──森さんの中ではいまも悩んでいるんですか?
森 : 全然はっきりコレとは定まってはいないですね。でもただ今回はちょっと無責任に、メンバーがつくった曲もあって、自分のつくった曲もあって、バンド内のバランスというか、割とつかみかけたかなというのはすごくあります、メンバー間の曲のやり取りとか、もうちょっとやりたい事もできて来て。こんなことリリースの前から言うのはあれですけど、次のアルバムが楽しみだな、みたいな(笑)。
おじま : (笑)。でもなんか確かにそういう手ごたえはありますね。
別にインスト・バンドをやろうと思ってやってる訳じゃない
──話を聞いていると、さいりさんの加入が大きいのかなと。
森 : うん。バンド内にいい風が吹いた感じがする。
おじま : もしかしたら「外の誰かが入る」って行為が大事だったのかもしれない。外の人が入ってきたら内輪のようなものが、ちょっと開くじゃないですか。それでみんな「どう整えよう」とかいうことが自然にできて、アルバムに繋がったのかもしれないです。あと同性じゃないってのも大きいかもです。
森 : そうそう。はじめて女子が入ったというのも結構大きかったですね。
──ちなみに作曲担当のメンバーは?
森 : 森、BIOMAN、栗原ペダル、おじまさいり、ですね。
──今回は、また急にバランスが変わりましたが。
森 : 単純にみんな曲をつくれるから、みんなでつくろうかって感じでしたね。
──アルバムのコンセプトみたいなのはあったんですか?
森 : 特にはなかったですね。今年中に出すぞ! ということだけですね。
──SDPや安部くんも参加されていますが、選びたかった理由は?
森 : 好きということはもちろんなんですけど、単純に合うだろうなと思って。
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──じゃあ安部くんの方は歌モノ、SDPの方はラップっぽいものをつくりたいと。
森 : SDPの方はBIOMANの曲なんですけど、SDPも僕らもポップなイメージがすごい強いと思うんです、その2組が一緒にやったら絶対ポップな踊れたりするような曲が想像できるし期待もされると思うんですけど、そうではない曲にしたかったんだろうなって。それで最初こっちでデモをつくって送ったときに、SDPから「ちょっとむずいからラップしにくいわ」って(笑)。だけど「逆にその難しさをラップにする」って言って歌詞を送ってきてくれたんです。
だからなんかSDPの中のポップな一面だけじゃなくて、ラジカルな部分というかひねくれた部分を僕らなりに引き出せたのではないか、と勝手に思っています。歌詞でめちゃくちゃneco眠るを意識して書いてくれて、本当にわかってくれているというか、ありがとうございますっていう感じです。
──「SAYONARA SUMMER」は?
森 : 最初に僕がデモをつくってたんですけど、まとまらなさすぎて一旦データをBIOMANに投げたんです。そしたら「安部くんの声がいいから、喋らせよう」って、デモ・バージョンには栗原君の語りがすごい入ってるんですけど。大分迷走してワケわからないものが出来上がって(笑)。
おじま : そうそう。
森 : サビのメロディだけはずっとあって、他が「あ〜、だるい」「ねむい」「冷やし中華が食べたい」みたいな語り(笑)。「大丈夫かな…」みたいに思いながら安部くんに送ったら、やっぱり大丈夫じゃなかったみたいで、ちょっとメロウになった感じのものが返ってきました(笑)。
──だいぶメロウだよね。
森 : 僕が初めてネバヤンを知ったのは、YOUTUBEにあがってた「夏がそうさせた」のデモだったんです。それで一発で好きになったし、自分の中でも“夏”っていうネバヤン像みたいなものがあったんですね。その終わりの感じがやりたいなと思って「“夏の終わり”がテーマの曲を書かへん?」と声をかけました。
──実はヴォーカル曲が久しぶりなんですよね。ヴォーカル曲をやりたいタイミングとかあるんですか?
森 : SDPと安部くんとも、いつかやりたいなと話はしていたので、タイミング的にもいまかなと。
──インストに対して森さん的こだわりとかはあるんですか。
森 : いや、まったくないですね。ただ、音楽をはじめるときって弾き語りから、バンドから…… みたいにいろいろあるじゃないですか。僕はギターやバンドもやってたけど、最初MIDIの打ち込みから曲をつくるということをはじめたし、自分の中で歌うという概念がなかったんですよね。
おじま : えー、そうなんですね!
森 : 別にインスト・バンドをやろうと思ってやってる訳じゃないし。そもそもカラオケとかもいかなくて自分の声もあまり好きじゃないというのもあるんですけど。
おじま : 聞いてみたいですけどね。最後の1曲にボーナス・トラックで、1分後ぐらいに歌う曲入ってるみたいな(笑)。
味の素でつくったカレーみたいな音楽
──(笑)。おじまさん的には、いろんなバンドをやられてる中で「neco眠るのここが難しい」というものはありますか?
おじま : うーん。まだ私は修行みたいな気持ちで入っていて。そもそも楽器できないんです。他のバンドはヴォーカルが多いし、スタジオ入った時に、打ち込みじゃなくて鳴ってる音に合わせて弾くことに違和感があって。自分の音が、ピュッて飛び出して、ワアーって思ってる間にめちゃくちゃ間違えるみたいな。私はちょっとまだそういう段階ですね。もう少ししたらまた違う風に考えられるんじゃないかなとは思うんですけど。
──うんうん。
おじま : 私、みんなよりも出来栄えが悪いとかに対しての凹む時間が短いんですよね。髪型を失敗しても、次の髪型に変えたらみんな前の髪型忘れるじゃないですか。失敗してもそういう風に思うようにしていて。
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──neco眠る、すごいメンバーが入りましたね(笑)。
森 : はい(笑)。あと技術的なところよりも、僕らって音数多かったりシンセが2人いたりするので、音色選びを任せられるのは結構でかいですね。特にインスト・バンドは同じフレーズでも音色によって印象が変わることもあるので。パソコンでつくったデモの音色を、何も言わないでも、楽器で鳴らした時に「あ、それOK」ってなる速さとかセンスが合うかどうかは、めちゃくちゃ感じますね。
おじま : 嬉しいです。
森 : 結構いまのメンバーは、みんなそれがすごいあると思う。音色というものに対する比重はわりとでかいですね。
おじま : たしかに。
──それはおもしろいこだわりだなあ。
森 : 今作にはマリンバとか木琴の音が結構な割合で入ってるんですけど、本物のマリンバや木琴を演奏して録音して…… という考えにまったくならないというか、なんならiPhoneで鳴らした音も使ってるし。そこが演奏や技術にこだわるインスト・バンドとは全然違うんかもなと、録音していて思いましたね。
おじま : 音色にはこだわるけど、本物は追及しないということですよね。
森 : うん、そう。間違った解釈の末に偶然生まれたような音楽が好きだし。自分達が本物をそのままやったところで、っていうある種の諦めがそもそもあるみたいな。
おじま : 味の素でつくったカレーみたいな。
森 : そうそう(笑)。化学調味料を使うことを、まったくいとわないというか。
──たしかにね。
森 : もちろん本物の生の楽器の音の素晴らしさもわかるんですけどね。スティールパンは前回のアルバムでMC.sirafuくんに叩いてもらって最高だったんです。だけどそれをライヴではソフト・シンセで鳴らすという、neco眠る感はあるかもしれないですね。
──なるほど。1曲目がアルバム・タイトルにもなっている「Typical Step」ですね。
森 : ずっと「これでいいのかな?」ってデモをこねくり返したりして悩んでて。けどそれをメンバーに聴かせたら「むっちゃneco眠るやな!」って言ってくれて。
──代表的な象徴的な曲、ということですよね。
森 : そうですね。「むっちゃneco眠るやな」と言われた、“むっちゃ”の部分、それが「Typical」。
──なるほど。でもアルバムを通して新しい風がneco眠るに吹いてる感が、とにかくしました! ありがとうございました!
今作のハイレゾ配信はOTOTOYだけ!!
過去作もチェック!
過去のインタヴュー記事もあわせてチェック!
『Even Kick Soysause』リリース記念インタヴュー
https://ototoy.jp/feature/20090708
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スチャダラパーとEGO-WRAPPIN' / ミクロボーイとマクロガール (24bit/44.1kHz)
本作収録曲「ひねくれたいの feat.スチャダラパー+ロボ宙」にも参加しているスチャダラパーと、EGO-WRAPPIN'によるコラボレーション・シングル。スチャダラパーの代表曲のひとつである夏のアンセム「サマージャム’95」が2017 年を飛び超え、その先のアツーイ夏がつづられた「サマージャム2020」も収録。
never young beach / fam fam(24bit/96kHz)
本作収録曲「SAYONARA SUMMER feat.安部勇磨(never young beach)」に参加した安部勇磨がヴォーカルを務める、never young beachの2ndアルバム。アナログ12インチの『YASHINOKI HOUSE』に追加収録された「Pink Jungle House」やライヴ定番曲となっていた「お別れの歌」「Motel」、バンドがリスペクトする高田渡の「自転車にのって」カヴァーを含む全9曲を収録。ハイレゾはOTOTOYだけです。
LIVE SCHEDULE
neco眠る 15th ANNIVERSARY TOUR
2017年11月26日(日)@大阪 味園UNIVERSE
時間 : OPEN 16:30 / START 17:30 LIVE : neco眠る / スチャダラパー / never young beach
DJ : 川辺ヒロシ(TOKYO NO1 SOULSET)
VJ : 鈴木裕之
CURRY : buttah
PROFILE
neco眠る
2002年、大阪にて結成。
幾多のメンバー・チェンジを経て現在のメンバーは森雄大(Gt)、NEGURA(TITAN)、伊藤コーポレーション(株)(Ba)、BIOMAN(Synth)、栗原ペダル(Gt)、三木章弘(Dr)。 結成15周年となる2017年、新メンバーにおじまさいり(Key from CASIOトルコ温泉)を迎え新作『Typical』をリリース。