ハープを弾き歌を紡ぐSSW、丁(てい)──『ツルネ -つながりの一射-』ED主題歌で掴んだ、温かな光
ミニハープを弾き、透明感のある声で歌を紡ぐSSW、丁(てい)。そのミステリアスな雰囲気が話題となり、SNSを中心に多くの注目を集めているアーティストである。OTOTOYでは、そのメジャーデビューEP「ヒトミナカ」のリリースのタイミングでインタヴューを実施。いまのスタイルに至る経緯や、TVアニメ『ツルネ ―つながりの一射―』のED主題歌に込めた想いを語ってもらった。
メジャーデビューEP「ヒトミナカ」
INTERVIEW : 丁
ミニハープで弾き語りをするシンガーソングライター・丁(てい)が、TVアニメ『ツルネ -つながりの一射-』のED主題歌曲を含む4曲入りEP「ヒトミナカ」でメジャーデビューを果たす。2021年2月よりハープやヴァイオリン、ギターなどの弦楽器を使いオリジナル曲やカヴァー曲をSNSに投稿し続けた丁には、「音楽を続けたい」「誰かと一緒に音楽がしたい」という願望があったという。動画投稿を開始するまでにはどんな背景があったのか。どんな経緯から現在の「ハープ弾き語り」というスタイルに行きついたのか。そして新たなスタートに立ち、どんな心境を抱えているのだろうか。じっくりと話を聞いた。
インタヴュー・文 : 沖さやこ
自分の願っていたことがかたちになった
──丁さんがハープ弾き語りを始めたのは、ご友人からの助言だそうですね。
丁 : そうなんです。2021年2月から演奏動画や歌唱動画の投稿を始めるようになって、その時に「部屋の背景にハープがあったらかっこいいんじゃないか」「グリッサンドでハープの音色を使えたらいいな」と思って、おもちゃ感覚でAmazonで1万円くらいのミニハープを買ったんですよね。そしたら同じように演奏動画を投稿していた友人から「ハープで弾き語りしてみたらいいんじゃない?」と言われたのがきっかけで始めたんです。
──SNSやブログで「弦楽器ならだいたいなんでも弾ける」や「音楽を続けなきゃと思ったことが動画投稿のきっかけ」ともおっしゃっていましたが、動画投稿を始める前まではどんなふうに音楽と携わっていたのでしょうか?
丁 : もともとずっとヴァイオリンを続けていたんです。でも決まりごとがとても多い世界なので、そこに自分がハマれていないなという感覚が少しずつ大きくなっていって、「もっと自由に音楽をやっていきたいな」と思うようになっていきました。そんなタイミングで映画音楽やアニメ音楽、ゲーム音楽の面白さにのめり込んで。家にずっと引きこもって、パソコンで曲を作ったり録音したりを繰り返していました。
──ヴァイオリンのみでの表現では満足できなかったと。
丁 : もともと歌うことも好きだったし、エド・シーランみたいなアコースティックの温かさが感じられる音楽が好きだったので、自分でもそういう音楽をやってみたいという気持ちも徐々に大きくなっていきましたね。そしたら「どうやったらこのリバーブ感が出るんだろう?」とどんどんのめり込んでいって、自分で全部オケを作ることにも達成感がありました。そういうことを繰り返していたら、よく行くマッサージ屋のおっちゃんが「せっかく楽器弾けるんだからSNSで動画出しちゃえばいいのに」と言ってくださったりして。おうち時間も推奨されている時期だったし、趣味の延長線上でSNSにちょこちょこと投稿を始めたんですよね。
──それが2021年2月の動画初投稿ということですね。
丁 : そうです。ありがたいことに周りの人から「あなたは音楽を続けるべきだ」と言ってもらうことも多かったですし、自分がやっていて面白いことなら続けられるかなと。だから最初は「楽しめればいいや」という感覚でした。あと、ひとりで制作していくなかで「誰かと一緒に音楽をしたい」という気持ちも大きくなっていったので、そのために動画投稿を始めた側面もありましたね。自分から情報収集をして、気になった演奏者の方にはいいねを連打して猛アタックしていました(笑)。ハープ弾き語りを勧めてくれた友人とも、その中で知り合ったんです。
──それを繰り返していくなかで、メジャーデビューという話が舞い込んできたということですね。
丁 : はい。さらに頂いたお話が、ほんと自分のやりたいこととドンピシャだったんです。ご自分でアニメーションまで手掛けるVOCALOIDクリエイターさんもすごく多いので、動画投稿を始めた当初からずっと、自分のオリジナルの曲をアニメーションと一緒に発表したい願望があって。実際にCLIP STUDIO PAINTとかアニメーションのためのソフトを揃えて練習したんですけど、音楽と並行させるのがすごく大変だったんです(苦笑)。それで自分の演奏や編曲、歌が伝えられる動画を作ることにして。いつかアニメーターさんにちゃんと依頼しようと思いながら活動しているなかで、突然アニメタイアップの話が舞い込んできて……。
──まさにドンピシャという言葉がぴったり。
丁 : そうなんです。メジャーデビューというありがたいお話を頂いたうえに、自分の願っていたことがかたちになったんですよね。