バンドマンの血が流れてるんかな
──今作『響鳴』の前半では、特にオータケさん(オータケコーハン)のギターがすごいですよね。
池永:オータケのギターがすごいって、結構言われるんですよ。毎回「悔しい!」って思うけど(笑)。
──フレーズが良いだけじゃなくて、それを凌駕する手数が押し寄せてくるというか。
池永:ギターは一発録りだったんですよね。実はレコーディングの前に曲を聴いてこなかったみたいで(笑)。それでもギター・ソロはほぼ編集してないですね。すごいなと思います。技術的にもうまいけど、センスがおもしろいですね。
──一発録りだったんですね! ソロにも迷いがない感じがしました。
池永:譜面通りに弾くフレーズじゃなくて、その場で曲に乗せて弾いてるから、ライヴ感がある。一発といっても何回も録るけど。最初に通して弾いたのを聴いてもらって、少しイメージ話し合って、AメロだったらAメロをずっとループさせるんですよ。ずっと弾いてると、3ループ目くらいでノってくるんですよね。ノってきたらどんどん飛び越えていきます。
──ベースの劔さん(劔樹人)はどういうタイプのプレイヤーなんでしょうか?
池永:劔くんはオータケくんとは真逆で、前もってフレーズを決めてくる。全部頭に入れてきて、そのニュアンスを何度も繰り返して自分のものにしていく感じです。


──なるほど。では、クリテツさん(テルミン / パーカッションetc.)はどうでしょうか?
池永:クリテツさんもある程度考えてくるけど、録音時のノリでバーっと録音していきます。テルミンはピッチが難しい楽器なので、丁寧に録音します。
──クリテツさんってテルミンのプレイヤーのなかでは、どういう立ち位置なんでしょうか?
池永:よく知りませんが、ちゃんと音階を弾ける人なので技術があると思います。センスもあるんですが、やっぱりあら恋のような爆音バンドでもやっている人なので、ちょっと異端なんじゃないかな。テルミンって、鍵盤と違って空間で音階をつける楽器だから、安定した音程で音を出すのはテクニックがいるみたいで。クリテツさんはうまいですよ。『ハマスカ放送部』(テレビ朝日)でテルミンを紹介した回(2023年5月8日放送)のときにクリテツさんが出てたんだけど、番組のテーマ・ソングに合わせて即興で演奏していて、「すごい! 」って思いましたもん。
──テルミンのフレーズは池永さんが考えるんですか?
池永:うん。基本メロディは俺が考えますね。叩き台というか、ある程度できてる段階から悩んだほうがいいものができると思っていて。ギターもベースも全部、俺がある程度作ります。脚本がある感じ。脚本があって、そこから役者さんそれぞれの読みかたがあるわけで。アドリブをバンバン入れてくる人もいれば、丁寧に微妙なニュアンスをやってくる人もいる。そういうやりかたです。
──ドラムのGOTOさんはどうでしょう?
池永:GOTOくんは大体フレーズを決めてくる。最初に打ち込みで作ったドラムをスタジオでゲネ録音するんですけど、そのときにいろんなフレーズを好きに叩いてもらって、俺が編集しなおしたのをGOTOくんに送って、それを本番スタジオで再現する録りかただね。
──それはエンジニアも入れて?
池永:うん。ドラムはやっぱり空気感が大事だから、機材もいいものを使って、本番録音はちゃんとした場所で録っています。ベーシックを録音して、そこからライブ感のあるラフなグルーヴで録音したり、色々相談しながら膨らませてます。


──今回のアルバムにはバンドで鳴らない音も入っていますよね。ライヴではどう再現するんでしょうか?
池永:俺がライヴでダブ処理しながら同期で出します。同期を使用していますが、なぜかむちゃくちゃ生バンドのグルーヴになっていると思います。そもそもがバンドマン出身なので、バンドマンの血が流れてるんかな。
──今作にはそういう打ち込みの音が結構入ってますよね。
池永:BEHRINGERの「TD-3」というシンセサイザーを先日買ったんですよ。これはROLAND「TB-303」という昔のシンセサイザーまんまの楽器なんですけど、「TB-303」は憧れの楽器で。本物ではないですが、やっと手に入れたので嬉しくて、今回の音源にいっぱい使っています。
──なるほど。曲の話に戻りますが、まず最初にできたのが “Stance”なんですよね。
池永:これはBOSSの「PS-2」っていうコンパクト・エフェクターがあるんだけど、これを使ったダブのフィードバックをものすごくえげつなくやりたくて。まずそこからなんだよね。
──アルバムの1番最初の原点がそこだったんですね。
池永:そうそう。ダブ処理でノイズをしたかった。ダブでノイズをやるバンドってなかなかいないんで。
